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ほかほか  作者: ねこ侍
第一章
78/193

第64話 マルボロ戦2


 マルボロに稲妻状にいくつもの亀裂が入る。

 亀裂はうっすらと光を放ちまるで本物の稲妻の様だ。

 ひょっとして、そのままバラバラになるのでは? なんて甘い期待をする俺だったが、それは最悪の結果で裏切られる事になる。


 ガシャガシャッ!!

 ニュンッ!


 ええっ!!?


 目と目が合う。

 上部から突き上げる様に出てきたのは、なんとイケメン(ロボット風味)だ。


「おいおい、マジかよ……」


 あまりの予想外の出来事に開いた口が塞がらない。

 ランジェを見るとポカーンとした顔のまま固まっている。


 ガシャン!!


 長い鉄球型の腕は胴体に収納され、代わりに出てくる人型の腕。

 動作確認でもしているのか、五本指がグーパーを繰り返している。


 ガシャコンッ!!


 三本の脚の内、後方についていた二本は人体の脚と同じ位置まで球体上をすべるように移動し、シュコン、シュコンと伸びていく。

 

 前方に残る一本足はポトリと地面に落ちる。

 先が剣の様にとがっており、それを拾い上げてかまえるアイアンゴーレム。


 グワッシャコンッ!!!


 最後に丸みを帯びていたボディーは、いくつもの亀裂に沿って、開いたり閉じたり、移動したりしなかったり。

 言葉では表現しきれない複雑な動きをパーツ毎に見せると、驚きのスリムアップを遂げ、完全な人型へと変形を遂げた。


 こいつヤりやがった!!


 亀裂に沿ってバラバラに砕け散るかと思いきや、まさか亀裂に沿って変形するとは……。


 体長は七メートル程あるだろうか。

 おもちゃ屋さんに行けば売ってそうだな……。

 それが俺の第一印象だ。


「ウョリンカイケンヘ」


 ト○ンスフォーマー的な匂いを漂わせるマルボロ。

 変形の衝撃で、身体についていた泥はすっかり吹き飛んでしまっている。

 左胸のところには、先程俺達が空けた穴がちょこんと見える。


「何なのよ、こいつは……」


 初めて目にする種類の敵に困惑の色を隠せないルナ。

 しかし今思えば絶好の攻撃チャンスだったのに、惜しい事をした。

 まあ、変形時に攻撃をしないのはロボット物の鉄則だ。


「来るよっ!」


 ランジェが危険を知らせる。

 今、俺達三人はマルボロを囲む様に位置取っている。

 右前方に俺、左前方がルナ、後ろがランジェだ。

 一体、誰狙いだ……?


 バシュウゥゥゥッ!


 マルボロが腰の辺りからスラスターを吹かせて、地面を蹴る。

 標的は……ルナだ!


 先程までのまん丸体型の時と比べて、移動速度が段違いだ。

 地面を滑るように移動し、あっという間にルナの目の前へ到達する。


 「えー!? こっち来ないでよっ!」


 ズガンッ!!


 マルボロが両手に構えた剣を大きく振りかぶり、眼下のルナ目掛けて勢い良く振り下ろした。

 

「エッジウインドッ」


 ルナは後方に大きく跳躍をしつつ、エッジウインドの気流に乗り、マルボロとの距離を更に稼ぐ。

 つい今しがたまでルナが立っていた地面は大きくえぐれ、黒土が露出している。


 逃げるルナを追うマルボロ。


 突く、切る、払う。


 第二、第三の攻撃を次々と繰り出すマルボロ。

 その動きは滑らかでゴーレムやロボットとは思えない。

 流れるような連撃を繰り出し、ルナヘの追撃の手を決して緩めようとしない。


 だが、何故だかルナには全く当たらないのだ。

 ひらりひらりとマルボロの剣撃を躱している。


「あら……動きは早くなったけど、人型だから逆に動きが読みやすいわね」


 どうやらマルボロの動きを先読みして回避をしているらしい。

 たまに思うんだが、あいつは本当に魔導師だろうか?


 こりゃ、余計な援護は不要だな。


 ランジェも動かずにマルボロの観察に集中している。

 今、自分が戦闘に加わってマルボロの動きが不規則になる方が、事故率が高くなると思っているんだろう。


 俺も今の内に次の手を考えるか……。


 先程、マルボロの左胸に空いた穴から、ちらりと見えた内部。

 そこに見えたのは金属や粘土でも、ましてや空洞でも無い。

 どちらかといえば車のボンネットを開けた時のイメージに近かった。

 

 そして気になっているのは、何かの液体が内部のコードを伝って垂れていた事だ。

 もしかして燃料か?


 ランジェやルナは概念自体無さそうだが、こいつは間違いなくロボットだよな……。


 それならコアとかは多分無いだろう。

 戦い方をもう一度考える必要があるな。


 俺はロボットが苦手そうな物を片っ端から考える。


 水?

 燃料切れ?

 ホコリ?

 電波状態?


 ダメだ。

 これじゃ携帯電話の苦手な物だ。


 う~む……。


 あ!

 あれ良いんじゃないか!?


 と、俺が妙案を一つ閃いた時、囮役を引き受けているルナが俺達に呼び掛けてきた。


「ねーねー。こいつ、多分だけどあたし達と戦う事を想定して作られてないわよ。狙いが雑だもの」


 ルナはマルボロの攻撃を完全に見切った様だ。

 必要最小限の動き、かつマルボロとの距離をうまくコントロールしている。


「そうだね、自分と同サイズか、もしくは大型の敵を想定してるっぽいね」


 ランジェも同じ考えの様だ。

 これなら付け入る隙は充分ありそうだ。

 最悪、燃料切れを狙っても良いかもしれない。


 そんな楽勝モードが俺達に流れ始めるなか、突如ウイィンと音がしてマルボロの口が開く。


 なんだ? 

