5話 平和な教室に現れた未確認生命体!女生徒の悲鳴が木霊する!
前回、地の文手抜いた感が半端なくてすみません。眠かったのです。しかしコーヒー飲んだ私に死角(眠気)は無い!ドヤア
今回は化け猫や痴女やUFOやアナゴさんが現れたりと騒がしい回です。
「ここが…」
「ああ、間違いない」
無事、目的の教室へとたどり着いた二人は少し顔を強ばらせながら扉を開いた。
その瞬間だった。
「獲物だ!!」キュピーン
突如、謎の物体がこちらに向かって飛びかかってきた。その動きは俊敏であり滑らか、飛びかかることに迷いがない。
だが、とりあえず反射的に二人ともカウンターでパンチを喰らわす。
ドグシャア
「ぶるあああああ!」
未確認飛行物体とかしていた飛来物は慣性のベクトルを襲撃時と真逆にしながら吹っ飛ぶ。どこかできいたような雄叫びが聞こえた。
ドアを開いてからここまで。およそ3秒。
「な、なんなのだ?今のは?」
「わ、わからない」
飛んできたから跳ね返したという認識しかない彼らには全く状況が掴めない。
とりあえず、件のUFOに注目してみる。どうやら、それは人のようであった。一瞬すぎて分からなかったが、今なら髪の茶色い女であることがわかる。かなりジャストミートしたはずだが、女は早くも立ち上がろうとしている。
「こ、この、あたしが、たったの一撃で、このダメージ、だと?」
しかし、相応のダメージはあったらしい。いまだよろけている。セもかくやと言った具合の満身創痍っぷりだ。
「はーい、アウトー」
いきなり、声が聞こえた。声の主はいつの間にか女の後ろにおり、その首根っこを掴んで捕獲していた。
「うにゃっ!」
猫のような悲鳴をあげるUFO女。
それを腕にぶら下げたまま、先ほどの声の主が近づいてくる。
「いやー悪いねお二人さん。登校初日にこの馬鹿が迷惑を」
「え?あ?はい」
全く状況が掴めない。それは隣も同じなのか曖昧な表情をしている。
「あ、とりあえず自己紹介が先かな?俺は深山って言って、んでこれは幼なじみの浅海っていうUMA」
あ、UFOってのは案外惜しかったんだ。
なんて下らないことを思いながら話を聞く。
「いやね、この馬鹿ね。可愛いもんとか面白いもんが大好きでさ。だから教室に入ったお二人さんに反応しちゃったのかと」いや、確実にあれは大好きとかいう次元を超越しているだろう。しかもあの目は狩人のそれに違いない。
「うむうむ、二人とも一目であたしのハートを射ぬいたよ。可愛い女の子が二人も………ん?君?もしや男の子?」
「ええ、まあ」
よくある間違いなので今更この程度では落ち込まない。
しかし、その瞬間、いきなり震え始めるUMA。もとい浅海さん。
「…き た こ れ !!この容姿で男の子、いや男の娘とかメシウマ杉でしょ!誰得?あたし得!これはもうお持ち帰りオッケー?オッケーだよね!!ムハー!みなぎってきたー!こんな可愛い子が女の子の筈がないってね!!まさかこの眼で拝める日が来るとは…神様ありがとー!これをおかずに3日は逝けそうだよ!ア゛ッー!」
彼女は早口でわけのわからないことをまくしたて、そのままトリップして昇天した模様。
「ハア…ハア…じゅるり…失礼…あまりの萌えレベルの高さに思わず我を失っちゃったよ」
呼吸荒い怖い。何故か自分を見る目が明らかに常軌を逸している。
「こらこら怯えてるだろ。自重自重」
「ムキュッ」
飼育員がたしなめる。あまりの状況変化についていけないが、とりあえずまともそうな彼に話し掛けることにした。
「えっと、その…」
「まあ確かに、お前が興奮する理由もわからなくはない。しかし、ここは外堀を埋めてから籠絡するのがいいと思うんだ。相手は希少価値が高いんだから一度逃したらなかなか現れないぞ」
