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魔界猿雄伝  作者: にわとり・イエーガー
大山鳴動して子供2人。
97/103

魔界対神界。

「速く・・・!」


「慌てるな!荷物は準備していたんだ!全部持ってかなきゃ、足手まといだぞ!」


 くグランダに、サルタは強く言い聞かせた。この日のためにミキメにもテンクウにも手伝ってもらっていた。


 グランダの両脇にはルフやガルタ、そしてユーリクロイドの手によって、山ほどの道具が積み込まれていった。サルタの言葉通り、前もって準備されていたものだ。


 もしもグランダがサルタと動きを共にするのなら。このサルタの屋敷に、かつてテアから頂戴した道具、消耗品を用意し、いつでもグランダの装着できるよう整えておくと、そう約束していた。


 時は来た。


 今まさに、魔都は2人の神族に襲われている。


 神獣マリオン、神竜ダイナソア。神位第1位、神位第2位が同時に来た!!



「おうおう!これは気を引き締めねば、のう!」


「気を入れすぎるな・・・」


 はやるマリオンを抑えつつ、しかしダイナソアもうっかりすれば興が乗ってしまいそうだった。


「ここをあなたの墓場にしても構わない。ぼくが許すよ、マリオン!」


 テアは全開だった。


 魔都に2人の神族が降り立つと同時、テアの作り出した疑似世界に落とされた。魔都全域に罠が張られていたかのように。


「神域への移動の応用か。この世界も神域に近い。けれど複層だな。およそ20枚の偽装次元空間を同一軸に立地させたか。しかし自前の魔力で生み出しているにせよ、維持はどうしているのだ?取器チョコとやらでは、とても足りるまい。・・・ああ、偽装重力のエネルギー変換で補っているわけか。原始的だが確実だ」


「ええい!くっちゃべっておらんで、手伝わんかい!」


「考え事の邪魔をするな。テア、この世界は面白いぞ」


 ダイナソアは完全に「テアの世界」に夢中で、前線のマリオンのことなぞ放っておいた。


 そしてマリオンはテアの「お人形」と相撲すもうを取っていた。かつてシャアルラも出くわした巨人だ。


「フンッ!」


 高さ数キロはあろうかという巨人の腹に突進。体当たりだ。


ゴオン


 無防備に受けたら、カルナでさえ死ぬ威力だが。


・・・オン


 微動だにしない。幻覚ではない。確かに当てた。


 いかに本気で打っていないとはいえ、この強度はカルナより上。


「か、堅ーー!」


 マリオンは呆れた。


 本気でわしらに勝つつもりだったらしい。


 し、これは油断していたら、負けたかも知れない。


 なにより、ここに居るのはテアの人形であって、テア本体の姿はまだ見えない。


 マリオンはんだ。大きくなった孫娘を見た時のような気持ちだった。


ゾアッ!!


 テアの人形から数千億の触手状のトゲが発射され、身体を貫こうとしていてもなお、微笑ましかった。


「フンッ!!!」


 マリオンもまた己の外皮を強化。のみならず「反発」を生み出し、全てのトゲに対しカウンターを打った。


バアン!!!


 が、トゲは貫通目的ではなかった。迎撃されたトゲは爆散し、周囲の空間を「重く」した。


「ぬっ・・・」


 空気が水飴みずあめになり、ぬかるみの中を歩いているように、マリオンは空気中でおぼれた。


 足が、浮いた。


「ただの魔力反応金属粒子の海だ。しかし透明化しているのはすごい。これでは警戒心など持てまいな」


「ええい、感心しとらんで助けんか!!」


 ダイナソアはマリオンの溺れる様を見ただけで、構成比まで見極めた。


 いわゆる巨石族にも通じる、魔法に反応する石人形を生み出す技術の応用。その構成材料をわざとゆるく作ることで、柔軟性と頑強性を両立させている。物質への衝突時には表面装甲が内部へ衝撃を伝搬でんぱんさせ、さらに外部に放出。これにより、マリオンの打撃が直撃してさえ破壊されない。


