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ほかほか  作者: ねこ侍
第一章
79/193

第65話 マルボロ戦3



挿絵(By みてみん)


【マルボロ】

その機能の多くは不全に陥っている。


 ロングソードがマルボロの左胸に深々と突き刺さる。


 どうだっ!?

 人なら間違いなく即死だ。

 精密機械だって内部の破損は致命的だろ!


 だがしかし、マルボロは何事も無かったの様に自らに突き刺さっているロングソードを引き抜く。


 パキパキパキッ。


 そして小枝でも握り潰すみたいに、軽々とロングソードを粉々にした。


 うわぁ。

 握力も凄いのね。

 左胸の穴からはバチバチと火花が散っているのが見える。

 ノーダメージとは思えないがどうだ?

 

「ヨースケ、早く距離を取って!」


 !? しまった。

 こいつのスピードを忘れていた。

 マルボロがスラスターを吹かせ、地面を滑るように移動してくる。


 こいつにはレーザーがある。

 離れようとするのは逆に危険と判断した俺は、あえて前に出てマルボロの足の近くをうろちょろする。


 ポタン。


 と、俺の顔にぬるぬるする液体が落ちてきた。

 頭上を見上げると、マルボロの左胸に空いた穴から何かの配線がぷらんと垂れ下がっている。

 ロングソードを引き抜いた時に引っ張り出されたんだろう。

 液体はどうやらそのコードを伝って来た様だ。


 ひょっして燃料か何かか?

 やってみる価値はあるかもな……。


 俺は動くのを止めた。

 さあ…………来いっっ!!


 マルボロが剣を大上段に構え、俺目掛けて真っ直ぐにふりおろす。

 俺は頭上から迫る剣をギリギリの半身でかわす。


 ブォオン!


 凄まじい風圧と振動がかわしたはずの俺に襲いかかる。


 なにこれ、めっちゃ怖い!?

 ランジェやルナは至極当たり前にやっている技術だ。

 改めて思うが、あいつらは化け物だな。


 だが、おかげでよーく見える。

 狙いはその左胸、そこに空いた穴から見える内部だ!


 即座に俺は、右手で【ほかほか】と【ぽたぽた】を交互に繰り返す。


 はいはいはい!

 きたきたきたきたきたっ!


 右腕が今までに無い不思議な感覚に包まれる。

 異常な早さで膨張と収縮を繰り返す筋肉。

 出力は弱めにしてあるのだが、つる一歩手前に似た感じだ。


 とりあえず……ぶっつけ本番だったが、スキルの同時発動は巧く出来たな。

 スキル合成技【ほかぽた】の誕生だ。

 ネーミングは……まあ後でじっくり考えようか。


 さあ、くらえっ!

 

「ほかぽたぁぁぁっっ!!」


 俺はマルボロの左胸に向けて右手を突き出す。

 右手から勢い良く放出されている何か。

 明らかに【ほかほか】とは違う。


 マルボロの内部では、まだ案の定ポタポタと液体が滴り落ちているのが見える。

 

 もし、だ。


 あの液体が燃料であったなら、この同時発動させた【ほかぽた】で燃料を温め発火させ、内部から爆発させられるのでは……と考えたのだ。


 完全に博打だ。

 だが当たれば大きい。


 どれどれ、マルボロちゃんは……?


 爆発する様子は……ない、あれ?


 おかしいな?

 なんで?


「ヨースケッ! 逃げて」


「何やってんのよ! 早く走りなさいよっ」


 二人の慌てた声が響く。


 マルボロが再度剣を振り下ろす。


 おおっと、もうダメか!

 諦めて俺が右手を下げ、回避行動を取ろうとした時、


「チンカヲパンデナウョジイ」


 そう言ってマルボロの動きがピタリと止まった。


 なんだ?

 いや、考えるのは後回しだ。

 とりあえず逃げよう!


「ドーモリバカリ……ドーモリバカリ……」


 俺は地面を転がる様にしてマルボロから慌てて離れた。

 足がもつれて上手く走れない。

 恥ずかしい話、少しだけだが腰が抜けたらしい。

 地面に手を突き、半ば転がりながら距離を取る。

 我ながら無様な逃げ方だが、そんなの今は関係ないのだ。


「ウョリンカリバカリ」


 ウィィンと駆動音を立てながら、再度動き始めるマルボロ。

 止まっている間に結構距離は稼げた。

 マルボロは俺を追いかけよう右足を大きく上げる。


 と、


 ガクン。


 一歩踏み出した所で大きくマルボロが傾いた。


「おーっほっほっほ。沈みなさいっ!!」


 樹の上からルナが高笑いをしている。

 笑い方が悪役令嬢のそれだ。


 見るとマルボロの踏み出した右足、その地面がぐずぐずになり、泥沼と化している。

 俺が時間を稼いでいる間に、ルナが土と水の合成魔法を発動させたのだ。

 見る見るうちに自重でマルボロの右足が泥に沈んでいく。


「はい、もう片足もね~」


 左足の地面も泥沼へと変化させるルナ。

 マルボロは懸命に足を引き抜こうとするが、もがけばもがくほど足を取られていく。

 あっという間に膝の辺りまで両足が泥に浸かり、マルボロは完全に自由を奪われた。


「うーふっふっ。あらあら、動けないのね。どうしてくれようかしら」 


 悪どい顔をしながら樹の上から降りてくるルナ。


「ルナ、さすがっ」


 ランジェも駆け寄ってきた。


「二人が時間を稼いでくれたおかげよ。それよりコイツどうす……きゃっ!」


 うわっ!? 

 突然、視界が見えなくなる。


 なんだ? 

