其壱話
「う~ん、風流だな~。」
春、桜の舞う季節。
俺、こと【御島凱羅】は、天音之島学園付属の新入生で、
学園へ続く地下通路を歩いている。
「ただの液晶だよ?」
「水を挿すな阿呆。」
今、風流に水を挿したのが隣の幼馴染壱【魁天莉】
自前のオレンジ髪をもみ上げだけ伸ばして後ろを首上でそろえている。
体つきは・・まあ平均高校生?
見た目はかわいいに入ると思うが性格は破天荒。
マッドサイエンティストで何度俺が実験台にされた事か・・・
さらに半々の割合で失敗して爆発する。
一応自他ともに認める「天才」
あと運動が壊滅的に駄目。
「むっ、何か変な事考えてなかった?」
「き、気のせいだ。」
ちなみに俺は黒髪を少し伸ばして後ろでまとめている。
金田一青年の髪型みたいなのだ。
性格は知らんがスポーツはまあまあ。
制服以外の服が全て真っ黒ということから中学では「黒の人」と呼ばれていた。
人が何かしているところを見て真似る事によって100%とはいかなくとも「コピー」する事が出来る。
男のプロフィール聞いても仕方がない。
思考を止めた俺は「周りの壁に映っている」桜を見上げる。
「にしてもすんげぇ桜だな~。去年とかこんなすごかったっけか?」
「うーん、そだね~。アマネ・・凱ちゃんが来たから・・・」
「あ?なんか言ったか?」
「い、いやいや!何も言ってないって。」
「そうか?」
俺や天莉は両親が学園建設関係者なせいもあって10年前学園が出来てからちょくちょくここに来ていた。天莉の両親が作った「学園管理システムAIアマネ」こと天莉の妹【魁天音】とも幼馴染的関係だ。
機械系が駄目な人でもサポートがいればって作られたらしく学園や地下通路、寮、校庭、など、いたるところに端末があり、そこからアマネに物を尋ねたり、話をしたり出来る。
と、ちょうど近くの端末から声がしてきた。
『お、おねぇさま、お兄様。』
「あ、アマネだ、やっほ~。」
『お、おはようございます。お二人とも入学式ですよね?』
「おう、これからは此処の生徒だからいつでも話せるぞ。」
『は、はい!』
天音の外見は天莉を少し小さくして薄いピンクの髪で、もみ上げを変えずに他を少しだけ伸ばした感じ。
体のほうも天莉をモデルに全体的に少し小振りにした感じ。
しゃべり方は天莉と正反対でおどおどしていて世界初のAIプログラムの癖に言葉をかむような奴。
いつも両親に連れられてきて帰るときのこいつの寂しそうな顔が頭に良く残っている。
「お~い、凱ちゃん?」
『えっと、お兄様?』
「っと、考え事していた。天音、時間は?」
『・・・あ、あと十分で入学式始まります!』
「ありゃ?」
まだ地下通路入って100メートルも歩いてないよな・・・
「ありゃじゃねえ!走るぞ天莉!」
「え~、私は今日徹夜して作ったダッシュシューズ履いて後から行くから先行ってていいよ~。」
「おう!」
俺は後ろを気にせずダッシュで走り出す。
地上へのエレベーターを待っているとき天莉がものすごいスピードで壁につっこんで気絶し、おれが背負っていく事になったのはまた別の話。