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我は転生魔術師で元聖騎士。天使族の令嬢がしつこく絡むので、身を任せる事にした。  作者: 蓮太郎
転生魔術師パラディン

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8/21

妬みと陰謀、良く聞く話だ。

「シンー!おかえりなさい。

ご飯にする?

お風呂?

それとも?」

あの日と変わらず、太陽の様な笑顔で見つめてくるミラを、シンは抱きしめた。


「ただいま。遅くなりすまない。

ご飯にしよう。」


「ちぇー。」


「いつも言ってるが、先に食べてて欲しいのだが。ミラがお腹をすかせていると思うと、気が気ではない。」


「シンだって、お腹空いてるのに頑張ってるんだもん!待ちますよ、そりゃ。

・・・実は何度かつまみ食いはしました。てへっ。」


「か、可愛い。」


「もう!」

ミラは照れた仕草でシンに擦り寄る。


二人は、定食屋の上で一緒に暮らしている。

ミラは、定食屋をやめて、もっと立派な屋敷に住む事もできたが、年老いた定食屋のマスターを一人にするのは気が引けた。

これまで通り、定食屋で働きながら、

定食屋の上で暮らす事を選んだ。


シンは、これまでは遅くなれば城に泊まっていたが、ミラと暮らす様になってからは、必ず帰る事にしていた。


どんなにシンの帰りがおそくなっても、ミラは食事を用意して健気に待ってくれている。どんなに忙しくとも、シンは毎日が幸せだった。


パラディンともなったシンが、身分の低い女をめとった事、派手な生活をせずにひっそりと、仲睦まじく生活している事は、瞬く間に国民に広まり、一部、妬む者さえいたものの、シンの人気は更に上がった。

街を歩けば、賞賛の嵐。

何かのお祭りかと勘違いする程に。




「おい!ちょっと待て!

変わらずのろけが続くのか?!」

エレナは、自分が何故イライラしているのかは分からないが、いよいよ、爆発寸前だ。

「話の腰を折るでない。

この話に、我がどれだけ幸せだったかは、とても重要なんだ。」


「はい、はい。悪うございました〜。」

エレナは、ひねくれた様に謝ると、話を続けろと言う様に、俯いた。

「では、続ける。」




そんな生活が始まり、数年経った頃。


「パラディンよ。」


「はっ。」

シンは王の前に控えている。


「そちには、隣町に出る魔獣の退治を頼みたい。」


「は?魔獣ごとき、一般兵でも良いのでは?むしろ、一般兵に経験を積ませる、良い機会かと?」


「そちの名声を、他国にも広めたい。

この国を盤石な物とするためなのじゃ。」


「はぁ。な、ならばこのシン、魔獣を圧倒的な力にて退治してまいります。」

シンは、腑に落ちないと思いながらも、魔獣退治を引き受けた。


それが間違いだった。


シンは、ミラと離れるのが嫌で、5日は掛かるであろう遠征を、2日で終わらせた。

「パラディンー!!」

城下町に入ると、国民がシンに気づき、血相をかいて走り寄ってくる。

「ど、どうしたのだ?」

様子のおかしい国民に、城下町に魔獣でも出たのかと思いながら、シンは国民の次の言葉を待っている。


「大変なんだ!」


「落ち着くのだ!何があった?」


「パラディンの!パラディンの嫁が!」


「ん?ミラがどうしたのだ?」


「城に連れ去られる!」


「どういう事だ?」


「今朝から、パラディンが指名手配されてんだよ!広場の真ん中の掲示板には、パラディンの手配書が貼られてる!」


「・・・どういう事だ?」


「いいから!早く家に!」

国民は、シンの背中を押す。


「・・・ミラ。」

シンは、とりあえずミラの身が心配になり、家に急いだ。


「マスター!」

家の前に到着すると、血まみれのマスターが絶命寸前で倒れている。

シンは駆け寄り、抱きかかえるた。

「ハイヒール!

・・・・ヒール!ヒール!ヒール!」


「・・・わしはもうダメだ。

内蔵もズタズタに切り裂かれてる。

パラディンと言えども、治せぬよ。

それより・・・ミラを、ミラを頼む。」


「・・・マスター。」

息を引き取ったマスターの目を瞑らせると、シンは怒りに満ちた表情で立ち上がる。

「うぉーーーーー!!!!」

シンの抑えていた魔力が放出され、

大地が揺れる。

シンは、全速で城に向かう。


門番をなぎ倒し、城門を粉々に破壊して、王のいるであろう、大広間へとたどり着いた。

玉座に座る王のとなりには、兵士がミラを羽交い締めにし、もう一人の兵士がミラに剣を突きつけている。

「こ、これは・・・・これはどういう事だーー!!!」

シンの魔力が暴走し、広間の中は、ハリケーンでも上陸したかのような強風が渦巻き、ステンドグラスがパリン、パリンと音を立てて砕けていく。


王は、ミラを人質に取って、強気だ。

「パラディンよ!そちには謀反の疑いがある。潔く自害せよ!」


「謀反?そんな事は一切無い!