 身体中にねっとりとした半液体状の物質が飛んでくる。


 こりゃ泥かっ!?

 ペッペッ。


 口の中に入った泥を吐き捨てる。


 顔についた泥を袖で拭い周りを見渡すと、辺り一面は泥に汚され茶色く染まっていた。

 この大量の泥を飛ばした奴はもちろん……。


 あれ?

 マルボロがいない?


「も~最悪! 一体何が……」


 アクアボールで顔を洗い終えたルナが、目を丸くしながら上空を見上げた。


「何なのよ、コイツはっ!?」





 信じられない事にマルボロは宙に浮いていた。

 腰の辺りと足の裏から空気を噴き出し、地上十メートルあたりで静止をしている。

 俺達に飛んできた大量の泥の正体は、マルボロが脱出する際に盛大に吹き飛ばしたのだろう。


「浮いてる!? 魔導士が近くにいるかも知れない、気を付けてっ!」

 

 リモコン持った操縦士ならいるかもな……


「嘘っ、近くには誰もいなかったわよ」


 じゃあ自動操縦だ、うん……。


 俺はもはやこいつがゴーレムだとは微塵も考えていない。

 完全にロボット、それも地球の科学力を数段上回っている。


 空中のマルボロが口を開いた。


「ヤバい!あいつアレをやる気だ!」


「みんな伏せてっ!」


「ピ――――――ッ」


 が、予想に反してマルボロの発射したレーザー光線は、先程と比べ非常に弱々しかった。

 更には辺りに漂う霧によって、大幅にその威力を吸収、分散されて、俺達に届く前には消滅した。


 やった!

 ひょっとしてもう燃料が無いんじゃないか!?


「イカンゲウドツカ」


 マルボロは少しふらつきながら空中に停止している。


「ねー。あいつ弱ってない!?」


 念には念を入れてアクアミストを発生させているルナ。

 ランジェはその辺にある水溜まりにファイアーソードを突き刺して水を蒸発させている。なんか可愛い。


 俺は勝ちを確信した。

 このままなら間違いなく燃料切れで動けなくなるだろう。

 

「ゴホツミキ、スマシクバジ」


 空中のマルボロの動きがピタリと止まった。

うっすらとだが左胸の穴からは光が漏れでている。

 

 ……。


 なんだろう。


 なんかだよくわからないが凄く嫌な予感がする。


 ざわざわと押し寄せる不安感、胸騒ぎ。


「ンテ」


 マルボロが何かを告げた。

 全身に鳥肌がたつ。

 今すぐにでもこいつを倒さなければならないと、何かが警告を鳴らしている。


「みんなっ! よく分からないが今すぐにこいつを倒そう!」


「どうしたの、突然?」不思議そうな顔をするランジェ。

「放っておいても倒せそうよ」ルナも消極的な姿勢を見せる。


「頼む! 嫌な予感がするんだ!」


「「OKっ!」」


 俺の必死な表情を見たランジェとルナは、すぐに攻撃に転じる。


「ロックバレットッッ!」


 ルナが属性弾で一番効果的であろう土魔法を発動させる。

 マルボロは避けようともしない。

 全弾が面白い様に命中し、装甲にいくつもの凹みが生まれていく。


「せぇいっ!」


 空中にいるマルボロに、有効な攻撃方法を持たないランジェは、そこらに積まれている建築素材の角材を投げつける。


 普段自分の背丈以上の大剣を振り回しているランジェは、実は筋力も凄まじい。

 さすがに連射こそ出来ないが、当たれば大きくバランスを崩せる。


「ほかぽたぁぁっ!」


 俺は右腕に走る激痛も無視して【ほかぽた】を発動させる。

 みしみしと音を立てる右腕に構わず、出力を少しずつあげていく。


「スクッシ」


 ぞわっ……。

 全身が総毛立つ。

 マルボロから発せられる光はどんどん強烈になっている。


 やばいやばいやばいやばいやばいやばい。

 何かやばいぞ!


「ほかぽたぁぁぁああぁっっっ!!」


 俺は更に出力を高める。

 肩から先が冗談ではなくすっ飛んでいきそうだ!


「ちょっ! それ以上は危険よっ!」


「ヨースケッ!」


 ランジェとルナの悲鳴にも似た声が聞こえてくる。


「うおおぉぉあぉっっ!!」


 俺は獣の様な声をあげ、出力を更に上げた。

 右肩から先が無くなったみたいに感覚が消えている。

 それでもこいつは、今すぐに! 至急に! 早急に! 速やかに! 確実に! 絶対に! 一秒でも早く倒さなければいけない!!


「ーリス…………」

「おおおおおぉっっっ!!」


 マルボロが急激にバランスを崩した。

 身体の至る所から空気を噴き出し、何とか制御を試みている。


「ウノフョギイセ」


 マルボロから光が消えていく。

 そしてくるくると糸の切れた凧の様に回転しながら、地面へと落下をするマルボロ。


 ずうぅぅぅぅんん!!


 凄まじい轟音と共に地面が大きく揺れた。


「やったか!?」


 もうもうと立ち上る土煙。


 右腕はもう上げることすら敵わない。

 肩がどくんどくんと大きく脈を打つように痙攣している。


 やがて土煙が晴れた後に俺達が見たのは、身体を鋭い角で貫通され身動きの取れないマルボロの姿だった。


 マルボロが落下した場所、そこには奇しくもウマンダーの頭部があったのだ。


「ピ―――――――ッ」


 断末魔の叫びだろうか、甲高い音を発するマルボロ。


「ウコイドーモプリース」


 そしてマルボロは相変わらず訳の解らない言葉を発し、そのうちに動かなくなった。



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