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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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アル・ウデイド空軍基地に帰還した俺達は、基地司令官へ遂行したミッション結果の報告を終えると数日間はアル・ウデイド空軍基地内で過ごすことになった。

流石に、帰還した日の夜は全員で基地内の食堂でビールやウィスキー等で祝杯を挙げて深酒をしてしまったので、翌日の昼近くまでベッドの上で睡眠を貪っていたが、目が覚めてからは基地内をジョギングして汗を流した後、デルタ・フォースから支給されている拳銃を使って射撃訓練を行って過ごし身体を鈍らせないように心掛けた。

1つのミッションが無事に成功したとしても、そこで気を抜いていたのでは何時新たなミッションが命令されるか分からないし、有頂天になって身体を鈍らせてしまえば新規に命令されたミッションの遂行に支障を来たすことにもなる。

アル・ウデイド空軍基地に帰還して2日後の午後、俺達は基地司令官から呼び出しを受けて司令官室へ赴くと、以外なことに全員が本国へ帰国するよう命じられ翌日の午前10時にはアル・ウデイド空軍基地から輸送機に搭乗して、ドイツのラムシュタイン空軍基地へ飛んでからラムシュタイン空軍基地保有の輸送機に乗り換えてアメリカ本国へ帰国するとのことであった。

重要ミッションと言っても、現大統領を狙った相手への報復といった意味合いが強い逮捕作戦ではあったが、無事に目的を遂げての本国帰国ということは暫くぶりの休暇が与えられるかもしれない。

その感覚は、俺以外のメンバーも同じように感じているようで海外の米軍基地内で職務に従事している隊員の手前ということもあり、露骨に嬉しそうな態度こそ見せていないが、6人同士の仲間内となれば自然と笑みが零れてしまうのは仕方がない。

何よりも嬉しいのは、例え限られた時間の休暇であっても自らの命の心配をする必要がないのが一番で、本国では銃器を使った犯罪者等がいないわけでは決してないものの従事するミッションで相手となるのは、常に元軍人であったり殺人を何とも思わないテロリスト等であることを思えば、本国に滞在している期間に犯罪者等と遭遇する確率は想像以上に低く、ミッションに従事している時よりも警戒するレベルは決して高いものではない。

アル・ウデイド空軍基地の司令官から本国へ帰国するための手筈が告げられ、自らの荷物を纏めてしまえば、いつも通りに基地内でのジョギングや射撃訓練を熟して時間を潰す。

ドイツのラムシュタイン空軍基地へ向かうことになる日の朝、俺達6人は全員が私服に着替えて基地内の食堂で朝食を摂るが、ガルシアとセルジオの2人は携帯電話のアルバムから奥さんと子供達を撮った写真を眺めて、久しぶりに再会する家族への思いを嬉しそうに語りながらの食事となっている。

朝食を終えて、各自がジーンズにカジュアルなシャツを羽織りバックパックを背負って空軍輸送機C-17グローブマスターⅢの駐機場へ向かうと主翼の4基あるエンジンは既にアイドリングを始めている。

俺達6人は、C-17グローブマスターⅢの機体後方へ向かい貨物搬入用のハッチが下げられている所から貨物室へ乗り込む。

ミッション遂行時であれば、殺風景な金属の骨組みしか見えない貨物室内も一時帰国となって乗り込む貨物室は、乗り心地の悪ささえ気にならなくなるくらいに居心地の良い場所に感じてしまう。

マンスールの逮捕作戦が誰一人負傷することなく無事にミッションを終え、その後にアル・ウデイド空軍基地で軽い訓練等を行っていたにしても心身の疲労は、6人全員が殆ど癒えていることもあり、貨物室の左右にある簡易式の座席に腰掛ける際は全員が座面の下に大きなバックパックを置いて、行儀良くシートベルトを着用する。

「ウイーン」という音と共に貨物搬入用ハッチが閉じて、C-17グローブマスターⅢがメイン滑走路へ向けて誘導路をゆっくりとしたスピードで移動を開始した。

誘導路からメインの滑走路に入り、C-17グローブマスターⅢの機体がメイン滑走路と平行になった状態で、C-17グローブマスターⅢは一旦メイン滑走路の端で停止する。

C-17グローブマスターⅢの機長とアル・ウデイド空軍基地の管制官との無線による遣り取りで、アル・ウデイド空軍基地の管制官からの離陸許可が出されるとC-17グローブマスターⅢの主翼にある4基のエンジンが出力を徐々に上げて唸り始め轟音が貨物室内にも響いてくる。

