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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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全員が支給された銃器に装着されているスコープ等の光学照準器のゼロインを完了したところで、ストップウォッチを使って時間の計測していた上官から

「全員、30分以内にゼロインを完了したようだなぁ、それでは本日の訓練内容はスタート地点から300メートル先の建物までの行軍となる。ただし、単に森の中を行軍して300メートル先の建物に到着できるわけがないのは貴様等が理解しているとおり、途中にはスチールターゲットの裏側に隠れた教官達が銃器を発砲してくるので、くれぐれも命中弾を受けて脱落しないようにしろッ、本日の訓練についての説明は以上だ。それでは全員スタートッ」

と大きな声で言うと首から下げていたホイッスルを吹き鳴らした。

このホイッスルの音は、俺達に対するスタートの合図としての意味合いと同時に、森の中で待機している教官達への合図も兼ねているのだろう。

俺達は横一列の隊形をとって、ジョギング程度の速度となる駆け足で森の中に入って行く。

当然、支給されたメイン・ウェポンを構えているもののセレクターレバーの位置は「SAFE」にしてある。確かに、森の中に潜んでいる教官達が何時発砲してくるのかは分からないが、だからと言ってセレクターレバーを「SEMI」や「FULL」に切り替えていようものなら、森に自生している樹木のなかには幹に近い地上に根が露出している場合があるから、不用意に足元を引っ掛けたりすれば体勢を崩した状態でトリガーを自らが引いたり、或いは枝等がトリガーの前面に入り込んだ結果としてトリガーを引くようなことにでもなれば、アクシデンタル・ディスチャージという暴発に繋がり場合によっては、味方を被弾させかねず危険な状態となるのは間違いない。

そのような危険を回避するためにも安易にセレクターレバーを「SAFE」の位置から変更せず、発砲の必要が生じた時点で初めてセレクターレバーを「SEMI」或いは「FULL」に切り替えて発砲するのが正解と言える。

ちなみに、俺達が支給されたメイン・ウェポンのセレクターレバーを切り替えるとしたら間違いなく「SEMI」を選択することになり、めったな事では「FULL」を選択するような事はしない。それは使用する銃器によって作動速度に違いはあるものの、安易に連続発砲となる「FULL」を選択した場合にマガジンに装填できる弾数が30発や40発であったとしても発砲可能時間は1分にも満たない時間にしかならず、あっという間にマガジン交換を要する事態となる。

そのような状態となれば、マガジン交換を行う際に遮蔽物の陰に隠れて行うことになるにしても、その間に味方が発砲してくれなければ単に自らが危険な状態に陥り敵から集中放火を浴びることになる。それよりは、全員が基本的にセミオートを選択して射撃を継続的に行えば違った場所からの発砲になるにしても、常に発砲が行われる状況が生まれるので敵の方としても油断することができず、マガジン交換を行っている者だけを狙って集中的に攻撃するのは難しいと言える。

構えたメイン・ウェポンのマズルは進行方向へ向けながら視線は絶えず左右45度くらいの範囲を見渡していると進行方向から見て左から2番目に居るマイクが

「前方、12時の方向にワイヤーが張られているのが見える。間違いなくワイヤートラップが仕掛けられているので全員注意」

12時の方向を右手の人差し指で示しながら決して大きくはない声で叫ぶ、その示された方へ視線を向けると少し分かり難いが、細く黒いピアノ線が高さ30センチメートルくらいの位置に張られているのが確認できた。

張られているピアノ線の先に何を仕掛けたかは分からないが、普通に考えればトラップ爆弾で指向性のあるクレイモア地雷でも仕掛けたのだろうか、何れにしても充分に警戒しなければ教官達が発砲してくる弾丸だけに気を取られているわけにはいない。

ピンと張られているピアノ線の前まで到着した俺達が、ピアノ線に引っ掛からないようにして跨ぎ越えようしたところへ1発の弾丸が直ぐ隣に自生している樹木の幹に命中して何かが弾けた。

最初は、弾丸が幹に命中して樹皮等でも弾け飛んだものと思っていたが、弾けて近くに落下してきた破片を見付けたマイクが

「教官達が使用しているのはシムニッション弾薬だぞ、そこの幹に命中して飛んできた破片はシムニッション弾薬の弾丸部の一部で塗料が付着している」

そう叫ぶと、地面に落下した破片を右の人差し指に付着させて見せてくる。


シムニッション弾薬は、主に軍等で訓練用に使用するペイント弾薬として開発されており過去にはボール状のカプセルに塗料を仕込んだ弾丸をペイント弾と称して圧縮した空気や二酸化炭素ガス、或いは空砲等を使って発射していたが実際に使用すると実弾とは違ってフルオートや速射によって発砲した際には、使用するガス等の限界からくるものなのか実弾を発砲したのとは全くと言って良いくらいに再現性がなく、訓練としてもしないよりはマシ程度にしかならなかった。

