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ほかほか  作者: ねこ侍
第一章
31/193

第25話 シバキますよ~

「完全に自業自得ね」


 ナージャは自分の髪の毛をくしゃっと掴みながら、ダズをちらりと見た。

 ダズは床に、気をつけ!の姿勢で、すやすやと寝ている。

指の先までまっすぐだ。寝相良すぎだろ……。


「はぁ。どうしたもんかしらね」と言いながら、煙草に火をつけるナージャ。

 テーブルの上の灰皿はもう一杯だ。ナージャのストレスがうかがえる。


「幻覚バナナの症状を治すには、スピネルの森に自生しているクサリバナナが有効だと思われます。」と植物研究所の男が超重要事項をボソッと言った。


「そうなの?」とナージャが食い気味に反応する。


「僕、そのバナナ知ってるよ。でもスピネルの森だとレーベルの随分南だね。」

 うーんと言いながらランジェが腕を組む。


 クサリバナナは食用ではない為、一般的には流通していないそうだ。

 

 え。……そんなもん食べさせて大丈夫なの?

 それを食べて別の変な症状が出て、それを治す為にまた違うバナナを探しに行く……なんてことになるんじゃないのだろうか。無限バナナ地獄突入である。


「植物研究所には置いてないの?」とランジェが尋ねる。


「はい。最近効果が判明したものですから、余剰在庫がありません……。至急取り寄せているのですが、到着は一か月後になります。」


 男は大きな両眼をきょろきょろさせながら、申し訳なさそうにそう言った。


「じゃ決まりだ。直接取りに行った方が早いね。まずスピネルの町まで往復四日、その町のそばにスピネルの森はあるから、バナナ探しに一日かかっても、全部で五日で済むね。」


 ランジェは行ったことがある様だ。すらすらと工程を計算してくれた。


 まぁこのままダズを放ってはおけない。なにしろ俺の命の恩人なのだ。ここで恩を返さなくてどうする。


「俺達がそのバナナ取りに行きますよ。な、ランジェ」


「もちろん。そのつもりだよ」と親指を立てて答えるランジェ。


「本当!?助かるわ。ありがとう……」

 ナージャは口に手をあてて、驚いた様子でお礼を述べる。


「じゃ今日はここに泊まらせてもらって、明日ギルドに行ったり、武具工房で装備を整えてから出発しようか。」


「そうだな。何を買うか後で打ち合わせしようぜ」


 俺達がそう会話しているとナージャがすっと近寄ってきた。


「あなたたち。本当にありがとう。よろしくお願いします。」とナージャが深々と頭を下げる。

 長い綺麗な黒髪は床に垂れ落ちているが、気にする様子は無い。


「あなたもごめんなさいね」と植物研究所の男にも頭を下げるナージャ。


「いえいえ。じゃ私はこれで、植物研究所には状況を報告しておきますので、何かわかったらまた来ます。」


 そういって男は帰って行った。


「じゃ俺達もそろそろ休ませてもらいます」

 

 俺はナージャにそう告げ、ランジェと一緒に二階へと上がった。


 トントントントンと階段を上る音が聞こえる。


 ナージャは、二人が二階に上がるのを見送ると、奥の部屋からシーツを持ってきた。


 「ダズ風邪ひくわよ……早くもとに戻ってね」


 そう言って、シーツをそっと寝ているダズにかけた。



「ごめんなさいね。本当はあたしが行くべきなんだけど、ダズを一人には出来ないから……」


「気にしないで。じゃ行ってきまーす」


 大きく手を振るランジェ。


 次の日の朝、俺達は元気よく酒場を出発した。

 まだ時間が早いのか噴水広場には露店の姿は無く閑散としている。


 まずはギルドだな。装備を買い揃える前に、まずは己の現状を知っておくべきだろう。

 ひょっとしたら新しいスキルとか手に入れてるかも知れないしさ。


 俺は密かに期待を抱いていた。


 ランジェの持つ【魔法剣士】のスキルはこの世界に来てから取得したという。

 たぶんレアスキルだ。それはつまり転移や転生時だけではなく、いつでもレアスキルが入る可能性はあるって事だよな。間違っちゃ……いないよな?