「………………」
注意の方向性が明らかにおかしい。どうやらこの二人、本質は近しい存在のようだ。
「…ということで次からは気を付けるんだぞ」
「イエスサー!」
どうやら話は終わったらしい。正直、逃げ出したいが同じクラスとあってはそれもかなわないので、おとなしくすることに決める。
「さて、改めて名乗っとくか…俺は深山、深山渓だ。渓は渓流の渓だ」
渓は体格がよい男で、望からは大分見上げるようにしないと会話が出来ない。おそらく180近いだろう。黒髪黒目で短い髪を後ろに流してる風貌はどこかの運動部のキャプテンさながらだ。軽めの口調の割に声には渋味がある。
「とりあえず一年間よろしく。んでこいつは」
「あたしは、波涼、浅海波涼だよっ。涼しい波って書くんだよ。とりあえず波涼って呼んでね〜。一年間よろしくっ」
グッと親指をつき出してサムズアップする波涼。彼女を一言で言い表すなら、猫。そんな表現が当てはまる雰囲気を放っている。身長はおそらく150も無いだろう。隣の深山と比べるとなかなかのアンバランスだ。髪は明るい茶色で肩に掛かるくらいの長さまで伸びている。瞳は髪に比べると深めのブラウン、しかしその目つきはやはり猫を彷彿とさせる。
「うん、よろしく。僕は神無望。それで彼女が…」
今まで黙りこくっていた恋にふる。
「大守恋だ。これから一年間、よろしく頼む」
先程の件から僅かに警戒してるのか、やや固めの挨拶である。
「オッケーオッケーなんでも頼まれちゃうよ〜。よろしくのぞみん、れんれんっ」
怪しい笑顔の上になんかよくわからないあだ名を設定した波涼。そのまま恋にダイブする。
「う〜もふもふ〜ぱふぱふ〜」
二人の身長差はおよそ20。その状態でダイブすれば当然、波涼の顔は恋の豊かな山脈に着地するのが普通である。
「う、な、何をする。どこを触って、こ、こら鼻息をあてるな。ま、まて、や、やめ、ちょっ、そこはだめっ…あ、の、望、助け」
「スーハースーハースーハーくんかくんかくんか…ペロペロしたい…」
「とても…百合だな」
「……………」
しばしお待ちください…
数分後
「いや〜余は満足なり〜。れんれんのあれは最高だね〜感度もばっちしだし。チャージ完了!」
「ハア…ハア…き、きさま…人の精気を吸う類の化生だったか…」
そこには顔が艶々の波涼と、恍惚とした表情の恋がいた。恋が涙目なのはきっと気のせいだろう。そうに違いない。「にゃにゃ〜そうにゃ〜あたしは可愛い子から可愛い成分をすいとる化け猫にゃ〜」
可愛い成分ってなにさ…
望は胸中で誰にも届かない突っ込みをするのであった。
その後、しばらくは望の席あたりに集まって話していたが、気づけば他の席もその大半を生徒で埋めていた。何人かは恋同様に少し大きめの荷物を携えている。実習で使うのだろう。
「もうこんな時間か…」
いくら早く来たとはいえ、歓談に興じていれば時間はあっという間に過ぎるものだ。
「だな、もっと色々と話したいが…そろそろ先生が来るかな。まあ休み時間にまた親睦でも深めようや。ほれ、お前も席に戻れハウスだ。ハ ウ ス」
渓は席に戻りながら小さな幼なじみにも注意する。
「犬扱いするな!」
「いや、猫扱いだ」
「なら許す」
「いいんだ!」
こんな感じのやり取りには少し慣れたが、どうしても望は突っ込まずにはいられない。おそらく彼がこの後もこの役目を担い、苦労することはひを見るより明らかだ。
「それじゃのぞみんにれんれん。また後でね〜」
それに笑顔で相槌を返す。
