魔王の生まれ変わり。
「我に続けー!」
ルシフェルは先陣を切り、宙を舞いながら東の砦の城門に進む。
「おーーー!!!」
ルシフェル軍は雄叫びと共に東の砦に攻め込み始めた。
「城門を破壊する!
ウィンドカッター!」
ルシフェルが手をかざすと、特大の風の刃が城門へと放たれる。
スーン。
風の刃は、城門の手前で突然かき消された。
「シンラの結界か。」
魔術がかき消された結界をルシフェルは不満気に見つめる。
「この結界は厄介だな。
術師を倒すか、術師の魔力の限界まで魔術を打ち込み続けるか。
サタンとの戦いに備えて、魔力を温存したい所だが。」
ギーガラガラ。
ルシフェルが、顎に手を当てて考えていると、突然城門が開いた。
「おーーー!!」
城門からは、反乱軍の兵士達と、先陣を切る様に魔獣にまたがり突き進むシンラの姿が見える。
「ルシフェル様!ご覚悟!」
シンラは、杖をルシフェルに向ける。
「ファイアーボール!」
一般的なファイアーボールの3倍はあろうか、特大の火の玉がルシフェルに向かってくる。
「失礼いたす!」
シャキーン。
ドカーン。
ルシフェルを守る様に前に出たガウンが、ファイアーボールに向かって一太刀浴びせると、2つに分かれたファイアーボールが地面に落ちて爆発する。
「ルシフェル様はサタンとの戦いに備えて、温存されませ!」
「ガウン!恩に着る!」
ルシフェルは、少し後ろに下がると、反乱軍の兵士達を蹴散らしていく。
「おのれ!ガウン!」
「シンラ!大人しく投降せよ!」
ガウンは、シンラに剣を向けて叫んだ。
「どれだけ剣術が優れていようと、近づけなければ何の意味もないぞ!
ファイアーストーム!」
シンラが唱えると、ガウンの足元に魔法陣が展開される。
「し、しまった!」
ガウンの足元がら、炎の柱が立ち上り、ガウンを襲う。
「うわぁー?!」
丸焼きにされる様な感覚の中、ガウンは剣で地面に一太刀いれた。
魔法陣に切れ目が入ると、炎の柱は消滅した。
「はぁはぁはぁ。」
剣を地面に突き刺し、杖に寄りかかる様な格好で、ガウンは満身創痍だ。
「あはははっ!ガウン!見たか!
所詮剣など極めた所で、魔術の前には何の役にもたたないな!」
シンラは嬉しそうに高らかに笑う。
「まだまだ!」
ガウンは必死に体を起こし、剣を構えると、シンラに向かって走り出す。
「おーーー!!!」
「何度来ても同じ事!
ファイアーボール!ファイアーボール!ファイアーボール!」
シンラがファイアーボールを打ち込む度に、ガウンは太刀を振り、火の玉を斬りながら突き進む。
「おーーー!!!」
ガウンは止まらることなくどんどんシンラに近づいていく。
「おのれー!」
「シンラ!覚悟!」
ガウンはシンラの目の前まで迫り、剣を振りかぶった。
カキーン!
ガウンの剣はシンラの結界に弾かれた。
「あはははっ!剣など私には当たらん!」
シンラは余裕な表情で、笑う。
「おぬし!それではおぬしも攻撃できぬのではないか?
力くらべといこうか!」
ガウンは楽しそうに叫ぶと、剣を構えて振りかぶる。
カキーン!
カキーン!
カキーン!
何度も何度もガウンは結界に斬りかかる。
「一撃が重い。なんとかせねば。」
シンラは、ガウンの攻撃を受け続け、魔力を消費し続けている。
「がははははは!どうだ!
わしはまだまだいけるぞー!」
ガウンは手を緩める事なく、斬り続ける。
「エアストーム!」
シンラは、結界を解くと、風魔法で上空に逃げた。
「はぁはぁはぁ。おのれ、あの体力バカめ。」
空中でシンラが休んでいると、ガウンが不満気に見ている。
「シンラ!降りてこい!正々堂々勝負いたせー!」
「黙れ!付き合いきれるか!」
シンラは、叫び座間、ガウンに手をかざす。
シンラの手元には、特大の火の玉が生成されていく。
「私の最強魔法だ!とくと味わえ!」
「ま、まずい!あれは流石にきれんぞ!」
ガウンが絶望にくれている。
「ガウン!くらえ!メテオ・・・?
