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野良狼、拾いました   作者: 桔夜読書
6/38

6話 主人公もクラスでのキャラが確定した模様

すみませんボランティアとかいってました。お爺ちゃんお婆ちゃんと歌ってました。

そろそろタイトル通りに拾えよって声が聞こえそうですが、ネット上において肉声は存在しないとかほざいてみry…すみません。作品内でこの日中には拾う予定なんで待ってて下さい。

まだ大半の生徒は緊張が崩れないのか休み時間の間は席で縮こまっていた。ちなみに大半に入らない渓や波涼は騒がしく自己紹介の件について言い争っていたが、事実を述べただけという波涼の言い分に渓は結局なす術なく撃沈した。

そして2限…現代国語の授業である。


「えー私はB組の担任をしています土居領二(りょうじ)と申します。科目は国語科目全般と戦術論の教授をさせていただきます」

そう言って頭を下げる初老の男性。黒縁の眼鏡を欠けている以外に特徴らしい特徴が見当たらず、まさに穏やかな雰囲気をした普通の教師としか説明のしようがない。しかし、そうは言っても彼らのような癖のある生徒の相手をするのだから見た目では判断できない何かがあるのかもしれない。

「では少し自己紹介がてら私の能力についてご説明したいと思います」

早速、普通ではない。

「そうですね。口で説明するのはなんですので……そこの君、えーと加賀さんですかね?あなたの香水は先週、駅前のショッピングセンターで発売された新作ですね。それと、間山君、君は武道の心得があるようですね。おそらく空手、でしょうか。えーと、深山君と浅海さんは相当親しいのですね。えーと…」

そのまま生徒本人しか知り得ないような情報を次々と言い当てていく、個人の反応からして全て当たりなのだろう。

「いいパフォーマンスになったでしょうか?何故、皆さんのことがわかったのかと言うと、実は臭いや音のおかげなんです」

教室全体がざわめく。そんな馬鹿な、いやあり得ない、等のつぶやきが聴こえる。

「いえいえ、あり得ますよ深山君」

ざわめきの中から個人のつぶやきを特定してレスポンスをする。聖徳太子もかくやと言った具合である。

「私は五感が異常に優れてまして、それを使って記憶したものは絶対に忘れないのですよ。つまり香水の匂いや歩く時の足運び、二人の生活臭の一致率の高さ、それらから先ほどのことがわかったのです。集中すれば、匂いの成分や関節や筋肉の稼働音、更には髪の毛の数などもわかりますよ」

そういってにこやかに笑う先生。


「まあ、この能力と記憶力があるから非戦闘能力クラスであるB組の担任をしているわけです。わかっていただけましたか?Twiterで驚きを呟いてる鷹乃さん?」

「えっ?はっ、はい…」

消え入りそうな声で返事する女子生徒。これで彼の授業で携帯が使えないことが確定した。いや携帯どころか不審な動きは何一つ見逃さないだろう。

「では、授業を始めましょう。教科書を開いて下さい」

そういって微笑む彼の姿は数分前とは大分違うものに見えた。


「いや、あれはかなりヤバいって身動きできない」

2限のあとの休み時間、渓が早速、授業の感想を漏らした。

「まあ授業中だからいいんじゃない?」

「でも全てを見透かされてる気がして妙に落ち着かないというか」

「まあ、ね」

渓の言葉にその場の全員が首肯する。確かにあれは怖いというレベルだ。

「でも、あれは先生の生まれつきの能力だし戦闘系でも無いから、どうしようもないよ」

そう、どうしようもないのだ。能力は細かく分類が出来るのだが、自分たちの戦闘系の能力は魔力を使わない限りは基本的には起動されない。しかし、土居先生のように身体的な才能のような能力は、常に起動しているのだ。力の加減で調節ぐらいなら出来るだろうがそれでもこの教室程度の広さなら関係あるまい。

