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我は転生魔術師で元聖騎士。天使族の令嬢がしつこく絡むので、身を任せる事にした。  作者: 蓮太郎
転生魔術師パラディン

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3/21

天使族エレナ。

時は少し遡る・・・


ポツン。ポツン。

シンは、いつもの岩の上に座り、頭を抱えて過去を思い返した。


我は、あの者をなぜ。

完全に、失敗だった。

何故、我にしつこく絡むのか。


あれは、数百年前。


「なんと不憫な!!」


あの者は、素行は良くないが間違ってはいない。

いや、むしろ賞賛に値する。

不憫だ。不憫にも程がある!

「今日、我は、転生魔術師に復帰する!」


ある悲しい出来事の後、シンは数十年の間、ふさぎ込んでいたが、何故か無性に、今日。また転生魔術師としての血がざわついた。

久しぶりに目を閉じて、転生させるべき物を探した。

その時、シンが目星を付けたのが、エレナだ。


なんと救われない者だ。


エレナの転生前。

それは、様々な世界線の中、

神々の選択の中で、人間族が知恵を与えられ、生き物の頂点に君臨する世界線だった。


我は、久しぶりの転生だったのもあり、エレナの事は良く覚えている。

エレナの前世の名は、マリーだった。

素行が悪く、成績も良くない。

一匹狼という言葉が当てはまる、

ヤンキーという種族だった。



「おーぃ、お前!生意気なんだよ!」


「や、やめてください。私、何もしてませんよね?」

薄暗い路地の奥。

大人しそうな、小柄な女が大柄な男に絡まれている。

「はぁ?俺様の誘いを断ったよな?」

ドスッ。


こ、これが俗に言う、壁ドンと言う奴だな!

だが、こんなのであの者はドキドキするのだろうか?

シンは、初壁ドンを目の当たりにしたが、理解ができずにいた。


「や、やめてください。」

「じゃぁ、ちょっとは相手をしてくれよ〜なぁ?」


「い、嫌。」


男の顔がどんどん女の顔に近づいていく。

「やだー!助けてー!」

女は顔をそらして、助けを求めて叫んだ。


「ヒャハッハッハ!誰も来やしねーよ!こっち向け!」

男は女の顎を掴み、顔を自分に向ける。


おぉ!こ!これが俗に言う、あごクイ!

・・・さっきから、壁ドンにあごクイ。

こんな物で乙女はドキドキする物なのか?


「いやぁー。」


男は、目を閉じて、女に顔を近づける。

「いや、嫌!いやぁー!」


「黙れ!シラケるだろうが!」

男は叫ぶと、再び目を閉じた。

女は静かになった。


これは、観念と言う奴だな。

明らかに恋とは違う。

壁ドンとあごクイは、恐怖させる事しか出来ていない様に思うが。


シンは、納得の行かない表情で考え込む。

だが、シンは転生さえできるものの、干渉はできない。

娘に同情はしたものの、転生させる迄には及ばないと判断した。

違う世界線を探そう。

シンはそう思い始めていた。


男の唇が女の唇に今にも触れそうな距離に近づいた時。

「あひーーー!」

男が叫び声をあげる。

その刹那、男は股間の辺りを押さえながら地面に倒れ、のたうち回っている。


おぉ!なんと!

これがザマァ!と言う奴だな!

スッキリした!

天晴だ!


「あはははっ!ばっかみてだな!この変態野郎!」


背後から忍び寄り、男の股間を蹴り上げた女が、高らかに笑っている。

この女こそがマリーだ。


「ばーか!ばーか!ばーか!

へんたーい!」

マリーは、のたうち回っている男を見て、満足気に手を腰に当てて仁王立ちしている。


「お、お前!ふざけんなよ!」

男は威勢は良いが、立ち上がる気配は無い。

「いくよ!あはははっ!」

マリーは、小柄な女の腕を掴むと、走って路地の出口へ向かう。


「待て!」

路地の出口には、治安を取り締まる者。

この世界線では警察、とやらが、道を塞ぐ。

「な、何よ!?」


「悪いが、一緒に来てもらおうか。」


「うっ。警察じゃない?に、逃げろ。」

マリーは、首元に打撃を受け、意識が遠のく中、小柄な女の手を離した。

小柄な女は、マリーを気にしながらも、全速力で走り去った。


「警察だよ。だが、坊っちゃんには逆らえないんだ。許してね〜。それにしてもさっきの子、薄情だね〜。浮かばれないよ、この子。」


マリーが、もうろうとする意識の中、

目をゆっくりと開けると、椅子に座らされている様だ。

「うっ。」

首元が痛むのと、手足が動かない。

どうやら縛られている様だ。


「ようやくお目覚めかー!ヒャハハハ!」


マリーが声の方を見ると、先程、股間を押さえてのたうち回っていた男が、ニヤニヤしながらマリーを見ている。


「わ、私をどうする気よ!この縄解けよ!」

マリーはイゴイゴと抵抗している。


「お前が悪いんだよ。ヒャハハハ!

