トレインとサルタ。
「・・・」
「・・・ご、ごめんなさい・・・」
サルタは私室。魔城内という絶対安全圏において、人生最大の危機に対峙していた。
相対するはマリー。人界からの訪問者にして留学生。
が、サルタにとっては・・・。
いや。
「トレイン・ミニッツ」にとっては。
「何が、どうなっているんですか。もう・・・」
でも。
マリーは抱きしめてくれた。泣きながら。
「・・・」
サルタも泣いた。かつての自分を知る、かつての自分達を愛してくれた、家族に再会できたから。
「なるほど」
「皇族を潰して、身の安全を確保して。それからでないと、人界には戻れないんだ」
サルタはあらかたの事情をマリーに伝えていた。あれから、何が起こったのか。全て。
「・・・トレイン」
「?なに?」
マリーは複雑な表情で言った。
「皇母、ラアブレイ・ヨルギ・ギウは死にました」
「・・・は?」
サルタは本当に不思議そうな顔をした。
「病没とされていますが、間違いなく、勇者レイン様排除という反逆の罪により、軍師サンゾウの手によって消されました」
「は?・・・え・・・?」
分からない。
サルタには何も分からない。
そいつを殺すために魔界に来たのに。
勝手に死んだ?
「・・・ぐっ!!」
怒り。溢れ出す憤怒の果てに、サルタは声を抑えきれなかった。
勝手に死にやがって!おれが殺す前に!!
理不尽であり手前勝手な話だが。それはサルタにとっての正義、大義。
生きる道標であった。
「・・・トレイン。仇は討たれたんです」
懊悩し、呆然とするサルタに、マリーは静かに語りかける。
トレインの事情はよく分かった。よくぞ生き残っていた。魔族領に侵入し生存を図ったその行動力も素晴らしい。
だから。
もう帰ろう。
「あのサンゾウとかいうのが欲しかった、か?」
「はい。ですが、あちらもあの男を重用しておりますじゃ。無理に引き抜けば、ラアブレイ帝国という「タガ」が壊れかねぬと想像されますじゃ」
「ふむ」
魔城最上階。王の間。
いつものようにシャアルラはガンズからの報告に耳を傾け、策略のピースを点検していた。
「順応期間としておよそ半年。本格的な鍛錬期間として半年。1年の後には、チームを動かしてもよろしいかと」
「その間はヒポリで足りるか」
「ヒポリ将軍で足りなければ、魔界に足りる者はおりませぬじゃ。信じましょう」
主従は最後の確認を行っていた。
サルタ。いよいよお前を「戦力」として使う時が来た。
存分に働き、力を示せ!
お前の舞台だ。
動くべき時が来た。
神々に対峙するための第一歩を踏み出す。