 俺は開いた口の中をじっと見る。


 そこには細い銃身の様な物。


 や・ば・い!!!


 俺はそれが何を意味するのかを瞬時に察知し、一気に青ざめる。

 銃口に次第に集まっていく赤い光。


 「ルナーっ!!! 逃げろーっ!!!!」


 その瞬間、赤い光の束が銃口から発射された。

 




 マルボロから放たれた赤い光は、大気中をジグザグに飛びながらルナヘ迫る。


「ルナッ!」


 【勇者】&【瞬歩】を発動させたランジェが、超スピードでルナの前に躍り出た。

 ランジェは俺が叫ぶよりも早く動き始めていたのだろう。

 大剣を地面に突き刺し、その陰に身を隠す二人。


 レーザーはじりじりと大剣の表面を融解させていく。


「ルナーッ! ウォーターウォールを出せっ!」


 俺は岩陰に隠れながら叫んだ。


「ウォーターウォール!」


 俺の指示にすぐさまルナは反応し、自分達の前に水の壁を発動させる。


 じゅんっ!

 

 水が勢い良く蒸発し、水蒸気が辺りを包む。

 だが、壁の向こうのランジェ達にはレーザーは届いていない。 

 どうやら壁を通り抜ける迄は出来ない様だ。


 ふう、予想通りだな。

 レーザーなら水に大幅に吸収されるはずだ。

 森にうっすらと発生している霧も、レーザー本来の威力を弱めてくれていたのかも知れない。


「ジーャチーギルネエ」


 カシャンッと音がしてマルボロの口が閉まった。


「何よ……今の!? 魔法を使うゴーレム?」


「あまり距離を取りすぎない方が良いね。異常な速さだ。見て避けるのは無理かも……」

 

 相手は光の速さで飛んでくるんだ。

 撃ったと思った時には当たっているだろう。


「だが水には見ての通り弱いみたいだな。今のうちに水系魔法で付近の湿度をあげといてくれ」


「OK。本当助かったわ、ヨースケ」


 そう言ってルナは【アクアミスト】と呼ばれる、霧を発生させる魔法を発動させた。


「じゃ僕が囮をするね」


 ランジェが動きを止めているマルボロへ駆けていく。

【勇者】はもう解除しているようだ。


 俺も準備を始める。


 あいつを倒すにはこれしか無いだろう。




 ズガンッ!


 幾度目かのマルボロの大上段斬りがランジェを襲う。


 直撃すれば大岩も砕くその一撃をランジェは難なくかわすと、降り下ろし直後の無防備なマルボロへ、凄まじい連撃を加える。 


 ランジェが囮となりマルボロの注意を引き付けている。

 近接職のランジェにとっては、マルボロの動きは実に単調に見えているのだろう。


 だがいつまた、あのレーザーを発射するかわからない。

 急がなければ……。

 俺は持っている予備の弾10発を地面にばらまく。


 そしてランジェに執拗に剣を振るう、マルボロの足元めがけ一斉に移動をさせる。


「ランジェ! そいつを何歩か歩かせられるか!?」


「うん。任して!」


 ランジェがマルボロの間合いから半歩だけ遠い位置に移動をした。

 さすがランジェ、ベストだ。

 あまり遠くに移動すると、スラスターを吹かして高速移動するからな。


 よし、ヨースケよ……覚悟を決めろ。

 俺は腰からロングソードを抜き両手で構えると、マルボロへ向かって走り出した。


 マルボロはランジェを逃がすまいと右足を上げているところだ。

 俺は走りながら、マルボロが右足を踏み下ろすと同時に、その下へと弾丸十発を滑り込ませた。

 踏まれる瞬間、前方へ向かって全ての弾丸をコロコロコロッと移動させる。

 動く床のイメージだ。


 マルボロは突然地面が前方動いた様に感じただろう。

 バランスを大きく崩して、仰向けにドウッと倒れるマルボロ。


 今しかない!!

 俺はすぐさまマルボロの胸部へと飛び乗り、左胸にある穴に思いっきりロングソードを突き立てた。

 

 ぶちぶちっ


 何本かの配線を切断し、固いものに当たりロングソードが止まる。

 腕全体に相当の衝撃が伝わり、しびれが生まれる。


 しかし悲しいかな。

 俺の非力さゆえか、ロングソードはほんのちょびっとしか突き刺さらなかった。


 だが、十分だ!!


 マルボロが両手を地面について上半身を起こそうとする。

 俺は慌ててマルボロから飛び降りるとルナに叫んだ。


 「ルナ!! 雷魔法を頼む!!」


 突き刺したロングソードは避雷針代わりだ!

 ロボットなら内部に電気が流れれば一発だろう。


「えぇっ! なにそれ!? あたしそんなの出来ないわよ!!」


 あれ?

 四大属性が使えるんじゃなかったっけ??


 火と水と、風と土……あーーー入ってないじゃん!!


 しまった!

 ルナは何でも使えるもんだと勝手に思い込んでいた!


思わず白目を向きそうな俺の横を、ランジェが駆け抜ける。


「ヨースケ。ロングソード壊れたらごめんね」


 そういうとランジェは跳躍しながら思い切り大剣を振りかぶった。

 大剣は前後逆に持っており、前を向いているのは刃ではなく背のほうだ。


 アイアンゴーレムは膝をついて立ち上がろうとしている。


「どっせえぇぇぇぇーぃぃぃっ!!!」


 掛け声と共に、トンカチで釘を叩く様に、大剣の背でロングソードを思いっきり殴りつけるランジェ。


 ズガガンッ!!!


 激しい衝撃音と共に、俺のロングソードはマルボロの左胸に深々と突き刺さったのだった。


 

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