湖の守り神。
「嘘でしょーー!?」
ホルンの叫び声がリビングに響き渡る。
「うん。嘘じゃない。」
「お、お風呂が無い?」
「うん。無い。」
二人は食事を終え、ソファーで話していた。
ホルンが、そろそろお風呂入りたいと言うと、アリビオにはお風呂が通じなかった。
ホルンは、お風呂を説明した。
そして今に至る。
「どうやって体綺麗にしてるの?
アリビオは臭くないけど。」
「湖で魔獣と水浴びしてる。」
「じ、じゃぁ、冬は?」
「寒いし、湖凍るから諦めてた。」
「・・・・今が夏で良かった。」
「昨日ももしかして水浴びしたかったのか?」
オリビオは、ハッとした様に聞く。
「う、うん。昨日は言い出せなかった。
あっ!村に帰ってからちゃんとお風呂には入ったからね!」
「そ、そう。」
別に聞いてないという雰囲気のアリビオを見て、ホルンは落胆する。
「水浴びしに行く?」
「う、うん。」
こうして二人は、水浴びするために湖に向かった。
「暗いね。ちょっと怖い。」
「今日は月が出てると思うから、湖は真暗じゃないと思うぞ。さぁ、着いた!」
「わあー!綺麗!」
森が突然開け、大きな湖が現れた。
湖は月の光に照らされて、美しく輝いている。
「さぁ!入ろう!」
オリビオは、突然体に巻いていた布を脱ぎ始めた。
「ち、ちょっとアリビオ!」
ホルンは、恥ずかしそうに両手で顔を覆った。
「ん?どうした?」
「オリビオは恥ずかしいとか感じないの?」
指の隙間から、アリビオの体をチラチラと見ながら、ホルンはつぶやく。
「・・・そう言う物なのか?恥ずかしいとか、良く分からない。」
「アリビオ、私はあっちの方で入るから、見ないでね。」
ホルンは、恥ずかしそうに言うと、アリビオに背を向けて歩いて行った。
「なんだ。一緒に入りたかったのにな。」
魔獣しか周りにいなかったオリビオには、色々と欠けている部分がある様だ。
アリビオは、仕方なく、一人さみしく湖に浸かり、ボンヤリしていると、
バシャーン!!
ホルンのいる方に大きな水柱が上る。
「キャーー!!!」
「しまった!忘れてた!」
アリビオは、全速力でホルンの方に向かう。
目の前には、大きな生物が。
ホルンに今にも襲いかかろうとしている。
「ホルン!」
オリビオは叫び、ホルンに駆け寄る。
「アリビオー!」
ホルンは、恐怖の余り、服を着ていない事も忘れ、アリビオに飛びついた。
「・・・温かい。柔らかい。」
アリビオは、幸せそうにしている。
「・・・・キャー!」
ホルンは、我に返り、アリビオを跳ね除けた。
バシャーン。
アリビオは、湖に沈み、ゆっくりと顔を出す。
「ひどいよー。」
アリビオは、寂しそうにホルンを見つめる。
「み、見ないでー!」
ホルンは湖から出ている腰から上を必死に隠そうと、湖に浸かった。
ギーォー!!
「キャー!!!」
無視されていた巨大生物は、怒り狂った様に叫ぶ。
それを見て、ホルンも叫ぶ。
アリビオは、冷静だった。
「おい!落ち着け!」
ギーォー!
ギーォー!ギーォー!
「ダメだ、我を失っている。」
ホルンに襲いかかろうと動き出した巨大生物に、アリビオは、一撃の打撃を放った。
バシャーン!
巨大生物は吹き飛んで、湖に着水した。
また襲ってくるかと、ホルンは構えていたが、巨大生物は、湖の深みへと消えていった。
「つ、強っ!・・・はぁ。怖かった。」
アリビオの強さに驚きながら、湖から顔だけ出して、ホルンはアリビオを見ている。
「ごめん、忘れてた。
城にある本によると、あいつは、ネッシーとか言う湖を守る奴らしい。」
「魔獣?」
「魔獣ではないらしい。
魔族とか天使族とか種族で言うとどこにも分類できないとか書いてあったから、強いて言うなら、ネッシー族?」
「ふふっ。あはははっ!
そうなんだ。」
「初めて水浴びした日、俺もあいつに襲われたんだよ。一発殴ったらそれからは襲って来なくなったんだけど、ホルンが離れた所にいたから、狙われたんだろうな。」
「アリビオ。」
「何?」
「またネッシーが来ると嫌だから、一緒にいて。」
「うん。」
夏と言えども、湖の水は冷たい。
恐怖もあり、ホルンは後ろからアリビオにくっついた。
「こっち見ないでよ。」
「うん。なぁ。」
「何?」
「その背中に当たってる柔らかいの触りたい。」
「・・・・ダメです。」
「なんで?」
「なんで?・・・そう言う物なの。」
無知なアリビオに、ホルンは動揺しながら答える。
「そう言う物なのか。」
オリビオは残念そうにする。
「うん、そう言う物。」
無知ゆえに、思った事を口に出すアリビオを、ホルンは愛おしく思った。
二人はしばらく月明かりに照らされた湖に見惚れていた。
「寒くなってきた。帰ろ?」
ホルンは、アリビオに呟く。
「うん。」
二人はくっついたまま湖をから出た。
「そのまま!こっち見るなよ!」
ホルンは、恥ずかしそうに言う。
「うん。」
アリビオは、何故見られるのが嫌なのかが理解できなかったが、ホルンがそういうので、大人しく前を向き続けた。