「しかし、五感全てであそこまで見極めるとは恐れ入る。私も五感はかなり鋭いという自負はあったがあれには到底及ぶまい」

「へぇーれんれんも五感鋭いんだ〜どんくらい?」

「そうだな、目は暗闇が見通せる位だ。鼻は…この距離なら渓と波涼の臭いが近いことも朧気だがわかるな…あと渓よ…なんだかお前から変な臭いがするのだが…」

「えっ?どんな臭い?」

「うむ…なんというかな…イカのような…」

即座に波涼がブリザード級の視線を渓に浴びせる。

「渓…」

「望、お前も同じ男ならわかるだろ?それに俺はちゃんとシャワー浴びたぜ…これはきっと大守さんの嗅覚があまりにも凄いから…」

「嘘だっ!!」

両目を開いて波涼が叫ぶ。何故か血走った目と笑顔で鉈を持つ少女を想起してしまいそうな勢いだ。

「あたしが朝インターホン鳴らした時、まだ寝てたよね?だからあたしがお越しに行こうと部屋に入ろうとしたら飛び起きたよね?あれ?そういえば渓、あの時、着替えるからってアタシヲオシモドシタヨネ?ソノテデ」

今は冬?寒いよ。ははっおかしいなあ渓の奴、滝のように汗を流してる。そんなに暑いのかなあ…


休み時間が終わるまで、床には冷たくなった渓の体が横たわっていた。


「ほら、深山君、起きなさい。脈が弱いけど、まだ生きてるんだから…浅海さん、手を洗いましょうね。臭いが少し気になります」

3限は古典なので再び土居先生が現れた。流石の仏スマイルもこの時ばかりは少しそれを崩し、注意を促すのだった。

「古典の世界には、多くの歌が存在します。当時はそれを競う歌合わせなどを行い学識の高さを知らしめたりもしました。しかし位によって八百長なんかもあったようですね」

そんな豆知識を織り混ぜながら、和やかに授業は進む。

「まあ最初の授業なので皆さんには、古典の世界に馴染んで貰えるようなゲームをしてもらいましょうか」

そういって机脇の袋から箱をいくつか取り出す先生。

「やったことのある方もいるでしょう…百人一首です」

あるある、えー全然覚えてないんだけどー、色んな感想が口々に漏れる。

「まあルールは簡単なので誰でも出来ますよ。とりあえず5人一組を作ってください。机をつけてそこに札を並べてもらえますか」

言われた通り近くの生徒と組んで机をつける。すると同じ班の恋が声を掛けてきた。

「なあ望よ、百人一首とは何をするのだ?」

「ん?知らない?えっとこれは、歌を読み上げて、その歌の下の句にあたる部分が並べられてるからそれを取ればいいんだよ。最初は上の句を読むから、全部覚えてる人が有利だけどね」

「うむ、わかった」

手で感謝の意を示し、真剣に机上の札を凝視する恋。

「それでは読み上げますね。あ、いい忘れてましたが班の1位の方には成績に色が付くかもしれません。ではいきます」

さりげに凄いことを言って、始まる百人一首。

やはり学生が数学と同等に苦手にする者が多い古典。是が非でも成績を確保したいのか、全員目が血走っている。


戦いは苛烈を極めた。

全員が体育会系みたいなこのクラスは、反射神経は人一倍で、尚且つ殆どの人間は百人一首など覚えていない為、下の句を読んでからが勝負となるのは必定だった。


「よしののさとにふれるしらゆき〜」

「これだっ!!」ズガン

「はい、机を傷つけたので減点です」

「なにぃ!?」

渓は見た目通りの力を発揮して、予想通りの言葉を宣告されていた。

ちなみに望は八割を上の句で取って、余裕の1位である。残り二割は望の目と手の動きだけで札を判断するという、常人ばなれな技をやってのけた恋のものである。

結果的に1枚ごとに先生がその和歌の注釈をしたりして、古典に馴染むという目的は概ね達成した模様である。


「ぬお〜俺の古典の成績が〜」

一人は覗く。


そして4限。午前中最後の授業である。午後は基本、実習になるので座学の終了も意味する。


4限は英語である。

「ういーす。俺は矛刀(むとう)ってもんだ。C組の担任。科目は英語と歴史と保健と…戦闘実習を担当だったはず。校医もやってるぞ」

伸ばした髪を人くくりにして、顎髭を生やした教師である。まさしくちょい悪オヤジ的な雰囲気がありそうだが、羽織った白衣がそれを打ち消している。地黒の肌に鋭い目付きは兵士のそれにも見えるがやる気の無さげな表情で台無しだ。体つきは白衣の上からでも鍛えられてることがわかる。

「じゃ、教科書開け」

間をおかず教科書を読み上げていく。全員慌てて教科書を開く。

「よし、そこの…お前、お前だよ、訳せ」

適当に生徒を指差してく不良教師。本当に教師だろうか。

「座学とかだりいんだよ…」

教師にあるまじき呟きが聴こえた気がする。

「えー次は、そこに白いの、これ読め」

恋が指される。しかし、反応がない。

「ん?おい、寝てんのか?全くいきなりいい度胸してんな。俺だって眠いんだぞ」

「恋、どうしたの?恋?」

呼び掛けるが返事がない。本当に寝ているのか?

