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ほかほか  作者: ねこ侍
第一章
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第40話 スピネルの森3


 魔物は俺達の事を観察する様に、その巨大な瞳でじっと見ている。


 時折、


「キシシッ」


 と、甲高い声で笑い声とも取れる鳴き声をあげている。

 何とも気味の悪い声だ。


 だが、襲ってくる様子は今のところ無さそうだ。


「あーパンティー見たい」


 横にいるランジェが呟く。



 耳を疑う俺。

 あらやだ、この子独り言かしら。


「ルナのか?」


 そっと俺が尋ねる。

 それを聞いて、ハッとした顔をするランジェ。


 そして俺に向かってお口チャックのジェスチャーをする。


 んーと。


 今聞いた事は誰にも言わないで、かな?


 OK、OK。


 指でランジェにサインをする。

 誰にでもそういう時期はあるものだ。


 と、突然ルナに後頭部を殴られた。



「痛っ!」



 ルナは驚いた様な顔をしている。

 驚いたのはこっちだよ!


「何するんだよっ」


 そう言いながら、改めてルナを見てギョッとする。


 ルナの右手には巨大なファイアーボールが浮かんでいる。



「あたし綺麗?」



 ファイアーボールの灯りに下から照らされたルナは、さながら怪談師の様だ。


 怖っ!!

 なにする気だ!?


「えーと……とても綺麗だと思いますよ!」


 大きく後退りをし、ルナから距離をとりながら、とりあえず誉めてみる。すると次の質問がルナから飛び出す。 


「じゃ、ご飯とライスどっちにする?」



 何その質問!?

 ルナはファイアーボールを手に、じりじりと近寄ってくる。


 何か違いがあるのか?

 正直どっちでもいいよっ。


 しかしどちらかを選ばなければいけない雰囲気だ。


「えーじゃライスでっ!」


 言うや否やルナがすぐさまファイアーボールを撃ってきた。


「ぎゃー!」


 転がりながら間一髪で回避をする俺。

 正解はごはんかよっ。


 ファイアーボールは背後の樹に着弾すると、小さく破裂し、辺りの植物を巻き込み燃え上がっている。


 その様子を気にしながらも、次のファイアーボールを発現させながら更に近寄ってくるルナ。



「パッキャオって誰よ!」



「ボクシングの!? 他は知りませんっ!」



 ルナは困惑した表情をしながらも、真っ赤に燃え上がるファイアーボールを俺に向かって放ってきた。


 ファイアーボールは、小さい炎を撒き散らしながら一直線に向かってくる。


 咄嗟に回避を試みる。

 だが、先程より距離が近かった分、わずかに間に合いそうに無い。


 当たる!

 即座に回避を中断し不安定な姿で右腕の盾を構える。

 もちろん身体を覆い隠せる大きさでは無いが、多少でもダメージを軽減できれば……。


 そう思った瞬間、ランジェが俺の前に立ち塞がり、大剣を一振りした。

 凄まじい風圧により、ルナの放ったファイアーボールがかき消える。


「ありがとう。助かったよ」


 俺がそう言うと、再度お口チャックのジェスチャーをする。


 やばい。

 訳がわからない。


 ルナはというと、ウォーターボールを発動させ燃え上がる木々の消火活動を始めている。俺への攻撃は諦めてくれたらしい。


「おい!一体どうなってるんだ!?」


「黙れ!この、うすらハゲがっ!」


 ランジェが悲しそうな顔をしながら俺に向かって叫ぶ。


 でもきっと今の俺は、ランジェよりも悲しそうな顔をしているだろう。


 するとランジェが、すっと大剣を俺に向かって差し出してきた。


「えっ?」


 咄嗟に条件反射で両腕が出る。

 その上にそっと大剣を置くランジェ。


 その瞬間、両腕に信じられない重みが加わる。落とさない様に渾身の力を込めるも、思わず片ひざを付いてしまう。


 持ってるだけでも精一杯だ。

 あいつこんなの振り回してたのかよ。


 ランジェは俺に大剣を預けると、腰のロングソードを抜き、魔物をキッと睨み付けた。


 魔物は頭上二十メートル程の高さの枝に逆さまにぶら下がっている。こちらをじっと見ていて動く様子は無い。


 ランジェは少し助走をつけると、ヤリ投げの要領で、手に持ったロングソードを魔物目掛けて思いっきりぶん投げた。


 踏み込み時の衝撃で地面が深くえぐれている。


 ぶんっ!!


