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我は転生魔術師で元聖騎士。天使族の令嬢がしつこく絡むので、身を任せる事にした。  作者: 蓮太郎
第二章 魔王。

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15/21

魔族と天使族の子。

「レエンカルナシオン!」

どこかで誰かが魔法を唱えてる頃。


「ゔ〜。あぁーー!!!」

「頑張れホルン!」

お腹の大きいホルンが激痛に耐える中、アリビオは、ホルンの手を握ることしかできないでいた。

もう、愛の結晶がこの世に産まれる直前の事。

ホルンのお腹が光を帯びた。

「ホルン!大丈夫?」


「な・に?」


「今お腹が光ってた!」


「嘘?な・に、そ、れ?」


「分からない、大丈夫?」


「う、ん。だい・じょうぶ、では、ないーー!!」



「オギャーオギャー!」

「う、産まれた!ホルン!産まれた!」

「う、うん。」

喜ぶ二人の前に、取り上げられた赤ちゃんが掲げられる。


「元気な男の子ですわい。」


正体を人間族と偽ってアリビオは、ホルンが動ける間に、助産師を一緒に探していた。

魔獣の森が住処と聞き、誰も相手にしてくれない中、ようやく引き受けてくれる事になったのが、このおばあちゃん助産師だ。


「ありがとう、おばあちゃん!」

アリビオは、涙を流しながらお礼を言う。

「ありがとうございます。」


「ほれ、赤子を抱いてみろ。」

おばあちゃんは、ホルンの隣りに赤子を置いた。

「か、可愛い。」

赤子は、天使族の美しい容姿に、赤い目を引き継ぎ、肌は魔族の濃い茶色で、髪は銀色だった。


「まぁ、不思議な子じゃの〜。

元気そうじゃし、問題無いだろう。」


3人で感動を分かち合っているのを目を見開き見つめる視線。


なんじゃこれはー!!

俺、さっきまで刑務所の中にいたよな??

何でこんなとこに!

しかも、目の前にいるのは、天使と悪魔か??

待て待て!体?俺の体じゃない!

俺・・・赤ちゃんに?


そして、この男は悟った。

転生したのだ、と。


この男は、人間族が頂点に君臨する世界線からきた。

まだ中学生であった。

といっても、学校へは行かせてもらえず、母親と共に、義理の父親に暴力を振るわれていた。

エスカルートした暴力が母親を死なせそうになったのを止めるために、義理の父親を刺殺し、結果、留置所の中にいた。


転生か。

この両親は、仲が良さそうだ。

産まれた日、母親の事は少し心配だったが、この男は喜んだ。

だが、喜んだのも束の間。

絶望の淵に立たされる事になる。




「さぁ〜おむつかえようね〜。」

ホルンはそう言うと、体に巻いた布をほどき始める。


や、やめろー!

やめてくれー!


体は思うように動かない。

恥ずかしいカッコをさせられ、フキフキされる屈辱。


・・・あぁ。つらい。

ある意味これは監獄だ。

動かない体に、拷問。

・・・うん。俺は赤ちゃんだ。

そう思う事にしよう。



そんな耐え難い日々を耐えしのぎ、

男は15歳になった。

魔族は、寿命が長く、成長も早い。

天使族の血が混じった事で成長は少し遅くなったが、人間族で言うと小学生高学年くらいだろうか。

名前は、ルシフェルと名付けられた。


「父さん!いくぞ!」

アリビオとルシフェルは、剣の稽古をしている。

剣と言ってもこん棒のような大きな木を剣に見立てている。


ゴン、ゴン、ゴン!

ドカーン!


「参った!」

アリビオは、ルシフェルの勢い良く振りかぶった攻撃に吹き飛んだ。

ルシフェルが産まれてから、魔獣から魔族が産まれる事が頻繁にあり、魔族は20人程まで増えていた。

成長の早いルシフェル以外の魔族は、もう大人の体まで成長している。

アリビオは、魔族の中で一番強かったが、ルシフェルが成長するにつれて段々敵わなくなり、ここ最近は、もう諦めていた。

剣術だけでなく、体術でももう敵わない。

「ルシフェルはすごいな。悔しいぞ!」


「俺、強くなれて嬉しい!

父さんと母さん、それに他のみんなも、俺が守るから!」

意気揚々と、ルシフェルは叫ぶ。


「頼もしいな。」

アリビオは、お尻の汚れををはたきながら立ち上がる。

「じゃぁ、次は魔術の練習だ!」


「えー!魔術は眠たくなるから嫌いだー!」


「魔術も大切だぞ?ホルンが怪我したら治してやれるんだぞ?」


「・・・・がんばる。」

嫌々ながら、ルシフェルは魔術書を開き、魔術の練習を始めた。


転生から15年の月日が流れ、ルシフェルは、自分が異世界から来たことを忘れそうになるほど幸せだった。

両親が仲睦まじい。

ただそれだけで、こんなに幸せだなんて。

想像もできなかった幸せな日々を、両親を心から大切に思っていた。


その矢先。


「放てー!!魔族を根絶やしにするのだー!」


そんな親子に、不幸が足音を立てて迫りくる。

城に向かって、火の着いた矢が何本も打ち込まれる。

外が騒がしいのに気付いたホルンが、窓から外を覗いた。

何百という、たいまつに灯る火の光が、

外を昼間のように明るく照らしている。


「アリビオ!大変!」


「どうした?」

ソファーでルシフェルを膝枕して寝かせていたアリビオは、ホルンの動揺ぶりに、不安を覚えた。


「外に!お城に矢が!」


「えっ?」

アリビオは意味が分からない様でポカンとしている。


「多分天使族が攻めて来たんだよ!

