転生魔術師、聖騎士(パラディン)
「おー!なんと不憫な。」
全身に鎧をまとった、騎士の姿。
鎧の外からうかがう事はできないが、
彼は今、目を閉じて、次なる転生者の目星を付けた所だ。
聖剣を天に・・・天井にかざすと、
聖剣が光りだす。
「レエンカルナシオン」
聖剣の光は、時空の扉を開いた。
いくつもの筋が交差する真暗な空間。
人体の毛細血管血管の様に張り巡らされた世界線。
その中の目星ならぬ、一点の光に、聖剣の光が到達すると、魔法陣の様な物が展開された。
一点の光は、別の世界線に移動した様だ。
「うむ、今日も良き働きをした。
転生先は・・・我のいるこの世界線か。」
鎧姿の男は、特に気にする様子もなかったが、この転生させた人間の男。
それが、後々波乱を呼ぶ事になる。
自己紹介をしておこう。
我の名は、パラディン。
本当の名前は忘れた。
そう思う事にした。
遠い昔、聖騎士として生き、巻き込まれたと言うべきか、不老不死の転生魔術師となってしまったのだ。
我は、パラディン、鎧の転生魔術師、
などと呼ばれる様になった。
転生魔術師として生きる事を定められたあの日から、
我の名前を呼んだのは、ただ一人だけだ。
まぁ、我の人生は、後々話すとしてだ。
ポツン・・・ポツン。
真暗な鍾乳洞の中。
天井からつららの様にぶら下がる、鍾乳石の先端から堕ちる水滴が、水たまりに跳ねる音以外は聞こえない。
「あぁ、今日も静かだ。平和だ。」
そんな静かな空間、それが我の住処だ。
何故に鍾乳洞に住んでいるかって?
我は静かに暮らしたい。
誰とも関わらずに。
不老不死。聞き覚えはいいが、良い事など一つもありはしない。
お腹は空かないし、眠くもならない。
永遠に、つまらない時間だけが刻まれる。
楽しみと言えば、絶望に暮れる存在を、
転生させてやる事。
それ以外、何も無い。
だが、不老不死とは、絶対ではない。
もちろん、外的要因で傷を負えば、死に至る事もあろう。
我の前の転生魔術師がそうであった様に。
ならばと・・・何度か試した。
だが、自害はできない。
自害しようとすると、体が動かなくなる。
そして、外的要因には、体が勝手に抵抗する。
一種の呪いに近い複雑な縛りが、魔術と共に付与されたのだろう。
期待するのは、我を倒す事のできる存在。
そんなものは恐らく存在しないだろう。
聖騎士として生きた過去。絶対的強者であるとこの称号。
我の剣術は、残念ながら時空一だろう。
それに加えて、転生魔術と共に付与された、全属性魔術と規格外の魔力量。
我を誰か解き放ってくれはしないだろうか。
転生魔術を己自身に・・・それも叶わなかった。
今日も、静かに、ただ、転生させてやりたい不憫な存在を目を閉じて探す。
我には、それだけだ。




