29話 第一部エピローグ
はい。題名通りのエピローグでございます。
めっちゃ短いですのでさらっと前書きも済ませます。
朝。
いつもより睡眠時間が少なくても、普段の規則正しい生活によって作られた体内時計は嫌でも自分を目覚めさせる。
更には遅れて目覚まし時計が鳴り響く。
それをなけなしの力で止めるも、睡眠不足は否めないわけで、頭や体の重さばかりはすぐにはどうしようもない。
「んん…」
辛い。
昨日…いや、日にちとしては今日だ。あれほどの戦いをこなしたのだから当然だ。
二度寝。サボり。安眠。
そんな魅力的な提案が脳内に木霊する。
重くなる瞼。差し込む光を徐々に遮断していく。
が、それを許さない存在が、この家にはいた。
ドタドタドタドタ…
以前ならする筈のない騒々しい足音。それが怪奇現象でも何でもなく、確かにこの家に存在する住人が発するものであることは容易に想像がつく。
バッと扉が勢いよく開く。
「望!朝だ!」
少し前までありえなかった日常の姿――大守恋が、寝起きとは思えない溌剌さで立っていた。
望は、その声に薄く瞼を開き、その姿に軽く嘆息しながら口を開く。
「おはよう…恋……ふあ…」
あくびと諦めと喜びと…色んなものが混じった挨拶をした。
サクッという音をたててトーストをかじる。今日の朝に限っては申し訳ないが手抜きである。
しかし、恋はこれといって不満も言わず上機嫌に食事を取っている。
「機嫌いいね」
コーヒーを啜ってぽつりと言う。
「む?そうか?いや、そうだな…何だかこう…気持ちが昂っていてな…余韻というべきか…何にせよ私は今、幸せだな」
恋が華やかに破顔する。
「そっか」
その顔に、自然と自分も笑顔になる。
そのまま静かに朝食を終える。
洗い物を片し、身支度を済ませ小休止。
時間にもかなり余裕がある。急ぐこともないだろう。
「望」
「何?」
テーブル越しに恋が静かに名前を呼ぶ。
「私たちはついさっきまで、戦っていたのだよな?」
確かめるような問いかけ。
確かに自分も実感はない。
あんな激闘は全て嘘で、この日常も夢ではないかとさえ思えてしまう。
しかし、現実だ。
自分が何人も殺してきたことと同じくらい有り得なくって
恋が半分得体の知れない神様だってことと同じくらい馬鹿げていて
今ある日常と何一つ変わらないくらい現実なんだ。
「戦ったよ。そして勝ったんだよ。それにほら、証拠に」
少し身を乗り出して、彼女の首に触れる。
「こんなの貰っちゃったしね」
首輪。はた迷惑な物だが、物理的に二人を繋げる確かな証。
「ん…ああ。そうだな…勝って…私たちは一緒にいていいのだよな」
「もちろん」
恋の瞳を見て強く断言する。
「…そうか」
心から安堵したように微笑む。
そして口にしたことにより望の中にも実感が広がる。
まだ不安の種は止まない。
恋を狙うもの。恋が抱えるもの。望が抱えるもの。
彼らの日常には、日常にそぐわないような危ういものが潜んでいる。
しかし、それは大なり小なり誰でもあるに違いない。
もっと身近な話であれば、高校生の同棲なんて本来はとても危うい。
でも、これが彼らの日常だ。
荷物は人より多いが、人より頑張ってそれを耐えればいい。
だから、彼らは歩き出す。
そうやって踏み込んだ足跡が日常となって、きっと自身を支えるのだから。
「行こう」
「ああ」
そして、玄関の前に立つ。
恋が廊下へと振り向く。
その顔には別れへの悲しさも悲壮な覚悟も何もない。
ただ、帰ってくる家に対する挨拶を述べるがために。
ドアノブを掴み大きな声で
「いってきます!」
「いってきます」
返事はない。でも、何かが聞こえた気がした。
そうしてドアを開く。
まだ見えない日常を歩き出すために。
いやあ長かったですね…
なんていうかね…
ちょっと賢者タイム…?
まあまだまだ続きますけど!
とりあえずここまで御愛読してくださった皆様方!本当にありがとうございます!
何だかんだうだうだ言いながら書き続けられてたのは、やっぱり読んでくれる人がいたからかな…って思ったりします。
恥ずかしいからもう言いませんよ。シャイボーイなんで。
それでは、次の話を気長にお待ちください。




