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我は転生魔術師で元聖騎士。天使族の令嬢がしつこく絡むので、身を任せる事にした。  作者: 蓮太郎
転生魔術師パラディン

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7/21

天使族の秘蔵書の代償。

そして時は現在。


シンは、いつもの様に岩に腰掛け、目を閉じている。

今日は、どんな不憫な物との出会いがあるだろうか。


「むむ?」

シンは、違和感のある風の音が気になり、目を開けた。

目の前には、宙に浮くエレナの姿が写る。


ドカーン!


「いったーい!」

エレナが追突してきた様だ。


「大丈夫であるか?」


「・・・いてぇーよ。鎧脱げよ。」


「ぶつかった汝が悪い。」


「あっそ。シンの喜びそうな本を見つけたから、大急ぎで持ってきてあげたんだけどな〜?そんな事言うんだ〜。」

エレナは、本を抱きしめながら意地悪な顔をする。


「どうせいかがわしい本か何かであろう?我を変態にしたいご令嬢よ。」



「違うんだなー!見たい?」


「書物などに興味は無い。

我は、不老不死の上、誰よりも強いし、蓄積された知識もある。学ぶ事など無い。」


「じゃあ、読みたかったら、その鎧脱げよ?兜も全部だ。」


「あぁ、良かろう。」


「ジャーン!」

エレナは自慢げに、本を差し出す。


「・・・・これは・・・・転生魔術師の事が書かれておるのか!

前言撤回だ!是非読みたい!」


「はぁ?そんなの通用するかよ。

さあ!脱げ!鎧を脱げ!」


「よ、良いのか?」


「な、何が?」


「この鎧の下は全裸だ。」


「じゃあ兜だけでいいよ。

と、言うか私が大人になったからって、こないだからたまに、下ネタ解禁してんじゃねーぞ!

この変態ポンコツ騎士が!」

エレナは、怯むことなくシンを積める。


「ゔっ。」


「ゔっ、じゃねーよ。

・・・か、ぶ、と、取って。」

エレナは、全力で可愛い顔をして、首を傾げた。



お、おのれ・・・・どうしたものか。

兜は取る訳にはいかぬ。

万が一にも惚れられては困る。

これ以上、エレナと関われば我の心もどうなるか分からぬ。

そうだ。そう言う事にしよう。


「ごほん。可愛く言われても、そ、その、我は兜を取る訳にはいかぬ。」


「可愛かった?可愛かったの?!

・・・騙されそうになった。

で?何でよ?」

エレナは不満気ににらみつける。


「真面目な話をしよう。」


「あら、珍しい・・・必死だな。」

エレナはニヤニヤしている。


「我が人と関わる事をやめた理由。

その話だ。」


「そんな話してくれるんだ。」

エレナは少し驚いている。


「背に腹は代えられない。我の話を聞いて納得できたら、兜を取らずして本を読ませてくれるか?」


「まぁ、内容によるかな?」


「うむ。リスクが高い。やめる。」


カランカランカランカランカランカランカランカランカランカラン。

「おーぃ!お前男か?男なんだよな!

言ったこと覆してんじゃねーぞ!」


「や、め、ろ、や、め、ろ!」


「あぁ、疲れた。」


「分かった。一度言った事だ。

本の事は置いておいて、兜の変わりに我の話をしよう。」


「うん、うん。」

ウキウキした顔で、エレナはシンを見つめた。



その昔。

・・・・何千年か前に遡る。



「シンよ。そちの働きが、この国を、

いゃ、この世界そのものを救った。

そう言っても過言ではない!」

この男、人間族の、時の王である。


「もったいないお言葉。」

シンは、ひれ伏し、感謝を述べる。


「良い、良い。

その働きに感謝して・・・」


傍らに平伏す大臣。

立ち上がり、マントを広げる。


「そちには、このマントと聖騎士の称号を与える。

これからも、この国のため、剣を振るうがよい!」


真っ赤なマントには、金色の糸で王家の紋章が刺繍されている。


美しいマントだ。

俺に似合うだろうか?