 かつてシャアルラが本気で殴っても傷一つ付かなかったのも、これが原因だ。


「見事。お前の本気が分かる」


 ダイナソアは感心しきりだった。


 これは本気を出さざるを得ない。


 彼女は神位に到達してから、一秒たりとも時を無駄にしなかったようだ。


「・・・全く」


 マリオンはぶつくさ文句を言うのをやめて、自力で脱出することにした。


ゴ オ


 見開かれたマリオンのひとみの前で、形状変化金属の海は解け開いた。あたかも一筋の剣が走ったかのように。


「しかし良い作りじゃ」


 マリオンもまたテアを評価した。


 刺激的な「遊具」だ。



 魔神テアは「世界の外側」から全てをコントロールし、本気で倒すつもりで動かしている。


 マリオンを閉じ込めたのは致死毒の金属の海。しかも死なずとも呼吸器官、胃腸は全て埋め尽くされた上で、外部からの魔力コントロールでマリオンを意のままに操れるはず。


 なのに全てを弾かれている。どうなっているのだ。


神意しんいだ」


「!!??」


 テアはいきなり真横から発生したダイナソアの声に驚きを隠せなかった。


 テア以外の生き物が存在しないはずの世界に、ダイナソアは居て当然とばかりにくつろいでいた。


「意思の力、ではないぞ。マリオンはただ、お前の用意した人形を意のままに操っているだけだ。液体金属の自由移動という発想は決して悪くない。ただマリオンはそのレベルにはいないというだけだ」


「・・・「あそこ」に居るお前は幻像か」


「違う。あれも本物だ。同時に2つの場所に存在しているだけだ。慣れればお前にも同じことが出来る。今度、教えてやろう」


 ダイナソアは技を誇るでなく、当然のように説明した。


 出来て当然なのだ。こいつらにとっては。


「しかしお前の偽装複層次元を抜けるのは骨が折れた。この技術は素晴らしいぞ」


「・・・ありがとう」


 大真面目に褒められて、テアも真面目に返すしかなかった。


 ダイナソアの言葉に皮肉は感じられなかった。純粋な称賛しょうさんだった。


「世界の境界をあえて魔力ではなく、空気で構成。そして複層次元の空気中魔力密度がどこも全く同じ。どれだけの手間をかけたのか。考えたくもない」


 同一軸上に複数あるテアの世界。つまり、神族特有の強烈な感覚器官を用いても、自覚とは全く別の情報が入手されてしまう。「ここ」に居るはずの自分が、「あそこ」に居る。感覚が鋭敏であればあるほどだまされる。


