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野良狼、拾いました   作者: 桔夜読書
26/38

23話 学園の正体

最近、あれですね。シリアスな展開ばかりですね。正直、イチャイチャ書く方が早いのは秘密です。

だって個人的には悲しみで泣かせる羞恥で泣かせるほうが興奮(ry


今回は切るところが見つからなくて妙に長くなりました。ほとんど会話だけでちょっとだらだらしてるかもしれませんがどうかお許しを…

「矛刀……先生」

「先生つけ忘れかけたろ、おい」

入り口に立って軽口を叩いているのは間違いなく、いつもの白衣こそ着けてないもののC組の担任である矛刀に他ならなかった。だが、そうなると疑問が尽きない。

「一体、何故…いつから…いや、それにさっきの発言は…」

混乱しそうになるのを耐えながら、訊くべきことを考えるが、流石にこの展開は予期していなかったためキャパの限界である。

「まあ色々言いてえこともあるだろうが、後でまとめて話すからとりあえずついてこい」

そういってさっさと踵を返して歩き去ろうとする。

「え?ついてこいって…」

「あ?学園だよ学園。今からお前らには学園長に会ってもらう」

「学園長?何でいきなり」

「ガタガタうっせえなあ。いいからこい。“サーカス”について教えてやっから…“風神”さんよお」

「っ!?」

会った当初から怪しいと感じていたが、やはり知っている…しかも、裏の事情にもかなり精通している。

「…わかりました」

「最初からそう言やいいんだよ…まあ道すがら答えられる範囲で質問は受け付けてやる」

「あ、女の子は…」

気がついたように恋が尋ねる。

「ああ、安心しろ。無事に他の奴が警察まで連れていった」

「そうですか…ありがとうございます」

「ふん…じゃあいくぞ」

そう言う矛刀と共に廃工場を発つ一行であった。


「で、何からききたい?」

先導しながら、振り返りもせずに尋ねてくる。最初に口を開いたのは恋だった。

「いつから見ていたのですか…?」

「あー…大守が暴れる少し前だな」

「なっ…確かに気配は無かったはず…」

二人とも周囲の気配にはある程度警戒していた筈だ。ピエロが消えた後も探ったにも関わらず、矛刀は隠れ仰せていたのだ。

「そりゃあ俺。近接とかのプロだからな…生徒に見つかるような生半可なことはしねえぜ。神無も大したもんだがまだ若いな。練度がたりねえ」

「……精進します。それで、何故ここに?」

「…学園長の命令で、お前らがヤバいのに目え付けられたから助けて来いってな…まあ必要無かったがな。で、ついでだから観察してた。しかし…」

「「?」」

急に苦い顔になる矛刀。観察する中で何か良くないことでも見つけたのだろうか。

「この年になって青春ドラマを見させられると、なんか堪えるな…ぶっちゃけ直視できねえわ」

「「ぶっ!?」」

感慨深げに唸る矛刀。しかし、望たちからは見えないが、口許は笑いを堪えるのに必死だ。

「しかし、教師としては不純異性交遊にならないかというきた…不安もあってだな…一挙手一投足を事細かに観察する必要があってな…ばっちり見てたぞ」

俯いて何も言えない二人。先ほど自分等の繰り広げた青臭いあれこれを思い出して身悶えしてるに違いない。

「さ・ら・に…サーカスの実態も出来る限り観察し、正確に学園長に伝えるため、健気に任務を遂行するべく、このビデオカメラでその全てを録画しているわけだ」

「「なあっ!?」」

そういってどこからともなくビデオカメラを取り出す。

「勿論、ピエロとやらが消えた後もいつ何が起こるかわからないからビデオは回し続けていた」

「消せっ!今すぐっ!」

恋が吼える。しかし、矛刀はどこ吹く風。似合わない真面目口調でご丁寧に説明を続ける。

「いや、これは大事な機密情報だからな。消すなどとんでもない」

「くっ…」

矛刀のことだ。ろくな使い方をするとも思えない。故に破壊を試みるしか…

「まあ安心しろ…別にお前らを辱しめるような真似はしない…あくまで機密だしな」

予想外のまともな発言に二人して呆ける。しかし、それが油断だった。

「だから…ちゃんと編集と解説を添えた上で、お前らの門出の際には流してやるよ。いやー俺様いーせんせー」

下品な高笑いをしながら、いつの間にかこちらを見下ろすその姿は間違いなく悪魔の類いにしか見えない。

「卒業の際にそんなもの流せるわけないでしょう…!」

まともな反論を試みる。いくら矛刀と言えど公式の場において、そんな横暴を働く権利はない筈だ。

しかし、この発言は更なる地雷への道標だった。

「卒業?ちげえちげえ…門出って言ってもお前らの結婚式のほうに決まってるじゃねえか」

「「はっ?」」

時が止まる。今、目の前の男はなんていった?結婚式?誰と誰が?お前ら?

