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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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昼食が終わってコンビの組み合わせを俺とセルジオ、マイクとスティーブに変更してみて訓練で試してみることにした。

俺に関して言えば、過去に従事したミッションでセルジオとは一度だけ一緒のチームで行動した経験はあるものの、それは今から2年以上も前のことでありセルジオの考え方や行動の癖等はスッカリ忘却の彼方に消えている。そのことに関しては、改めてセルジオに聞くようなことはしていないけれど恐らくセルジオにしても恐らく俺と同様ではないかと想像する。

訓練施設の入り口で待機して上官を待っていると、程なくして上官が歩いてくるのは見えるので午前中と同じように、俺達は横一列となって敬礼した状態で上官が目の前に到着するのを待っている。

俺達の目の前に立った上官は軽く敬礼すると

「それでは、早速午後からの訓練を開始する。当然だが、目標タイムは午前中に諸君等が記録した時間を更新するか、或いは最低でも同タイムとなることを望む。それではスタートッ」

右手に持っているスタートの合図となるホイッスルを口に咥えて吹き鳴らす。

そのホイッスルを合図に俺達は、午前中と同じように森林の中に入るまでは横一列の隊形のままで走り出し森林の中へ突き進んでいく。

ただ、午前中と違っているのは森林に入ると直ぐに俺とセルジオ、マイクとスティーブのコンビに別れて2つのチームで周囲を警戒しながら行軍を行うことくらいだ。

しかし、昨日と今日の午前中の訓練で最初の襲撃を受けた地点に接近しても教官達からの襲撃は始まらない。お陰で、少しでも先へ進めることができるのは有難いが、気持ち的には襲撃に備えていたので多少なりとも拍子抜けしたような感じを覚えた瞬間だった。

突如、左右の方向からシムニッション弾薬の弾丸が、俺とセルジオを狙って集中砲火が開始されてきた。連続的に放たれてくるペイント入りの弾丸を被弾しないように注意して樹々の陰に俺とセルジオは身を隠すが、周囲の樹木に命中した弾丸が砕け散るのと同時にペイントを四方へ飛散させるので、教官達からの集中砲火が止むまでは目を開けていられない状態になる。

本来ならば、シムニッション弾薬を使用した訓練では幾ら非致死性であっても被弾すれば衣服の上からであっても青アザができるくらいの威力があるので、訓練実施に際してはフェイスガード或いはゴーグルを装着するのが当たり前となっているが、少しでも実践に近いスチエーションとすることで効果的な訓練を実施するという何とも訳が分からない理由で、俺達にはフェイスガードやゴーグルが支給されていない。ただし、仮にフェイスガードかゴーグルが支給されていたとしても、今の銃撃状況ではフェイスガードやゴーグルに無数のペイント飛沫が付着して視界が確保できなかったかもしれない。

何とか薄目を開けてセルジオの様子を見るが、当然セルジオも同じ状況で左手で目の前を覆うようにして幹の陰に隠れて教官達からの集中砲火が一時的にでも収まるのを待っているのが何とか確認できる。

俺とセルジオが反撃しようもない状況の中、マイクとスティーブ達が教官達の居場所を特定したのか反撃の発砲を開始してくれた。

少し離れているマイクとスティーブが教官達が姿を隠しているスチールターゲットへ向けて連続的に発砲すると、何発かに1発くらいの割合で「ガァン」とか「ガッキーン」という弾丸がヒットした音が聞こえてくる。

お陰でヒットした金属音が聞こえる度に、俺とセルジオに向けての集中砲火の勢いが徐々に弱まってくるのが実感でき、そのタイミングに合わせて俺とセルジオも反撃の発砲を開始する。

4人全員で反撃の発砲を開始してから、1分の経たないうちに教官達からの襲撃が終わったようで周囲からの発砲音が聞こえなくなり、森林に響くのは俺達が散発的に発砲した音だけが聞こえる。

各人が、構えている銃器のセレクターレバーは「SEMI」の位置にした状態で、周囲に警戒の視線を走らせながら目的地点の建物へ向けて歩を進めていく。

この後、再び教官達からの襲撃を受けたのは目的地点30メートル手前に俺達が差し掛かった時であった。

距離的には、俺達へ襲撃を仕掛ける最後のチャンスとばかりに、教官達は手持ちのシムニッション弾薬を使い切るような勢いで速射してくるので、流石に俺達も教官達がフルオートで発砲しているんじゃないかと勘繰ってしまうくらいの激しい銃撃に見舞われる。

俺達としては先程と同じような戦術で反撃を行い、どうにか4人のうち誰一人被弾することなく教官達の銃撃を退けて目的地点の建物に辿り着けたが、俺達4人の姿は直ぐ近くでペイント入りの弾丸が樹木等に命中して砕けた際に、周囲に撒き散らす塗料を徹底的に浴びた格好になるので、顔や戦闘服には大小の水田玉模様となってペイントが付着している。

