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野良狼、拾いました   作者: 桔夜読書
33/38

28話 恋が正式なペットになりましたー

お久しぶりです。クズです(ゲス顔)

まあ卒論の題目やら就活の登録やらが一段落したんで…少しは肩の荷が降りたんじゃないかなと思います。

題名でわかるやもしれませぬが、ながーい戦いが終わりますよー


いやー辛かったですねー大して面白くない上に、そんな文章力高くないから伝わりづらい戦闘シーン。しかもシリアスと思いきや、作者が我慢仕切れずにラッキースケベを導入する始末。実に脈絡のない感じですね。

だって…エロがないとやる気がww


ということで、読みづらい戦闘は流し流し読んでもらえればストレスないかなと思います。

まず、動いたのは恋だった。

膨大な魔力を使った為だろうか、いつの間にか出していた耳と尻尾を揺らして、全力で前へと踏み出す。氷の上を走っていることを感じさせないほど、自然に。獣のように。

次に、望が動いた。

開いた扇に魔力を込めて周囲を扇ぐ。

ふわりと浮かび上がる体。そのまま決して早くはないものの、地上から5メートルほど離れた高さで静止。

即座に事態に対応出来るよう魔力を練っておく。

矛刀は動かない。

正確には足を忙しなく動かしているが、迫りくる恋に対して、特別な動きはしない。

恋は特にそのことを気にする素振りなく、正面真上から斬りかかる。

今までにない二の太刀を考えない無謀に見える一撃。

そして、それを難なく避ける矛刀。当然のように隙だらけの恋にカウンターを入れようとして…


「がっ!?」


吹き飛ばされた。

何が起こったのかもわからずに、慌てて受け身をとって着地する。

そして、状況を即座に理解する。

衝撃を受けたのは腹だった。恋は間違いなく反撃できる体勢では無かった。

しかし、矛刀が先まで立っていた場所には、氷の円柱が聳え立っていた。

おそらく死角であった真下に形成したのだろう。そう、瞬時にだ。

「やりづれえな…」

つまり、この屋内において恋は、自由に能力を発動できるのだ。

おまけにこちらは動き続けねばならない上に、足場は最悪ときた。

再び、迫りくる恋。正面からやりあうのは不味いと判断し、後ろへと下がり、距離を開ける。

そして…無様に転んだ。

「おうっ!?」

見ればいつの間にか、足元に段差が築かれていた。

小賢しい…っ!

しかし、今この場においてとても効果的なのは間違いない。

現に、矛刀の目の前には刀を降り下ろす恋の姿がある。

「っ…らあっ!」

不安定な体勢から右拳で無理矢理弾く、そのまま転がるように距離を開ける。無論、足元に注意して。

しかし、それがまた相手の狙いだった。

「っ!?」

殆ど勘だった。

咄嗟に危険を感じ、全力で吹っ飛ぶように後ろへ逃げる。

同時に、上から降り注ぐ数多の氷柱。当たれば、只ではすまない質量だ。

回避できたのは奇跡みたいなものだ。

しかし、当然のように続く攻撃を奇跡だけで回避するのは、無論無理がある。

「ぐっ!?」

体が、切り刻まれる。

見れば、上にいた望が扇をこちらに向けていた。

見えない風の刃が総身を舐めるように切りつける。

「今だっ!!」

どうやら、周囲を回るように動いているのか、身動きが取れない。

「わかった!」

そして、それが狙いだった。

足元から凍りついていく体。

流れた血と共に矛刀の全身を飲み込む。

その作業に5秒と関わらなかった。

沈黙する二人。

いつの間にか望も地上へ降りて、固唾を飲んで見ている。

「やったか…?」

恋が不安まじりに言葉を漏らす。



「そいつは、フラグって奴だぜ?」

「「!?」」

ぴきぴきという音を立てて氷が崩れ始める。

「っ…化け物め…!」

「あ゛ーざみい…」

鼻声でそう言って徐に出てきた矛刀の体には、傷ひとつ無かった。

「身体能力の向上…単純ですが、強力なギフトですね…」

渇いた笑いを溢しながら、文句を垂れる。こんな怪物をどうやって止めろと言うのだ。

「あー…半分正解ってとこだな」

「どういう意」

「要は」

「「っ!?」」

「倒せばわかるってことだ」

言葉を言い切る前に、矛刀の拳の音と、言葉が届く方が速かった。

扇で受け止めて、弾かれるように後ろへ下がる。それでも腕が痺れている。更に追撃のため矛刀が迫る。

「させるかっ!」

目の前に氷の壁が作られる。

今のうちに体勢を……っ!?

