表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほかほか  作者: ねこ侍
第一章
3/193

第3話 異世界「ハイム」

「帰ったぞ~。ウホッ」


「close」のプレートが掛かった木製のドアを開け、ゴリラの後に続く。


 店内は薄暗く、丸形のテーブルや椅子が配置されている。

 全部で三十~四十人は座れるだろうか。

 テーブル同士は広く間を取られており、店内は思ったよりも広めだ。


 奥にはカウンターがあり、食堂か、酒場と言った雰囲気だ。


「遅かったわね」


 と、カウンターの横の扉から、気だるそうな声を出しながら女性が現れた。



 !?


 人間っ!?



 眼を見開き女性を凝視する。



 一見すると人間の様だ。


 しかしよく見ると、額から二本の小さな角の様なものが生えている。足元には細長い尻尾も見える。

 また、薄明かりと相まって良く見えないが……黒い翼もあるのか?


 女性はズルズルと尻尾を引きずりながら近寄って来た。


「なぁに見てるのよ……お客さん?」


 明らかに人では無いその姿に警戒をしていたが、近くで見ると、凄い美人さんだ。


 長い黒髪に胸元が大胆に開いたドレスを着ており、なんとも言えない色気を放っている。

 眠たそうな口調も……いいじゃないか。


 一気に警戒心が薄れていく。

 我ながらアホである。


「広場に倒れていたウホよ。さっき眼を覚ましたばかりだから、とりあえず連れてきたんだ。ウホッ」


「相変わらずお人好しねぇ……まぁ座りなさいよ」


 そう言われ近くのテーブルに移動し、それぞれ椅子に腰掛ける。

 ゴリラには椅子がかなり小さいらしく、時折バランスを崩しそうになっている。


「あの・・さっきは助けてくれて、ありがとうございました!俺は島津 洋介って言います」


 まずは俺から改めてお礼を述べた。


 助けられたと言うよりは、ただ殴られただけの気もするが・・

 しかし気を失ったままだったら、どんな目にあったか分からないしな。


「それじゃこちらも自己紹介をするウホ。俺はこの町で酒場を営んでいる獣人のダズ。こっちは嫁のナージャ。よろしく、ヨースケ。ウホッ」


「あたしは人間とドラゴニュートのハーフよ……。よろしくヨースケちゃん」


 二人が結婚している事にも驚いたが、何よりも「人間」と言うワードに飛び付いた。


「人間がいるんですかっ!?」


「そりゃあいるわよ。ヨースケちゃんは……もしかしないでも『転移者』かしら。違う世界から来たんでしょ?」




「えっ!」




「はい……」




「たぶんその通りだと思います」



 俺は二人に公園で起こった事、日本から来た事を話した。



「ウホッ。珍しい!転移者はたま~に見るけど、転移した直後の転移者に会うのは初めてウホッ」



 バキッ!



 興奮しすぎて力が入ったのか、ダズの座っている椅子の脚が折れて、ダズが盛大に後ろにひっくり返った。


 ナージャがじろりと睨む。


「それで今月に入って5こ目よ……」



「立ってなさい」



「ウホゥ……」



 夫婦ではなく、飼い主とペットにしか見えないな。



「でもあたしは日本なんて異世界は聞いた事無いわ……」


「俺も無い・・あ、この世界は『ハイム』っていうんだウホッ」


 俺は二人から詳しくこの世界について話を聞くことにした。




 ふぅ。

 あまりの展開に頭がついていけない。


 聞いた話を纏めると、こうだ。


 こっちの世界「ハイム」には、たまに異世界から転移または転生してくる者がいるらしく、「転移者」「転生者」と呼んでいる。


 しかし「転生者」は転生前の記憶が無いことか多く、普通にこの世界で産まれ育っていく。

 従って本人が知らないだけで実は「転生者」だったなんて事もある。

 その為、世界に何人の「転生者」がいるか、人数の把握は難しいという。


 一方「転移者」

 俺のケースだが、こちらは転移前の記憶を持ったままだ。

 しかし転移後の姿形は転移前と同じとは限らない様だ。大抵はその種族における美少年、美少女になる。と言うか同じ場合の方が珍しいと言う。


 何故?とほほ。


 おっさんの俺を見て、ナージャが俺の事を転移者だと見抜いたのは、美少年だからではなく服装が変わっているからだと言われた。


 転移する前の俺は就活の為、いつ面接になっても大丈夫な様にスーツにネクタイを着用していた。


 確かにこっちにはありそうに無いな。ネクタイはもう外してテーブルの上に置いているが、ダズが興味深そうにつんつんしている。



 「転移者」「転生者」両方に共通する事としては、レアなスキル、または強力なスキルを持っている事が多いという。


 また人間や多種族に転移・転生するとは限らず、獣や昆虫、植物や鉱物にまで可能性はあると言う。


「今はもういないけど、狼王・シルヴァや、大妖花・クエスバレーとか有名だウホッ」


「勇者エランドールもそうじゃないかって噂よ」


 人間として転移出来ただけありがたいと言うことか。


 そして一番大事な事は、転移、転生してくる者は、いくつかの異世界から来ていると言うことだ。


 今判明しているのは


 ・戦と争いの世界 ンッダール

 ・巨人が住む世界 ガルムヘイズ

 ・魔法の発達した世界 シジュール

 ・宗教により統治された世界 テオ

 ・科学の発達した世界 グラザ


 の五つの異世界だと言う。


 同じ日本人の転移者や転生者に会えるかもと、淡い期待を抱いていた俺は、石で殴られた様な衝撃を受けた。


 藁をも掴む思いで、知っている国名や地名を上げてみたが、二人は首を横に振るばかりだった。


 そしてナージャが済まなそうに口を開く。


「ヨースケちゃん……可哀想だけど……今までに転移者や転生者が、元の世界に戻れた話も聞いた事がないわ」


 止めの一撃に、俺は軽く眩暈を覚えたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