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我は転生魔術師で元聖騎士。天使族の令嬢がしつこく絡むので、身を任せる事にした。  作者: 蓮太郎
転生魔術師パラディン

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10/21

引きこもりは卒業だ。

どんな名家にも、時折産まれてくる。


悪鬼のごとく、国を途絶えさせる程の存在が。


数百年平和に続いた国は、ここから衰退を迎える。

これまで先祖達が築き上げた物も、崩れるのは驚く程に早い。


時の王、ハースは、悪政をしき、国民の反感を一身に集めていた。


この国も終わりだ。

人間族の人々は口々にこう言う。


衰退していく城下町では、餓死者が道端に転がり、頻繁に強奪、人さらいが頻発している。

皆、生きて行くのがやっとだった。

幸せが存在しない国。

その城下町を見下ろす城では、贅沢三昧。

毎日の様に宴が催されていた。


ハースは、不老不死無効化の儀式を受け入れず、永遠に王座に居座るつもりでいた。

そして、不老不死を失う事を恐れたハースは、不老不死無効化の魔術師達に褒美を遣わすと言う嘘でおびき寄せ、その大半を処刑した。


こうして、完全な不老不死を手に入れたハースは、自らの地位を盤石化するため、悪鬼亡き後自然に離れてしまい、対立していた、魔族、その王と手を組んだのだ。


城下町には、魔族と人間族が入り乱れ、力の弱い人間族は、淘汰とうたされ始めた。


そんな悪政は、数百年続き、人間族は絶望の中を生きざるおえなかった。

そして、ついに打倒ハースを掲げる者達が現れる。

それは、不覚にも、ハースが自らを守るために作った騎士団だった。


騎士団長の名はシン。



「おー!ここで私が出てくるのか!」

ここからは知っている内容になるな。

エレナが伝えたかったのは、不老不死無効化魔術師が人間族の中にいるかも知れないという事だな。

・・・・私は王でも何でもない。

不老不死魔術師がどこかにいた所で、常に近くに置くことなどできはしない。

我が子に同じ苦しみを与えるくらいなら、不老不死のままでいい。

「ダメだ。やはり死ぬ事はできなさそうだ。」

シンは落胆して、本を傍らに置いた。

「しかし・・・美しい寝顔だ。」


シンは、無意識にエレナの金色の髪を撫でていた。


「う、う〜ん。」

エレナが目を覚まし、シンを見つめる。

「読み終わった?」


「私が出てくる所までな。

やはり、不老不死は避けられない様だ。」


「おぃ。」

エレナは不機嫌そうだ。


「何だ?」


「私は、もう一眠りする。

ちゃんと最後まで読め。」


「まだ何か書いてあるのか?」


「うん。ちゃんと読むんだぞ。」


「分かった。」


もう一度目を閉じたエレナを暫し見つめ、シンはまた、本に手を伸ばした。



騎士団がハースとの戦いに備えている頃、もう一つの打倒ハースを企てる集団があった。


「なにっ?私達だけでは無かったのか!」

シンは、ここで読むのをやめなくて済んだことをエレナに感謝し、スヤスヤ眠るエレナを見つめた。

「それから?」

シンは、本に目を戻した。



打倒ハースを企てていたもう一つの集団とは、天使族だ。

天使族の中には、呪いを無効化する魔術を使う者が現れていた。

ハースの指示のもと、不老不死を脅かす、目障りな天使族を亡きものにしようと、魔族による天使刈りが行われていた。


天使族は、魔族と戦いながらも、根源であるハースを討つべく動き出したのだ。


「なるほど・・・・呪いを解く魔術。か。」

シンは、確信した。

エレナは子の事を言っていたのだな。


魔族がハースに加担したのは、もちろんハースの絶対的な力に怯えたのもあったが、魔族と天使族は元々敵対していた。

魔族は、ハースを利用して天使族を亡きものにしようと、画策したのだ。

天使族の動きを察知した魔族は、天使族に総攻撃をしかける。

そして、天使族が魔族を抑える形になっていたからこそ、ハースの懐にいたシン率いる騎士団は、準備を整え、ハースが玉座に鎮座する広間に乗り込む事ができたのだ。


「ハース!我ら騎士団は、この悪政を終わらせに来た!」

騎士団長シンは、ハースに向かい叫ぶ、


「ヒャハハハ!!我に敵うとでも?」

ハースはシン達を馬鹿にした様に笑うと、騎士団に向け手をかざした。


騎士団の足元に魔法陣が展開され、光がシン達に絡みだす。

「魔術無効化!」

騎士団の魔術師が魔法陣を上書きすると、光はかき消された。


「ちょこざいな!」

ハースは不機嫌そうにたちあがる。

「転生を無効化した所で、我を倒す事はできぬぞ!」

怒りを含みながらハースは叫んだ。


「団長!」


「あぁ。この一撃にかける!」

シンが目を閉じると、シンの体が光りだす。

「身体強化・・・身体強化・・・身体強化。」


「何回増しがけしてんだ?団長が団長である由縁。魔術の無限増しがけ。

だが、体は持つのか?」

団員達は心配そうにシンを見ている。


「ハース!!ゆくぞ!」

シンが叫んだその刹那。

ハースの目の前に現れたシンの斬撃は、ハースの体の真ん中を左から右へと通過した。


「ヒャハハハ!何も起こらぬでは?

