表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほかほか  作者: ねこ侍
第一章
62/193

第50話 城塞都市カサンドラ


「うわーーー。大きいわねーー」


 ルナが半ば呆れた様な顔をして感想を述べた。


 今、俺達の目の前にあるのは、高く巨大な石造りの門だ。


 高さは何十メートルあるんだろうか。

 周りに比較する物が何もないのでよく分からない。


 確かフランスの凱旋門は高さ五十メートルだったかな。

 でも実際に見た事はないから、目の前の門の高さはやっぱりイマイチわからない。


 三十メートル?

 四十メートル?

 五十メートル?

 

 なんでこんなに高くした?

 ひょっとして、巨人でも襲ってくるんじゃ無いだろうな。


 その門にはこれまた巨大な両開きの分厚い木製の扉。

 それらが俺の視界のほぼ全てを覆っていて、圧迫感に押し潰されそうだ。


 しかし、その門が組み込まれている城壁は更に巨大である。

 視界の許す限り、左右に延々と続く城壁は、圧巻の一言だ。


 レーベルを出発して三日後の昼、ようやく俺達は城塞都市「カサンドラ」へと到着した。

 いや、正確には都市へと入る門の前だ。


 カサンドラは城塞の名前にふさわしく、その周りを高く長い城壁に囲まれている。

 東西南北の4か所に取り付けられた出入り門だけが、都市と外界を繋ぐ出入口であり、そこでは都市へと入る人々の検閲が行われている。


 俺達がこれからくぐる南門の横にも検閲所が設けられていて、都市の中へと向かう人々の荷物を、兵士達が手際よくチェックしているのが見える。


 その検閲を待つ人々の列に俺達は並んでいるのだ。

 4~50人程が前にいるので、しばらくは待たなければならないだろう。


「ここは、もともとは魔王の進行を防ぐ砦の一つとして建設されたんだって」


 ただ待っている間も、色々とランジェが説明してくれるので、そんなに退屈ではない。


 それにしてもランジェは驚くほど物知りだ。

 どこでそんなに知識を手に入れているのか、たまに不思議になる。


「最初は本当に小さい砦だったらしいよ」


「へー、それが今やこんなに立派な大都市か」


「ね、ね、後で町の中を見物しようよ」


 ルナは門の内側が気になる様だ。

 さっきからそわそわと落ち着きが無い。


「はいはい、でもまずは宿屋をとってからな」


 カサンドラはハイムの中でも有数の大都市だ。

 買い物する場所も娯楽施設もたくさんあるだろう。


 ルナが興奮するのも解らなくは無い。

 俺だってもちろんあれこれ観光してみたい。


 しかし悲しいかな。

 

 俺のおっさんの身体は、一刻も早くベッドに横になりたいと悲鳴をあげている。

 たった三日間の馬車旅だったが、身体の節々がミシミシと嫌な音を立てているのだ。


「僕はコロッセオに行きたいな」


 少しそわそわしながら、遠慮がちに言うランジェ。


 カサンドラで一番有名なのは、都市の中央部にある闘技施設「コロッセオ」だ。

歴史は古く、もとは兵士の訓練場であったらしいが、今では色々な闘技大会の開催場として世界に名を馳せている。

 毎日、何かしらの大会が行われているらしい。



「いやよー。まずは洋服を見るの」


「えーコロッセオがいいよー」


 こらこら、けんかはやめなさい。


 なんだかなー。

 二人を見ていると、自分が父親になった感じになる。

 ルナがお姉さんでランジェが弟だな。


 でもパパは宿屋で休みたいなー。



 そんな事を考えていると、



「ふざけるなっ!! 俺達を誰だと思っているっ!!」



 いきなり聞こえてきた男の怒鳴り声。


 なんだ?

 声の主は検閲所にいるみたいだ。


「なに? トラブル? やっぱし行列だとこの展開は鉄板よねー」


 ルナが嬉々としながら、ピョンピョンとジャンプして前の様子を探っている。

 俺の知ってる鉄板だと、この後巻き込まれるんだが……。


 検閲所を見ると、立派な全身鎧を来た戦士が四人、検閲をしている兵士達にくってかかっている。


「俺達は【深紅の輝き】だぞ! 持ち物を確認する必要なんざねえ!」


 偉く高圧的な態度だな。

 そいつらは全員が赤い全身鎧に身を包んでいる。

 遠目からでもはっきりとわかるドギツイ赤色。

 パーティー名の由来にもなっているんだろうが、戦場では目立って危ないのでは?


「【深紅の輝き】って言ったら有名な高レベルパーティーだよ。でも本物かなー?」


 ランジェが何か違和感でもあるのか、首をかしげている。


「どっちにしろ迷惑よね。赤いし、ちょっと燃やしてやろうかしら」


「ほんとやめて」


 何で赤いと燃やすんだよ……。

 ここで騒ぎに関与したら間違いなく何らかのフラグが立つであろう。


「さっさと通せっ! 痛い目にあいてぇのかっ!」


 その後も男達はなかなか引き下がろうとしない。

 おかげで行列もなかなか進まない。


 流石に俺もイライラし始めたその時、ルナがみんなに聞こえる様な大声を出した。


「あらあらー! さすが【深紅の輝き】様ね! ご立派なスキルをお持ちだわーっ!」


 みんながルナの方へと一斉に顔を向ける。

 ルナの頭上にはデカデカとスキル一覧が映し出されていた。


 こいつ、やったな!