建物内で俺達が到着するのを待っていた上官は、目の前で敬礼している俺達の姿恰好を見ても特段の反応を示すことなく冷静に手にしたストップウォッチのストップボタンを押し

「午前中と同タイムだな、まぁ良かろう」

と俺達に告げると続け様に

「明日も同様の訓練を行うので、前回も言った通り少しでもタイムを短縮するよう努力するように」

更なる時間短縮を俺達に求めてくる。

その上官の言葉が、例え無理な要求であったしても軍隊という組織では基本的な答え方が決まっており

「イエッサー、明日は更に努力します」

上官に敬礼しながら本音とはかけ離れた返答をする。

俺達の返答を聞いた上官から、てっきり「それでは訓練終了」の一言が発せられるものと思っていたが

「それと、明日の訓練からは諸君等が使用する武器については、メイン・アームの使用を禁止するので全員サイド・アームのみを使用して訓練するように。以上、訓練終了」

と予想外の言葉が付け加えられた後に訓練終了を告げると、付け加えた部分に対する俺達からの質問を受け付けることなく上官は俺達へ敬礼をすると1人で建物を出て行ってしまう。

後に残された俺達は、訓練の終了が比較的早い時間ということもあり基地へ戻ることなく、建物内に残って明日の訓練について協議を始めた。

そもそも、今日の訓練での組み合わせは最初からメイン・アームとサイド・アームを使用する人間を入れ替えるだけであったので、深く考える必要もなく組み換えを行えたが、明日に予定していたのは俺とスティーブ、マイクとセルジオの組み合わせとなるのでメイン・アームとサイド・アームを持ち替えるのを試しておきたいと考えていたのだが、明日の訓練から全員がサイド・アームのみの使用となってしまえば銃器を持ち替えて試すことができなくなってしまう。

4人で協議を行っている最中にスティーブが

「明日、ジョージとチームを組んだ際にはジョージにメイン・アームを使ってもらい俺はサイド・アームを使うつもりだったんだけど」

とデルタ・フォース内でのスナイパー経験が長い俺に気兼ねでもしたのか呟くように告げてきたが、俺としては別に俺がメイン・アームを使わなくても良いと思っていたのだ。

今回のミッションは、ジャングルで行われるため可能性が全くゼロとは言わないが、長距離での狙撃というシーンは想定し難いだけはなく使用するのが5.56×45ミリメートル弾薬という高速軽量弾を使用するSCAR-Lアサルトライフル銃となれば対応できる射程距離は200~300メートル程度になるかとは思うが、ジャングルの中で狙撃を実施するとすれば、ターゲットまでの弾道途中に樹木の枝や葉が存在しないことやターゲットが木陰等の下ではなく充分に日当たりの良く光量の状態が良いこと等、余程の条件が揃わない限りはあり得ないと思って間違いない。

それに、これまでスティーブが経験したミッションで超長距離狙撃をした実績がないのであれば、主に経験している射程距離は近・中距離ということなのだろうから俺がメイン・アームを使うよりも近・中距離の発砲に慣れているスティーブの方が適任かもしれない。

「俺は、別にメイン・アームであろうがサイド・アームであろうが拘りはないし、SCAR-Lアサルトライフル銃は使い慣れていないからスティーブに任せた方が良いと思っていたんだよ」

俺の本音をスティーブに伝えてやる。

「まぁ、それについては別の機会に話し合ってもらうとして、ハッキリしているのは上官からの命令で明日の訓練で使用できる武器はサイド・アーム以外しか使えねぇんだぜぇ」

俺とスティーブの会話に、いつも調子でマイクが割って入る。

そのマイクの言葉を聞いたセルジオは

「マイクの言う通り、誰がメイン・アームを使うかよりも明日の訓練で使える銃はサイド・アーム以外ないんだから、それを前提にして今日以上に上手くやるかが大事じゃないのか」

とスティーブに向かって諭すようにセルジオが話し掛ける。それを聞いたスティーブは黙って頷くと自嘲気味に笑みを溢す。

そのスティーブの様子を見ながら

「全員が同じサイド・アームを使うにしても戦術は、ワンパターンで良いんだよなぁマイク」

俺がマイクに向かって声を掛けると

「ああ、そうだよ。お前等は俺よりも器用かもしれねぇけど、どちらかと言えば俺は不器用な人間でねぇ、引出しも数多く持っているわけでもねぇから不必要に悩むと碌なことがねぇと思うんだ。それよりもリラックスして自分の出来ることにベストを尽くした方が良いぜぇ」

まるで鼻歌でも歌っているような気楽な感じでマイクが語る。このマイクが話す一言がチームを明るくしてくれている。

確かに、俺達はチームを組んで他の国々を舞台に様々なミッションを熟してくるが、何処かの有名なスポーツ選手のように国の名誉を掛けてといったような大げさなものじゃなく唯一掛けているのは、この世に1つしかない自分の命を掛けているわけで下手にあれこれ悩んだり考え過ぎたりして、本来の自分が持っている能力を出し切れないままで命を落とすよりも良い意味でリラックスして、自分のベストパフォーマンスを発揮しなければスポーツ選手ならば失敗しても後悔することもできるが、俺達の場合の失敗は即自分の死を意味することになるので、死体となってしまえば後悔する暇もない。

だからこそ、俺達の職務は常に危険と隣り合わせのため、如何にして余計なプレッシャーから解き放たれて何時も通りにリラックスした自分で最大限のパフォーマンスを導き出すかが重要になってくる。

しかも、ドジを踏んで任務遂行中に死ぬようなことになっても、表向きは名誉の戦死扱いをされることなく、遺体の状態で無事に本国へ帰還した後、ひっそりと戦死扱いされるのがオチであろう。

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