「いえ。世界構築自体は完全複製が容易でした。難しいのは位相の差異を気付かれないようにするための並行位置。これをクリアするだけで100年かかりました」


 あたかも教師に自分の魔法を評価されているかのようで、テアは思わず丁寧ていねいに喋っていた。


「それも今度一緒にやろう。平行世界は簡単に作れて応用が面白い。私も試行錯誤の毎日だ」


「本当ですか」


 テアは会話の最中、冷静にダイナソアの動きを探っていたのだが、わずかに会話に熱中してしまった。


 もっとダイナソアの知識を学びたい。


「ごほん」


 手持ち無沙汰ぶさたにしていたマリオンが、わざとらしいせきをした。


「マリオン。あれを倒したのですか」


「いや。壊すのは不憫ふびんじゃから、ダイナソアの後を追ってきた」


 マリオンもまたダイナソアと同じく、テアに接近を悟らせなかった。


「お主の本気、しかと受け止めた。神位昇格にふさわしい実力と認める」


「ありがたい話だが」


 一旦は薄れたテアの覇気が、ふくれ上がった。


「現在のヒポリごときに敗れる神位などに興味はない。それよりは、神になる方が手っ取り早い」


「合理的だ。正しい」


 ダイナソアは評価したが。マリオンは話の落とし所に困っていた。


 適当に神位第4位でも与えて終わりにすれば、誰も死なない。テアのお人形さんも壊さずに済む。


 まだやる気なのか。


「マリオン。しばらく菓子でも食べておけ。次は私がやる」


「お、おお」


 お前が行ったらテアが即死する。そう思いつつ、最も賢いダイナソアの判断を信じ、マリオンは離脱した。


「テア。お前は私の予測を超えた」


 テアはその言葉に、胸を熱くしながら、背筋を冷やしていた。


「少し、私のスタイルを見せてやろう。勉強するが良い」


 たった3メートル程度の竜が、笑った。後輩に先輩風を吹かせるように。



「・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・」


 神位第1位、神獣マリオンは魔王シャアルラの眼前に現れ、なんと言って茶菓子を強奪しようか、考えていた。



「あー・・・・。あ、甘いものが怖いなー・・・」


 マリオンは、不器用であった。


 魔王シャアルラと向かい合って一言目が、これ。


 お話にならない。


「・・・・・・・茶菓子を持ってこい。「あの」甘いやつだ」


 魔王シャアルラはその表情に感情を表さず、メイドに命令を発した。


 魔界、神界の2大巨頭がそろった会談は、こうして始まった。



ゴオン


 神雷が走る。ダイナソアの全身から数え切れぬほどの光の帯が、まるで太陽のように隙間なく伸びる。そしてその光は、触れ次第消滅を禁じ得ぬ破滅の極光であった。


 防御手段が存在しない。


「どうやっても天雷を防ぐ方法は見つからなかった。ダイナソア。あなたは天才だ」


「フフ。それを無効化するお前も、非才ではないぞ」


 ダイナソアの放った全方位神雷を避けるテア。タネを明かせば、先の複層次元に逃げ込んだだけだ。


 しかしそれで現実にダイナソアの攻撃を避けることに成功している。


 尋常じんじょうではない。


「まだ私はお前を過小評価していたのか。いよいよ本気を出さねばなるまい」


「できれば、その間に殺したかった。ぼくは戦いはあまり好きではないので」


「そうだったのか?」


「一方的に攻撃するのは大好きです」


 にっこり笑ったテアはそれなりに可愛らしく。ダイナソアでも、一瞬警戒心をゆるめてしまった。


グ ジャ


「?」


 音ではない音がした。それはこの世界が発したものではなく。


ゾ ゴ ア


 次元が割れた。先ほどまで通常次元だった「この世界」に、20層の複層次元が追加され、さらにその全てで膨大カクルタスが発動。「世界そのもの」が次元の刃となって一瞬同時にダイナソアに突き刺さった。


「がはっ・・・」


 血反吐ちへどを吐いたダイナソアの肉体には、外見からはいかなる攻撃の痕跡も見られない。ここではない次元からダイナソアに触れることによって現実化し、その体内で顕現けんげんするからだ。


