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魔界猿雄伝  作者: にわとり・イエーガー
大山鳴動して子供2人。
87/103

試練、開始。

 起きてほしくない事が起きる。そこに神の作為を感じるは容易い。間が悪いのだから、きっと自分の所為せいじゃない。そう思いたがるのは人のさが


「地竜グランドキア出現!!シャダンの森から頭が出ています!」


「空竜グランアルム出現!!すでに魔都上空を回遊しています!」


「神雲ジャラル出現!!魔都の北西200キロ地点から時速20キロメートルで移動中!」


「神樹ユナハ出現!!シア・ライン、海港をふさいでいます!」


 だがこの知らせを聞いては、シャアルラでなくとも嫌になるだろう。


 神位持ちが4体同時出現。


 悪夢というのも生ぬるい。


 だが。


「では作戦通りに」


 それだけを言ってシャアルラは作戦会議室を出た。魔神、知歯喜神を置いて。


 現実化した最悪の事態。


 しかし来ると分かっているのなら、対策はできる。


 会議場にパニックにおちいっていた者は一人も居なかった。



「上は取った!!突き崩すぞ!!」


 そして。凶鳥軍団を率いるギリィはすでに先陣を切っていた。


スヴァン!!


 開幕、ギリィの音刀ネイル・ヴェイルがジャラルの表層を穿うがった。


 ジャラルは小さい。戯画化ぎがかした雲とでもいうべきか、直径10メートルほどのクッションだ。ダイナソアやマリオンが乗って移動するために存在する、小さな浮き雲。


「・・・噂通うわさどおりか」


 だが、単なる雲ではない。凶鳥であるギリィは数え切れぬほど雲海に突っ込んだ経験がある。それはただの水蒸気の塊で、雷雲でさえなければ恐るべきものではない。


 しかし神雲ジャラルは違う。


 音刀ネイル・ヴェイルがダメージになっていない。収束を高めて貫通力を上げて撃ち込んで、ノーダメージ。


フ オッ


 しかも反撃付き。


 雷ではない。何かよく分からないものが曲線を描き無数に飛んできた。空を舞う凶鳥の一匹一匹に的確に。


「・・・」


 熱をともなわない。雷動らいどうも感じない。ならばこれはひょうか。


 この場にはエリートしか連れてきていない。神樹に吸収される危険性(味方の命ではなく、敵の強化)をあやぶんで。そのため、今の雹は全て回避された。無論、ミキメの兄であるシオドも。


「大将!こいつをぶち殺したら、軍団長になれるかい!?」


「へっ!!殺ってから言いやがれ!」


 殺しても、多分なれない。ギリィより上でなければ。


 それはともかく、魔王から特別な褒賞ほうしょうは確実に出るだろう。


 勝って生き残れば。


 死ねば遺族年金が入るので、それはそれで、まあ。


 ミキメよ。悪くはないさ。戦うのも!



