第28話 ころころ
――試用場――
「すげー広いな」
地下に降りた俺達はその広さに圧倒されていた。
「ほほほ。当店自慢の試用場です。端から端まで二十五メートルございます」
試用場は縦長の長方形の造りだ。そこに左右を分ける様に真っ直ぐ仕切りが立ててある。上から見ると、細長い長方形が二つ出来上がるイメージだ。
右側は近接武器専用ゾーンとなっており、木で出来た人形や、巻き藁が置いてある。
左側が中・遠距離武器専用ゾーンとなっていて、こちらには丸い的が五メートル毎にいくつも置いてある。
俺はペレットクロスボウだから左側だな。
どれ。早速試し撃ちさせてもらおうか。
カチャカチャと、ペレットクロスボウを左腕にベルトで装着する。が、これが意外と難しい。装着作業には右手しか使えない上に、その右腕には小さいながらも盾を装備している。その盾がカツンカツンとあたり、なかなかスムーズにペレットクロスボウを装着できない。これは慣れるまではしばらく苦労しそうである。
既にペレットクロスボウには弾を十発込めてある。鉛で出来た弾はそれだけで四キロあるのだ。あーでもない、こーでもないと、装着を終える頃には、両腕が鉛の様に重くなっていた……。
装着してから、弾は後で込めれば良かった事に気が付いた。がっくし。
最後に、トリガーが人差し指の先、すぐ引ける位置に来るように細かい調整を行う。
はぁはぁはぁ……まぁこんなもんかな?
まずは試しに撃ってみようかと、左腕を前に真っ直ぐに突き出し、胸の位置まで上げる。
プルプルプルッ。ぬはぁ。筋肉が悲鳴をあげている。これは確実に筋肉痛になるな。
プルプルしながら、息を荒げクロスボウを構える俺。
傍から見たら完全にアブナイやつだ。
「冒険者レベルが上がれば、筋力なんかのステータスも上がっていくから大丈夫だよ」
フレーフレーと、ランジェが励ましてくれる。うう、ええ奴や。
ペレットクロスボウにはサイトスコープも取り付けられていた。
サイトスコープを覗き、とりあえず十メートル地点の的に照準を合わせる。
では、いざ……。
発射っ!
トリガーを引くと、少しの反動と共に一発の弾丸が発射された。弾はわずかに放物線を描きながら、狙っていた十メートル地点にある的を砕いた。あ……当たった……。
「お見事ですな」
「やるー」
まさか当たるとは思わなかった。
自慢じゃないが、俺は屋台の射的では一度も景品を落とした事が無い。
サイトスコープってすげぇな。
そして成程、十メートル程度なら普通に撃っても十分な威力がありそうだ。
よしよし。では、いよいよ【ころころ】との相性実験だ。
次も十メートル地点の的に照準を合わせる。
まずは右へ。一丁やってみますか。
……発射っ!
発射された弾に意識を集中……そしてイメージで右へ向かって真横から力を加える。
ぐりんっ
弾は的に当たる寸前に、急激に右へ曲がり、右側の近接武器専用ゾーンとの仕切り板に当たって落ちた。
!!
うぉぉぉ!!出来たーーーーーっ!
こいつはやべぇ。 想像以上の変化だ。
おらワクワクしてきたぞ。
次は上だな! いけっ!
俺はすぐに次弾を発射する。
発射された弾は、狙い通りに的へ進んでいく。そして的の直前でロケットの様に、真上に向かってぐんぐん進み、天井に当たって落ちてきた。
次は下っ!
次の弾は的の直前で、すとんと真下に軌道を変え、地面にめり込んだ。
…………。
ふはは。
ふはははは。
ふぁーはっはっはっ!!
どこのどいつだー。ダンゴムシにしか使えないといったのは!
「あうあうあう……」フォルダーは驚きのあまり言葉にならない声を出している。
お前はオットセイか。
「……」
ランジェも大きな目をパチクリさせている、目の前で起こっている事象に理解が付いていかない様だ。
では最後に、弾を加速させられるかの実験だ。
これは発射した弾を、後ろから押して加速させるイメージだ。
さぁやってみるか。
狙いは20メートル地点にある的だ。
さっきまで狙っていた的よりも距離が倍となるが、俺の想像通りなら、飛距離もダメージも上がるはずだ。問題無い。
サイトスコープを覗き照準を定める。
よし……いけっ!!
トリガーを引き、弾を発射する。
進めっ! 弾が加速するさまを強くイメージする。
ギュインッ!
イメージ通り加速をする弾。
もういっちょ!!
ギュギュインッ!!
弾が更に加速する。
しかし的まではまだ少し距離がありそうだ。
弾は既に視認できていないが、もう一段階イケるか!?
いっけぇーーー!!
ギュイギュインッ!!!
三段階の加速をした弾は、放物線を描くこと無く直線の軌道を描く。
そして二十メートル地点の的を木っ端微塵に砕くと、後ろの壁にめり込んで止まった。
ぱちぱちぱち。ブラボー。
想像以上の結果だな。満足満足、世は満足じゃ。
元の世界にもし戻ったら、パチプロでは無くて野球選手か卓球選手になるか。
おそらくどんな選手でも俺の球を打ち返す事は出来ないであろう。
よーし、みんな戻っておいで~。
発射した四発の弾丸は、ころころと転がって俺の足元まで戻ってきた。
よしよし可愛いやつらよ。弾は視認出来ていなくても、認識さえ出来ていれば、ある程度は操作出来るみたいだ。これで弾を回収する手間も省けるし、紛失する心配も減る。ペレットクロスボウを始めとする遠距離武器系統の一番の敵は、弾切れだと俺は思う。
ふと振り向くと、フォルダーは地面に座り込んで唖然とした顔をこちらに向けている。
まだ目の前で起こった事を信じられずにいる。
「ヨースケッ! すごいよ!! こんなにスキルと相性が良いだなんて!!」
ランジェは俺が何をしていたのか気づいた様だ。
興奮しているのか、ランジェの頬は少し紅潮している。
俺はランジェのところまで歩いていき、「いぇーい」と片手をあげる。
ランジェも「いぇーい」と片手をあげ、パシンッ! と、少し強めのハイタッチを俺達は交わした。
うん。とりあえず操作のコツは掴んだ。
後は練習あるのみだな。
そして、よろよろと立ち上がるフォルダーを連れて、試用場を後にする三人。
こうしてペレットクロスボウと【ころころ】の相性実験は大成功を迎えたのだった。