硝子のように割られる壁。砕けた氷が飛び散って望の視界を塞ぐ。

「うっ!?」

その向こうから伸びてきた手が望の首を掴む。

「受けとれっ!!」

「わあああっ!?」

そのまま遠心力を感じる間もなく恋のいる方向に片腕で投げ飛ばされる。

「なっ!?」

咄嗟に刀をしまって、不安定な体勢で受け止めようとする。

そこに顔面から吹き飛んでくる望。

スロー再生のように神経が加速する中、彼に見えた最後の景色は…胸だった。

あ、まず…

どうしようもないことを理解し、同時に彼は、考えるのをやめた。ぽよん……ごろごろ…ちゅどーん

わーーーー


何も感じないし聞こえないし見えない。

だから、胸の谷間(柔らかい)に顔を埋めて受け止める為に頭を腕で(柔らかい)ホールドされながら諸共吹き飛んでくんずほぐれつ(柔らかい)しながら回ったことなど知るわけがない。


……ごめんなさい。全部知ってます(泣)


「うう…だ、大丈夫か、望?」

「…」

あと、もうひとつもんだい、が…

「望?」

「…」

こきゅう…

説明しよう。

現在望の顔面は恋の豊満な胸に埋まっており、息を吐くのも吸うのも色々と不味い状況。人が人であれば喜んでhshsするだろうが、望はその誘惑に耐えているのだ。

震える手のなけなしの全力で右手で恋の腕をタップする。

「む?」

恋はタップに気づき、自分の腕をしばらく眺めた後、意図を理解し、5秒ほどの時を経て、腕を離す。

「…これでいいのか?」

「はあ…はあ…うん…」

「どうした?顔が赤いぞ?」

「息が、出来なかった、せいだよ」

「そうか」

それ以外にも理由はあるのだが…とりあえず目の前の恋が、顔色一つ変えていないこと、受け答えが淡白なことに何とも言えない理不尽なものを感じる。

「さて、切り替えて行くぞ」

何事も無かったようにそのまま立ち上がり、前へと向き直る。

それを見て、戦闘中に不謹慎なことを考えていたことを恥じる。

切り替えないと…

が、その前に

「…恋」

「どうした望」

「耳と尻尾が大変なことになってるよ」

それはそれははち切れんばかりに。

「…っ」

小さな呻き。やはり自覚はあったようだ。ささやかな嗜虐心が鎌首を持ち上げるが、自重して一言。

「切り替えようか」

「…わかっている」

拗ねた返事で向き直る。耳と尻尾が少し垂れ下がっている。やっぱあれ便利だなと、切り替えた思考の片隅で思う。


「それにしても…近接じゃ勝ち目ないね…」

「ああ、間違いなく我々はその点において劣っている。しかも…」

「しかも?」

「あろうことか手を抜いているのだ。舐められているとしか言いようがない…!」

拳を握り締めて静かに怒りを露にする恋。

「なら、距離を開けて潰すしかないよね。油断している今のうちに」

おそらく、向こうはこちらの出方をうかがう姿勢だ。必要以上に攻めては来ない。こちらの手を見極めるまでは対応に時間を割くだろう。

「恋、少し耳を貸して」

「!…策があるのか?」

そういって頭の上の耳を近づけてくる。

「うん…あのね…」

矛刀に聞こえないように、息を潜めて策を伝える。


「…ふむ…なるほど」

「どう?」

「結論から言うと、可能だ。だが、そんな単純な手でなんとかなるか?」

「目には目を、だよ」

「力には力ということか…わかった」

そして改めて前へ向き直る。

「ん?話は終わったのか?」

「待って貰ってすみませんね」

「いやいや、俺も傷完治できたし、いいんじゃね」

やはり、何もしないほど温くはない。得体の知れない能力で矛刀の体には傷ひとつ無かった。

「それじゃあ、来いよ」

「それでは…ウインド・アーマー」

望は、扇を開くとかなりの魔力を込めて、自分らに煽った。

「っ!?」

途端に、矛刀の視界から二人が消えた。

「おいおい……あいつは忍者か?」

見えない。全く見えない。おそらく土居あたりなら感知できるかもしれないが、生憎と自分にそんな能力は備わっていない。

おそらく近付けばわからないことも無いだろうが、それをさせてくれるほど相手は甘くないだろう。気付けば空中の至るところに、小さな空気の渦が形成されていた。

視認はかなわないが微かな風の音が聴こえる。この渦により音と魔力による感知を封じているのだろう。

前者はともかく後者は苦手な分野だから必要なかったのだが…

「当然、それだけじゃねえよな」

試しにそれらしい場所に触れてみる。

瞬間、小規模な烈風と共に小さな風の刃らが細かく腕を傷つける。

大したダメージではない。無視しようと思えば出来なくもない。だが、見えないことと発生の速さが厄介極まりない。顔にあたりでもしたら失明もありうる。ゆえにどうしても動きは鈍る。

「…姑息な手を使いやがって」

これで機動力はかなり削がれた。

どうしたものか…いや、どうしてくるのか…腕を組んで思案する。



その様子を望たちは離れた位置で見ていた。

球形の風。密度の高い風の膜を張ることで光を妨げ姿を隠しているのだ。また、多少ではあるが声やにおいなどが漏れることも防げる。こう言われると万能の隠れ蓑のように聞こえるが当然欠点もある。