 転移者たる者、使えるレアスキルの一つや二つ持っていなければな。


 うふふ。


 あはははは。


 そんな事を考えている内にギルドが見えてきた。

 ギルドの正面に備え付けられたドアの前に立つと、ウィンと自動で扉が開く。


 そして俺は意気揚々とギルドの中へ入るのだった。



「あれ?太った?」


 しまった。つい口に出てしまった。


 ギルドの中に入るとミミがテーブルの拭き掃除をしていた。

 久しぶりに見たミミは、上半身は変わらなく見えたが、下半身が前より一周り大きく見えたのだ。


「シバキますよ~。寒くなってきたから防寒仕様なんです~」


 一瞬鋭い殺気を放つミミ。

 おぉ。絶対に女性に言ってはならないセリフを言ってしまった。気を付けねば。


「で、今日は何の御用ですか~」とミミは受付に戻っていく。


 俺達はヒュドラ退治の事、盗賊団殲滅の事をミミに報告する。


「ほえ~。ランジェさんはともかく、ヨースケさん驚きです~。良く生きてましたね~」驚くミミ。


 ミミとランジェは顔見知りらしい。数日前にヒュドラ退治を受けたんだ。当然か。


「ヒュドラ退治の方は、もうペクトロ村から報告が届いてますよ~。王国警備隊にも報告出しておきました~」


 ヒュドラ退治をしたのは二日前だ。確かに村から報告が来ていてもおかしくない。

 盗賊退治の件は、馬車を最初に降りた俺達がギルドに報告するとジャイ達に伝えてある。


 何故、王国警備隊に報告が必要なのかと言うと、後処理が大変なのだそうだ。冒険者は魔物を倒してハイ終わり、みたいなところがあるが、残された現地の人はそうはいかない。ヒュドラの様な大型の魔物や、強力な魔物になると、死骸の処理でさえ困難である。


 しかし放っておくと、腐敗による悪臭、疫病、厄介な事にゾンビ化や死霊化するケースもあるという。それらを未然に防ぐ意味でもスムーズな後処理が求められているのである。

 ギルドへの報告とは、自分が受けた依頼だけではなく、遭遇したすべての事象をきちんと報告する事であり、冒険者の義務なのだ。

 

「はい。これがヒュドラ退治の報奨金です~」とミミが革袋を手渡す。

 持つとずっしりと重い。さすがCランク案件。俺がペクトロ村で三か月間働いて得たお金より、ひょっとしたら多いかもしれない。


「これで当面の旅の資金は心配ないね。必要な分だけ手元に置いといて、後はギルドに預けていこうか」


 え。ギルドってお金預かってくれるの?そりゃ便利ですなー。

 お金って結構な重さがあるから持ち歩かなくて済むのは助かった。

 ましてや戦闘中なんて邪魔なだけだ。


「じゃ次はスキル鑑定とギルドカードの更新をしたいんだけど」


「かしこまり~。こちらへどうぞ~。」


そう言うと、ぴょんぴょん跳ねながら近くのテーブルに案内をしてくれる。下半身が重いのか、以前よりも更にジャンプ力が無い。


 「こちらどうぞ~」


 案内されたのは、少し大きめの四角い木のテーブルだ。椅子が六脚置いてあるのが見える。

 今日はまだ早い時間だからか冒険者があまりおらず、ギルド内は閑散としている。俺達は椅子に腰かけた。


 「じゃ、ランジェさんから~」


 ムムッとミミが集中を始める。


 程なくしてテーブルに置かれた水晶玉の様な物体から、鑑定結果が印字された紙が出てきた。


 はい、とミミがランジェに手渡す。

 それをテーブルの上に広げるランジェ。どれどれ。


【ランジェ・ドール】LV255


 【冒険者ランク】C


-スキル―

 【英雄】LV8(↑1)

 効果 全ての能力値が上がる


 【魔法剣士】LV-

 効果 剣士、魔導士両方のスキルを覚える


 【語解】LV-

 効果 異なる言語を理解できる


 【魔法】LV10

 効果 火属性の魔法を覚える

    ・ファイアボール LV7

    ・フレイムウォール LV5


 【魔法】LV8

 効果 聖属性の魔法を覚える

    ・ヒール LV5

    ・浄化  LV3

    ・キュア LV3


 【切れ味】LV12

 効果 武器の切れ味が鋭くなる


 【瞬歩】LV9

 効果 素早く移動ができる


「【英雄】が上がってる。やったぁ」と喜ぶランジェ。


 【英雄】のスキルは、英雄的行動を取ると上がる気がするらしい。英雄的な行動って何だろうか……。

 でも確かにペクトロ村でヒュドラに喰われそうになった俺を、颯爽と現れ助けてくれた時のランジェは、英雄<ヒーロー>に見えた。


「じゃヨースケさんいきますね~、むむっと、はい」


 すぐに結果が出された。あれなんか俺の時だけ雑じゃない?

 太った、と言った事をまだ怒っているのかも知れない……。


 まぁいい。俺は印刷された紙をテーブルに広げ、みんなで内容を確認する事にした。



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