グハッ。」
シンラは突然、激痛に襲われた。
特大の火の玉は消滅し、意識がもうろうとする。
「な、何だ?」
痛む背中を触ると、手には血がべっとりとついている。
「・・・何だ?・・・まさか?!」
シンラは振り返りながら、移動する。
そこにはリーシャがいた。
「おのれリーシャ!」
「ふふーん!私の事忘れてた?」
「まっ、まさか!」
「そう、ガウンの叔父様に追い詰められた君が、魔法を2つ使うのを待ってんだよ〜。君、2つまでしか同時に魔法使えないもんね〜!」
「お、おのれ。隠蔽で近づき、結界を解除している状態になるのを待っていたということか。」
「せっいか〜ぃ!じゃぁ、お疲れ様。
さようなら、シンラ。
魔王様の命を狙うから悪いんだよ〜!」
「・・・ただでは死なぬ。」
シンラは小さく呟くと、地面に向かって落下しだした。
「ウィンドカッター」
「グハッ。」
最後の力を振り絞ったシンラの魔術は、リーシャの体をエグッた。
「しまった。油断した〜。」
リーシャも気を失い、地面に向かって落下していく。
バサッ、バサッ。
ガウンは、リーシャとシンラを受け止めた。
「全く、手間のかかるやつらである。」
ガウンは、二人を地面に寝かせると、自分も寝転がった。
「あ〜。これはもうダメかもしれん。
あぁ。だめなやつじゃ。」
ガウンは目を閉じた。
「ガウン、リーシャ、良くやってくれた。」
ルシフェルは、他の兵士達を蹴散らし終わっていた。
ガウンとリーシャの前にしゃがみ込み、労う様に言うと、決意を秘めた眼差しを東の砦に向ける。
「行ってくる。」
ルシフェルは静かに立ち上がった。
誰もいない砦をゆっくりと進み、一番奥にある広間にたどり着くと、玉座にはサタンが座っていた。
「サタン。同族が沢山死んだ。お前には責任を取ってもらう。」
ルシフェルは、拳を握り、サタンを睨みつける。
「ルシフェル様・・・いや、ルシフェル!裏切り者はお前の方だ!
俺の両親は、天使族との戦争に巻き込まれて死んだ。お前が起こした戦争でだ!俺も天使族が憎い。だから協力していた。
だが、何だ!戦争をやめて和解?
ふざけるなー!!!!」
サタンの抑えていた魔力が怒りで放出される。
ゴーーーーォ。
「返す言葉も無い。
だが、俺は気づいたんだ。戦争など何の価値も無いと。新たな妬み、憎しみを生むだけの戦争を終わらせたい。」
「平行線だな。」
サタンは、諦めた様に立ち上がる。
「先に言っておく。俺は恐らく前魔王の力を何故か引き継ぎ生まれた様だ。
ルシフェル、貴様は強いが、俺には勝てない。」
「そうか。
それでも、戦わなければならない。
いくぞ、サタン!」
ルシフェルは両手を構える。
「最初から全力で行く!
グラビティ!」
サタンの頭上に魔法陣が展開され、地面に堕ちるにつれて重力が増していく。
ゴーーー!!!!
サタンの周りにある玉座や祭壇が押しつぶされていく。
「どうだ!」
ルシフェルはサタンを睨みつける。
「ふっふっふっ。あはははっ!」
サタンは高らかに笑う。
「ルシフェル!魔王が魔王である由縁が分かるか?
前魔王、そして俺も、何故か呪いをかけられて産まれてきた。
その呪いが何だか分かるか?」
「知るか!
ファイアーボール!ファイアーストーム!」
ルシフェルはお構い無しに魔術を打ち込む。
「教えてやるよ!」
ダメージを全く受けない様子では続ける。
「呪いの効果は、魔術、物理攻撃無効化。不老不死だ!俺は無敵。
魔術や力はお前の方が上でも、俺が勝つことは決まっている!」
「・・・積んだ〜。」
ルシフェルは小さく呟くと、攻撃の手を止めた。
「まだ、魔術しか試してない。
諦めてたまるかよ!」
ルシフェルは、叫ぶと、腰にさした剣を抜いた。
「おー!」
ルシフェルは剣を振りサタンに斬りかかった。
「剣が、透過した?」
「だから言っているだろ!
サンダーボルト!」
サタンの掌から電流が走り、ルシフェルを襲う。
「あーー!!!」
ルシフェルは、サタンの前に膝をついた。
「お前、反則すぎだろ?」
ルシフェルは、サタンを見上げる。
「お前に言われたくは無い。
呪いが無ければお前が最強だ。
だが、魔王が選んだのは俺だった。
それだけだ。」
サタンは、手をルシフェルにかざす。
「さぁ、何でとどめがいい?」
「・・・そうだな。
・・・ストーンエッジ!
くらえ!」
ルシフェルは、僅かな希望を胸に、魔術を剣に施し、全力で斬り掛かった。
「打撃と魔術同時にならどうだ!」
ルシフェルの渾身の一撃だったが、サタンの体を敢え無く透過した。
「ダメだ。すまないリザ。」
ルシフェルは、小さく呟くと、戦意を失った様に座り込んだ。




