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奴隷とロリコン主人

 この世界には二種類の人間がいる。

 利用しやすい人間と、

 利用しにくい人間。

 さて……、今私の事を見ている彼はどちらだろうか。


▽【セルバの町】 <奴隷市場>

「今回の目玉商品! セルベール商会出展の性奴隷です!」


 オークションの司会者の声にビクッと体を震わせる。……演技をする。

 今は1ヶ月に1度開かれる大きな奴隷オークションの最中だ。

 私は奴隷商人に合図され、軽く押し飛ばされながらステージ中央に向かう。

 ああ、痛い。

 そんなことしてもし仮に私が転んだりして傷ついたら、商品である私の価値が下がるかもしれないのに、よくもまあ自分から進んでやるものだ。


 私はため息を堪えながら、怯えた表情で壇上に立つ。


 唐突だが、私は奴隷だ。

 母親は性奴隷というもので、父親は母親の飼い主の王国貴族なので一応高貴なる血が流れているらしい。まあ、奴隷の血という逆プレミアのせいで高貴なる血を掻き消すどころか、普通の人より何十倍も立場は低いのだが。

 言うなれば、高貴なる血(弱)か高貴なる血(笑)だろうか。


 母親にはそこそこ感謝している。どうやら当初、私は産まれ落とされたときすぐに奴隷商人に売り渡される予定だったそうだが、母親が私を取り上げられることを嫌がったらしく、母親が死ぬまで父親の邸宅で過ごせた。

 私の母親は父親のお気に入りだったようだ。


 …………まったく馬鹿な母親だ。

 わざわざ飼い主に反抗せず私を奴隷商人に売っとけば私に構う時間も減るし、つまりは父親に媚びる時間が出来る。それなのに私を自分の手で育て、その結果父親に構う時間が減り扱いが悪くなっていった。

 母親は"奴隷の中"では父親に気に入られていたが、替えが効かないと言う訳ではない。父親は他にも性奴隷を飼っているのだから。


 そんな訳で母親は子育ての疲れやら、私をダシに使われたお仕置きやら、食事に混ぜられた毒やらで3ヶ月前死んでしまったとさ。ちゃんちゃん。


 そして私はその後すぐに奴隷商人に売られた。


 そんな3ヶ月前奴隷商人に売られた私は、オークションにかけられ落札された。結構高い落札価格で驚いたが、私は処女だし奴隷商人が言うには母親に似て顔がいいらしい。…どんな顔が綺麗な顔なのか自分ではわからないけど。

 だからこの顔、この体で産んでくれたことに関しても母親に感謝している。この顔のおかげで奴隷商人のところで他の人がムチ打ちされる失態を侵しても、首輪の魔導具で首を締められるだけだし、ムチ打ちされていた奴隷に母親譲りの回復魔法をかけたりして、変に恨まれることなく良好な関係を築けた。


 ちなみに、母親は貴重な回復魔法を使えるが魔力量は少なかった。しかし、父親は魔力量が多く、その魔力量は私に受け継がれていた。だから痛みがなくなるくらいまで他の奴隷に治癒出来た。


 そして今、私はロリコン趣味の変態に買われるところである。

 なぜロリコンだとわかるかというと、私はまだ12歳でその歳の割に胸はおっきいが、身長は小さめで135cmくらいで、そんななか、性奴隷として紹介されたからだ。なお、胸の大きさは性奴隷比だ。

 問題のロリコン主人だが、意外と若い。もっと腹に大きな出っ張りのあるおじさん貴族みたいなのに買われると思っていたが、体は引き締まっていて、金色の髪の毛は短く切りそろえて目の色は空気が乾燥している日の雲1つない青空のような色だ。そこには、まるで僕は情欲などない無垢な青年です。と主張しているように感じた。服装はシンプルなシャツとズボンで腰には帯刀している。冒険者だろうか。


「ほら!お前の新たな主人だ!」

 奴隷商人が首輪を掴んでロリコンに突き出す。喋っているとき唾が飛んだ。中年狸め、汚い。

「…ぁぅ…よ、よろしくおねがいしましゅ…」

 しかし、奴隷商人の唾を気にせずいかにも気弱な奴隷の姿を演じる。わざとらしく舌っ足らずで話し、語尾の部分で思い切り噛む。そのとき恥ずかしそうに頭を下げ、そのあと少し頭を上げ上目遣いを意識しながらロリコン主人の表情を伺う。こんな阿呆らしい演技をするのにも理由がある。それはロリコン主人の嗜虐心を煽ることでロリコン主人の性的嗜好を把握するためだ。