「ありがたき幸せ。」


こうして、シンは聖騎士となった。

シンが聖騎士となった理由は後々語るとして、この時、シンはもう一つ背負っていた。

それが、転生魔術師の力だ。

国王は、転生魔術師の力、圧倒的な剣技、魔術。

どれを取っても最強であるシンを自国に引き留めるため、聖騎士パラディンの称号を与えたのだ。


それから、シンは騎士の頂点として、激務に追われる。

シンの仕事部屋、机の上には大量の書類。

会合に、訓練の視察、騎士団への入団希望者最終面接。

パラディンとしての業務は多岐にわたった。

そして、前転生魔術師の意思を継ぎ、1日に必ず一人、転生させる事にしていた。


ようやく仕事にもなれ、1年ぶりの非番の日、パラディンは、街をぶらついていた。


「・・・非番と言われても、どう過ごして良いか忘れてしまった。さて、どうしたものか。」


「パラディン様ー!」


「おぉ!リヤルパラディン様だ!」


「キャー!!パラディン様ー!」


滅多に現れない英雄で有名人、しかも、容姿端麗なパラディンが街を歩けばこうなる。

国民に囲まれ、パラディンは身動きがとれなくなった。


完全に囲まれてしまったな。

窮屈な日々だ。

どこか遠い所で一人になりたい物だ。

「隠蔽。」


「あれ?パラディン様?」


「パラディン様が消えたぞ?」


「パラディン様ぁー!」


国民達が騒いでいる足元をほふく前進で進み、人混みの端へとたどり着く。

「はぁ、私は何をしているのだろうか。」


そんな事を呟きながら、ふと気がつく。

シンの進路を塞ぐ様に、左右つがいの2つの靴。


シンは、視線を動かす。

靴からくるぶし、くるぶしから脛、脛から太もも、太ももからパンツ。

「・・・ピンク?」


「キャ・・・変態。」

パンツの主は、スカートを抑える。


「ゔっ。こ、これは、不可抗力だ。」


「そんな事より」

後ろを指さされ、シンは我に返る。

隠蔽の魔法は、誰かに認識されると解けてしまう弱点があった。


「パラディン様がいたぞー!」


「どこ?パラディン様ぁー!」


パンツの主は、シンに手を差し伸べる。

「早く!」


シンは素直にその手を取り、走り出す女に黙ってついていく。


「あはははっ!こっちー!」

女は楽しそうにシンの手を握ったまま誘導する。


この娘、どこかで。

・・・・なんだか癒される。

人といてこんな気持ちになるのは初めてだ。


「はぁ、はぁ、はぁ。まいたかな?」


「あ、あぁ。助かった。」


「どういたしまして!」


笑った顔は太陽の様に眩しく、心を温めてくれる様だ。


シンは、女の笑顔に惹かれてしまった。


「ねぇ。」


シンは我に返る。

「な、何だ?」


「さっきその・・・・私のパンツみたよね?」


「あ、あれは!」


「変態!」


「ゔ。」


「あはははっ!冗談だよ。

ねぇ!シン!私の事覚えてる?」


「ん?」

あぁ。シン・・・か。名前を呼ばれたのはいつぶりだろうか。

自分の名前をパラディンだと錯覚してしまう程に、名前を呼ばれる事が無くなった。

何だかとても嬉しい。

街見るつがいの男女は、こう言う心境で、共にいるのだろうか。


「ねぇー!聞いてる?」

女は考え込んでいるシンに呼びかける。


「す、すまない。誰だったか。」


「ちぇー。私はずっとシンが大好きだったのに。忘れたんだ?」


「だ、大好きだと?わ、私は、そなたのような太陽の女神の様な・・・い、いや、何でもない。」


「女神か〜。嬉しい!」

女はまた、ニコッと笑う。

「じゃあ、この店を見ても思い出さない?」


・・・こ、ここは!駆け出しの騎士だった時に毎日世話になった定食屋ではないか!懐かしい!