思考が徐々に追い付いてくるのと同時に止まっていた時が動きだし、急速に顔が熱くなっていく。

思わず横をチラ見したら丁度目があってしまい、尚更何も言えなくなる。

「二人揃って同じ反応とか…いやーほんと将来有望」

「……何か、恨みでもあるんですか…」

顔を赤くして呻くように訪ねる。その質問に矛刀はしばし黙考して…

「…強いて言うなら、出る時機を奪われたことだな」

「「知るかっ!!」」



閑話休題


「まあ気を取り直して…」

誰のせいだと叫びたくなるのを全身全霊で堪えて、今だ冷めやらぬ怒りや羞恥で、震え気味の声で尋ねる。

「えー……先生は、いえ、あなたたちは何者ですか?」

これが一番気になることだ。しかし、質問しておいて何だが薄々察しはついている。おそらく彼らは…

「元国家公務員だ。ギフト犯罪捜査課ってとこにいた……今はかつての上司にこき使われる教師に過ぎねえ」

「GCI、ですね?」

望が確認するように尋ねる。

「あんま驚かねえと思ったら、やっぱり大体分かってたか…」

「それはまあ…うちの敵ですからね」

「望の敵?一体どういう組織なんですか?」

「大守は知らねえか…まあ無理もねえ。公に知られる組織じゃあないからな…なんて言えばいいか…」

矛刀がどう説明しようか少し間を置く。

「つまり、ギフトによる犯罪を捜査、逮捕する組織だ。んで、そこの神無はギフトで人を殺しているらしいからな…逮捕対象だ」

「っ!」

意味を理解したのか、すぐさま抜刀の構えを取り警戒を顕にする。

「人の話はよくきけ…元、と言ったろう…それに物的証拠も特にねえしな…神無は親子揃ってやり口が上手くてな。全然証拠が見つからねえ」

「なっ!?父さんを知っている!?」

まさかの言葉に目を見はる。

「現役時代に捜査を担当したりもしたさ…だが、捜査線が意味を成さねえ…まるで全てわかってるみたいにな…」

「………」

「それはお前もだ。神無望。やめてからも気になって仕方ねえ…神無に伝わる秘術でもあるのか?」

「そんなものはありませんよ…」そう、そんなものはない。父から貰ったものに秘術など無かった。

それ以上追及する気もないのか、興味を無くしたように話を戻す矛刀。

「つーわけで、今の俺はただの教師…って言って信じるわけもねーか…まあ、この先の説明は学園長の役目なんでな。俺が言えるのはここまでだ……さて、着いたぞ」

そう言って、いつの間にか辿り着いていた魅桜学園の校門前で立ち止まる矛刀。既に人はおらず閑散としている。

「それで、学園長室へは…?」

かなり広い敷地を持つこの学園の何処に学園長室があるのか見当もつかない望は矛刀が動くのをただまつ。

「……まあ待て」

しかし、矛刀はそう言って立ち止まったまま、何処にもいこうとしない。まさか、学園長がこちらに来るとでも言うのだろうか。重ねて訪ねようとした瞬間。

「はい、到着」

そう矛刀が呟いたと思ったら、いつの間にか景色が変わっていた。

「「なっ!?」」

知覚すら出来ない一瞬で、一行は部屋の前にいた。その部屋の扉には大きく学園長室と書かれている。

「学園長ー」

「入りなさい」

矛刀が気だるげにノックをすると間を置かず中から女性の声がかえってきた。

「失礼しまーす」

そういって大きく扉を開く。その先にあった部屋は思ったより小さく、暗かった。

窓が無い暗闇。しかし、壁一面に画面が光っている。そこに写し出されているのは学園のありとあらゆる風景だった。つまり監視カメラの映像である。他にあるのは一組の机と椅子と3人の人間。