私達を殺すつもりなの!」


「な、何で!」

アリビオは、ルシフェルの頭をソファーに置くと立ち上がり、ホルンに連れられ、先程窓に戻る。

「な!な!な!なんだ!これ!」


城に放たれた火矢から火が移り、城が燃え始めている。

そして、たいまつの固まりが、ゆっくりと城に近づいて来ているように見えた。

「と、とりあえず火を消さないと!」

水魔法を唱えようと、手をかざすアリビオの腕をホルンは掴んだ。

「何?火を消さないと!」

「アリビオ!城は好きだけど・・・逃げないと。」

「逃げる?俺達何も悪い事してないだろ?」


「仕方ないよ。」


「嫌だ!!大切な場所なんだ!

あ!あいつらー!!」

進軍する天使族が、ホルンのハーブの畑を踏み躙りながら歩くのを見て、アリビオは怒り狂った表情に変わる。

「お願い!アリビオ!行かないで!」


アリビオは、ホルンの叫びも虚しく、窓から飛び出すと、風魔法を上手く使い、空を飛ぶ。

城に上る火の手に、水魔法を乱射し、城の火を鎮火した。


「おぉ!魔族だ!矢を放てー!」

天使族の放った無数の矢は、アリビオに突き刺さる。

アリビオは、地に落ち、天使族に囲まれる。

「魔族!大人しく廊に入れば命は助けてやる!」

一人の天使族が叫ぶ。

「ダメだ!殺せー!」

天使族の中でも意見が割れている様だ。


「やめてー!」

必死に階段を駆け下り、天使族をかき分けてアリビオの元へ向かうホルンが叫ぶ。

なんとかアリビオの元にたどり着いたホルンは、矢の刺さったアリビオを守る様に前に立つ。

「私達は、ただここで静かに暮らしたいだけ!帰って下さい!」


「な、何を言っている?血迷ったか!」

「なぜここに天使族が?」

「不吉だ!不吉の根源だ!」

「殺せー!」


ホルンは、天使族である自分は安全だと飛び込んだが、考えが甘かった事を痛感した。


「おー!!」

一人の天使族が、ホルンに斬りかかると、堰を切った様に、次々とホルンとアリビオに太刀が浴びせられた。


「母さん、父さん。」

その時、間が悪く目覚めたルシフェルは、父と母がいないことに気付き、騒がしい外を窓から覗いた。

まぶたに写ったのは旋律の光景だった。


「父さん?母さん?」

一瞬、夢かと疑うほど残酷な光景に、ルシフェルは我を失う。

「ガァーーー!!!!!」

平穏な日々が抑えていた、ルシフェルの体の変化を怒りが目覚める。

肉体は、筋肉を増大し、牙が生えた。

そして、膨れ上がる魔力がルシフェルの体に納まり切らずに溢れ出す。


耳をふさぎくなる様なうめき声に、天使族達は、ルシフェルに気づいた。


「あそこだ!矢を放て!」

一斉に天使族は、弓を構える。


「転移。」

ルシフェルの頭の中には、様々な魔術のイメージが流れ込んでいた。

一瞬で、天使族の後ろに移動したルシフェルは、父と母の亡骸を抱え、湖に転移した。

「ネッシー!」

ルシフェルが、叫ぶと、湖の主が顔を出した。

「俺の大切な人だ・・・もう息はないが。

しばらくの間守れ!」


ガァー!

返事をする様にネッシーは叫んだ。

ルシフェルは、3歳のとき、ネッシーと出会い、仲良くなった。

正しくは従えたというのだろうか。


「転移。」

ルシフェルは、すぐさま天使族の前に舞い戻る。

「天使族よ。お前達は絶対に許さない。」


突然消えたり、現れたりするルシフェルに、天使族達は怯んでいる。


「ひ、一人で何ができる!」

「魔族!叩き潰してやる!」


数人が叫ぶと、掛け声と共に、天使族達は、ルシフェルに斬りかかろうと走り出す。

「死ね!グラビティ!」

数百人はいようか、天使族の大群を有に超えるほど大きな魔法陣が、天使族の頭上に展開される。


「ぐぁー!」

「あー!」

まさに断末魔。

天使族達は、うめき声と共に、肥大化した重力に抗えずに潰れていく。


魔法陣が、地面に堕ちた頃、辺りは静けさを取り戻した。

ルシフェルは、その場に膝をつき涙を流した。

「うぁ〜!!あぁー!!」


もう少し、もう少しだけ早く目覚めていれば。

ルシフェルは何度も何度も、心の中でそう叫んだ。




「ルシフェル様!天使族の砦を一箇所撃破致しました。」


「うん。良くやった。」


「はっ!ありがたきお言葉!」


ルシフェルは、あの日から天使族と戦い続けている。

力を解放したルシフェルに共鳴したかのように、次々と強力な魔族が産まれ始め、魔族は完全復活を遂げていた。

圧倒的な力を持ったルシフェルは、自分程ではないが、強力な力を持った4人を四天王と呼び、各地の天使族の弾圧に乗り出していた。


「父さんと母さんは復讐などと、怒るだろうな。だが、俺は天使族を許さない!

ところでだ。

・・・お前達は俺に協力しなくても良いんだぞ?なぜこうまで協力してくれるのだ?」


「魔王様が好きー!」

「魔王に惚れている。(男として。)」

「なんとなく。」

「魔王様のお気持ちに共感致しました。


四天王は口々に答える。


「・・・全く。強いのはよいが、個性の強い奴らだ。

では、引き続き頼む!

必ずこの手で天使族の王を葬ってくれる!」



「おぉーーー!!!!!」

四天王、その後ろに控える魔族達は、城が震える程の叫びを上げた。


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