第17話 濃いぃっ
翌朝、俺達は工場長が入院している診療所を訪れた。
ペクトロ村を出る前に一言挨拶をしたかったからだ。
病室を訪ねると、工場長はまだ身体が痛むらしくベッドから起き上がれずにいた。
口にはマスクをつけていて言葉が聞き取りづらい。
「具合はどうですか。本当すみません。もとはと言えば俺のせいで」
「ボソッ…………キ……ス……」
ランジェがその場から一歩飛びのいた。
どうしたんだ?
「いえ。気にしますよ。申し訳ありませんでした!」
俺がそういうと、工場長はプルプルと首を横に振っている。
「俺、色々考えて冒険者として旅をする事にしたんです」
工場長は微笑みながら、うんうんと頷いている。
それから三十分程工場長と会話をしただろうか。
工場長が話す度にランジェの顔がどんどん青ざめていったのは何故だろう。
ガチャリ。
「ヒールと検温の時間でーす」
看護師さんが入ってきた。
「では馬車の時間がありますからそろそろ失礼しますね」
俺達が病室から出ようとすると、工場長はマスクを外して大きな声で叫んだ。
「いつかまたうちの工場に遊びに来い!!その時は最高のペク芋の煮っころがしを食わせてやる!!!」
工場長……
ありがとう……
「工場長!お世話になりましたっ!!」
俺も負けじと大声で叫んだ。
そして病室を後にし、俺達は馬車乗り場へと向かったのだった。
-ペクトロ村 乗合馬車乗り場-
馬車乗り場に到着すると、フサエやヨシコ、工場のみんな、村の人々が集まっていた。
どうやら俺達を見送りに来たらしい。
俺達は今じゃヒュドラ退治のちょっとしたヒーローなのだ。
「ありがとー」
「気をつけてなー」
みんな口々に声を掛けてくれる。
「冒険頑張ってね」とフサエ。
「あぅあぅおぉ~ずびっ」これはヨシコだ。
「そうそう。村長からもお礼が言いたいそうよ」
とフサエが言うと、群衆の中から一人の男がパカリと歩み出た。
その風貌にギョッとする俺とランジェ。
身長は二メートルを優に超えているだろう。
浅黒い肌にいかにも丈夫そうな皮鎧とマントを装備している。
鎧の上からでもわかる程の凄まじい筋肉だ。
左手は肘から先が無く代わりに剣が付けられている。
右手には異様に長い槍を携えている。
下半身は、何も履いていない。
……失礼。
誤解を招く言い方だった。
下半身は、何と馬だ。
これが噂に聞くケンタウロスって奴だろうか。
左目の下には一文字の傷があり、右目は縦に入った傷で塞がれている。
左頬には×印の傷が見える。
この調子だと胸には七つの傷がありそうだ。
あぁぁ!
濃いぃっ!
キャラが無駄に濃いぃっ!!
他にも探せばいくらでも出てきそうだ。
ここで新キャラをぶっこむか!?
「俺がペクトロ村の村長ヒナンだ。村が最低限の被害で済んだのは、お主達のおかげだ、礼を言わせてくれ」
ふう。意外に喋り方は普通だった。
てかあんたはヒュドラ襲来の時どこにいたんだ。
村長なら簡単にヒュドラに勝てそうである。
「ふむ。昨日はちょうど不在にしていてな。本当に助かった」
あれ?
今、心を読んだ?
もういいよ。お腹いっぱいです。
「あ。馬車が来たよ」
ランジェがホッとした様な声をあげる。
俺もホッとした。正直あまり関わりたくない……
到着した馬車は、ペクトロ村に来る時に使用した馬車とは違い、立派な装飾が施されている。
今回は前回とは違い有料馬車なのだ。
いやっほう。
俺達が馬車に乗り込むと、少しずつゆっくりと馬車は走り始める。
「みんなありがとうー。また来るからなー!」
俺は馬車から身を乗り出すとペクトロ村のみんなに手を振った。
手を振り返すペクトロ村のみんな。
そして、馬車が見えなくなった後にはさわやかな風が吹いていた。