「魔都に到達する前にジャラルをとらえたのは最上の幸運でしたじゃ。これで魔都が灰にならずにすみますじゃ」


「うん。凶鳥を離してあった甲斐があった」


 空を飛べるグループ。魔王、魔法師団、凶鳥はそれぞれ魔都の周辺に分散配置されていた。奇襲による全滅を避けるためであったが、こうなれば好機だ。


 ガンズは大型地図上のコマを動かした。魔都から200キロ離れた地点の敵を示す赤いコマに、味方の青いコマを接触させる。


「ギリィ殿で勝てますかな」


「さあ・・・?ぼくの知る凶鳥では不可能。と言っておこう」


「分かりましたじゃ。ギリィ殿の勝利は決定的ですじゃな」


「・・・君も、シャアルラの部下に似つかわしい。良い関係だよ」


「光栄ですじゃ」


 テアはシャアルラのもう一人の猿族の部下を思い出した。環境で似るものだな。


「ミリアステリオ様以下、海魔軍団出陣しました!」


「存分に力を発揮するようお伝えくだされ。海は任せると」


「はっ!」


 海魔からの飛竜に伝言を頼み、返す。具体的な命令は無し。


「神位持ちに1対1?よほど信用しているんだ」


「それもありますが。どう言いつくろおうと、数が足りませぬ。海は海魔に一任。でなければ」


 勝てぬ。


 魔神テアをここに縛り付けている以上は。


 神獣エレイン対策にとってあるテアを動かさず、それ以外の神位を叩き潰す。



「・・・食えない!」


「構わない。撤退せよ」


 海魔軍団突撃部隊隊長ダンセイは、その特性上、相手の血肉を捕食できなければ、戦えない。自滅するしかない。ゆえに海魔軍団長の副官であるカンドゥナサスはダンセイの撤退を認めた。そして突撃部隊には海中にある根っこへの攻撃を命じた。


 ダンセイの不向きは作戦前から分かっていた。海中生物である我々では、植物繊維の塊である神樹ユナハを食べられない。食べても消化吸収できない。カンドゥナサスはダンセイへの評価を下げないまま納得していた。


「ヤツの根は土中を求めてどこまでも伸びるはずだ。監視をおこたらず、常に攻撃を仕掛けろ。繊維せんいを傷付けるだけでも意味はあるはずだ」


 成長しきった植物というのは頑丈で、ナイフ一本で大木を刈り取れと言われても、ちょっと困る。用いるものが鋼鉄、相手が木材という強度差をもってしても、なお苦戦はまぬがれない。対象が大きすぎる。


 しかしながらいかな大木であっても、切りつけられたナイフ傷一つから、腐り落ちる。虫害も無視できない。


 この日のためにテアから伝えられた全神位に対する戦術を練っていたカンドゥナサスにとって、海中にあるユナハはカモでしかなかった。地上ならいざ知らず、海はこちらの領域。それに、海上に突き出た部位には。