「・・・」


 致命的ダメージを与えておきながら、テアは現状に疑問しかなかった。


 ダイナソアを内部から破壊する次元変換刀ゼオ・カクルタスが入っている。直撃で。


 なのにダイナソアは苦しがっているだけ。


 なぜ即死しない。内臓に入った衝撃数値は、各次元変換刀かける膨大カクルタスで、もはや数値化も不可能なほどの破壊力に到達しているはず。


「それはだな」


 驚きもしなかった。「新しいダイナソア」が現れたことに。


「私の肉体の中で発現したお前の攻撃を、私の肉体が防いでいるからだ。爆発する世界を抑え込めば、それは単なるナイフに過ぎない。切れ味は素晴らしいものがあるがな」


「そうですか」


 理屈は理解できた。


 膨大カクルタスを抑え込むとかいう、非現実的な事実さえ納得すれば。


 苦しんでいるダイナソアと説明してくれるダイナソア。本当に同時に実存している。


 テアはやっと、神族という名称を理解し始めた。


 不死身とはまた別の意味で、今の自分には攻略法が分からない。


 いつの間にか、痛がっていた?ダイナソアは消えていた。


「その、分身には上限とか消費エネルギーとかはあるのですか」


「全くない。上限は以前、架空世界・・・お前のと同じだ・・・で、およそ数万平方キロメートルの地表全てを埋め尽くしても問題なかったから、おそらくない。しかし、あの時は暑苦しかった。・・・エネルギー消費も同じだ。どれだけ増やしても、むしろ増える。私が増えただけ「私の総量」が増え、さらに戻した私の分だけ、今の私に増加される。過去に実験した際には、強化した実験世界が98層まで破れた。戻したエネルギーだけで。だから普通の世界では、やる気はない」


 ・・・なんでぼくはこんなのと戦ったんだろう?


 思わずテアがそう自問するほどには、ダイナソアは途方とほうもなかった。


「言うほど。言葉にして数えるほどに、お前と私の差はない。コツをつかんで1万年も修行してみれば、すぐさま私の足元に来れる。お前は十分に神族にふさわしい」


「どうも・・・」


 おためごかしとしか思われなかった。ダイナソアは大真面目にそう言っているのだろうが、こちらが1万年修行している間に、ダイナソアはさらに遠くに行っているだろう。


「ま、体で覚えれば、すぐだ」


 ダイナソアは揶揄やゆや皮肉を言っているのではない。


 大真面目に言い切られ、テアは魔力障壁を全開にした。


ゴ オ!!


 複層次元を30枚展開、さらにその全てに魔力加工を施し、一枚ごとに位相を純粋魔力、重力、金属でつなぎ合わせ、天雷の攻撃範囲をかわす。


「学べ」


 次元を完全に切り分けているはずなのに、ダイナソアのその声は明瞭に聞こえてしまった。


パチン


 ひらめいたのは火花のような、わずかな軌跡きせき


「かっ・・・」


 しかしその一撃がテアの胸に風穴を開けていた。


「おお。私も手加減ができた・・・。成長しているのか、私も」


 ダイナソアは純粋に感動していた。やっと手加減が上手くいった。


 次元の壁を超え、世界をつたい、ダイナソアの一筋の神雷はテアの障壁の全てを貫いた。完全に手心てごころを加えた状態で。


「あ・・・あ?」


「ん?・・・ああ、動けないのか」


 神雷を食らって生き残った者を初めて目にしたので、テアの硬直した姿を見ても、いまいちピンとこなかった。


「焼き尽くさないよう範囲を絞ることには成功したが、威力は抑え込めていないな。だが、全身の神経が焼かれただけだ。お前の再生能力なら・・・」


「・・・はあっ、はあっ」


「すぐに治る」


 呼吸を取り戻したテアに、ダイナソアは親しみを込めて笑いかけた。


 肉食獣の笑みだったような気はするが。テアは気のせいにした。


「期せずして・・・いや。期待以上だった。次からは気が向いたらいつでも来い。遠慮などせずとも良い」


「ありがとうございます」


 なぜか分からないが、終わった。死なずに済んだ。


 ・・・まるで相手になっていない。それが理由だとしても。


「マリオンは?」


「遊び飽きたら帰ってくるだろう。あるいは腹が減っても帰ってくる。放っておいて良い」


 神位第1位の扱いがそれで良いのか。そして、やはりマリオンとダイナソアは対等な関係なのか。


 そして敵対勢力の頭目同士という意味では対等な2人は、まだ食っていた。



「甘っ!!」


「チョコレートだ。クリームを付けると、また違う味わいになる」


美味うまっ!」


「・・・今まで何を食べていたのだ」


 水とかすみ。というのは嘘だが、いわゆる加工食品はあまり口にしたことがない。砂糖というものが「発明」される前の時代の方が長かった。もちろん、カルナのような後代の人間が作ってくれるものは美味しく頂いているが。