 一番分かりやすいのは鼻息荒く興奮している場合で、この場合は嫌がることを強要するが、命に関わる危険なことまではさせない人だ。長く楽しむために手を尽くし、気に入られればしっかり飼ってくれる人だろう。それと接し方についても決定するので楽である。

 一番ラッキーなのは顔を赤くして慌てふためく場合で、金は持っているけど娼館に行ったことがないような女慣れしていない人だ。こういう人の場合ゆっくり慎重に歩み寄れば、人と接するようにしてくれる場合もあるらしい。

 一番最悪なのは興奮しながらも猟奇的な笑顔を浮かべる場合で、こういう人はハードなプレイか、はたまた人をいたぶることが好きなゲス野朗で、買われてすぐ殺される場合もある。


 なお、この想定は他の奴隷の人達から聞いた情報を、独断と偏見で纏めたものなので、一部過大に表現しているかもしれない。


 そんなことを考えつつ、顔をロリコン主人の顔を見た。

「.…あ、うん。よろしく」

 ロリコン主人はとくに鼻息を荒くすることなく、顔を赤くすることもなく、猟奇的な笑顔をすることもなく、どこか呆けたような曖昧な返事をした。曇りのない瞳に僅かな疑心の色が刺しながら。


「"主を持たぬ行き場のない者よ 我が呼び声に応え 契約の尽きるそのときまで 我に付き従え" <服従契約>」

 ロリコン主人が私に向けて手を伸ばし、<服従契約>の文言を口にする。この魔術は首輪に付いている魔石を媒介にしているので、ロリコン主人の魔素の色に魔石は染まる。どうやらロリコン主人は火と水の魔素を持っているらしく、火の赤色と水の青色が混ざる紫色の魔石が出来た。濃い紫なので闇の魔素も持っているのかもしれない。


 そんなことはどうでもよくて、私はさっきのロリコン主人の態度が引っかかった。あの反応はなんだったんだろう。まるで思っていたものと違ったものが来てしまったかのような反応。まさか見破ったのだろうか。あれが演技だったって。


 考えているうちに、契約が終わった。ちなみに、<服従契約>は主に危害を加えないこと、主に命令されたらそれを実行すること、主と1週間以上離れないこと、その3つのことを守らなければならない。一つでも破れば首輪が締まり死ぬまで締めつける。例外は主が締めつけを止めるように言うことでいえば締めつけが止まる。


 しかし、危害を加えないというのは物理的なことで、間接的に被害を出すことは出来る。例えば冒険者に買われた周囲の情報を取得できる<探知>の魔法を使える奴隷が、安全な道を教えるように命じられて、安全な地形の道を教えた。しかし、その安全な地形の道には毒を持つ虫系統の魔物がいて、その魔物の群れに冒険者を誘導したのだ。結果毒の回復薬を持っていなかった冒険者は死んで、魔物がいなくなったあと冒険者の金を奪い、晴れて飼い主のいないノラの奴隷になった。ほかには、商人に買われた奴隷が商人に金銭管理を命じて、その奴隷が商人の金を使い<契約解除>を奴隷商人の店で行い、勝手に解約した例もある。奴隷に<契約解除>を主の許可なく施すのはいいの?と思われるかもしれないが、この国の法律的には駄目みたいだけど、金儲けに走る奴隷商人は多く、金を多めに貰えれば実行するところはけっこうあるらしい。


「…ぁ…ぇと、これからお願い…します…」

 いくら演技を(おそらく)見破られたからってすぐに態度を変える訳にもいかないので、しばらくは気弱な奴隷を演じ、徐々に態度をかえていくことにした私は、ロリコン主人にペコリと頭を下げた。


「こちらこそ」

 ロリコン主人はそういって、私に向かって手を伸ばしてきたけど、これは握手をしろということなのだろうか。奴隷に向かって握手を求めるような人がいるなん聞いたことがなかったから、戸惑いながらロリコン主人の手を握った。

 ロリコン主人の顔を見上げると、さっきまでの微妙な表情から変化しどことなく嬉しそうな笑顔を浮かべていた。どうしてその表情に変化したのか、今の私にはわからなかった。


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