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ほかほか  作者: ねこ侍
第一章
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第43話 家と宝石と美少年と


 ライアーデーモンを退治し、無事にクサリバナナを手に入れた俺達三人はスピネルの町へと戻ってきた。


 クサリバナナは三メートル程の高さに実を付けており、俺はどうやって採ろうかと一瞬戸惑ったのだが、なんて事はない。

 ランジェが大剣を頭上に掲げ、その先っちょで器用に斬りおとしてくれた。


 今俺が背負っているズックには、そのクサリバナナがパンパンに詰められている。

 ダズにどれくらい食べさせれば良いかが分からないので、持てるだけ持ってきたのだ。

 後で足りないとわかって、また森まで採りにいくのはごめんなさいだ。

 

 「ね。一本食べてみようよ」


 「絶対にあかん」


 ルナはクサリバナナの味が気になるらしい。


 「えー。いっぱいあるんだからいいじゃない」


 お前は食用じゃないバナナの恐ろしさを知らないから……。


 「食べても美味しくないと思うよ。美味しかったら流通してるはずだしね。誰も食べないのには、それなりの理由があるんだと思うよ」


 ランジェは優しく諭す様にダメ出しする。

 

 確かに美味しくは無いんだろうなー。

 そんなバナナをはたしてダズが大人しく食べてくれるかどうかだ。

 

 いやまて、そもそも経口摂取で良いのだろうか……?

 大事なところを何も聞いてこなかったな。

  

 ま、そこはナージャさんが確認してくれているだろう。 


 「よいしょっと」

 

 俺は少し肩からずれてきた背中のズックを背負い直す。

 かなりの重量があり、非常に腰によろしくない。

 

「ふぅ。少し暗くなってきたし、さっさと宿屋に戻ろうぜ」


 今は夕方くらいだろうか。

 もう陽は随分と傾きはじめていて、辺りに長く濃い影を落としている。

 足早に家路へと急ぐ人々と何度もすれ違う。


「賛成ー。お腹もペコペコだし、シャワーも浴びたいわ」


 すぐに賛成するルナ。

 言われて俺も結構腹が減っている事に気づかされる。


 今日、口にしたのは森へ出かける前に少しパンをかじった程度だ。

 冒険前にはあまりたくさん食べないのが基本だ。

 食べたら出したくなるからな。


「あ、僕はギルドに寄ってから行くよ。悪魔が現れた時は至急、ギルドに報告する義務があるんだ。みんなは先に宿屋に戻ってていいよ」


 先を歩くランジェが振り返る。

 

 ふむふむ。

 そんな義務があるんだ。

 

 だけど、ランジェ一人で行くなんてのはもちろん却下だ。

 一番疲れているはずのランジェに、そんな事をさせるわけにはいかない。


「どうせ途中でギルドの前を通るんだ。みんなで行こうぜ」


 ギルドは宿屋の五軒隣に建っているので、必然的にギルドの前を通る事になる。


 それに今夜の宿は、今朝出掛ける前に既に予約してある。

 別に慌てて宿屋へ向かわなくても、部屋が全て埋まっていて野宿……なんて心配は不要だ。


 そもそも俺達にも拠点となる家があればなー。

 もしも、いつか世界に名を馳せるパーティーになったら、レーベルやスピネルに拠点を構えるのも悪くない。


 ランジェなら十分可能性がありそうだ。

 大剣を背中に背負い、先を歩くランジェの背中を見ながらそんな事をふと考える。

 俺も置いていかれない様に頑張らなきゃな。


 そんな俺の決意を余所に、気付くと横でルナがぶつぶつ言っている。


「この辺に家でも買って……宝石と……美少年と……うふふふ」



 ……さすがだ。


 発想が俺と近いと言うか、俺より腐ってる。

 こいつもなんだかんだ大物になりそうな予感がするな。


 そうこうしている内に俺達はもうギルドの前に到着していた。

 

「じゃ、早いとこ報告を済ませようか」

 

 そして俺達はギルドの扉を開けるのだった。



――スピネルギルド――



 ギルドに入った俺達は、ライアーデーモン退治の報告を行う為、真っ直ぐに受付カウンターへと向かう。

 受付に立っているのは昨日と同じ、ワニ型のリザードガールだ。


 ライアーデーモンの報告を受けた受付嬢は、それはもう驚いていた。

 悪魔が出現すると言うのは、それほど危険だという事なんだろう。


「ここ数年、この付近で悪魔の発見報告は無かったのですが……ともかくご苦労様でした」


 受付嬢は丁寧に頭を下げ、俺達に労いの言葉を掛けてくれた。


「場所はこの辺りです。開けた場所で近くに大岩があります」


 ランジェがギルドカードのMAPで場所を指し示す。

 その場所を熱心に確認する受付嬢。


「あと、照合できるかはわかりませんが、一応これを」


 ランジェが腰袋から黒い物体を二つ取り出し、カウンターに置いた。


 「きゃっ」


 ルナが小さい悲鳴をあげる。


 おや、なにかしら?