1つにあまり激しく動くと効果が薄れてしまうこと。

いくら密度の高い膜と言えど風だ。存在を固定すること自体難しいのだ。とはいえ普通に走る分には不自由ない。

次に魔力の消費が激しいこと。操る風はかなり膨大だ。1度展開すれば自立して循環するが、魔力の絶対値が決して多くない望には少し辛い。

そして最後に…

「望」

むにゅ

「…………何?」

この技は、ウインド・アーマー。つまり一人用だ。

「大丈夫か?」

ぐにゅ

「……………何が?」

でも僕らは二人。

「表情が死んでるぞ?」

むにゅむにゅ

「……………殺してるんです」

耳元で吐息と共に聴こえるウイスパーボイス。球内に籠る甘く柔らかな香り。つまり…

「はあ…他に賢い方法は…」

「仕方あるまい。少し筋肉質で重いかもしれぬが耐えてくれ」

体積の節約のために恋をおんぶしてます。

「うん…大丈夫…問題ないよ」

ただし理性、君は駄目だ。

後頭部にあたる煩悩の塊が、僅かな理性を殺しにかかる。


だが、今はそんなことに囚われている場合ではない。後ろは振り返らずに前を向け僕。

「それで望…どうだ?」

「うん。やわら…ゲフンゲフン!!」

少し、いや、かなり落ち着こう。

「声が大きいぞ!」

「ご、ごめん…えっと、わかったことがいくつかあるんだ…」

まず、矛刀の能力は身体能力ではなく、筋力強化の側面が強いということ。

身体能力を強化していれば、おそらく風の音を聞き取れる筈だからだ。

更に、あの回復能力。あれはあくまで治癒であって、元に戻るわけではない。

「どういう意味だ?」

「先生は目を傷つけることを避けた。それは失明してしまえば、回復できないからだ。つまり一度失ったものは取り戻せないんだ」

だから出血の類も確実に体力を減らしているに違いない。

つまり、長期戦は避けたいに違いない。

狙うのは、そこだ。



「ん?」

攻撃の予兆に眉を潜める。ほぼ直感だが、何かがくる。

そう思ったのと地を蹴ったのは同時だった。跳んだ方向は上。

その判断は正しかった。

瞬間、立っていた場所どころか、地面という地面から鋭い氷山が突き出た。突っ立ったままであれば串刺しだっただろう。

しかし、動いた拍子にいくつかの渦に触れてしまい、浅く切られる体。

そのまま氷山の隙間に着地をする。だが…

「ディテール細かいなおい…」

突き出た氷山の周りは視認しづらい程度に目が粗く、やすりのような形状になっていた。

つまり着地した際に足裏の皮膚がかなり削られた。無視できる痛みではあるし、すぐに治せるが、少し出血した。

「!?……チッ」

小さく舌打ちをする。

望たちの狙いを把握したからだ。

出血による体力の消耗。

更にこの環境、血を失えば寒さも相まって動きは鈍る一方だろう。

地味だが、効果的だ。

苛つきとは別に賞賛する。自分の治癒能力を見極めた観察眼や、その為のトラップもよく出来ている。

しかし、手緩い。

矛刀は即座に、氷山の密集が少ないポイントを見極め、壁際へ移動する。

「雑なんだよ…偽装がよ!」

自分たちには氷山が当たらないようにしたせいで場所が筒抜けだ。

間抜けだなと嘲笑いつつ、そのポイントに拳を降り下ろす。

「あ?なんもねブハッ!?」

壁から生えた氷の拳に顔面ストレートを喰らった。

「っ…罠かよ!」

騙された。誘き出されたのだ。この俺が…

元々頭を使って戦うタイプじゃないのが災いした。

だが、それを反省するよりも虚仮にされた怒りが矛刀にはあった。

正直、こういったストレスの溜まる戦いは好きじゃないのだ。

「どこだあ!?」

吠える。返ってくるのは床と壁から無造作に生える障害物。

