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魔界猿雄伝  作者: にわとり・イエーガー
大山鳴動して子供2人。
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旅立ちの準備。

「サルタ様!これで良いっすか!」


「・・・はい」


 絶対にわざと様付けで呼んでくる、かつての上司。テンクウ。


 だからとて、嫌味ったらしいわけでもない。あちらも自分の立ち位置に苦慮くりょしているのだろうか。


「サルタぁ!」


「はい!」


 こちらは以前と変わらず。呼ばれる声に従い、サルタはミキメの下ろしたロープに荷物をくくりつけた。


 着々と、グランダの体に取り付けられた運搬うんぱん袋に長期旅行用の荷物が積み込まれていく。


 グランダは今、魔法師団演習場のはしっこを陣取って、出立の準備をしていた。


「グランダ。左右のバランスを取るから、少し体を起こして」


「こう?」


 重さなど感じていないかのように、数トンのバッグがふわりと持ち上がった。


「ちょっと左が下がってる!ミキメさん!」


「水だ!後ろに積んだ水を右っかわに持ってきゃ良い!」


 下から見るサルタ、テンクウ。それに上から見ているミキメ。3人は再度腰を下ろしたグランダの荷物を調整した。グランダ自身が苦にならずとも、荷物にかかる負荷は左右均等が望ましい。そうすれば落ちにくく切れにくい。


「順調のようだ」


「シャアルラ様」


 平伏ひれふしたままのグランダの頭部に、シャアルラが着地した。グランダの瞳をのぞき込みながら、シャアルラは会話を続ける。


「これから会いに行く相手は、私より強い。もし戦いになったら。逃げろ」


「嫌です。一緒に戦います」


 その答えしかない。魔王の騎竜たるグランダにはその答えしかない。


 そうと分かっていても、年下のグランダをむざむざ、自分の無力のゆえに殺すのは、忍びなかった。これはシャアルラの若さであった。


「サルタ様。私達も手伝いましょう」


「えっと・・・お願いします」


 人族3名。ガルタ、ルフ、マリーが集合時間ぴったりに現れた。予定とは違うが、まあ相手が言っているのだから、という事で人族にも協力してもらいながら、旅立ちの準備は整った。


 次にシャアルラはグランダから降りて、見送りに来た部下に話しかけた。


「ヒポリ。後の事は任せる。帰って来なければ、全てお前の好きにしろ」


 後に残す知歯喜神パールを含めた発言だ。パールを魔王テアと会わせるのは、流石に怖くて出来なかった。何が起こるのか、本当に予想が付かない。のでお留守番。今はパアルカラッソやオゥルネイアが相手をしてくれている。


「ご冗談を。見聞の旅は良いものです。さらなる成長を期待させて頂きます」


「ふん。嫌味か」


「残念ながら、本音です。若者の成長は早いもの。お帰りになる頃には、もう私など相手にもならないでしょう」


「・・・そうだと、良いがな。では行ってくる」


「はい。行ってらっしゃいませ」


 こちら、魔界の重鎮じゅうちん同士の会話は物騒だったが、お互いに緊張感と好意とをぜにした信頼があった。


「ガンズ。聞いての通りだ。ヒポリを補佐し、魔界を守れ」


「はっ」


 こちらは多くを語らない。大きなカブトムシであるガンズは相変わらずヒポリの肩に止まっている。あの頃から、その信は変わっていない。



 魔王がこんな少人数の連れで出立する。公式の動きとしては、ここ数千年の間にはなかった。


 もちろん、魔王シャアルネルラは好き勝手に動き放題だったので、特に意味はない。


 ただ本当にこれからしばらくは、魔王不在。魔王代行ヒポリを立てて留守を守る事となる。


 魔王シャアルラは向かう。


 かつての魔王テア。


 現在独立を保つテアに会いに行く。



 一度。シャアルラはガンズからの提案を受けて、答えられなかった。


 なぜなら。シャアルネルラならともかく、テアの現時点の能力は、シャアルラを遥かに超える。


 対応を間違えれば死ぬ。



 だがシャアルラの心は心地よい開放感に満たされていた。


 その理由がなんなのか。シャアルラ自身には分からなかったのだが。

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