「・・・・良し。花と葉を重点的に刈り取るのじゃ。もしも吸収されるようなら、即時撤退せよ」


「?」


「内緒話ですじゃ。神樹殿に対する、知虫軍団なりの」


 窓から突き出た「飛竜の止まり木」に止まった複数の虫に、ガンズは細やかに指令を与え、再度放った。その内容はテアですら推察するしかなかった。


 シャアルネルラの組み立てた指令網は、まだ生きていた。


「ふうん・・・。ガンズ君。君には戦後、ちょっと話を聞いてみたいな」


「光栄ですじゃ。魔王様のお許しを頂いて、お話の機会を頂ければ、こちらも無上の喜びですじゃ。魔界史上最高の知性との対話など、願っても得られぬ好機」


 あくまで主人である魔王を立てる。


 それはそれとして、仮にも謀将を気取るガンズとしては魔神テアの智謀は、ぜひとも学びたかった。


 きっともう一人の参謀もそう思っているだろう。


 なあ、サルタ。



 人界、帝都ラアブレイ、主城ラアブレイ城。


 皇帝トリキアや軍師サンゾウも見守る中、テラスでは魔界から派遣された軍勢が動き始めていた。


「神獣エレインのみ不明・・・」


「では、サルタ」


 飛竜の伝えてくれた情報を解釈するカネ。そして新たな軍師に確認をとるヒポリ。


「はい。恐ろしいほどに、こちらの想定通りです。ヒポリ様には予定通りにグランドキアを食い止めて頂きたい。ざっとした戦力すら未知の相手ですが・・・」


「構いません。戦場の相手に弱点を教わる機会も無いでしょう。カネ」


「はい。妖樹と共にサポートに回ります。ご武運を」


「あなたも。・・・今回の戦いは、魔族の真価を問われるものです。結果がどうなるにせよ、良き戦いをしましょう」


「はっ!!」


 魔獣の主従はそうして別々の飛竜に飛び乗った。帝都からシャダンの森まで、飛竜なら1時間もかからない。このために選り抜いた精鋭ゆえ。


「ヒポリ殿!ご武運を!」


「はい!」


 ラアブレイ・トリキア・ギウ。人界最高権力者がヒポリに声援を送る。サンゾウもまた全ての情報を分析している。



 人間は魔族に付く。


 もし神々が地上に居たならばともかく。同じ大地の上に居たのは、敵対種族であった魔族。


 神々に逆らう気など毛頭ないが、人は大地ここに居る。


 天雷を落とした場所に。


 神々に逆らう気など毛頭ないが。嫌でも一緒に生きているのは、魔族だった。



 そしてもう一匹の魔獣と飛竜も動く。


「グランダ。伝令の飛竜が来やすいようにグランドキア周辺を滞空してくれ」


「応」


 獣王ヒポリ。魔軍大将軍である彼は単騎で人界の守護に当たっていた。


 情報共有は事前に何回にも渡って行われた。魔神テア、知歯喜神パールとの交渉も。


 それでも現場では想定外の事態が発生する。ゆえに指揮連携を可能とするため、魔都と帝都で頭脳を2つに分けた。それが魔都のガンズ、帝都のサルタ。


 今サルタは、ヒポリが戦うグランドキアの手前1キロ地点で、彼らの戦いを観察する。それ以上接近すると、地竜の攻撃範囲に触れてしまう。グランダ一人なら、それでも生存可能だろうが、サルタは間違いなく死ぬ。なので距離を取る。


 そして眼下では山が動いていた。


オ オ オ オ


 微風が地竜にぶつかる。その風がまるで地竜の鳴き声かのように周囲に広がり、響き渡る。


 地竜グランドキア。体長2,6キロメートル、体重60億トン超。


 シャダンの森を押しのけるようにしてその巨体は現れた。


 地中深く、その居住地はマグマ溜まりのさらに下。すなわち、熱エネルギー攻撃をほぼ無効化し、さらには積層した何千億トンの大地圧に耐え抜く肉体強度。


 攻撃の全く当たらない飛行速度を実現する空竜グランダロンとはまた別の意味で、ほとんど無敵に近い。


 単純に考えても、神位第4位。あの最古の勇者カルナに次ぐ者。


 戦いを挑む事そのものが愚行。勇気があるとかそういう次元ではない。


「テオドラ。私を拾う必要はありません。ここからは偵察に専念してください」


バッ


 ここまで乗ってきた飛竜テオドラに最後の命令を下して、ヒポリはグランドキアの頭部正面に降り立った。


 体長8メートルの巨躯きょくであろうと、この地竜の前では小石に等しい。


 常識的に考えて、戦いになどなるわけがない。


「初めまして!私はヒポリ!!聞こえますか!」


 だから、というわけでもないが、ヒポリは動く大山に話しかけた。自身は一歩も動かず。


「・・・・」


 じろっとこちらを見た。気がする。家屋より巨大な目玉が、こちらを向いた。


「何。特に大切な話ではありません。・・・初対面でこんな事を言うのも失礼でしょうが。ゆえあって死んでもらいます」


 竜の眼光が鋭くなった。こちらの言葉を解している。


 そしてこのヒポリを敵と認識している。


 良い眼力だ。


 部下に欲しいくらいだ。


カ ア


 山が動く。地竜がその口を開く。魔都の大通りがそのまま波打ち動いているように見える。


ドガンッ!!!


 しかし、そうはさせない。開きかけた街にも匹敵するオオアギトは、ヒポリの4足フル稼働の体当たりで再度閉ざされた。


ギャ ア ア ア


 己の歯で己の口内の肉を食い破ったのだろう。閉じた口から青い体液がこぼれ落ちた。青い血。鉱物の色だろうか。


「・・・意外に。もろいな」


 ガッカリしたような声をもらしたヒポリだが。仕事は最後までやる。


 地上から一瞬で竜を駆け上がり、脳天の上を取り。


「オ オ!!!!!!!」


ドン!!!