そこで、少しでも実際の実弾を発砲した状態に近付けるために開発されたペイント弾薬がシムニッション弾薬で、実際に使用する銃器にはシムニッション弾薬を使用するためだけにコンバージョン・キットが販売されており、そのキットを組み込むことで実銃から発砲したのと近い状態が再現されている。

ただし、難点として訓練用に開発されて非致死性となっているわりには、被弾した際には青アザができるくらいの痛みを伴う威力があり訓練に際してはフェイスガード等を装着しなければならない。

最初のシムニッション弾薬が樹木に命中したのを皮切りに、各所から一斉にフルオート射撃が開始されてきた。

今回の訓練は、教官達は複数人数が配置されているのか珍しくフルオートで容赦なく発砲してくる。

こうなると、目の前のピアノ線を跨ぐ等という行為ができる状態ではないので、ワイヤートラップの手前で近くの樹木に隠れながら俺達も反撃しければ先に進むことができない。

しかし、厄介なのは教官達が盾としているスチールターゲットが迷彩柄に塗装されているため周囲の背景に溶け込んでいて容易に教官達の居所を特定するのが難しいことだ。

しかも、シムニッション弾薬は非致死性であるために装薬量も少ないので発砲音自体も小さければ、発砲した際にマズルから一瞬だけ見えるマズル・フラッシュも大して目立たない状況に加えて、教官達がフルオートで発砲してくるので周囲では枝や葉にシムニッション弾薬の弾丸が命中したり接触したような音や弾丸が砕ける音が邪魔をして、居場所を特定するために聞き取りたい音が簡単に探れない。お陰で、殆んど言って良いくらいに俺達からの発砲は散発的にしか行えず、単に時間だけが無情に経過していく。

それに業を煮やしたマイクが、手を使った合図で俺を含めた3人にマイクの後に集合しろと手招きしてくる。

確かに、マイクが隠れている樹木は幹自体が比較的大きく大柄な身体のマイクが充分に隠れているので、3人が意を決してマイクの後方へシムニッション弾が命中しないエリアへ移動してくると

「ジョージと俺が、2時の方向にある大きな樹木まで移動してみる。恐らく、教官達は俺とジョージが移動した方にもフルオートで発砲してくるから、セルジオは此処から俺とジョージを狙ってくる教官達の居場所を特定してP90短機関銃で反撃しろ、そしてスティーブも此処に残ってセルジオが教官達の居場所を特定するのをサポートするんだ」

そう早口で、この事態を打開するための作戦を説明する。

マイクの作戦に賛同する俺は

「俺はマイクの作戦に賛成する。セルジオとスティーブはどうだ?」

と2人に問い掛ける。

セルジオとスティーブも現状を打開するのに、マイクが提案した作戦以外に提案できそうなプランを持ち合わせていないようで、黙って頷き賛成の意を表した。

セルジオとスティーブが頷くのを見たマイクが

「じゃ決まりということでジョージ、タイミングを合わせて一気に2メートル先の幹の根元目指して転がり込むぞ」

そうマイクが言って幹の陰から様子を伺いチャンスが巡ってくるのを待っていると、殆どの教官達の銃器に装填していたマガジンが空になったようでフルオートによる射撃が弱くなってきた。

そのチャンスを見逃すことなくマイクが

「ジョージ、今がチャンスだ。行くぞ」

と俺に声を掛けて腰を屈めながら2メートル先の幹の根元を目指して駆け出していくので、俺も遅れをとることなく幹の陰から飛び出してマイクの後を追う。

マイクと俺は、野球のヘッドスライディングようにして2メートル先の根元へ転がり込むと、フルオートでシムニッション弾薬が周囲に着弾して弾丸の小さな破片や塗料を撒き散らかしてくる。

そのことによって、俺とマイクが居る場所とセルジオとスティーブが身を潜めている場所が離れることになり、シムニッション弾薬のフルオートによる集中砲火が分散されて目視による教官達の居場所を特定するのが容易となる状況が生まれた。

概ねの居場所が特定できたセルジオが、P90短機関銃から5.7×28ミリメートル弾薬をダブルタップによって発砲を開始する。

セルジオが放ったうちの何発かは、スチールターゲットに命中して「ガインッ」という金属音が響いてくる。

その音が鳴る度に、それまでの集中砲火が嘘でもあるかのように発砲が徐々に散発的になってくる。

それにより、シムニッション弾薬が発砲されてくる場所を特定するのが更に容易になったことを意味し、突然にマイクがSCAR-Lをフルオートにして教官が隠れているスチールターゲットの配置場所へ発砲すると何か所からスチールターゲットに命中した金属音が聞こえて、教官達からの集中砲火が完全に止んだのと同時にマイクのマガジンも空になる。

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