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魔界猿雄伝  作者: にわとり・イエーガー
大山鳴動して子供2人。
71/103

トレインとサルタ。

「・・・」


「・・・ご、ごめんなさい・・・」


 サルタは私室。魔城内という絶対安全圏において、人生最大の危機に対峙していた。


 相対するはマリー。人界からの訪問者にして留学生。


 が、サルタにとっては・・・。


 いや。


 「トレイン・ミニッツ」にとっては。


「何が、どうなっているんですか。もう・・・」


 でも。


 マリーは抱きしめてくれた。泣きながら。


「・・・」


 サルタも泣いた。かつての自分を知る、かつての自分達を愛してくれた、家族に再会できたから。



「なるほど」


「皇族を潰して、身の安全を確保して。それからでないと、人界には戻れないんだ」


 サルタはあらかたの事情をマリーに伝えていた。あれから、何が起こったのか。全て。


「・・・トレイン」


「?なに?」


 マリーは複雑な表情で言った。


「皇母、ラアブレイ・ヨルギ・ギウは死にました」


「・・・は?」


 サルタは本当に不思議そうな顔をした。


「病没とされていますが、間違いなく、勇者レイン様排除という反逆の罪により、軍師サンゾウの手によって消されました」


「は?・・・え・・・?」


 分からない。


 サルタには何も分からない。


 そいつを殺すために魔界に来たのに。


 勝手に死んだ?


「・・・ぐっ!!」


 怒り。あふれ出す憤怒ふんぬてに、サルタは声を抑えきれなかった。


 勝手に死にやがって!おれが殺す前に!!


 理不尽であり手前勝手な話だが。それはサルタにとっての正義、大義。


 生きる道標みちしるべであった。


「・・・トレイン。かたきは討たれたんです」


 懊悩おうのうし、呆然とするサルタに、マリーは静かに語りかける。


 トレインの事情はよく分かった。よくぞ生き残っていた。魔族領に侵入し生存を図ったその行動力も素晴らしい。


 だから。


 もう帰ろう。




「あのサンゾウとかいうのが欲しかった、か?」


「はい。ですが、あちらもあの男を重用しておりますじゃ。無理に引き抜けば、ラアブレイ帝国という「タガ」が壊れかねぬと想像されますじゃ」


「ふむ」


 魔城最上階。王の間。


 いつものようにシャアルラはガンズからの報告に耳をかたむけ、策略のピースを点検していた。


「順応期間としておよそ半年。本格的な鍛錬期間として半年。1年の後には、チームを動かしてもよろしいかと」


「その間はヒポリで足りるか」


「ヒポリ将軍で足りなければ、魔界に足りる者はおりませぬじゃ。信じましょう」


 主従は最後の確認を行っていた。



 サルタ。いよいよお前を「戦力」として使う時が来た。


 存分に働き、力を示せ!


 お前の舞台だ。




 動くべき時が来た。


 神々に対峙するための第一歩を踏み出す。

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