「あーめんどくせえなあ…!」

立ち止まる。まずは相手の位置を割り出さなきゃ始まらない。

風で隠れいているなら、おそらく触ればすぐに場所はわかるはず。

ならばと大きく息を吸う。そして虚空に向けて、叫んだ

「覇ッッッッッッ!!!!!!!!!!」

音速の波が、質量を伴って館内を揺らした。渦が全て消え去る。そして…

「みつけたぜ…!」

その振動によりぼんやりとだが見えた。

無様にも戦闘中に空中でおんぶしてる生徒の姿が。



とうとう見つかった。何らかの方法で看破されるとは思っていたがまさか声とは思わなかった。

理にかなっているとは言え、普通やろうとは思わない。

こちらは直ぐには動けない。三半規管の痺れ。更には空中にいること。自分など望の上だ。真っ直ぐに飛び込んでくるあの拳を回避するのは間違いなく不可能だ。

つまり、今できることは何もない。

迫る拳。動けない自分。何もかもが間に合わない。

だが、先にやっておけば問題ないのだ。


矛刀の拳が音をたててそれを砕いた。

「は?」

氷の鏡。矛刀が砕いたのは望たちを映した鏡だったのだ。

つまり本物は…

「恋!今だ!」

「わかっている!」

右後方から聞こえる声。同時に上から響く重い音。

まず、振り返る。空中に浮かびながら館の端で壁に手をつく大守とそれを背負う神無。

次に見上げる。迫りくる氷の天井。面積は体育館の9割ほど、体積はわからない。重さは、まあ人一人を潰すには過剰だなと思う。回避は、不可能。

とりあえず最後に心からの賛辞を送る。

「合格だ」


そして巨大な氷が望らの眼前に爆音と共に落ちる。異常な風圧が襲いくる。当然、二人を覆っていた風も解ける。

静まり返る館内。望も恋でさえもその顔に疲労を色濃く見せる。

「やったか?」

「多分…」

「というより生きているのか?」

「……多分…」

「な、なんだその間は!?不安を煽るな!」

「いや、流石にあれはやりすぎたかなって…」


「だったらやるなよ」


「そうだそう、だ…?」

「え?」

声の聞こえた方へ慌てて目を向ける。

「まあいくら俺でもこれに潰されたらやばかったかもな」

そういって爪先で下を示しているのは矛刀に違いなかった。

更にその後ろには…

「感謝しなさいよ。私の判断が遅れてたらペチャンコよ」

腕を組んで不機嫌そうにしてる学園長。

「お前の胸には負け」

「憤怒うっっ!!!」

グシャ

「■■■■■■■■■■っっっっーーー!!!!!?????」

「学習能力のないお猿さんにはペチャンコの刑が一番ね」

「かーくん。駄目だよ女性のコンプレックスには触れちゃいけないんだよ」

「懲りませんね…」

注意しながら矛刀の腰を叩く盾衣と苦笑いする土居の姿があった。


「なっ…」

「…学園長の能力ですね」

驚く恋とは対象的に冷静に状況を判断する望。

「そうよ。流石に見かねたわ。まあ私が介入した時点であなたたちの勝ちよ。良かったわね」

「「え?」」

「だから勝ちよ。何度も言わせないで」

「あ、はい…えと…ありがとうございます?」

あまりにさらっと言われて喜ぶ間がなかった。

「矛刀もそれでいいわね?」

未だ踞る矛刀に尋ねる。

「あ、ああ…合格だ」

そんな体勢で言われても感慨が皆無なわけでして…

「ということよ。だからあなたたちは二人でどうぞごゆっくり愛欲にまみれた生活をして構わないわ。全く、妬ましいわ」

「あ、あの…そんな生活は…」

「まあそんなことはさておき…」

ついていけない。全くついていけない。

