はじめに
「ラギィラッグ」、略して「ラッグ」――こいつがな、まだ若い綿尾ウサギの名前や。
この名前いうのはやな、ラッグが生まれて初めて大冒険してしもて、その時に耳をな、もう見るも無惨に、ぼろっぼろに引き裂かれてしもた。その傷跡から取った名前や。Rag 言うたら、「ぎざぎざの」っちゅう意味やさかいな。
ラッグは、おかあちゃんウサギと二匹で、オリファントの沼地に住んどった。そこで起こったことをな、わたしは横で見て、聞いて、拾えるもんは全部拾うて、ほなまあ……この一つの話にまとめた、っちゅうわけや。
動物のことをよう知らん人は言うかもしれへん。「そらちょっと、人間みたいに描きすぎちゃうんか」ってな。けどな、ウサギのそばで暮らしてみ。あいつらの間合い、目ぇの動き、耳の向き――それを知っとる人間やったら、そんなこと、よう言わん。
ウサギはな、わたしたちみたいに口で喋ったりはせえへん。せやけど、音、しぐさ、匂い、ひげとひげの触れ合い、体の向き――そういうもんで、ちゃんと話はしとる。
この話を語るために、わたしはウサギの“言葉”を、英語に訳してるだけや。盛ってへん。脚色してへん。ウサギが言わへんことは、ひとつも言わせてへん。――そこは、よう覚えといてもろたらええ。