今の席順はとりあえず出席番号になっている模様。基本、男女比がクラス毎にバラバラなため、それらを総括した名前順がそれに当たる。クラスは全部で30人(席の数が正しければ)程度で、1列に五席ずつでそれが6列あり、その前にホワイトボードや少し高めの教壇がある。所謂、典型的な教室と言えよう。
「近くでよかったね。まあどうせ席替えとかがあるだろうけど…」
自分の席の目の前が恋の席である。正直、身長差が少し辛い気がする。
「当面はこれだろう。それに席替えまでに皆と親交を深めれば…もちろん、望が私の近くがいいと言うなら吝かでは無いが…」
平気そうに振る舞っているが、不安気な様子が端々に見える。
「うん、出来ればこのままがいいかな」
それを無意識に理解しているのか、或いは本心か。彼女の求める答えを自然に言う。
「そうか…まあ私も返さねばならぬ借りが多いからな、近い方が都合がいいしな」
「ふふっ、そうだね」
彼女のこじつけの理由が微笑ましく、少し笑ってしまう。
「む」
本心を察せられた事を察したのか、少し唇を尖らせ前へ向き直ってしまう。恥ずかしさと笑われた事に対する憤慨を示すには余りに幼稚な態度だが、不思議と合っている。
ガラッ
そんな事を思っていたら、時間より僅かに早いが前の扉が開き、先生とおぼしき女性が入ってきた。立っていた生徒も少し慌てて席につく。
丸眼鏡を掛けた女性である。顔は童顔で、表情はニコニコとしている。髪はクリーム色で背中あたりまで緩やかに波をうっている。目は垂れ目気味で透き通った翠色。目尻にほくろがある。しかし、これだけ情報があっても年齢が判然としない。まさしく妙齢の美女と言う形容詞が当てはまるといった具合だ。教壇に立った彼女は、可愛らしい声で挨拶の言葉を口にする。
「みなさん、初めまして、かな?それとおはようございます。私がこれから1年間あなたたちの担任を務めます……盾衣守です。1年間よろしくね。それじゃ、今から最初のホームルームを始めようかな」
そう言いながらホワイトボードに名前を書き終わった彼女は、出席簿らしきものを広げる。
「ん〜とりあえずみんなの自己紹介からしてもらおうかな?一応1限の時間もホームルームに充てるから大丈夫かな。じゃあ出席番号順で…明智くんからお願いしていいかな。名前と、趣味と…なんか一言あると嬉しいかな」
そんな調子で普通の学校らしく、自己紹介タイムが始まる。それに対し盾衣先生が質問をして少し内容を深めつつ、生徒の緊張を上手くほぐしていく。
「大守恋だ。趣味は、昼寝と鍛練。地方の出ゆえ、至らぬ所が多々あると思うが、力を貸してくれると有難い。よろしく頼む」
なんと色気のない自己紹介。端からそんなものは期待していなかったけど…昼寝と鍛練て…
「えーと、鍛練っていうのは能力の鍛練とかかな?」
「はい、それもありますが、刀での素振りを日課にしております」
「ふふっ。まるでお侍さんみたいだね。えーと次は神無くんかな……神無くん?」
「えっ?あっはい」
気がつけば名が呼ばれており、慌てて立ち上がる。完璧に傍観者を気取っていた。微かな笑いが聞こえた。主に前から。
「えーと神無望です。趣味は読書です。と、とりあえずよろしくお願いします」
我ながらなんと味のない自己紹介か…先生も少し質問を考えてるよ…とほほ
「えーとずっと気になってたんだけど、どうして片眼鏡なのかな?」
「あ、えーとその…か…ち、父から貰った大事な物でして」
流石に形見などという重いワードは言えないので咄嗟に言い方をかえる。嘘は言ってない。
「そうなんだ。良く似合ってるね。えーと次は…」
なんとか切り抜けた。あまり人前で喋ることが得意でないのが露呈
してしまったが問題はないだろう…
その後は、特に波乱なくクラスメイトたちの自己紹介を終えた。
