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四つのルール




 念のためにほかの教師にも話を聞いてみたが、まともな情報は得られなかった。そんなものが流行っているというのを知っていた人でさえ、かなり少数だった。


 その少数からも「わざわざ関わることはないんじゃないか」という正論を言われてしまうオチまでついてきた。


 自分でも余計なことだとわかりつつ、それでもやはり動くことにした。


 ありがたいことに琴野が手伝うと申し出てくれた。三枝達なら顔見知りだったが、俺が自分で動くと宣言すると「私も手伝います!」と言ってくれた。


 放課後の廊下を二人で歩いていると、顔の広い琴野に色んな生徒が声をかけていた。


「あ、またやってるの?」


「がんばってね」


「しつこい女は嫌われるよー」


 誰もかれもがニヤニヤと笑いながら、琴野をからかっていた。そんな生徒たちに彼女は「もうっ」と怒っていたが、まんざらでもない様子だった。


 そういったやりとりがどういう意味なのかわからなかったが、生徒同士のやりとりに深入りしないようにしているので、気にしないことにした。


 琴野と訪れたのは、三年一組の教室だった。彼女曰く、三枝たちは最近ここに集まっているらしい。理由はここが三枝のクラスだからだろう。


 ノックをしてから、教室の扉をスライドさせた。


 放課後の三年の教室には、何人かの生徒が残っていることが珍しくない。大学受験を控えた生徒が、自習のために残っているからだ。


 しかし、一組の教室には一人しかいなかった。


 教師としては心配になるほどの細身で、生真面目そうな顔つきをした、黒縁の眼鏡をかけた男子生徒が、窓際の席に腰かけていた。


 俺の姿を見ると、すぐさま立ち上がった。


「す、住吉先生っ」


「驚かせてすまない。そう固くならなくていい」


 普通の生徒なら俺が現れた程度ではこんなかしこまった態度はとらない。


 固くなるなと言ってすぐ座るような彼ではなかったが、俺の陰に隠れるようにしていた琴野を見ると、顔をしかめた。


「琴野の仕業か」


「仕業って、ひどくないですか?」


「ことを大きくしないようにしてるのは知ってただろ」


「だってー……」


 琴野が両手の人差し指をあわせながら、もじもじとする。


「三枝、俺が気になって琴野を頼ったんだ。せめてやらないでくれ」


 そう庇うと彼女はうんうんと頷いていたが、それを三枝に見られているのに気づくと、逃げるようにまた俺の陰に隠れた。


 そんな彼女の反応に、彼が諦めたようにため息をついた。


「手紙の件ですよね」


「ああ」


「先生が出てくることはないと思いますよ」


 何かを隠そうとしているというよりかは、本当に申し訳なさそうな態度だった。おそらく、『不幸の手紙』で教師が出てくるとは思っていなかったし、彼のことだから、気にかけさせてはいけないと考えていたんだろう。


「わかっている。俺も今日、琴野から聞いたところだ。一応、詳細だけ把握しておきたくてな」


「そう、そうなんですよ、三枝先輩。さすがでしょ?」


 俺の背中に隠れて、顔だけをひょこんと出した琴野がなぜか誇らしげにしていた。三枝はそんな彼女に「琴野だって知ってるだろう」と腰に手をあてながら、またため息をついた。


「私が知ってることは、大雑把なことだけなんですよ」


「いや、手紙自体、大雑把なものだろ」


「そーですけど、そーじゃないんですって」


 三枝の机の上に、四角いアルミの箱があった。もともとは外国の洋菓子の入れ物だったんだろう、見たことがないクッキーの写真と、英語の文字表記が見えた。


 その箱を覗き込むと、大量の封筒が入っていた。


「これが『不幸の手紙』か」


「はい。回収できた分は、僕で預かってます」


 そんな面倒なことを自主的にするなんて本当に生真面目だなと思いつつ、それがありがたかった。


 琴野も俺に並んで、箱の中を覗き込み「わあ、すっごい」となぜか喜んでいた。


「かなりの量だな」


「毎日、それなりに集まりますから。多いときは十通くらい。この箱の中に、もう六二通もあります」


 それだけ出回っているのに、教師の耳にはほとんど入っていないんだから、生徒たちの連帯感は侮れない。


 もっとも、話すほどのことじゃないという判断かもしれないが。


「開けてもいいか」


「はい」


 丁寧に一つの手紙を箱から出して、それを渡してくれた。


 なんてことない封筒だった。ただ表を見ても、裏を見ても、差出人はもちろん、宛先すら記されていない。


 だが、、裏面の端に『㉓』とシャーペンで書かれていた。三枝がつけた記しだろう。これは彼が集めた二三番目の手紙らしい。


 その封筒の中には、二つ折りの便箋が入っていて、それを取り出して、中身を確認した。




『これは不幸の手紙です。これを受け取った人は、不幸になります。


 ただ、不幸にならない方法があります。


 三日以内に、同じ手紙を三人に届けてください。


一、手紙を届けられたことは誰にも言ってはいけません


二、手紙を届けているところを誰にも見られてはいけません


三、赤いペンを使用してください


四、宛先を書いてはいけません


 もし、これらのルールを破ると、あなたは不幸になります』




 全て赤い文字で書かれていた。綺麗な文字だが、所々角が丸くなっている。文字に特徴のある生徒は覚えているが、記憶にない文字だった。

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