 他人のスキルを勝手に鑑定するのは流石にマナー違反じゃないか……?

 と思ったのだが、凄く興味があるので覗いてみる。


 どれどれ?


 【語解】LV-

 効果 異なる言語を理解できる


 【詐欺師】LV4

 効果 嘘を付いた際の自身の心理反応、身体反応を抑える


 【逃げ足】LV5

 効果 逃走時に各種補正が入る


 【危険察知】LV3

 効果 危険な状況を察知する




 うわあ……。

 

 なんたる小物臭。

 こいつら間違いなく偽物だろう。


 周りの人達も興味深そうにスキルを眺め、そして口々に騒ぎ始める。


「ひどい……」


「ママー、僕の方が強いよー」


「こんなのが【深紅の輝き】の訳が無い! あいつら偽物だ!」



 すると騒ぎに気づいた、自称【深紅の輝き】一行が俺達の方にやって来た。



「あ、兄貴! 俺のスキルがばれてるでやんす! ど、どうしよう」


 一番背の低い全身鎧の男が、手足をばたばたさせて、一番背の高い全身鎧の男にしがみ付く。

 見ていて可哀想な位に慌てている。

 

 詐欺師のスキルはどうした。

 ああ、嘘は言ってないって事か。


「ちっ! 余計な事しやがったのはてめえらか! ……覚えてろよっ!!」


 兄貴と呼ばれていた男が、お決まりの捨て台詞を吐く。

 

 ここまでは見事に鉄板通りだ。

 となると、次は復讐に来るのだろうか……。


 そして自称【深紅の輝き】一行はその場から逃げるように立ち去っていった。

 


 はい、みなさんー。

 今、何かのフラグが立ちましたよー。



「姉ちゃんいいぞー!」


「カッコいいー!」



 周りからはルナに向けて、賛辞と共にたくさんの拍手が贈られたのであった。



 


 騒ぎが収まり、二十分位してようやく俺達の番が来た。

 荷物を大きな台の上に乗せて、大人しくチェックが終わるのを待つ。


「あんた達、さっきは助かったよ。ありがとう」


 若い男の兵士が俺達の荷物をチェックしつつ、話しかけてきた。


「いいよ。仲間が勝手にした事だし、それにスカッとしたしさ」


 当の本人のルナは、隣の台で女性兵士にチェックを受けている。

 女性には女性がつくみたいだ。


「それより詐欺師とか、あんなスキルもあるんだな。驚いたよ」


 どう考えても戦闘向きでは無さそうだが、ポーカーとか強くなれるかな?


「ああいうトラブルは良くあるんですか」


 もう自分の荷物を返してもらっているランジェが兵士に尋ねる。

 早い。

 まあ、怪しいものなんて何も持ってないしな。


「ああ。カサンドラは流通の拠点でもあるからな。色々持ち込みたがる奴は多いのさ」


「たとえば?」


 兵士は手早く俺の荷物を確認しながら、質問に答えてくれた。


「麻薬とか、呪われた道具とか……馬車に奴隷を隠してこっそりとかな。まあどれもろくなもんじゃねえ。はい、あんたのもOKだ」


 本当にろくなもんじゃないな……。

 俺は兵士からズックを受け取って背中に背負う。


「あー、あんた達は冒険者か、目的は一体なんだい?」


「アンデッド退治です」


 まさか魔王に説教しに行くとは言えない。


「そうか、それは助かる。なにぶん人手不足でな。たくさん退治してくれよ」


「こっちもOKです」


 ルナの荷物をチェックしていた女性の兵士が声を掛ける。

 リュックが巨大なだけあって、俺達よりは少し時間がかかった様だ。

 そのリュックを軽々と背負うルナ。

 

「了解。何も問題無い様だな。行っていいよ」


 男の兵士はカサンドラへと続く通路を指し示す。

 ここを抜ければいよいよカサンドラ市内だ。


「あとギルドなら通路を抜けた広場のすぐ横にある。宿屋や武器屋もその周辺に何件もあるから、必要なら利用すると良い」


 おお便利。

 一ヶ所に集まってるのか。


 武器屋は必要無いけど、やっぱりギルドには顔を出した方が良いかな?

 ライアーデビルの報酬もまだもらってないし、冒険者ランクもあげたい。


 まあ、まずは宿の確保が優先だ。


「こないだまでH-1の地区大会があって、選手や観光客で宿屋は連日満員だったが、今は空いているだろうよ」


「そうなんですか、それは助かります」


 ランジェが大剣を背負う。

 もう出発の準備は大丈夫そうだ。


「そうだ、魔王の城がこの辺にあるって聞いたんだけど」


 不信がられない様にさらっと聞いてみる。


「ん? ああ、魔王アリスの城か? それなら、北門から歩いて2時間位だな。言っておくが今は馬車は出てないぞ。アンデッドが多くて危険だからな」


「へ~ありがとう」


 あら。魔王って意外と近くに住んでいるんだな。

 城に向かう途中で野宿になる事を一番懸念していたのだが、それなら日帰りでも問題ない。

 アンデッドに怯えながら寝るなんて心臓に悪すぎるよ。



「それじゃアンデッド退治、頑張ってくれ」


 

 手を振る検閲所の兵士達に別れを告げ、俺達はカサンドラへ足を踏み入れるのだった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