 全力の掌打。


グラリ


 それだけで地竜は揺れた。


「流石に堅い。外傷を狙っては勝てない」


 グランドキアの堅さは、鉱物の硬度に脂肪筋肉の柔軟性が噛み合った超肉体強度。例えば腹部を打ってもさしたるダメージにはなるまい。まず柔軟かつ強靭きょうじんな皮膚組織を突破できない。


 だが脳は揺れた。揺れてしまった。なまじ最も頑強な頭蓋骨ずがいこつがあるがゆえに、分厚い脂肪などの衝撃拡散措置はない。直撃したなら、そのまま効いてしまう。


 そして、地竜が日常的に食らう爆発的エネルギーの塊である溶岩爆発より、ヒポリの全力の打撃が効く。


ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ・・・


 後は作業だった。


 竜がその頭蓋ずがい内部に蓄えている全ての体液を漏出ろうしゅつするまで、ヒポリは殴り続けた。


 地竜は一度の反撃も許されなかった。


「・・・・・」


「・・・・・」


 サルタ。グランダ。どちらも魔王直属の部下で、魔神の業すら目撃している歴史の生き証人。だが。


 素手で神位第4位の地竜を殴り殺す生き物は、見た事がない。


 二人とも、ただ呆然として眼下の光景を見つめていた。


 その間にも、現場では兵が動き続けていた。


「ヒポリ様!お怪我は?」


「大丈夫です。おそらくですが、体液には触れない方が良い。竜の血は我々には強烈すぎる」


 救援に入る、もしもの場合の撤退援助、などに待機していたカネも降りてきた。


「はい。・・・妖樹軍団は全稼働してくれています」


「では、我々は休憩しながら、待機しましょう」


 言うまでもなく。地竜グランドキアがこれで完璧に死んだのか。いかなヒポリとて、断言はとても出来ない。


 だから即応できる位置で休憩に入る。


 そして妖樹軍団が後始末に入ってくれる。彼女らもまた魔都、ダイア・ラインから飛竜に乗って駆け付けてくれたのだ。


「タルナキア様を中心として円を描くように投げてください。それで妖樹の力は何倍にも強化されます」


 なぜか現場指揮官になってしまったヒワダの指示により、それぞれの妖樹の種子が地竜を囲んで植え付けられる。仕事は全て剣闘軍団が受け持ってくれている。


 周囲の妖樹の生命力を増強できるタルナキアを中心として、複数の妖樹を配置。


 すでに地竜を倒した後の処置だが、これには意味がある。


「あー・・。まあ、頑張ろうな」


 動く妖樹軍団であるヤルドも来てくれた。ヤルドは「複数の自分」で地竜を取り囲み、その肉体を覆い尽くすように自分を植え込む。


 ・・・実はシャアルネルラ亡き後の空白時間を狙って世界征服を企んでいたヤルドだが、神界の使者を放置すれば支配どころではないため、せっかく魔界中にいた自分自身を呼び寄せ、今回の事態に対応していた。表向きは現魔王シャアルラへの忠義として。


「お疲れだと思いますが、お願いしますねヤルド様」


「任せておけ」


 それに、こうも真っ直ぐに信頼されると、有無を言わさず乗ってしまう。あまり交流のないヤルドだからこそ、コミュニケーション能力の塊であるヒワダの真摯しんしさは効いた。