4基のエンジン音が相当煩くなった途端に、何の前触れもなくC-17グローブマスターⅢはメイン滑走路上でダッシュを始めて滑走すると、機体に対して横向きに着席している俺達の身体は真横から強烈なGが襲い掛かってくるのと同時に、C-17グローブマスターⅢの機体下部から出されている車輪がアスファルトの細かい凹凸の滑走路と接するたびに機体が小刻みに揺れる。

その揺れも数十秒も続き機体の前方が持ち上がってきたと思うと、目には見えない大きな力で足元から持ち上げられるような感覚となってC-17グローブマスターⅢが滑走路から離陸した。

滑走路から飛び立ったC-17グローブマスターⅢは、予定している飛行高度を目指すために機首を更に上方へ持ち上げるので、機体後方側に位置している締めていたシートベルトが身体に食い込み、まるで身体全体が斜め60度以上に傾いた感覚を覚える。

暫くの間、身体が斜めになった感覚でいると徐々に身体に食い込んでいたシートベルトの食い込みが弱くなってきた。予定している飛行高度に達して水平飛行へ移行したのだろう。

民間の旅客機ならばシートベルト着用のサインが消えるところなのだろうが、俺達6人はシートベルトを外すような真似はしない。

確かに、今日の天気は快晴と言っても良いくらいに澄み渡っているが、そのことに油断していると急にエアポケットと遭遇して機体全体が揺れ簡易式座席から転げ落ちないとも限らない。そうなれば、機体の骨組みである鉄骨が剥き出しとなっている貨物室の壁や床に叩き付けられ最悪の場合は骨折する可能性があり、久しぶりに休暇が与えられそうな時に、こんな所で油断した結果として怪我等をしたので折角の休暇が全てパーになってしまう。

本音としては、アル・ウデイド空軍基地からデルタ・フォースの基地があるノースカロライナのフォート・ブラックへ直接向かって一刻も早く本国の土を踏み締めたいところだが、アル・ウデイド空軍基地からフォート・ブラックまでは直線距離にして約13,000キロメートルもあり、俺達が搭乗しているC-17グローブマスターⅢの航続距離が4,440キロメートルなので、途中で燃料が切れてしまい直接乗り入れることが不可能なため、一旦はドイツのラムシュタイン空軍基地を経由してアメリカ本土へ向かうルートになる。

C-17グローブマスターⅢが、ドイツのラムシュタイン空軍基地に到着して機体が駐機場へ移動を完了すると後部の貨物搬入ハッチが下がり始める。

貨物搬入ハッチが完全に下がり切ると、ラムシュタイン空軍基地の隊員が貨物室内に留まっている俺達に対して、この機体から降りて隣で待機している機体へ乗り換えるように声を掛けてくる。

俺達は、足元に置いたバックパックを提げて下げられている貨物搬入ハッチのタラップを歩いて機体の外へ出てみると、隣に待機しているのはラムシュタイン空軍基地が保有しているC-17グローブマスターⅢであった。

ラムシュタイン空軍基地には、C-5ギャラクシーという大型輸送機も1機保有してはいるのだが、航続距離は4,445キロメートルとC-17グローブマスターⅢとは5キロメートルの距離しか違わない。しかも、C-5ギャラクシーの運用にあってはパイロット、副パイロットに航空機関士2名の最低4人の人員が必要となり、6人のデルタ・フォース・オペレーターをアメリカ本国まで送り届けるのであれば最低2名でも運用可能なC-17グローブマスターⅢを選択したくなる基地側の気持ちも分からないでもない。

帰国のために基地保有の輸送機に乗せてもらっている俺達からすれば、ここで愚痴を溢したところで俺達6人が基地保有の輸送機を勝手に操縦してアメリカ本国へ向かうというのは最初から無理であると分かっているので、大人しくアル・ウデイド空軍基地で搭乗したのと同型機であるC-17グローブマスターⅢの貨物室へ移動する。

俺達6人が貨物室へ搭乗すると、機体後部の貨物搬入ハッチが「ウイーン」という

音と共に引き上げられて貨物搬入口が閉じると徐行速度で誘導路を移動してメイン滑走路へ向かう。

アル・ウデイド空軍基地を離陸する時より、信じられないくらいに手際良くラムシュタイン空軍基地保有のC-17グローブマスターⅢは離陸してアメリカ本土を目指し飛行を始めた。

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