 目を凝らしてカウンターに置かれた物体を良く見ると、どうやらそれはライアーデーモンの両耳の様だ。

 やだ、この子ったらいつの間に。


「ありがとうございます。退治の証明にも使用致しますから、預からせて頂きますね」


 カウンターの下から木箱を取り出し、手慣れた手つきでライアーデーモンの耳を収めていく。

 そして、「少しお待ちを」と言って木箱を大事そうに背後の部屋へ持っていった。


 しばらくすると、「お待たせ致しました」と受付嬢が戻ってきた。

 その手元には小さい袋が二つ握られている。


「ランジェさん達には盗賊退治と、ミノタウロス退治の報奨金も出てますよ」


「あっ」


 顔を見合わせる俺とランジェ。


 そう言えばそんな事あったな。

 完全に忘れてました。

 

 盗賊退治はペクトロ村からレーベルへ行く途中、ミノタウロス退治はレーベルとスピネルの間の宿営地での出来事だ。


「他の冒険者の方々との折半ですから、そんなに多くの報奨金は支払われませんが……」


 受付嬢が申し訳なさそうに頭を下げる。


 盗賊退治もミノタウロス退治も、誰かの依頼をこなした訳では無い。だが、危険性がある案件を解決したとギルドが認めた場合には、ギルドから少額ではあるが報酬が支払われる。


 複数の冒険者で協力して事にあたったのであれば、その分報酬は分けられ更に少なくなる。


 しかし、それでも嬉しいものだ。


 おそらく今回のライアーデーモンも調査が終わり、退治の裏付けが取れれば報酬が出るだろう。

 ヤンキースライムや首切り鳥は多分難しいかな?


「ではお受け取りください。そしてサインをこちらに」


「ありがとうございます~。冒険者として当然の事をした迄ですから~」


 ルナがニコニコしながら受付嬢の手から報酬の入った袋を二つ受けとる。


「こらこら。お前は何もしてないだろ」


「あら。家計を預かるのは、か弱い女性である私の役目ですわ」


 うーん。

 お前はこの世界に存在すらしてなかったくせに。


「じゃお金の管理はルナにお願いしようかな」


 ランジェが受け取りのサインをしながら、ルナに軽く聞いてみる。


 そんなに安易に任せて大丈夫か。

 そいつはさっき「宝石と……美少年と……」って言いながら歩いてた奴だぞ。


 ただ、実のところ管理を誰かにやってもらいたいってのはある。

 今はランジェが管理をしているが、お金って物理的には邪魔だし、結構重いのだ。


「任せといてよ。まだちょっと物価とかわからないけど、すぐに覚えるわ」


 片手でOKサインを出しながら二つの袋を大事そうに懐に入れるルナ。

 ローブの内側にポケットでもあるのか、袋は落ちてこない。


 よくよく見れば、ルナの純白だったローブは今日一日で随分と汚れてしまっている。

 ところどころ小さい穴も空いている様だ。

 

 やっぱりちゃんとした冒険者用のローブとかが必要だな。

 ルナの衣服はまだ転移した時のまま、平たく言えばその辺の町娘と変わらないのだ。


 俺は正直感心をする。

 よくぞまあ、この装備であの激戦を潜り抜けもんだ。

 足なんかひも付きサンダルだ。


 よし。

 レーベルに着いたら、ルナの装備を整えよう。

 着替えや生活用品等も必要だろうし。


 と、受け取りのサインを確認をし終えた受付嬢が俺達に話しかけて来た。


「それでは次は鑑定ですね。鑑定機を持って参りますから、少しお待ちください」


 止める間も無く、受付嬢はそう言って背後の部屋にササッと行ってしまった。


「あらら、どーする?」


 顔を見合わせる俺達三人。

 ルナが鑑定出来る為、ライアーデーモン退治の報告だけのつもりだったのだ。


「せっかくだから鑑定してもらいましょうよ。どんなのか興味あるし」


 そうか、ルナはギルドで鑑定してもらうのは初だな。


「そうだな。そうするか」


 ランジェも頷いている。


 そして俺達は近くのテーブルにて、受付嬢が戻って来るのを座って待つのであった。









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