お前には、逃げた女の変わりに俺の相手をしてもらうんだよ〜。」


「ふざけんな!気持ち悪いんだよ!」


うむ、見てられんな。

この娘、不憫だ。


シンは、マリーを同情の念で見守っている。


「気持ち悪い?俺の親は政治家だぞ?

そんな俺に抱かれるお前は幸せだろうがー!」

男は瞳孔が開き、頭が少しおかしくなっている様に見える。


「お前、薬でもやってんのかよ!

マジ気持ち悪いー!

あー!あー!ムリー!」

マリーはバタバタと縄を解こうと抵抗する。


「うるせぇー!」

パシン!

男は!マリーの頬を平手打ちする。


「いてー・・・・マジ・・・殺した方が世のためだなこいつ。」

マリーは決意に満ちた様に呟いた。


「なんだよ。意気がってた割には諦めるのが早いな。まぁ、いいや〜!

お楽しみといきますか〜!」

男は、マリーの顎を持ち、顔を上げさせると、唇を重ねた。

「ん〜!さいっこーー!!」

「・・・・・。」

マリーは黙って受け入れますと言わんばかりに男を潤んだ瞳で見つめる。

男は、また、マリーに唇を重ね、マリーの口の中に舌をねじ込む。


「・・・ぎぃやぁー!!!」


マリーの唇元には、血がベッタリとついている。

「ぺっ。まっず。」

マリーが吐き出した物は、床に転がる。


「あ、で?お、で、のちた。」

男の口からは、血がダラダラと流れ出している。


「あはははっ!肉を切らせて骨を断つ!さくせ〜ん!成功!!」



おぉ!なんと天晴な娘!!

ザマァだ!ザマァ!

娘よ!頑張れ!

あー!我が娘の縄をほどいてやれたなら。


「お、ま、えー!」

男は気が狂った様な顔をして、刃物を手にした。

「ちね。ちーでーーー!」

「うっ。」

男はマリーの首元に刃物を突き刺した。


マリーは静かに目を閉じた。

私らしい最後だ。

ゼーゼー。

喉がやられたのかな。

息、できない。

次に生まれ変わるなら、お姫様にでもなりたいな。



あーーー!!!なんと、なんと不憫な!!

助けてやる!

今、助けてやるぞー!

シンは、聖剣を掲げ叫ぶ。

「レエンカルナシオン!!」


聖剣を下ろしながら、シンは呟く。


「マリーとやら、転生先を私が決める事は出来ないが、幸せになる事を祈っておるぞ。」


男は、人払いしていたのが仇となった様だ。

助けを呼ぶこともできず、しばらく苦しんだ後、絶命した。

転生せず死んだ物の魂は、無に帰る。

何もない、真暗な空間。

あるのは意識だけ。

善も悪も関係ない。

善に生き、幸せな生活を過ごした者は、

その記憶を、悪に生きた者はその記憶を。

思い返す。

永遠に。

ただ、不老不死と違うのは、そこに感情がない事。

全ての不憫な物を救う事はできないが、

ただ、それだけは救い。

なのだろう。


だからこそ。

不憫な者への慈悲として、シンは転生魔術師として日々励むのだ。


ただ、不憫な者を減らしたいがために。




・・・レナ様。エレナ様!


エレナ?誰だ?

マリーが目を開けると、見知らぬ綺麗な顔立ちの女が覗き込んでいた。

「ここは?」


「エレナ様!大丈夫ですか?うなされていましたよー?」

女は、そう言うとマリーの頭を優しく撫でた。



「バー、ビー。」

私はマリー、エレナじゃない。

そう言おうとしたが、思うように話せない。


な!なに?話せない。

待って!手が、小さい?

私の体じゃない?


マリーは悟った。

転生した、と。


「エレナ様、そろそろオムツを変えましょうね〜。」


や、やめろバカ!

恥ずかしいだろ!

「オギャーオギャー!」


マリーは叫んだ。

言葉にならない声は、メイドらしき女には泣き声にしか聞こえていないのだろう。

マリーは諦めた。

しばらくは、赤子として生きていくしかないのだ。

そう悟った。


こうして、マリーは、エレナ姫となったのだった。



おぉ、まさか、転生先は我と同じ、この世界線か!

またいつか、会ってみたいものだ。


シンは目を開けた。

「などと、思ってしまった我が悪いのかも知れないな。運命とは不思議な物だ。」


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