「とりあえず正式に同居を認めることになったわけだけど…依然としてあなたたちが危険であることに変わりはないわ。それを踏まえた上で戦う前と意思は変わらない?」

「「変わりません」」

「ハモるなよ…わかったわ。あと、わかっているとは思うけど離れないでね。互いのためにも。あなたたちは互いに危うい。でもストッパーとなるのはあなたたちしかいないの。もちろん学園内の安全は私が保証するわ」

そこで一度言葉を切ると、酷く残念そうに再び口を開く。

「でも、学外まではどうしようもない。監視を付けたところであなたたちより弱ければどうしようもないし、人員的にも無理よ。無力ね…そこで…これの登場よ!」

いきなり勢いこんで取り出したのは…

「…チョーカー?」

黒い輪っかに真ん中に赤い石をはめたもの…いわゆるチョーカー。

「いいえ首輪よ。これを…はいっ!」

「ぬっ!?」

次の瞬間、学園長の手の上の首輪が恋の首に移動していた。

「どう?苦しくない?」

「え、ええ…でも、これは一体…?」

戸惑いを露に恋が尋ねる。

「それはね。神無君の腕輪と繋がっているのよ。だから二人が30メートル以上離れるとブザーを鳴らして私たちに知らせてくれるのよ」

「「なっ…」」

「ちなみに外す方法は無いわ。拒否権も無しよ」

「「…」」何も言えなかった。というか30メートルって…かなり短いのでは?

「不満?飼い主とペットの理想的なアイテムだと思うんだけど?」

「だからそれは誤解…」

「あ、それとカメラとかは付いてないから。そこは安心していいわ」

「あ、は、はい…」

頭が働かない。あるべき人権とか色々主張しなければいけない気がするが、なんかもう疲れてしまった。

「ちなみに誤ってブザー鳴らしたら、大変なことになるわよ」

「た、大変なこと?」

嫌な予感しかしない。

「昼の映像を編集して音声だけ流すわ。学内に」

「それでも教育者ですか!?」

「何言ってるの?本職じゃないわよ」

最低だ。

「何、案ずることはない。常に共にいれば何の問題もない。だからそのような脅しに意味はありません」

迷いない声に毅然とした態度。便りになるその姿に安心する。

「…言ってることは正しいわ。しかもそんなかっこよく決めちゃって…でもね、大守さん…」

「はい」

何を言われても大丈夫。そんな自信が見える。

「…いくら共にいればって言っても…おんぶまでされなくてもいいのよ?」

笑いを堪えながら言われた言葉は今日一番のダメージだった。



「私からは以上よ。矛刀、なんかある?」

「あ?…そうだお前らちょっとこい」

「「?」」

疑問に思いながら手招きする矛刀に近づく。

「大守、胸出せ」

ザッ!ゴスッ!ズシャッ!

望、恋を抱き抱えて逃走。

盾衣、杖にて後頭部殴打。

学園長、目を潰す。

「があああああああああっ!」

「最低ですね」

「かーくんの馬鹿!ロリコン!」

「やっぱり、でかいのが、いいのかしらあ!?」

罵倒と暴力の嵐。

「ちげえよ!怪我なおすだけだっつーの!」

ピタッ

「…触らないでくださいよ…」

「……うう…」

「…さっさとしなさいよ」

「誰か謝れよ!!」

その後、厳正なる監視のもと治療完了。矛刀の心の傷が癒されなかったのは言うまでもない。


「もういい?」

「ああ、構わねえ」

「わかったわ。じゃあ神無くん、大守さん。明日も早いのだからもう帰りなさい」

こんな時間に呼び出したのは誰だったろうか。

「え…いやでも…」

「何かあるの?」

「い、いや特には…」

「じゃあいいわね。戻すわよ」


あまりにも呆気なく唐突に校門にとばされる。

「「………」」

ここは喜んでもいいところ…だよね?