「おい、いい加減にしろよ」

先生が苛つき気味にくる。そこでようやく恋が声を漏らした。

「無理です…」

「あ?何が?読めねえ単語でもあるのか?」

問いに対し、さらに恋は何かを堪えるように言葉を紡ぐ。

「私には…無理です」

「だから何が無理なんだよ。人前で喋れないシャイガールか?あ?」

とうとう何かが振り切れたのか恋が立ち上がり叫ぶ。

「だから!私にはこのような暗号を読み解くのは無理だといっているのです!!」

「は?」

空気が凍る。まさにザ・ワルド。たっぷり5秒の沈黙を経て、時は動き出す。

「いや、嘘だろ?英語くらい少しは読めんだろ。ほらlifeとかほれ」

「…わかりません…」

相当に悔しいのか沈痛な表情で俯く恋。その仕草から本気だと悟ったのか先生は言葉を無くす。

「…でもよ、中学は卒業してるんだろ?英語は無かったのか」

「はい、麓の村にこのような暗号文を喋れる者はおらず、異国の言葉として中国語をやっておりました」

「マジで?じゃあ[今は何曜日の何時何分ですか?]」

いきなり中国語を話す先生。まさかのバイリンガル。それに対し間を置きながらも中国語で答える恋。幾つか会話をこなしそれで納得したのか息をつく先生。

「はあ…成る程ね。ったくどうしたもんかな…よし、後ろのお前」

「は、はい」

いきなり指されて驚く望。

「こいつに英語教えとけ」

「はいっ!?」

「いいからやっとけ。一人の為に補習とか怠いんだよ。お前ら、ファーストネームで呼び合う程度に親しいんだし、はい決定。後は頼んだ」

「えっちょっ」

「口答えすると俺の科目で成績0にする」

「………」

「よし、いい子だ。安心しろ。プリントぐらいは作ってやる」

何一つ安心出来ない最低教師の言葉。

「申し訳ない望。私が不甲斐ないばかりに…それとそのふぁーすとねーむとは名前のことか?」

「……これは横文字もある程度やる必要が有りそうだな…」

絶望的な状況に流石の無責任教師も顔をひきつらせる。

「そういえば恋が横文字言ったことあったっけ…あ、幾つかあるか……大丈夫だよ。恋は何も悪くないから、恋はね」

そういって少し恨みがましく先生を睨む。相手はどこ吹く風である。

「まあ頑張れ。これを機により親密にだな…」

耳障りな声を遮断する。この人は何を言ってやがるのだろう…

「うう…私の負債が貯まっていく一方だ。いつになったらお前に返せるのだろうか…」

悩ましげな表情で問いかけてくる恋。多分高校3年かけても難しいような気がしてきたが、口には出すまい。

「大丈夫だよ。僕も上手く教えられるかわからないけど一緒に頑張ろう」

「…本当に感謝する。もう恩人どころじゃないな…いっそのこと私を僕にして命令でもしてくれないと恩を返しきれないな…」

途端にざわめく教室。なにいっちゃってんのこの天然娘は…

「私なんかでよければ…私に出来ることならなんでもしよう」

ざわめきがヒートアップする。しかし…

「うるせえ!!いちいち騒ぐな!」

教師の一喝で静まり返る。流石教師である。少し見直した。

「ったく……お前ら、そういうプレイをするなら帰ってやれ」

前言撤回。最低最悪の爆弾を投下していった。


その後の時間は、クラス中のなんとも言えない視線を浴びながら恋に付きっきりで指導をするのだった。

後書きだけR18とかに出来ないかな

おまけ


昼休み


「れんれんってもしかしてお馬鹿さん?」

「そ、そんなことはない。ただ、知らなかっただけなんだ。あのあんごもとい英語とやらに関しては…」

「まあ中国語をあれだけ喋れたんだからちゃんと勉強すれば大丈夫だよきっと」

「そ、そうだろうか?」

不安げな上目遣い。効果、萌え死ぬ。望のスキル、痩せ我慢発動

「うん、僕も上手く教えられるよう努力するよ(こ、これは不味い)」

「そうか…一緒に頑張ってくれるか…ありがとう」

6割スマイル、効果、恥ずかしさで目を反らしたくなる。

