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我は転生魔術師で元聖騎士。天使族の令嬢がしつこく絡むので、身を任せる事にした。  作者: 蓮太郎
第二章 魔王。

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魔族と天使族。

ガァーーー!!


「いやぁー!来ないでー!」

近くに落ちていた木の棒を振り回しながら泣き叫んでいるのは天使族の娘。

魔獣の森に間違って迷い込み、犬型の魔獣数匹に襲われかけている。


ガァー!ガァー!

木の棒に警戒しながらも、魔獣は、娘に噛みつこうと、威嚇してくる。


「誰か助けてー!」

天使族の娘は、怯えながらも諦めずに魔獣に立ち向かっている。


「こらー!!!」


クーン。

怒鳴り声が聞こえると、魔獣が一斉に大人しくなり、声の主に駆け寄ると、媚びを売るように擦り寄る。


「怪我はないか?」

容姿は恐ろしいが、話しかけてきた男が娘は助けてくれたのだと思い、恐怖を抑えながら、立ち上がる。

「は、はい。あの、その、助けてくれたの?」

言葉を選び間違えれば、襲いかかってくるかもしれない。

そんな事を考えながら天使族の娘は、恐る恐る返事する。


「まぁ、そう言う事になるのかな?

う〜ん。こいつらは俺の友達だから、半分正解?」


「ふふっ。あはははっ。変な人。」

娘は、しまったと思った。

怒らせたかと思い、恐る恐る顔を見る。


「そ、そうかな?この状況、よく分からなくないか?」

男は怒った様子も無く、むしろ少し笑っている。

安心した娘は、頭をさげる。

「多分、助けてもらったで合ってるとおもうから、その、ありがとう。」


「ど、どう致しまして。」 

男はお礼を言われたのが初めてかの様に、少し照れた表情で笑う。

「俺、多分、魔獣の先祖返りか突然変異で産まれた、魔族ってやつみたいでさ、言葉は不思議と話せるんだけど、ひとりぼっちだったから。話せない友達はいるけど・・・その、今日、初めて会話できて嬉しいんだ!」

無邪気な笑顔で笑った男を、天使族の娘は少し可愛いと感じた。

「そうなんだ。それはそれは、高栄です。

私は、天使族のホルンだよ。」


「名前?・・・ホルンか。」


「あなたは?」


「えっ?」


「名前だよ。」


「・・・名前は無い。名付けられる存在がいなかったから。」


「・・・じゃぁ・・・・う〜ん。」


「何を考えてるんだ?」


「名前だよ、名前!あなたの名前!」


「えっ?」

魔族の男は、嬉しそうな顔をして、ホルンの次の言葉を待っている。


「じゃあ、見た目怖いけど優しいから、アリビオね!」


「・・・アリビオか。」


「不服ですか?」


「いい名前だと思う。

ありがとう!

今日から俺はアリビオだ!」

満面の笑みを浮かべて、アリビオはよろんでいる。


「アリビオ、私、道に迷っています。

天使族の村まで帰りたいんだけど、道分かる?」

段々と日が落ちかけ、ホルンは焦っている様だ。


「ホルン、気付いてないのか。」


「何を?」

ホルンは不安そうに、アリビオを見つめる。


「ここは、魔獣の森の結構奥なんだ。

今から帰るとなると、暗闇を歩く事になる。また魔獣達が襲ってくるかもしれない。」


ホルンは、崩れ落ちて地に膝をついた。

「帰るも地獄、留まるも地獄なのね。」


「野宿は危ないから、俺の家で良ければ泊まる?」


「じーーー。」

ホルンは、見極めようとしている。


「な、何?」


「女の子が、男の子の家に泊まると言うのは、危険が伴うでしょ?」


「あぁ、そう言う事か。」


「どういう事ですか〜?何を考えたのですか〜?」

ホルンは、意地悪く問い詰める。


「そうだな。魔獣に襲われるか、俺に襲われるか、選べって事。」

アリビオは真面目な顔でいう。


「えっ?」

油断したー!墓穴を掘ったー!

意地悪な質問・・・するんじゃなかった。


ホルンは、顔を赤くして俯いている。


「ははっ、あはははっ!」

アリビオはホルンを見て笑い出した。


「な、何で笑うの?」


「冗談だよ!何もしない。

意地悪されたから、仕返しただけだ。

すぐそこだから、着いてきて〜。」

アリビオは楽しそうに笑っている。


「ひっどーぃ!」

ホルンは、頬を膨らませて怒りながら、アリビオの後を追いかけた。



ワォー!