 そういうことで、最近の甘味、デザートなどは異次元の味わいであった。


「いや・・・。真に馳走ちそうになった。感謝にえぬ」


「これぐらい。いつでも食べに来い。お前の強さには、それだけの価値がある」


「ありがとう」


 マリオンはおすまし顔で感謝した。が、口元には舐め取りきれなかった真っ白なクリームが残っていた。


 それでもその威厳いげんに、いささかの動揺もない。


「して魔王シャアルラ。お主の野心は冷めやらぬか」


「・・・」


 本心を言えば、今すぐやめたい。戦争など。それほどの戦力差を、知覚していないわけではない。


 しかし魔王。魔王である己を捨てられない。


 魔王とは最も強き者。


「野心はもうない、が。このままではいられない。今や、私の死のみが決着を告げるものだ。不甲斐ふがいない挑戦者で悪いがな」


 実際には野心を捨てていないからこそ、魔王の座から降りられない。生まれた時から魔王の子であった、そこにアイデンティティがあったシャアルラに気付けというのも難しい話だが。


 もちろんマリオンは気付いていた。今まで神位に到達した者でも、こだわりや自我を捨てきった者は少ない。というよりさらに自我を肥大させ、純化させ、強化させた方が多い。


 しかし今のシャアルラは、そこに居るだけ。より高みを目指そうとか、そういう意味では、確かに野心がない。


 これから死ぬ気なのだから、なおのこと。


 だがそれも人生だ。何もかも上手くいくなど、魔王でも神族でも有り得ない。


 14、5の子供を殺すのもまた、良かろう。


「終わらせるか」


 マリオンは感情を乗せずに喋った。それが正解だとも間違いだとも匂わせず。


「ああ。何が間違いかと言えば、神族という強者にケンカを売った私の落ち度。後は、魔界・・・それと人界にも手出しをしないでもらえると、ありがたい」


「・・・?」


 マリオンは不思議そうな顔をした。


「お主が死んだ後の世界が気になるのか」


「まあ、一応」


「ならば教えよう。魔界人界問わず、灰にする。そしてその跡から生まれる新たな命の誕生を待つ」


「・・・・気の長い話だ」


 シャアルラはわずかに混乱した。


 言ってはなんだが、神族、神位第1位の神獣マリオンが手をかけるほどの価値が、魔界や人界にあるのか?何の意味があるのだ。


「それほど主らの示してくれた希望は大きかった。ついえた落胆もな」


「ふん・・・」


「だが主個人の責任ではない。単に寿命なのじゃ。わしらは次を待とう」


「そうして永遠の年月を過ごしてきたのか」


「うむ。そのために魔族には魔力を。人族には勇者を。それぞれ競い合えるよう、バランスを調整してきた」


「ならば、次世代の魔王や勇者を待てば良いではないか。なぜ一度滅ぼす」


 シャアルラはこの理不尽を止める気がないではないが、むしろ好奇心のために聞いていた。ただ会話が面白かった。


「踏まれた者は強い。弱い者はへし折れる。現在から弱者を振り落とし、強者のみを絞り出す。そのための滅びよ。いわば土壌どじょう作りか」


「そうなのか?どう考えてもゼロからやるよりは、現在の魔都から生まれる才能を当てにした方が、多くの才ある者が誕生しそうだが」


「それは正しい考え方じゃが。この先の時代には安定と安寧あんねい。ゆるやかな平和とアクセントとしての争乱の繰り返し。戦場のきらめきは、もはや望むべくもない」


 「この先」。本当に。こいつらは何度も滅ぼしたのか。そのたびに勇者を作り、魔王を誕生させたのか。


 シャアルラは怒るより先に呆れた。なんと気の長い生き物だ。


「すごいな。頑張れ」


 もはや止める気も起きなかった。それに。


 マリオンの言う通り、己の死後の世界に、そこまで責任感も持てなかった。


 いかに己の人魔協調路線が滅びのきっかけであっても。



コンコン


 魔王の会談中に、命知らずのノックが入った。警備の者は何をしている。


「軍師サルタ殿が来城しました」


 何の脅威でもない、ただの小物がやってきた。

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