再会するのを期待してはいたが。
あれから200と30年程は経っただろうか。
変態騎士は、しばらくの間エレナがまた来るのを少し期待していた。
「あの娘、結局来なかったではないか。」
・・・我は何を期待していたのだろうか?
寂しかったのだろうか?
あの娘と話すのは、不思議と楽しかった。
いかん、いかん!
我は誰とも関わらない。
そう決めたはずだ。
真暗な洞窟の中、いつもの岩の上で物思いにふけっている変態騎士だった。
ガサ、ガサ、ガサ。
「むむ?訪問者?」
迷い込んだ物以外は、この洞窟に来ることはない。
しかも、今いるのは洞窟の一番奥。
目的でも無ければ誰かが来る事などあり得ない。
長く生きていれば、命を狙われる事もあったな。
まぁ、一人なら、我にかなうものなどは、いないし、願わくば、この永遠に続く日々を終わらせてくれはしないだろうか。
「あっ!いたいたー!」
遠くから声が聞こえる。
「何奴?!」
「パラディン!久しぶり!」
暗闇の中、目視できる所まで近づいた所で、声の主は声をかけてきた。
「・・・・誰だ?」
「分からない?この変態騎士が!
あはははっ!」
「お、おぬし、エレナか?」
「覚えてたんだね。」
「あ、あぁ。汝と会った日から誰とも会っておらんからな。」
「えー!?寂しい奴だな。」
エレナは、200年以上も誰とも話していない事に驚きを隠せないようすだ。
「で?汝は何をしにきたのだ?」
「・・・あの日のお礼。
食べごろになりました。
パラディン、お待たせ。」
エレナは恥ずかしそうに、金色の長い髪をクルクルと指でいじっている。
「ば、バカな事を言うでない!」
パラディンは、少し動揺した様子で、そっぽを向いた。
「バーカ!冗談だよ!あはははっ!」
「お、大人をからかう物ではないぞ!」
「あら〜?私も大人ですけど?
立派に育ったでしょ?」
エレナはパラディンに詰め寄る。
「まぁ、それなりにはなったな。
おめでとう。」
パラディンは興味なさ気に、剣の手入れを始める。
「・・・・おぃ。おぃ!」
「・・・・。」
パラディンは剣に夢中だ。
「こらぁー!!無視すんな!」
カランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカラン。
「や、やめ、ろー、我、を、揺さ、ぶ、る、で、な、い!」
「あはははっ!無視するからだよ!
ほら、ほら、ほらー!」
カランカランカランカランカラン。
パラディンは、エレナの手を払いのけた。
「やめろ!帰れ。
前も言ったが、我は誰とも関わるつもりはない!」
「何よ。」
エレナは寂しそうに俯いた。
「・・・・。」
パラディンは、気にもせずに、剣の手入れに戻る。
カランカランカランカランカラン。
「なんかねーのかよ!目の前で文字通りの美しい天使が落ち込んでる様子なんだよーー!!」
パラディンはまた、エレナの手を払いのけた。
「汝は落ち込んでいる様には見えぬ。
帰れ。」
「・・・・私ね、今日はお願いがあってきたの。」
「願い?他を当たれ。」
「パラディンにしか頼めない事なんだけど。」
「では、諦めろ。」
「叶えてくれるなら、何でもしてあげる。」
「・・・・・おぉ、剣が輝いておる。
やはり手入れは大切であるな〜。」
カランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカラン。
「おぃ!お前、この私に興味無しかよ!」
「わか、った。わ、かっ、た!」
「聞く気になったか?」
この娘、どれだけ強引なのだ。
関わりたくないのだ。
勘弁してくれ。
この200年以上の間、我は確かにこの娘の事を考える事がしばしばあった。
しかし、これ以上関わりを持つのは、やはりごめん被る。
「・・・・。」
「また黙るのかよ。揺さぶるぞ?」
「それはもう、十分である。」
「じゃあ、私の話を聞け。
・・・あの日、私はパラディンに出会えた事が嬉しかった。」
エレナは、パラディンの隣りに座ると、聞く耳を持ったパラディンに話始める。
「ただいまー!」
エレナは、元気よく大きなドアを開けながら、叫んだ。
メイドが階段を駆け下りて来る。
「エレナ様ー!おかえりなさいませ!
エレナ様!また抜け出して、私たちの身にもなって頂けませんか?
外には危険が・・・ギャー!!!」
メイドが突然叫んだ。
「な、何よ?耳が痛いわ。」
エレナは怪訝そうに耳を塞ぐ。
「ち、ち、ち、血が!
翼に血が!!!
怪我をされたのですかー?」
メイドが大騒ぎしていると、エレナの母親が階段を駆け下りて来た。
「エレナ!その翼どうしたの!」
「あっ、これは。」
エレナが今日あった事を嬉しそうに話すと、母親とメイドは、絶望した表情になっていた。
「エレナ!もう、お城を抜け出すのはやめて!お願いだから。グスン。」
母親は、命があったから良かったものの、もし、エレナが死んでいたらと思うと、気が気ではなく、自然と涙が溢れ出した。
「お母様・・・ごめなさい。
もう、お城を抜け出すのはやめます。」
エレナは幼いながら、母親の切実な願いを受け入れざるおえなかった。
そう、中身は68歳なのだから。
「こうして、私はここに遊びに来たい気持ちを230年我慢したのよ?」
エレナは、どれだけここに来たかったのかを伝えるため、少し嘘をついた。
「口が尖っているぞ?」
「何?」
「汝は、幼き時、尾行がバレて誤魔化そうと嘘をつく際に、口が尖っていた。」
「な、何が言いたい?」
「230年は嘘であろう。
推測ではあるが、覚えておったのは数カ月。最近何かの切っ掛けで思い出し、汝はここにいる。のではないか?」
「・・・ムカつく。
そう。忘れてた・・・でも、ずーっと、何か大切な事を、ワクワクする事を忘れてる気がしてたのは本当。
多分、思い出したら来たくなるから、いい子でいるために蓋をしてたんだと思う。」
エレナは、パラディンの方を向いた。
「私を、もう一度、転生させて!
そ、その、パラディンは命の恩人だ。
転生させてくれるなら、本当に何でもする。」
「無理だ。」
「はぁー!即答すんな!!!」
カランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカラン。
「転生させろー!何でもするんだぞ!なんでもだ!!ハァハァハァ。」
エレナは疲れた表情で、俯いた。
「してやりたくても無理なのだ。」
「どういう事?」
「我には、一物が無い。」
「・・・・嘘だろ?」
「・・・・。」
カランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカラン。
「殺すぞー!!私の前世知ってんだろー!!
私は本当にやるぞー!!!」
「・・・殺して欲しい物だ。」
パラディンは小さく呟く。
「えっ?」
「何でもない。」
パラディンは、言い直さなかったが、エレナにはちゃんと聞こえていた。
どういう事か、考える。
のは後にする事にした。
「で?何でできない?」
「一度きりだ。転生は一度きり。
我は目を閉じると色々な世界線の色々な物を観るとこができる。
その中から不憫な物に目星を付けると、その物が光を帯びる。
そこに転生魔術をねじ込むのだが、
一度転生させた物を光として認識する事は二度とできない。」
「やってみてよ。もう一度。」
「無理だ。そもそも、不憫な物を転生させると決めている。汝は不憫ではない。」
「・・・不憫だよ。」
「ん?」
「これでも、色々つらいんだ。
今日あった事、聞いてくれる?」
「まぁ聞くだけであれば。」