「神無くん。大守さん…HRぶりかな?かーくんにはいじめられたりしなかったかな?」

いつもの口調とにこやかな笑顔で机の横に立つ担任、盾衣守と…

「こんにちは。神無くん。大守さん。怪我は…無いようですね。大丈夫ですよ。盾衣先生」

鼻を少しならしてこちらの安否を確認する土居領二が盾衣とは対岸に。

「…矛刀邪魔だからどきなさい。二人がよく見えないわ」

真ん中の椅子に座りながら鋭い眼光で矛刀を睨む女性がいた。

「俺の扱い酷くね…」

そう言って端によって、少ししょげる矛刀。それでようやく女性…学園長の姿がはっきり見えた。

「初めまして。私が学園長の龍ヶ崎よ」

学園長を名乗る彼女は予想に反してとても若々しかった。鮮やかな黒髪をストレートに下ろし、髪と同色の瞳が真っ直ぐにこちらを射抜くように光っている。目はつり上がり厳しい雰囲気だが、顔つきは童顔で、声も口調に合わない高さだ。それでもやはり彼女には威厳というものを感じる。そういえば、矛刀の上司ということだが年齢はいくつなのだろうか。外見からはまるで判断できない。

「初めまして…神無望です」

「大守恋です」

まずは普通に自己紹介をしておく。

「知っているわ。守からある程度きいているもの。さて、まずは何から…」

「あれー学園長は名乗らないんですかー?」

矛刀がよくわからない茶々を入れてきた。だが、確かに名字しか窺っていない。

「っ…今、その話は関係ないわ」

「いーじゃないすかーたかが名前くらいー」

真意のわからぬ攻防が展開される。片や煽るように、片や青筋を立てながら。

「仕方ないですねー代わりに言いますよ。くー」

「っ!」

「えっ?」

矛刀が消えた。学園長が睨んだ瞬間跡形もなく。これが彼女のギフトだろうか。

「……さて、話の続きを…」

「む、矛刀先生はどこに…?」

「オシイオトコヲナクシタワ」

まさかの棒読みでスルー。

「学園長…矛刀先生がいないと報告もままなりませんよ」

土居が諭すように学園長をたしなめる。それを正論だと思ったのか苦々しい顔で舌打ちする。

「チッ…わかったわよ」

と言った瞬間、矛刀が現れる。何故か走るフォームで全身汗だくになっている。しかし、状況を理解した瞬間、学園長に向き直ると…

「おいくらら!!何で女子更衣室に飛ばしてるんだよ!」

「その名で呼ぶなあっ!!次はプールに沈めるわよっ!」

吠えるように立ち上がる学園長…お名前、くららって言うんですね。懲りない矛刀が更に煽る。

「おっ!立った立った!くららがたっ」

「死ねっ!」ドスッ

矛刀が煽った瞬間、何処からか現れたヒールの踵部分がえげつない効果音と共に矛刀の目に突き刺さる。

「ああああ!目が!目があああ!」

転げまわる矛刀。流石に目は痛い。いくら鍛えられてもどうしようもない。

「騒ぐな。握り潰すわよ」

ナニを?と聞くまでもなく矛刀がピタリと止まる。そして、何事も無かったかのように定位置に戻り…声を出さずに目を抑えながら苦しんでいた。哀れ矛刀。

「くららちゃん。駄目ですよ。あんまりかーくんを苛めないで下さい」

「だからその名で呼ばないでっ」

半泣きで項垂れる。もはや威厳とかどこかにいってしまった。

「が、学園長…先ほどの現象はギフトですか?」

半ば無理矢理話を逸らすように望が質問する。色々とついていけなくなったというのもある。

「ぐすっ…ええ。そうよ…私の能力は物の転移よ。まあ知覚と詳しくイメージできる範囲内だけど…」

少しふて腐れたように説明する学園長。しかし、これで1つ合点がいった。

「つまり、この大量の監視カメラは学園内で学園長の能力を最大限に発揮するためにあるんですね?」

「…察しがいいわね…流石神無ってところかしら」

「学園長も元GCIの?」

「まあ細かくは違うけど大体同じよ…ここには天下りで来たようなものよ」

「その若さで?凄腕が揃いも揃って?」

「………ほんと、察しが良すぎてやになるわ…」

髪をかき揚げる。雰囲気が変わり再びその身に覇気を纏う。

「いいわ…学園の長として1から教えてあげるわ」

「ご教授よろしくお願いいたします」

「まず、ここが世界でも有数のギフト教育施設でもあることは知っているわね?」

頷く。国内でもかなり稀少な施設であることは知っている。