 土埃で視界が茶色く染まる中、ロングソードが空気を切り裂く音が聞こえてきた。


 ロングソードは弾丸の様に一直線に魔物目掛けて突き進む。


 魔物は慌てて避けようとするが、逆さまの不安定な状態の為か、思ったような動きが取れないでいる。


 当たるか!?


 しかし間一髪、魔物は捕まっていた枝から尻尾を外し、落下する事により、ロングソードを避けた。


 惜しいっ。

 ギリギリ避けやがった。


 魔物は空中で二、三回身体を回転させ、地上に着地をした。

 ふわっとした動きで重力をあまり感じなかった。落下によるダメージは全く無さそうだ。


 俺は地上に降りてきた魔物を、改めて魔物を観察する。


 さっきまでは距離が遠くてわからなかったが、体長は思ったよりもデカい。

 二メートル半はありそうだ。


 口は耳元まで裂け、長い舌がだらりとはみ出している。

 手には鉤爪の様な爪が生えており、魔物が指を動かす度にカチャカチャと硬質な音を立てる。


 注意すべきはあの爪か?

 身体能力も高そうだ。接近戦は避けるべきだろう。

 俺はゆっくりと魔物から距離をとる。


 と、


「ぎぃぅぇぇぇぇーーーっ!!」


 地上に降ろされた魔物は、一つ大きく息を吸い込むと身の毛がよだつような鳴き声をあげた。



 俺はあまりの不気味さに背筋が寒くなるのを感じた。


 こいつ……普通の魔物じゃないのか?


 背中を汗が一筋流れる。


 ランジェが戻ってきて、何も言わずに俺から大剣を受け取る。


 魔物は威嚇するように腕を大きくあげながら、俺たちに包囲されない様に小さく跳躍をする様に移動をしている。

 もはや完全に俺達を敵と見なしているみたいだ。


 ルナは既に消火活動を終えて、身構えている。


 ランジェも魔物に向かって真っ直ぐに大剣を構えると、魔物に向かって駆け出していった。


 駆ける勢いそのままに魔物へ向かって大剣を振りおろす。

 が、大きく横へ跳躍しランジェの初撃をかわす魔物。


 ランジェはすぐさま魔物の方へ身体を向け、休む事無く攻撃を繰り出している。

 初撃の様な大振りではなく、速度重視の当てる為の太刀振りである。


 だが、魔物は器用に爪でランジェの攻撃を受け流している。



 援護するか!?俺は悩む。

 魔物とランジェは激しく切り結んでいて、一時として同じ場所に留まっていない。

 下手をすればランジェに当ててしまうかもしれない。


 と、小さい茶色い物体が高速で、俺の首元を目掛けて飛んできた。


 なんだ!?


 咄嗟に盾で弾く。


 地面にはスズメに似た鳥が翼を広げたままピクピクしている。

 おそらく盾に衝突して、脳震盪を起こしたのだろう。


 その翼の前方は刃の様になっている。


 こいつ、首切り鳥か!?


 どうやら騒ぎすぎて刺激をしてしまったらしい。

 いや、ひょっとしたらあの魔物が呼んだのかもしれないな。


 上空には数羽の首切り鳥が集まってきている。

 小さすぎて俺のペレットクロスボウではおそらく当てられないだろう。

 さっきの様に襲い掛かってきたところを盾で弾くか、ロングソードで対応するかだな。


 俺が上空に気をとられていると、不意に横から強い衝撃を受けた。

 俺は一メートル程飛ばされ、地面に倒れ込む。


「いててて」


 ルナが駆け寄り、ゴメンとジェスチャーしながら、身体を引き起こしてくれる。

 どうやらルナに体当たりをされたようだ。


 先程まで俺が立っていた場所を見ると、見覚えのあるツタがいくつもウネウネとうごめいている。


 げっ! 続いてマッドプランターご登場か?


 案の定、ツタの先をたどっていくと、緑色の魔物がガサガサと茂みから出てきた。


 しかもその数、三体!!。


 ランジェは少し距離の離れた場所で猿の魔物と戦っている。

 押してはいるようだが、すぐにはこちらには来れないだろう。


 俺は冷や汗が流れ落ちるのを感じた。


 おいおい……。

 これって、結構ヤバイんじゃないのか!?










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