「さて、それじゃあ最後に私の自己紹介をちゃんとしようかな」
そう言って出席簿を閉じ、正面に向き直る先生。
「盾衣守です。趣味はガーデニングかな。担当教科は、理系科目全般と能力実技かな。何か質問とかあるかな?」
「年齢は?」
「女性に年齢を聞くのはマナー違反だよ」
お決まりの応酬。
「彼氏はいますか?」
「いないかな」
ざわめきたつクラス。
「スリーサイズは?」
「うーん、それは恥ずかしいかな…」
まあ目算でも平均以上だろう…いやいや何を考えている。
そんな感じで時折真面目な質問もあったが、大半は下らない質問続きで幕を閉じた。
その後はクラスの役職を決めるなど今後の予定の説明などで時間が経過していく。
「えーと、少し時間が余っちゃったかな…それじゃ最後に私から皆さんにお伝えしたいことを言おうかな」
そう言って、少し姿勢を伸ばしてクラスを見つめる先生。
「皆さんが持つ能力、ギフトは私たちにとって神様みたいな存在からの贈り物です」
ギフト…それは一部の人々に与えられた特殊な能力を指す。その能力は神が人の身にお与えになったものと考えられている。そのため贈り物と呼ばれる。「でもこれはどんな人でも色んな形で持っています。才能、という形で。あなたたちの場合、それが目に見える形で与えられたものであるというだけです。だから決して自分だけが特別だとか、異端だとか思わないでください。それはみんなの個性です」
そういったギフト持ちに有りがちなこととして、自分が神に選ばれたと言う輩は多い。そのため宗教的な対立も少なからず存在するのだ。それを戒める話は続く。
「最近では、ギフトを持った人々が自分は選ばれた存在と思い込んで、心無い行いをしてしまいます。だから、思い上がらないで下さい。誰しも平等で特別なんです。そのことを忘れずに皆さんの中のギフトという才能をこの学園で磨いていってください」
平等で特別、か…
もし運命の神様がいるならもっと前者に気をつかって欲しかったと愚痴らずにはいられない心境である。
「それじゃ、これにてホームルームは終わりかな」
ちょうど1限の終了を知らせるチャイムが鳴り響いた。
それは同時に、この学園での生活が始まることを報せる福音にも聴こえたのだった。
すみません。前書きの痴女ですが、淑女とお読みください。以下おまけ
「えーと次は浅海さんかな」
「はいっ!浅海波涼です!スリーサイズは77、60、78の貧乳です!希少価値です!趣味は次元を問わず可愛いものをハントすることです!好物は胸です!今のところれんれんのが最高です!DとかEじゃない、あたしはもっと恐ろしいものの片鱗を味わいました!何を言ってるかわからないと思いますがあたしもわからないです!最後に一言!深山くんはあたしに欲情するロリコンです!!!」
「なにぃ!?おい波涼!なに俺に無茶ぶりしてんだ!」
「事実を言ったに過ぎません」ドヤア
「んーと?二人はお知り合い?」
「裸と裸の付き合いです」ぽっ
「そこ頬を染めるなあ!一体何年前の話をしてる!一緒に風呂に入っただけ…はっ!?」
「2年前が最後だっけ〜?あと泊まりに行ったのは…1週間前かな〜?」ニヤリ
この瞬間、深山のキャラは確立された。
「なあ望よ、ハントとはどういう意味なのだ?」
「捕まえるという意味だよ…」
「でぃーとかいーというのは何の話だ?」
「女性の格付けみたいなものかな…」
「ロリコンとはなんだ?」
「小さい女の子を大事にする紳士の事だよ…」
「どうして深山はのたうち回ってるのだ?」
「きっと(周りからの視線の)痛みに(心が)耐えきれないんだよ…」
「む?あいつどこか痛いのか?」
「存在かな」