「つまり、国内のギフトが挙って集まり、鍛えられる。じゃあ、その目的って何かわかる?」

「目的?国にとって有益なギフトの育成…ですか?」

それはある意味普通の教育と変わりのない目的だ。

「そうよ。でもギフトにも種類がある。中には、戦闘でしか使えないようなギフトもある。そういうギフトを持った子達はどうなると思う?」

「警察などに所属するのでは」

「確かにそういう道もあるわ。でも国が望むのは……戦争での軍事利用よ」

「なっ!?」

「そんな驚くことじゃないわ。昨今ではより優秀なギフトの獲得がどの国でも優先課題となっているわ。戦車や戦闘機より費用がかからない強力な兵器だもの」

それは、否定できない。能力によってはかなりの戦果をだすことは間違いない。しかし…

「でも、平和なこの世の中で…」

「平和?ならなんでてめーや俺みてーなのが必要になるんだよ?」

「っ!」

矛刀の言う通りだ。あくまで平和は一般的には成されているが、そうでないところに闇というのは確実に存在する。まさか自分が失念するとは…

「ギフトは一般人には対抗できないわ。故にギフト犯罪は年々増え続けている。そして、兵器以外にもギフトの使い道はたくさんある」

「………」

「そして、国をあげてのギフト教育、いやギフト養成というほうが適当かしら。ここはそのための施設よ」

「そんでもって俺達は、未来ある若者を教育、護衛する為に派遣されたわけ」

「護衛?」

矛刀が言った言葉が引っ掛かった。護衛とはどういうことか?

「あなた達には狙われるだけの価値があるのよ。サーカスがそうしたように…」

「っ!?サーカス…一体あの組織は…」

「ギフトによる犯罪組織っていう説明が一番無難かしらね…でも、そんな組織はごまんとあるわ」

その言葉に頷く。自身もそういった組織に関わったこともあるからだ。

「だけど、サーカスは他の組織と違ってその目的がはっきりしないのよ。下の奴らは目的がバラバラ。かといって上の奴らは極稀にしか姿を現さない。だからあのピエロがこんな極東に姿を現したのは相当なことなのよ。高々、一人のギフトを拐うために」

そういって恋を見つめる。

「ピエロとは、そこまで重要な人物なんですか?」

「ええ…ピエロはね…サーカスの団長の懐刀とまで呼ばれていてね。神出鬼没に世界中で活動をしている。能力以外は男であることしかわからないわ。そんな重要人物が何故大守さんを狙うのか…あなた自身に心当たりはない?」

「……………」

沈黙を返す恋。心当たりが無いという訳ではない。彼女が持つ他とは違う特徴。耳と尻尾。それは神の力を反映した姿であり、恋の高い魔力を示すもの。それ以外の部分において彼女は普通の女の子に過ぎない。

「恋……」

どうする?と目で問いかける。真実を言うも言わないも彼女次第だ。

「……大丈夫だ」

しかし、その言葉とは裏腹に瞳には不安が見える。

「どうやら心当たりはあるみたいね」

確信を含んだ問いを投げ掛ける。

「ええ…ご説明しましょう…まずはこれをご覧下さい」

ポンッ

音と同時に恋の頭部と腰のあたりに決して人には無いものが生える

『なっ!?』

周りが驚愕する。当然の反応だろう。

「これが…私の心当たりです」

そう言う恋は何も隠すことはないと言わんばかりに堂々とした態度…を取ろうとしているが、その足は小刻みに震えている。

驚く面々の中で最初に口を開いたのは学園長だった。

「……まさか、そんな…本当に」

自分の見たものが信じられないという風情だ。しかし、その驚きには違うものが含まれていた。

「あなたが…あの…」

「…何か知っているのですか学園長?」

質問を受け、冷静さを取り戻した学園長が咳払いをする。

「…ええ。伝聞でしか知らないけどね。それは所謂………先祖返りよ」

「先祖、返り?」

「そうよ。先祖に神を奉る家系で稀にあるのよ。先祖返りというよりは、神様からの行き過ぎたギフトとでも言うべきかしら…」

「行き過ぎたギフト?」

不穏な言葉に恋が聞き返す。

「私たちのギフトは程度の差はあれど、所詮力の一端に過ぎないわ。でも先祖返りは違う。神の申し子と言っていいくらいに力を受け継いでいる。それは人の身には過ぎるくらいに。だからほとんどの先祖返りは耐えきれずに絶命してしまうのよ…でも、あなたは生きている…ただ、おそらく」