どこから魔獣の雄叫びが聞こえる。


「まさか、ここ?」

ホルンは、気味の悪い巨大な城を見上げている。

「そう!昔、魔王が住んでたみたいなんだけど、中は綺麗に直した。」

巨大なドアをギコギコと音を鳴らしながら、アリビオは中に入った。

「さぁ、どうぞ。」


「お、おじゃましまーす。」

ホルンは、恐る恐る中に入る。

「キャー!」

ホルンは突然悲鳴を上げて、倒れ込んだ。


「大丈夫だって!あれは石像。」


「ほ、ほんとだ。」

恐怖の余り、ホルンは腰を抜かした様で立ち上がれない。

「そ、その。」


「どうしたんだ?」

立ち上がらないホルンに、アリビオは手を差し伸べる。


「そ、その・・・腰を抜かした様でして。」


「あはははっ!怖がりすぎだ!」


「むー。」

膨れているホルンに、アリビオは近づいて、抱きかかえた。

「キャッ!」

「腰抜かしたんだろ?自業自得だ。」

アリビオは黙って広いエントランスの階段を上る。

「このまま寝室に連れ込むのとか無しだよ?」


「それもいいな。」


「もぅ!やめて。」

ホルンは、顔を赤くした。

「あはははっ。」


「笑うだけ?」


「ちょっと・・・・本当に、寝室に連れて行きたくなってきたから、黙って。」

アリビオは、魔獣同士の交尾を目撃した日を思い出して、変な気持ちになっていた。


「は、はい。」

何だろ?ドキドキする。

私、不思議な気持ちです。


ホルンは、黙ってアリビオに身を任せた。


ギコギコギコ。

アリビオが大きな扉の前に立つと、扉が開いた。

「えっ?誰かいるの?」


「いないよ。ちょっと魔力を使った。」

ドアを入ると、そこはリビングルームの様な部屋だった。

床は柔らかそうな絨毯が敷き詰められ、

部屋の真ん中には、高そうなソファーと、テーブルが置かれている。

アリビオは、ソファーにホルンを寝かせると、立ち上がり、天井に手をかざした。

「ファイアーボール。」

アリビオが唱えると、火の玉がいくつか、部屋の壁や天井に設置されたロウソクに飛び、部屋を明るく照らした。


「わぁ!こんなに素敵な部屋だったんだ!」

ホルンは、明るくなった部屋を見て感動している。


「この部屋と、寝室は俺好みに作り変えたから。そう言ってくれると嬉しい。」

アリビオは、頭をぼりぼりしながら照れている。

「さっ!何か食べようか?

魔族の食事が合えばいいんだけど。

ホルンはここでゆっくりしててくれればいいから。」

アリビオは、そう言うと、入って来た扉と違う扉を開けて、いなくなってしまった。


「ゔ〜。綺麗な部屋とは言え、不安。」

ホルンは、腰の調子を気にしながら、ゆっくりと立ち上がる。

「あの扉の向こうが台所なのかしら?」

ホルンは、恐る恐るドアを開けた。

ギコギコギコ。


「アリビオ〜。」

薄嫌い廊下の先に、明かりがドアの隙間から漏れる部屋が目に入る。

ホルンは、ゆっくりと廊下を進み、ドアを開けた。

「お〜ぃ、アリビオ〜。」


「あれ?ホルン?動いて大丈夫なのか?」


「うん。もう大丈夫みたい。」


「良かった。丁度できたからさ、食べよう。」

アリビオは、鍋の中のスープの様な物を器に入れて、テーブルに置いた。


ホルンはテーブルに座り、スープの様な物をマジマジと見つめる。

「これ、何入れた?」


「そのへんの草。あと、動物の肉。」


明らかに美味しく無さそうな物体を見て、ホルンは恐怖している。

アリビオに視線を移すと、パクパクと美味しそうに食べている。

「食べないのか?」

アリビオは不思議そうにしている。


「う、うん。じゃあ、頂きます。」

ホルンのスプーンを持つ手はプルプルと震える。

覚悟を決めて、ホルンは口に入れた。

「おぇー!」


「ど、どうした?」

アリビオは、天使族には毒になる物でも入っていたのかと心配そうに駆け寄る。


「・・・ごめん。美味しくない。と、言うか、食べられる次元の物ではないです。」


「えーーー!!!

・・・・それは・・・ごめん。」


「怒らないの?」


「うん。俺も、美味しいとは思わなかったけど、毎日食べてると食べられる様になった。」


「ふふっ。あはははっ!」


「何で笑うんだよ?」


「ごめん。ひとりぼっちだもんね。大変だったよね。」


「まぁ、最初は魔獣と一緒に生肉食べてたんだけど、お腹は壊すし、体調崩すしで、火を通す事を覚えてからは、健康だ!」


「そうなんだ。よ〜し!私がご飯を作ろう!」


「えっ?いいのか?」


「任せて!」


ホルンは、台所のに立って落胆する。

「調味料・・・ある訳無かった。」


「諦めよう。」

アリビオは、ホルンを励ますように言う。


「はい。」


この後、ホルンはプルプルと震えながら、アリビオの作ったスープを必死な思いで完食したのだった。


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