なんというか色々有りすぎて些かリアクションに困っている自分らがいる。

「あ、恋。耳」

「む、すまない」

あまりにも自然に出ていたので、忘れるところだった。

端から見たら女の子に耳と尻尾と首輪をつけさせてつれ回しているようにしか写らないだろう。

そのまま突っ立っていてもどうしようもないので、望から歩き出す。

何も言わず横へ並ぶ恋。

暫くそうしていて、やっと落ち着いたのか恋が口を開く。

「望…この首輪…」

「うん…いきなり迷惑だよね…やっぱり恋のためにも抗議して…」

「いや、そうじゃなくて…その、望こそ迷惑じゃないか?その私みたいな」

「卑下は一切ききません」

「なにっ!?」

このタイミングで言うことなど大体わかっている。どうせ自分が近くにいて迷惑にならないか、という内容に違いない。その証拠に言うべき言葉を探して唸っている。

「うー…」

「全く。そもそもその程度のことを迷惑って思ってたら、僕ここにいないよ?」

やや、怒りを込めて睨む。上目遣いなので迫力に欠けてしまうが、今の恋には効果があったようだ。

「い、いや信用はしているのだ。た、ただな…」

「却下。疲れてるから言い訳とか聞きたくない」

「そ、そんなぁ…」

「だから、素直に喜びなよ」

わかっている。恋が気を遣ったりしてしまう気持ちなど。でも、たまには素直になって喜んで欲しい。

「じゃないと…頑張った甲斐が無いよ」

恋はその言葉にハッとした様子になり、暫くして力を抜いて笑った。

「…そうだな、まずは喜ぶことにしよう。ありがとう、望」

「こちらこそありがとうだよ」

恋がいたから踏み留まれたのだから。

「なあ…」

「何?」

「明日…いや、今日の夕食は何だ?」

「それは、お楽しみにしとこう」

「…そうだな。だが…」

「?」

「望との食事なら何であれ私の大好物に違いない」

「……………………………」

「ぬ?どうしてそっぽを向く?あ、何故走り出すのだ?待て!望!」

待てるわけがない。

きっと今の自分の顔が恋に見られたら、彼女の赤い瞳を通してもわかるくらい赤いに違いないから。



こうして二人は決してちぎれぬ鎖で固く結ばれたんだぜ…!

30メートルってどんくらい?25メートルプールより大きいくらい?

の適当さで決めました。今後に活かしたい設定。もちろんさっき思い付きましたので、あそこらへんの会話が巻き気味なのはそのせいかなー


以下おまけ



二人をとばした後の館内。

「危なかったわね」

「ああ…助かった」

傷を癒しながら受け答えする。

「学園を壊されたら堪らないもの…」

「………あれ以上やりあってたら間違いなくギフトを使わざるを得なくなってた」

今回の戦いで矛刀はギフトを使用していない。

「生身でゴリラなのにキングコングになられたら手の打ちようがないわ」

では、今彼を癒すのは何か?

「それにしても凄い回復力ですね…」

土居が幾分か尊敬の念をこめて呟く。

「あ?土居ちゃんは見るの初めてか?そうでもねえぜ?戦闘じゃとりあえず'気'で傷口塞いで痛み和らげてるだけだ…中のほうは…っ…いってえ…!」

そういって腹部から鉛玉を取り出す矛刀。ずっと入りっぱなしだったのだ。

「く…だから、完治にゃ幾分か時間かかるし、魔力より集中力使うと思うぜ?」

「でもいいじゃない。見返り大きいんだから」

矛刀は、魔力を持たない。

しかし、修行を重ねることで'気'と更には後天的にギフトを得たのだ。

つまり、望らとの戦闘。前半は生身でやりあっていたのだ。

「魔力は減るけど、気はあんたの集中力が切れなきゃ使いたい放題。肉体の強化も遥かに高性能なんだし」

「まあなー」

「で、もう動けるかしら?」

「ああ…問題ねえ」

ゆっくりと立ち上がる。少なくとも表面上の傷は見えない。

「よし…帰ると…」

「後片付けよろしく」

「なん…だと?」

「だって明日も授業あるのにこれじゃ体育館使えないじゃない?だから片しといて」

「……」

上。凍ってる。右。なんか突き出てる。左。くらら。下。くそでかい氷。

詰んだ。

「徹夜かよ…」

「かーくん…手伝おうか?」

「いや、大丈夫だ…」

そういう彼の背中には哀愁が漂っていた。

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