「う、うん。とりあえずお昼にしようか…」

全員で机をくっつけて各々弁当を広げる。

「のぞみんの弁当美味しそ〜誰が作ったの?」

「僕だよ」

「なっ、女子力の高さにあたしは叶いそうにないよー」

「渓と波涼は…お揃いの弁当?」

「波涼のお袋さんが二人分作ってくれるんだよ」

「成る程ね…で、恋は…おにぎりね」

「うむ、やはり日本人はこれに限る」

「具は?」

「山菜や木の実だな」

「でもそれだけじゃお腹減らない?」

「確かに、欲を言えば肉や副菜が欲しいが…贅沢は敵だ」

「ふっふっふっ…そんなれんれんにはあたしのたこさんウインナーをあげちゃうよ〜」

「な、なんだそれは?」

「ん?ああお肉だよ。お、に、く」

「本当か?確かに肉の香りがするが、また奇怪な形をしているな…」

「気にしない気にしない♪はいお口あけて」

「ん?あーん」

「ほいっ」

パクっ

「…おお、これは美味しいな。波涼、貴重な栄養感謝する」

「いいってことさ。あたしとれんれんの仲じゃない」

「まだ出会って1日じゃないか…だが、その言葉嬉しいぞ」

「あはは、そう言われると照れちゃうな〜…ほらみんなもれんれんに物資を支給してあげよっ」

「ん?俺はもう米しかないぞ」

「僕はまだ幾つか…あ、そうだ。ちょうど食後のバナナがあった」

カバンをさぐる

ジーガサゴソ

ジッパーを開き、中のものを取り出す。

「はい恋。僕のバナナ…いる?」

望は自分の大きなバナナを差し出す。

「これは?とても…大きいな…有りがたく貰おう。しかしどうすれば…初めてだからよくわからないな」

始めてみる反り返った物体に戸惑いを隠せない恋。

「簡単だよ。まずはこうやって皮を剥いて…やってごらん」

自分の手を使って目の前で皮を剥いて見せ、それをそのまま差し出す。

「ふむふむ、これで大丈夫か?」

恐る恐る慎重に皮を剥く恋。

「うん、上手上手。そのまま食べていいよ。はいどうぞ」

先端を恋に向かってつき出す。得体の知れないそれに緊張の眼差しを向ける恋。喉が自然となる。しかし覚悟を決めたのか…

「いざ…!」パクリ

一口で半分近くを丸呑みする。

「うん。いい食べっぷりだね。ほらどんどんいいよ」

さらにそれを恋の口へと運ぶ。

「む、そんな一気には無理だ」

「あ、ごめんごめんつい…」

「しかし独特の味だったな…癖になりそうだ」

「そんなに?こんなんで良ければまたあげるよ……ってどうしたの?渓、波涼?」

「お前ら、そういうプレイは帰ってやれ…見てるこっちが辛い」

「本当よ…のぞみんにれんれん…恐ろしい子」

「え?プレイ?なんのこと?」

「今までの会話をよく思い出してみろ…できる限り扇情的に…」

「え?一体何を言って………………………………いや、まさか」

「ふっ、どうやらわかったようだな。この変態め」

「………」赤面なう

「さて、望。昼飯も終わったし、次は実習だからな…着替えに行かないとな…さあ立てよ、望。どうした?なあ、立てよ…それともなんだ?もうたってるのか?ふっ、安心しろ…この会話を聴いてた野郎どもはビンビンだぜ…俺を含めてな!」

ガタッ!ダダッ!

駆け出す男子生徒たち

しかしその疾走は障害物によっていまいち加速しない。

取り残される望。

「ふふっどうするのかなのぞみん〜」

「ん?みんなどうしたのだ?いきなり走り出して?望もどうした顔色がよくないぞ?」

「………」

沈黙で鎮静化をはかる望。

「ねえねえれんれん。またのぞみんのバナナ食べたい?」

「ああ、そうだな…また食べたいな。望のバナナ」

「波涼のバカ…」

ダダッ

着替えを前にして走り出す望。


着替え後に渓は言う。

「あれはその辺のバナナじゃたちうち出来ないな。俺のバナナは勿論だ」



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