覚悟と約束。
「魔王様!」
「セバス、血相をかいてどうした?」
「た!た!大変ですぞ!」
「落ち着け。」
「落ち着ける状況ではありませぬ!」
「何があった?」
「・・・サタンが、サタンが反乱を起こしました!」
「・・・そうか。」
「そうか。ではありませぬ!
サタンは、シンラと同方とともに、東の砦に立てこもり、宣戦布告してまいりました!」
「それは参ったな。」
「・・・やけに落ち着いていらっしゃいますが?」
ふと我に返ったセバスは不思議そうにする。
「セバス。」
「はい。」
「俺は魔王をやめる。サタンが魔王になればいい。」
セバスは、目を丸くして硬直している。
セバス、すまない。
俺は、もう魔王でいる事に疲れたのだ。
「はぁ。」
ルシフェルは、俯いてため息をもらした。
「わたくしもいささか疲れました。
また昔の様に、ルシフェル様とリザと申すおなごと3人で静かに暮らすのも悪く無い。」
にこやかに笑うセバスを見て、ルシフェルは安心したが、セバスの顔は真面目な顔に戻った。
「悪く無い・・・悪く無いのです。
ですが、天使族と、魔族の関係、そしてサタン。捨て置けば、必ず静かな生活を脅かしますぞ?
魔王様が魔王様である、いや、あった以上。」
「・・・やはりそうなるか。」
「はい、サタンは亡きものとし、天使族の和解を終えた後まで、安寧はおとずれませぬ。覚悟なさいませ。」
セバスは、真剣な眼差しをルシフェルに向けた。
「分かった。分かっていたんだ。
・・・四天王、いや、ガウンとリーシャを呼んでくれ。」
決意を秘めた眼差しをセバスに送りながら、ルシフェルは呟く。
「承知致しました。」
呼び出されたガウンとリーシャは、話の内容を察していた様だ。
ルシフェルの前に跪くと、闘志のこもった視線を送る。
「魔王様!我らは、魔王様に従う所存ですぞ!」
ガウンが力強く言うと、リーシャも隣りで頷いている。
「このような事になり、面目ない。」
ルシフェルは、立ち上がり頭を下げた。
「魔王様!」
「魔王様!」
ガウンとリーシャは両手を前に出し、慌てている。
「頭を下げるのは当然の事だ。
俺が不甲斐ないばかりに、同族と争わねばならぬ。」
「悪いのはサタンだ!魔王様ではない!」
リーシャは訴える様に言う。
「俺が慕われていればこのような事態にはならなかった。
だが、裏切りは裏切り。
同族とて容赦しないと決めた。
ガウン、リーシャ。
共に戦ってくれるか?」
「はっ!」
「喜んで!」
ガウンとリーシャは、頭を垂れ、共に戦う事を決意した。
「感謝する。明日の朝、東の砦に進軍する。
ガウン、リーシャ、よろしく頼む。」
「はっ!」
ガウンとリーシャは、進軍の準備のため足早に立ち去った。
「セバス、ガウンとリーシャには悪いが、もしかすると命を落とすかもしれない。リザに少しだけ会ってくる。」
「お気をつけて。」
セバスは何も言わず、ルシフェルを送り出した。
トントントン。
「はぁーい!」
ガチャ。
「あれ?ルシフェル。
こんな昼間に珍しいね。」
「あぁ。すまない。仕事中か?」
「大丈夫だよ!入って、入って!」
ルシフェルはいつもの椅子に腰掛けた。
「お茶いれるね〜。」
思いがけない訪問に、リザは嬉しそうだ。
「リザ、時間が無いんだ。
お茶はいいから座ってくれ。」
ルシフェルの真剣な空気に、リザはルシフェルの向かいの椅子に座った。
「どうしたの?」
「反乱が起きた。
明日、反乱軍と対峙する。」
「そ、そっか。」
「相手の首謀者はサタンという魔族だ。
・・・サタンは、強い。
もしかすると俺よりも。」
「魔王より?」
「そうだ。産まれた日が俺の方が早かった、産まれた親が最初の魔族だった。
それだけでサタンではなく、俺が魔王になっているが、サタンの得体の知れない強さ・・・サタンこそが魔王の生まれ変わりと言う者もいるくらいだ。」
「そ、そっか。」
リザは心配そうに俯いた。
「・・・じゃあ、ルシフェルがサタンに勝ったらご褒美をあげます。
何がいい?」
リザは、ルシフェルを元気付けようと、笑顔で接する。
「ご褒美か・・・サタンに勝てたら・・・天使族と和解に向けて頑張るつもりだ。
和解が上手くいったら。」
ルシフェルは少し照れた様に俯く。
「いったら?」
リザは期待に満ちあふれている表情で目を輝かせている。
「そ、その・・・リザが欲しい。」
「それはどういった意味で?」
「俺の妻になってくれないか?」
ルシフェルの真剣な眼差しに、リザはニコッと微笑んだ。
「喜んで。」
顔を少し赤くして、リザは俯く。
「最高のご褒美だ。」
「それは、それは。私なんかで良ければ、喜んであげますよ。」
二人は、しばらく名残惜しそうに見つめ合った。
「よし!」
ルシフェルは立ち上がった。
「リザ、行ってくる。」
「うん。行ってらっしゃい。」
「・・・死なないでとか言わないんだな。」
「ふふっ。そう言って抱きついてみたりして欲しかったの?
魔王の妃たるもの、黙って送り出せないと務まりませんわよ?」
「そうか。リザ。リザがリザで良かった。」
「意味分からないよ〜。
・・・ご武運を。」
「うん。行ってくる。」
ガチャ。
ルシフェルがドアを閉めると、リザは床に崩れ落ちた。
「ルシフェル!死なないで!必ず迎えにきてー!」
リザは、一人叫ぶ様に言うと、しばらくその場から動けなくなった。
リザはなんとか立ち上がり、椅子に座る。
「サタン・・・魔王の生まれ変わりか。
私も行くべきかな。」
リザは険しい顔で、考え込む様に机に伏せた。