ミラを離せ!」


「自害せよ!」

王は聞く耳を持たない。


「自害すればミラは、ミラは自由になれるのだな!?」


「あぁ、約束しよう。」


「分かった。」

シンは、剣を自分の心臓の辺りに向け、構える。


「ダメー!!シンが死んだら私も追いかけるから!」


「ミラ、幸せになれ。」

シンは、小さく呟くと、心臓に向けて剣を突き刺そうとした。

「ゔ。か、体が・・・動かない。

動け、動け、動け、うごーけー!」

シンの体はいう事を聞かない。


「な、何をしておるのだ!

早くせんか!それとも、やはり死ぬのは怖いか?ヒャハハハ!」

王は高らかに笑う。


「ダメだ。体が。」

それでも、シンは必死に体に力を込める。


「シーン!」

ミラが大声で叫ぶ。


「ミラ?」


「私が、いなくなっても、幸せを諦めないでね。」

ミラは小さく呟くと、羽交い締めにされていた兵士の股間を蹴り、緩んだ所で、首近くに突きつけられた剣を自ら首元に突き刺した。


「ゔっ。」

ミラは口から血を流し、苦しそうにしながら、シンを見つめる。

目尻からは涙が溢れ出し、頬をつたう。


「ミラーーーー!!!!」

シンは我を失い、魔力が暴走する。

城の壁や天井が耐えきれずにボロボロと崩れ出した。


「ば、バカモノ!ヤツを!罪人をとめるのじゃー!殺せ!殺すのじゃ!」

王は兵士たちに叫ぶ。

兵士たちは、直立のまま、涙を流し、動かない。

「何をしている!早く!早くやらんか!城が!城が壊れるー!ゔっ。」

シンは、叫ぶ王の前に一瞬で移動すると、王の首を持ち、持ち上げた。


「ゔ、ゔ、はなぜー!お前、何を、しているのが、わがっている、のか?」

王は苦しみながら、シンを睨見つける。


「・・・貴様こそ、何をしたのか、分かっているのか?」

その形相は、まるで架空の鬼という生き物そのものだ。


「待て!待て!謀反の事は無かっ事にしてやる!」

王は、命乞いを始めた。

「無かっ事・・・」

「そ、そうじゃ!無かった事じゃ!」


「・・・ミラが・・・・ミラが死んだんだぞーーー!!!」

シンは、王を掘り投げると、手を開き、刃物の様に振り下ろした。

シンの腕から斬撃の様な物が放たれると、王の左腕が、ゴロンと地に堕ちる。

「あへ?ギャーー!!」

王は、血しぶきの上る左腕の付け根を見て泣き叫ぶ。

「ま、待て!命だけは!なんでもやる!

そうだ!お前が王になればいい!

全部やる!・・・・だからー!」

王の最後の叫びが広間に響き渡ると、

ゴロンと、王の首は地に転がった。


シンは俯き、ミラの前に一瞬の間に移動した。

ミラを抱きかかえると、涙を流しながら、ミラを見つめる。

「ミラ。我と一緒になどならなければ。」

シンは、そうつぶやくと、宙に浮き、破壊された広間の天井の穴から、空へと飛んだ。

王が不在となったこの国がこの後どうなったかは、シンの知る所ではない。


「それから、誰もいないこの地に、ミラの墓を建て、我はそのとなりにいつも座っているのだ。」


「グスン。グスン。ミラー!」

エレナは泣いている。

「じゃぁ、あれがミラのお墓?」


「そうだ。」


「聞かなきゃ良かった〜。」

エレナは、落ち込んだ様に俯く。


「ねぇ、そのマント。王家の紋章だよね?」


「なんでそんなの付けてるの?私がシンならズタズタに引き裂いて、燃やす。」


「我もそうしようとした。

寸前で思いとどまり、このマントは、戒めとして永遠に身につける事にしたのだ。」


「戒め?」


「二度と誰とも、どの種族とも関わらずに、ここでミラと共に生きる。

そう誓った戒めとしてだ。」


「不老不死・・・なんだよね?」


「あぁ。」


「つらくない?」


「つらいとも。ミラと話す事も、触れる事も、死ぬことさえ許されない。

永遠に生きながらえなければならない。

だから、誰かが我を亡きものとしてくれるのを期待しているのだ。」


「そう。ハイ。」

エレナは、本を差し出した。


「よ、良いのか?」


「いいよ〜。あんな話聞いて渡さないほど私は意地悪じゃないよ。」


「恩に着る。」


「その本、今日中に読んどいて!

不老不死の呪い、解けるかも!

また明日来るね〜!」

エレナは手を振ると、ゆっくり歩いて洞窟の出口に向かった。


エレナは、「殺して欲しい」というシンの発言に、不老不死が関係していると思い、書物の保管庫を片っ端から調べたのだ。ようやくシンの役に立ちそうな書物を見つけ、急いで持ってきたのだった。


「あれ?・・・視界が暗い。」

バタン。

エレナは不眠不休で3日ばかり書物を読みあさり、全速力でここへ来た物だから、限界が来た様だ。


「全く。エレナ、ありがとう。」

シンは、倒れたエレナを抱えると、いつも座っている岩の上に寝かせた。


ガシャン。

ガシャン。


「約束だからな。」

シンは、鎧と兜を脱ぎ捨てると、エレナの横に座り、自分の太もものうえにエレナの頭を置いた。


「さぁ、読ませてもらうか。

不老不死の呪いが解けるのかどうか。」


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