あひ?」

シンの早すぎる斬撃は、ハースが切られた事を理解するのに数秒かかった様だ。

ハースの体は上半身と下半身に分かれる様に、斬撃の通った部分からズレていく。


「ハース!打ち取ったり!」

シンは高らかに叫ぶ。

「うぉーーー!!!」

団員達はうめき声に似た、喜びの声をあげる。


「馬鹿か!我は不老不死だ!このような傷、すぐに治るわ!」

ハースは痛みに耐えながらも余裕綽々としている。

ハースは悪鬼の生まれ変わりと言われる由縁は、その回復能力にあった。

恐らくのところ、回復能力はハース自身に備わったもので、不老不死と共鳴した事で回復能力が肥大化したに過ぎない。


それがシンの考えだった。

ハースの回復が追いつかないと確信していたシンは、叫ぶ。

「ハース!この聖剣が、聖剣と呼ばれる由縁が分かるか!」


「はて?」

何を言っているのか、ハースは理解が追いつかない様だ。

「そ、そんな事はどうでも良い!

何故!何故、傷の回復が始まらないのだー!」


「ハース、この聖剣には、不老不死無効化が付与されている!無効化には死を伴うが、お前は王として相応しくない!

死と共に、不老不死無効化の儀式を行わせてもらった!

不老不死が無くなった今、お前の回復能力は、弱まったのだ!」


「な、何を言っている!その様な。

・・・もう、良い。そなたには、我の死後、転生魔術と不老不死が付与される。

転生魔術師として、転生を行い続けろ。それが、全ての世界線のバランスを保っている。忘れるでないぞ・・・・最後に・・・・不老不死は孤独。

悪鬼の生まれ変わりと言われた我でも、耐えられなくなっておった。

しかし生きたかった。

贅沢三昧の日々を送ったが、やはり、感情と言うものが邪魔をする様だ。

・・・恩に着る。」

ハースの上半身が、下半身からズレ落ち、地面に転がる。

ハースは目を見開いたまま微笑んで、絶命した様だ。


こうして、ハースの悪政に幕が引かれた。

シンは、転生魔術と呪いが付与されるのは知っていた。

聖剣の事や呪いの事を詳しく聞き出すつもりだったか、ハースはその前に息絶え、詳しい事は分からなかった。


ハースが絶命した瞬間、シンは自分が不老不死となった事を自覚した。

ハースを切れば、呪われる。

その事は理解していた。

だが、孤独という恐怖がシンの心の片隅に生まれ落ちていた。



その後、天使族は魔族の王を討ち果たし、戦いに勝利した。

魔族は力を失い、魔獣と呼ばれる様になる。


新たな王を建てた人間族と天使族は、距離を保ちながらも、友好な関係を気付き、ここから平和な日々が数百年続いた。


騎士団長シンは、聖騎士パラディンの称号を与えられ、英雄となった。



「この後の事はまだ書かれていないんだな。私個人の事に過ぎない部分は、他に書かれていない部分と同じ扱いなのだろう。これは誰がページを継ぎ足しているのだろうか?」

シンは、ブツブツと独り言をいう。

ふとエレナを見ると、美しい赤い瞳がシンを見つめていた。



「読めたみたいだね。」


「あぁ。天使族に呪いを解く鍵が?」


「私の国にはそんな魔術は存在しない。」


「話は簡単ではないのだな。」


「うん。だから・・・」

エレナは立ち上がる。

「シン!私と旅に出よう!」


「・・・私は構わない、むしろ、エレナがいた方が、話がしやすい。だが、エレナは、次期女帝。旅などできないだろう?」


「次期女帝だからこそだよ!

色々な国を見て回る!それは大切な事だ!そして、不老不死で、最強のパラディンで、変態なシンは、私の護衛という名目で王に懇願する!」


「変態は余計だ。」


「じゃあ決まり!早速、私の国へ!」


「あぁ、よろしく頼む。」


シンとエレナは、握手を交わした後、

ミラの墓に二人で手を合わせる。

そして、ゆっくりと歩き出し、

洞窟の出口を目指した。


「あっ、エレナ。」


「何?」


「ちょっと待ってくれ。」


「うん。」


シンは、足早に少し引き返し、先程脱ぎ捨てた鎧とマントをアイテムボックスに収納した。


「へ〜。便利な魔術だな。」


「そうだな。洞窟を出たら少し時間が欲しい。」


「うん、分かった。」


シンは、引きこもりの子供が、満を持して部屋のドアを開ける様に、洞窟を一歩、また一歩と出口に向かって歩く。

その後ろを黙ってエレナは着いて行く。


「洞窟、出たけど?」


「・・・・。」


「出ましたけど〜?」

何か思い詰めた様なシンを勇気付けようと、エレナは冗談めかしく話しかける。


「あぁ。」

シンは、アイテムボックスから先程の鎧とマントを地面に取り出した。

「シン?」


「ファイアーストーム!」

「わぁー!」

シンは、突然鎧たマントに向かって、炎魔法を放つ。

「おい!危ないだろ!魔法使うなら言えよ!」

エレナは、不機嫌そうに言う。

「すまない。」


二人はマントが焼け、鎧が解けるまで、それを眺めていた。


「シン。」


「何だ?」


「良い心がけだ。」


「それはどうも。」


そして天使族の国を目指して歩き出した。

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