派閥抗争の前触れ。
「どうそ召し上がれ!」
向かいに座り、嬉しそうにルシフェルを見つめるリザ。
数日悩んだ末に、ルシフェルはリザの家を訪れていた。
「で、では、頂きます。」
ルシフェルは、リザの作った料理をスプーンに取り、口に運ぼうとするが、
「お、おぃ。見すぎだ。食べづらい。」
「はぁ〜ぃ。」
リザは仕方なさ気にスプーンを取り、ルシフェルから視線をそらした。
「う、うまい!」
ルシフェルは、余りのうまさに次々と口に運ぶ。
「本当?!うれしいー!
でも、そんなに急いで食べたら喉つめるよ?・・・でも、その顔が好き。」
「ゲボッ、ゲボッ。」
「ほらー。」
リザは立ち上がり、ルシフェルの後ろに立つと背中をさすった。
「へ、変な事を言うからだ!
・・・幼い頃に食べていた、母さんの味に似ているんだ。」
ルシフェルは嬉しそうに、リザの料理を見つめる。
「うん。だって、ルシフェルのお母さんは、この村の出身だから。」
「そ!そうなのか?」
「うん。語り継がれてるのは、ひどい話・・・なんだけど。さらわれたホルンさんが無理やり魔族の子を産まされたとか、ホルンさんは魔族のスパイで、この村に潜入してたとか。
でも、私は嘘だと思ってたんだ。
・・・ルシフェルに出会って、それが確信に変わったよ。
ルシフェルは優しいもん。」
「・・・都合のいいように書き換えられるのが歴史と言うものだ。
リザの言う通り、母さんと父さんは仲が良かったよ。」
「そっか。どうせ天使族がルシフェル達を襲ったんだよね?」
「・・・あぁ。」
「そりゃあ、憎むし、戦争にもなるよね。」
「そうだな。天使族は憎い。」
「・・・私も?」
「・・・お前は・・・リザは、母さんに似てるんだ。
まぁ、顔は母さんの方が美人だが。」
「余計なお世話ですよ〜だ・・・でも、ルシフェルに嫌われて無くて良かった。」
「うん。リザは何故俺に関わろうとするんだ?お前が・・・リザが俺に構うから、決心が鈍りそうだ。」
「私・・・あなたに惚れました・・・多分。
・・・助けてもらったってのもあるけど、ルシフェルには何か惹かれてしまうの。遺伝子レベルのお話だよきっと。」
「なんだ、それ。
・・・だが、なんとなく分かる。
俺もリザに惹かれているのかもしれない。」
「ふふっ。嬉しい。」
「うまかった。また来る。」
ルシフェルは恥ずかしそうに顔を少し赤くして立ち上がった。
「えっ?このタイミングですか?
・・・泊まっていけば?」
「ば!バカか!帰る。」
ルシフェルは早足で玄関に向かった。
「ルシフェル。」
リザはルシフェルの腕を掴んだ。
「何だ?」
「その、ルシフェルが魔王様だから言ってみる。
戦争をやめられない?
村の人達が無意味に死んで、その家族が悲しむのはもう見たくない。
・・・私のね、お父さんとお母さんも戦争に巻き込まれて死んだの。
でも、私は魔族が、魔王が憎いとは思わない。
元々は、天使族が悪いんだから。
・・・ごめん、嘘。
少しは憎い。でも、戦争が終わる事の方が私にとっては重要なの。」
「考えておく。」
「うん、ありがとう。
で、泊まっていかないの?」
「・・・帰る!」
「ちぇー。また来てね〜。」
リザは小さく呟くと、玄関で手を振り、ルシフェルを見送った。
「と、言う感じだった。」
ルシフェルは照れくさそうにセバスに話した。
「ただの恋バナですな。」
「セ、セバスが全て報告しろと言ったのではないか!」
「そうでしたな。
で、魔王様は今後どうされるので?」
「・・・天使族と和解したい。
あの日以来、天使族と戦い続けて来たが、戦争は新たな恨みや憎しみを生むだけだと気付かされた。」
「魔王様の側近として断言致します。
天使族とは手を取り合うべきだと、セバスは思っておりました。
どちらの種族にとっても、戦争など何の利益ににもなりませぬ。
魔王様のご決断は、正しい!」
セバスは長年の心の内を吐き出す様に言うと、少し涙ぐんでいた。
「セバス、ありがとう。
協力してくれるか?」
「当たり前で御座います。
さぁ、早速四天王を招集いたしましょう。」
「あぁ。」
「と、言う事にする。」
すぐさま四天王が招集され、玉座の間で跪く四天王に、ルシフェルは天使族との和解を進言した。
「魔王様の御心のままに。」
「魔王様が言うなら。」
「・・・私は反対です。」
「右に同じく。」
四天王の意見は半分に割れた。
「すぐにとはいかぬとは思うが、和解できる様に進めて欲しい。
天使族との和解は決定事項だ。
他の魔族達にもふれをだす。」
「・・・。」
「・・・。」
反対派の二人は不満気に口を紡いだ。
「では、四天王、よろしく頼む。」
セバスは、聞く耳を持たないと言わんばかりに、会議を終わらせた。
四天王が退出すると、セバスが口を開いた。
「やはり、思った通りになりました。」
「・・・と、言うと?」
「四天王の武道派、ガウンとリーシャは、魔王様に心底惚れ込んでおりますし、反対はしないと分かっておりました。
が、魔術師シンラ、そして得体のしれないサタン、この二人は天使族との戦争を楽しんでいる。そう見ておりましたので。」
「なるほど。
シンラはともかく、サタンは厄介だ。
奴の強さは得体が知れない。
もしかすると俺よりも。」
ルシフェルは渋い顔をする。
「まぁ、可能性さえ考えたくはありませんが、あの二人は今後監視しておきます。」
「頼む。」
ルシフェルは頭を抱えた。