「お、おそらく」

恋の声が震える。この先に続く言葉を聞いてはいけない。しかし、聞かねばならない。葛藤に揺らぐ心境を現すかのように。

学園長はその心境を察してか言うことを躊躇いつつも、大きく息を吐くと鋭い眼差しで恋を見つめる。

そして告げられた真実は予想だにしなかったものだった。




「あなたは、半分人間ではない」

「っ!?」

「おそらく…その耳と尻尾は人じゃない部分。耐える体を為すために神の分身を与えたものよ。キツい言い方かもしれないけど、つまり、あなたは全くの人間では無いわ。でも、逆に全くの人間であったなら…あなたは死んでいたわ。間違いなく」

突きつけられた事実は途方もなく大きいものだった。

「…私が…半分人間じゃない……そう、ですか…っ」その重さに耐えきれなくなったかのように、震えていた足はいとも簡単に力を失い崩れ落ちる。

「恋っ!」

「…すまない」

隣にいた望が咄嗟に抱き止める。なんとか再び己の足で立ち上がるも、一度崩れた足は頼りない。

「思ったよりは冷静ね。てっきり気絶するかと思ったわ」

「半ば、予想はしていました…」

「そう…ところで大守さんは一人でこちらに来てるのよね?」

「?はい…」


急な会話内容の変化に戸惑いながら返事をする。

「なら…すぐに親御さんに連絡して、あなたを学園の管理下で保護するから」

「なっ…学園の、管理下?」

呻くように聞き返す。疲弊しきった精神では理解しきれないのだろうか。

「あなたの存在は放置してはおけない…こちらで保護して学園の敷地内でのみ生活してもらうわ。これはあなた自身とあなたの周りの人のための処置よ」「そんな…恋を…軟禁するってことですか?」

