第44話 負けちゃうの不思議よね
「お待たせ致しました」
そう言いながら、受付嬢が丸い鑑定機を俺達の座っているテーブルまで持ってきてくれた。
レーベルの鑑定機は黒い色をしていたが、ここの鑑定機はうっすらとしたピンク色をしている。
受付嬢の好みだろうか?
「どなたから鑑定致しますか?」
「じゃー、俺からお願いします」
まずは俺が名乗りをあげた。
いつもオチみたいに使われるからな。
「それでは……ムムッ」と受付嬢が集中を始める。
程なくして、カタカタカタ……と鑑定機からスキルが印字された紙が出てくる。
俺達にはもう見慣れた光景だが、ルナには衝撃的だったらしい。
固唾を飲んでその光景を見守っている。
「凄いわね。これがあれば【鑑定】のスキル要らないじゃない」
ルナは鑑定機自体が鑑定していると勘違いしているみたいだ。
まあ名前だけ聞けばそうだよな。
「違う違う。鑑定は受付のお姉さんがやっていて、これはその鑑定結果を印字してるだけだぞ。だから正しくは鑑定結果印字装置とかになるのかな」
「あ、そういう事かぁ。でもそれも凄いわね」
ルナの誤解が解けたところで、さてさて俺の鑑定結果はと……。
ヨースケ LV35
-スキル―
【ふむふむ】LV-
効果 異なる言語を理解、使用出来る。
【ぽたぽた】LV1
効果 液体(15g以内)を操る力
【ころころ】LV6(↑2)
効果 球体(直径5cm以内)を操る力
【ぱくぱく】LV2
効果 上限を越えて少しだけ食べる事が出来る。
【ほかほか】LV52
効果 芋(全般)に素早く熱が通る。
「これは……初めて見るスキルばかりですね」
受付嬢が興味津々で俺のスキルを見ている。
この世界にはプライバシーと言うものは基本的に無い。
「この【ほかほか】って凄いんですよっ。あのヒュドラを一撃で瀕死に追い込んで……」
ランジェが鼻息荒く俺のスキルの説明を始める。
やめて、あんまり説明しないであげて。
恥ずかしいから。
「げっ。冒険者レベル凄い上がってるじゃないのー。これはうかうかしてられないわ」
ふふふ。
ルナ君、抜かれる時って言うのは得てして気づかないものなのだよ。
と、言いながらも自分でも驚いていた。
あんまし実感は無いんだよな。
やっぱしライアーデーモン戦が反映されてるのかな?
まー俺もちょっとは活躍したしな。
うはははは。
てか冒険者レベルも印字されるんだっけ?
そして次は、まだ俺のスキルの説明をしているランジェの番である。
そろそろやめなさい。
ランジェ LV258
-スキル―
【英雄】LV8
効果 全ての能力値が上がる
【魔法剣士】LV-
効果 剣士、魔導士両方のスキルを覚える
【語解】LV-
効果 異なる言語を理解できる
【魔法】LV10
効果 火属性の魔法を覚える
・ファイアボール LV7
・フレイムウォール LV5
【魔法】LV8
効果 聖属性の魔法を覚える
・ヒール LV5
・浄化 LV3
・キュア LV3
【切れ味】LV13(↑1)
効果 武器の切れ味が鋭くなる
【瞬歩】LV9
効果 素早く移動ができる
「あれ? あの剣が燃えるやつは?」
ルナが紙の裏をペラリとめくって見ている。
裏面があると思ったらしい。
「あれは剣技に魔法をミックスしたものだからね。スキルとはちょっと違うかな」
技術は鑑定できないのか。
確かに俺のペレットクロスボウと【コロコロ】の組み合わせも技と言えば技だよな。でも当然鑑定結果には出てこない。
「へー。鑑定には表示されないのね。それってある意味有利よね」
「どう言う意味だ?」
どう言う意味だ?
思った事がそのまんま言葉に出た。
「だって、もし敵に鑑定持ってる奴がいたら、こちらの手の内がある程度バレちゃうじゃない? だから奥の手ってやつね」
「なるほどなー。でもそう考えたら魔法だけ丸わかりって考えもんだな」
「あら。魔法だってミックスはバレなくてよ、おほほほ」
口に手をあて、わざとらしく笑うルナ。
何か絶対に色々企んでる顔だ。
こいつは本当に味方で良かった。
「だから鑑定結果を過信しちゃ駄目って事ね。でもヨースケのスキルを見たら、敵は一瞬パニクるでしょうねー」
ほっとけい。
じゃ最後はルナだ。
ルナ LV53
-スキル―
【魔導士(極)】LV2(↑1)
効果 四大属性の魔法を習得する
【語解】LV-
効果 異なる言語を理解できる
【火魔法】LV15
効果 火属性の魔法を覚える
・ファイアボール LV10
・フレイムウォール LV8
・レッドバースト LV5
【水魔法】LV15
効果 水属性の魔法を覚える
・アクアボール LV10(↑1)
・ウォーターウォール LV5
・アクアミスト LV3
【土魔法】LV5
効果 土属性の魔法を覚える
・ロックバレット LV3
・ロックウォール LV3
・アースロック LV4(↑2)
【風魔法】LV5
効果 風属性の魔法を覚える
・ウィンドカッター LV4(↑1)
・ウィンドウォール LV3
・スピアウィンド LV2
【スキル鑑定】LV-
効果 対象者のスキルの鑑定が出来る
「あ! あなたも【鑑定】のスキルをお持ちなんですね! それにすごい魔法……」
「えへへ。本当は【不老不死】とか【時間操作】とかチートスキルが欲しかったんだけどねー」
「それって大抵悪役が持つスキルだよな」
「それでも悪役って負けちゃうの不思議よね。所詮は「役」って事かしら。役じゃなくて本物にならなくちゃね」
「悪役」から「役」を取ったら「悪」なんですけど……。
「ねーねー。そんな事より、スキルの横の↑ってどういう仕組みで判断しているのかしらね? 【シジュール】ではそんな表記は無かったわよ」
「え?」
「昨日ヨースケのスキルを鑑定した時に、【ころころ】LV4(↑1)って出たの覚えてる?」
「ああ……。確かそうだったな」
実はあんまり覚えてなかったが、そうだった様な……。
よくそんな事覚えてるな……。
「で、今日の鑑定結果はこうよ」
ルナは俺の鑑定結果を指差す。
そこには、【ころころ】LV6(↑2)と印字されている。
「あたしが昨日鑑定しなかったら、【ころころ】LV6(↑3)になっていたのかしら?」
「多分そうじゃないか? ルナの前に鑑定した時は確かLV3だったからな」
「それって不思議じゃない?」
そういうルナの顔を、逆に不思議そうに見つめる俺達。
「あれ? 違和感覚えるのってあたしだけ……? 失礼致しました。えへへ」
うーん。すまない。
俺の理解力では何が不思議なのかが分からない。
そもそもLVだとか魔法だとかスキルだとかが不思議なのだ。
しかしこうして三人の鑑定結果を見ると、みんなちゃんと成長してるな。
やはり低いレベルの方が上がりやすいみたいだ。
「ありがとうございました。じゃそろそろ行こうか」
ランジェがそう言って席を立つ。
そうだな。
ちょっと寄るだけの予定だったのに随分と長居してしまった。
俺とルナも席を立ち受付嬢にお礼を述べる。
「またのお越しをお待ちしております」
受付嬢に見送られ、俺達はギルドを後にするのだった。