 そして。こうまで倒れした地竜を警戒している意味は何なのか。


 妖樹軍団最凶最悪の切り札であるヤルドまでが、自主的に協力する事態とは。


「・・・出たぁっ!!地竜背甲上に無数に!!」


 地竜上空をグルグルと回っていた偵察の飛竜の一匹がそれを発見した。


 野生動物であれば必ず所持しているそれを。


「カネ。気を付けて」


「はっ」


 しかし喜々としてカネは仕事に挑んだ。


 地竜に巣食う、無数の寄生虫を殺しに。



「後は経過観察だ。ヒワダさんと詰めた作戦通りに移行するのかどうか。ダメな時は・・・魔法師団に来てもらえれば、まあなんとかなるさ」


「こっちはなんとかなりそう?」


「ああ。おれ達の想像以上に、ヒポリ様がすごかった。注意を引いてもらって、テア様の出撃時間を稼いでもらうだけのつもりが。倒しちゃった」


 グランダとの会話で落ち着きを取り戻しながら、サルタはあまりにも順調すぎる展開を頑張って飲み込んでいた。


 計画通りには違いない。あっけなく弱いという感想まで抱いてしまうほどに、意外な展開ではあるが。


「な、なあ。ひょっとしてお前ならグランドキアに勝てた?」


 もしかして。意外に手が届いた存在なのだろうか。神位第4位の地竜とは。


「絶対無理。炎が無効化されるし、おれの加撃ではヒポリ様ほどの威力は出せない。この結果はただ、ヒポリ様が異常に強いだけだよ。地竜が弱いんじゃない」


 グランダもまた、サルタと同じ疑念は持った。もしかして。もしかすると。


 しかしグランダは戦闘要員としての目も持っている。その目で見たヒポリの戦力は、図抜ずぬけている。他には魔王シャアルネルラ様、シャアルラ様ぐらいしか思い浮かばない。ケタが違いすぎる。


 そうこうしている間にも、カネは長さ2,6キロの大地にうごめく虫の数々を滅ぼしていた。巨大な地竜に寄生する虫もそれに準ずる大きさ。なんなら魔都に住んでいる魔獣の平均サイズより大きい。


 しかし戦力はないに等しい。地竜の上で戦う生活などしていなかっただろう。カネが触れるだけで死んでいった。彼ら寄生虫もまた、環境の急激な変化についていけずに滅びるしかない、哀れな存在であった。


 逆に滅ぼさなければ、無数の特大寄生虫の群れがこちらを襲う。人界はどうでもいいと言いたいところだが、そうして人界で生息範囲を拡大されれば、結局は魔界にも侵攻する。ここで絶滅させるのが得策。


「はあ・・・」


 しかも。やる気はそこまでではないとしても、ヤルド始め、妖樹の腕利きがあみを張っている。生きて出られる虫は居ない。


 そして地竜に巣食っていた以上、彼らは硬質な皮膚や動物性タンパク質に潜り込む事は得意でも、植物に対しては適正が不明。


 そして妖樹軍団はいざとなれば遅効性トラップとして敵に有効な存在。敵とは地上に動く存在全て。


 勝てるケンカだ。


 全て、魔神テアからもたらされた情報のおかげ。



「情報戦で完全に上回っている。というより、敵に戦術思考が無いのが気がかりですじゃ。このままでは完勝してしまいますじゃ」


「何か問題?」


 テアは可愛く小首をかしげた。わざと。


「もしや、彼らは偽物にせものでは?こちらに準備運動をさせるためだけの」


「まさか。本物だよ。前に見たままだ」


 魔城、飛竜の止まり木からでも神樹ユナハは目視できた。


 海中ではミリアステリオ始め海魔に傷付けられ、海上部分は無数の知虫に葉も枝も花も全てを食われ、枯れゆくユナハを。


 本来のユナハなら樹上部分の枝葉の全てが攻撃部位と化す。知虫の戦力では生き残れない。


 だが今、海中にある根っこの全てが海魔軍団によって排除されているため、ユナハは足場を作れない。そのため、獲物を求めるためでなく、体バランスを取り戻すためだけに枝葉を伸ばし、結果として脅威度を減らし、魔界側の攻撃の勢いを増してしまっている。


 グランドキアとかち合うのを避けるために港であるシア・ラインを攻めたのだろうが。完全に作戦ミスだ。


 わざと。120パーセントの力を出させない配置にした。「魔界での」100パーセントきっかりの実力に計量して送り出した。


 テアにはそれが分かる。ダイナソアの完璧な計算が知覚できる。


 あくまで試練なのだ。神位持ちを5名送り出すのすら、ダイナソアにとっては。


 そして残るは2名。


 魔王シャアルラが当たる空竜グランアルム。さらに未だ顔を見せない神獣エレイン。


 テアが、ちらりと知歯喜神パールの顔色をうかがうと、パールはすやすやと眠っていた。万が一の時には自己防衛程度になら動く・・・はず。


 首脳陣にとってパールは炭鉱のカナリア、すなわち警報機であった。そのパールが動かない。


 このままで進めば良いが。

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