「大きな力には代償が必要なのよ」

その言い方は許せなかった。

「ふざけないでくださいっ!!恋が何をしたって言うんですか!!」

「望…」

本気で怒鳴る。狭い部屋に声が反響するが、学園長は全く表情を変えない。

「黙りなさい。あなたには何も言う資格はないわ。それとも何?あなたは彼女の保護者?」

「っ!」

確かに自分には何かを言う資格はない。しかし、だからといってここで黙ってしまっていいのか。

「別に大守さんに会えなくなるわけじゃないわ。だから何をそんなに意地になる必要があるの?彼女が大事なら安全を優先すべきでしょう?」

「恋は…僕が守ります」

「24時間?離れずに?現実を見なさい」

もちろん現実は見ている。

「出来ます。恋は、僕の家に居候していますから」

「………ほんと?」

いきなりの同居しているという事実に戸惑った様子で恋を見る。

「はい…望は、私の飼い主です」

『……………』

このタイミングでその言い方はマズイ。先生たちのとても冷たい眼差しを感じる。

「ち、違います。ひ、比喩です…ですからその」

「まああなたの性癖について論じる時ではないからそれは置いといて……同居は真実なわけね。“風神”による24時間護衛、ね…」

そのことを真剣に吟味する学園長。

「でも…今日、実際離れたところを突かれたのよね」

「………」

返す言葉が見つからない。明らかに油断していた自分のミスである。

「それに実力もわからないし…」

「自分の身を守るくらいはできます」

恋が答える。

「そもそも、大守さん…あなた自身はどうしたいの?」

「私自身、ですか?」

「そうよ。あなたの存在はあなたの意思に関わらず、周りに迷惑をかけてしまうわ…近ければ近いほど」

そう言って望に目をやる学園長。

「っ…」

確かに自分が側にいては危険が及ぶ。個人的な感情だけで判断していい問題ではない…

「何を迷ってるの?」

すぐ横からの声が思考の渦から恋を引き戻す。

「まさか今さら迷惑がどうとか考えてないよね?迷惑ならもう散々被ってるから、更に1つや2つ増えたって気にしないよ。それに…」



「僕は度量が大きいから」


そう笑顔で言った台詞はいつしか聞いたものだった。迷っていた自分を受け止めてくれた言葉。

少し泣きそうになるのを堪えながら台詞に応える。

「やはりお前は…度量ばかりではなく、肝も太いな…」

そう言って上げた顔に迷いは無かった。面と向かって学園長に告げる。

「私は…今のまま、望の家で暮らします。二人なら誰にも負けたりしませんから。だからあなた方に守ってもらう必要はありません」

「…………なら、証明してもらいましょうか」

神妙な顔で学園長が呟く。一体どのような方法を取ると言うのか。

「矛刀と戦いなさい。それで、あなた達の強さを証明してもらうわ」

『なっ!?』

一同が驚きの声をあげる。

「矛刀、先生とですか?」

「そうよ。一応そいつは学内では近接戦は最強よ。いや、昔も最強だったわね」

「めんどくせえ〜」

とてもそうは見えない態度で嫌がる。しかし、決して油断はできないことは知っている。

「これは決定よ。こちらも報告等があるから時間は0時に体育館ね。だから一度お帰りなさい」

「本気で先生とやり合えと言うんですか?」

「そうよ。何?不安なら大守さんはうちで預かることになるわよ」

「いえ、手加減できるか…」

「あ゛あ゛?何言ってんだてめえ」それを挑発と受け取ったのか矛刀がガンを飛ばしてくる。

「なめてんじゃねえぞ。言っとくがやるからには本気で来いよ?もちろん、お得意の殺す気でな」

「……わかりましたよ」

挑発には乗らない。しかし、そこまで言うなら殺る気でかかるまでだ。

「…それじゃあ。逃げずに来るのよ……大切な人を守りたいなら」

その言葉を最後に学園長室を発つのであった。


今回は後半部分に大分四苦八苦しました。もっと望くんと恋さんの会話を盛り込もうかとも思いましたが、流石に固有結界はるのもなーと思って少なめにしました。


以下おまけ



矛刀の報告終了。


映像を全て見終わる。

「ピエロの能力…これがわかったのはありがたいわね」

「そうだな…それに声や体格も大分正確にわかったしな」

「でも大守さんの力…」

「何か気になりましたか?」

「ええ…あれだけの力を収める器は大守さんの中の神だと思うんだけど、その力の指向性を決めるものと力を制御するものは何かと思って…これを見る限り彼女は力を粗雑ながらもコントロールしているわ。この年であれだけの技術を得るのはまず不可能なはずなのよ」

「あの刀が怪しいな…何故か冷気を纏っているからな…おそらく神器の類いだ。だが…」

「指向性は出来ても制御まではまかなえない…かといって力を封じられてるようにも見えない…」

「今は考えても仕方ねえ」

「そうね……それにしても…」

「?」

「今時の若者ってみんなこんななのかしら…」

「………さあ」

「私は憧れちゃうかな…こう、思いの丈をぶつけあって、涙して仲直り…やってみたいかな…」

「おいおいよしてくれよ…流石にこの年れいでっ!!?」

「年齢は関係ないもんっ!かーくんの馬鹿っ!」

「あーこいつらもこんな感じだったわね」

「そうですね…しかし、初な青春ドラマは…やはり直視し難いですね」

「あら、あなたにしては珍しいわね…」

「いえ、私の場合、詳細までわかってしまいますから…生々しいのは少し…」

「ああ…御愁傷様…それにしても見せつけてくれるわね…あれで付き合ってないとか悪い冗談でしょ」

「ちなみに会って二日目でキスと同衾と風呂は共にしたという情報は入手済み」

「……矛刀。今夜は遠慮せずにヤりなさい。少し灸を据えてあげなきゃいけないわ」

「ラジャー」

「ねえ、かーくん。本当に大丈夫かな?」

「ん?ああ、流石に殺したりしねえよ…大抵のケガは俺が治すから安心しろ」

「かーくんは?私がいなくて大丈夫?」

「おいおい…“矛”と“盾”を揃えるのはいくらなんでも反則だろ…」

「…そうだね」

「そうね、守も戦いに…」

「落ち着け!どんだけ羨ましいんだよ!」

「リア充をヤれと非リアの声が聞こえるのよ…例えこの世全ての嫉妬を背負うことになっても…」

「アラフォーはこれだか…」

「ふんっ」

ガシッ…ぐちゃあ

「■■■■■■■■■■■ーー!!!???」


矛刀戦う前に死す。



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