まだ給料と言えるのか分からないほどの報酬で生きて行けたのは、この定食屋があったからだったな。

「・・・はて。」

シンは女の顔をじーっと見つめる。


「ち、ちょっと!見すぎ!」

女は、照れたように両手で顔を隠した。


「そ、そなた!まさか?ミラか?!」


「せいかーい!やっと思い出したね!」

ミラは嬉しそうにする。

「大きくなったな!」


ミラは、シンが駆け出しの騎士の頃、7歳。店を手伝うミラが、初めて店に来たシンに、躓いて水をぶっかけたのが出会いだった。

シンは怒る事もなく、ミラの頭を優しく撫で、こんなに小さいのにお手伝いして偉いな。

そう言った。

ミラはこの時からシンの事がずっと好きだった。

シンが遠征やら何やらで定食屋に顔を出さなくなってからも、ミラはシンを思い続けていた。

先程の隠蔽を超越したのは、シンへの強すぎる思いだったのだろう。


「大きくなったは、いやー!年の差感じるから。」


「そ、そうか。」


「・・・シン。」


「何だ?」


「さっき、私の事、女神っていったよね?」


「・・・・あ、あぁ。」


「大きくなった私に一目惚れした?」


「・・・否定はできない。」


「あはははっ!やったね!」


「う、嬉しそうだな。」


「うん!私、初めて会った日から、ずーっとシンが好きでした。

私をお嫁さんにして・・・欲しい。」


「また唐突な。」

シンは戸惑っている。


「私は、必死だよ!

シンはパラディンになっちゃって、もう二度と会えないと思ってた。

でも、今日会えた!

神様がくれた一度きりのチャンスだもん!どんな手を使ってもお嫁さんにしてもらうんだから!」

ミラは、そう言うと、シンの手を取り、定食屋の脇にある階段へとシンを誘う。


ガチャ。

「ここは?」

ドアを開けると、小さい部屋があった。

部屋の中は、少し古いが、掃除が行き届き、綺麗に整頓されている。

「私の部屋。定食屋のマスターが好意で住まわせてくれてるの。」


「ま、待て!ミラはマスターの娘では?」


「う〜ん。娘みたいに育ててくれたけど、マスターとは血が繋がってないよ?私がこの街の裏路地に捨てられてて、拾ってくれたの。」


「そうなのか。いい人に拾ってもらえて良かったな。」

シンは、ミラの頭を撫でた。


「ブー。また子供扱い。えい!」

ミラは、シンを自分のベッドに押し倒した。

「ま、待て!心の準備が!」

シンは焦っている。


「普通逆じゃない?」

ミラは、目を細めてシンを見つめる。

「め、面目ない。」


「謝ってもダメー!」

ミラは、強引に唇を重ねた。

「ミラ。」


「シン。私の事、お嫁さんにしてくれますか?」


「・・・・私で良ければ、喜んで。」


「・・・やったね。」

ミラは、シンの胸元に顔を埋める。

「ミラ、もうダメだ。」

シンは、ミラを抱えると、上下逆転した。

「どうぞ。ずーっと待ってたから、心の準備はできてるよ。」


こうして、二人は結ばれて、夫婦となったのだ。




「おい。のろけを聞かされただけだが?しかも、今の話で分かったのは、ロリコン騎士が幸せになった事だけだ。

・・・やっぱり兜ぬげ!」

エレナは何故か、今までにないほど不機嫌そうに見える。


「ま、待て!まだ続きがあるのだ。

・・・続きが。」


「はぁ。はいはい。子供が産まれて幸せにくらしましたとさ、とかならマジで殺すからな!」

エレナは殺気立っている。


「そんな幸せな話ではない。」


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