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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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俺の放った50BMG弾は、ヘリコプターの前面キャビンガラス窓の右側中央に命中して蜘蛛の巣状のひび割れと共に直径2~3センチメートルくらいの穴を開け、パイロットの首の付け根付近に着弾してパイロットの頭部が引き千切られて消失し、パイロットの座席には首のない胴体の頸動脈から血液が吹き出している状態で座っている。

そのため、隣の席に座っているコ・パイロットが悲鳴を上げているような表情を浮かべながらも、目の前にある操縦桿を必死に掴んでヘリコプターの飛行姿勢を保とうと格闘しているが、その顔は資料で見たことのあるマンスールに似ているように感じるが、スコープ越しに一瞬見えただけなので、間違いなくマンスール本人だという確証が持てない。

一方、マイケルの放った50BMG弾はヘリコプター後部座席の後方にある燃料タンクを狙ったようで、ヘリコプターの機体中央の下側に命中し被弾した孔からは、ジェット燃料が漏れて勢い良く機体外部に噴き出している。

一瞬とは言え、パイロットが被弾して頭部を失ったことで機体制御ができなくなったヘリコプターは、飛行姿勢を乱して燃え盛るマンスールの邸宅へ近付いていくがコ・パイロットが必死に操縦桿と格闘して、乱れた飛行姿勢を立て直しマンスールの邸宅から徐々に離れ始めている。

しかし、機体下部の左側から吹き出しているジェット燃料に、燃え盛っているマンスールの邸宅の炎が引火した途端、まるで生き物のように炎が空中を駆け上がりヘリコプター目掛けて向かっていく。

駆け上がる炎の先端がヘリコプターの機体に接触した瞬間、「ドォーンッ」という爆発音と共にヘリコプターの機体がオレンジ色の炎に包まれ、次いで爆発によって破壊された機体が四方へ飛び散って、火の着いた破片が地上へ落下していく。

俺もスコープの接眼レンズから目を離して、暫くの間はヘリコプターが爆発して火が着いた破片が、炎上中のマンスールの邸宅や敷地内の芝生へ落下する様を見詰めていた。

すると無線を通してマイケルのスポッターであるガルシアから

「マイケルがヘリコプターの燃料タンクを狙って発砲し、狙った通りに命中した燃料タンクから漏れ出た燃料に引火してヘリコプターが爆発した」

と状況を報告してくる。

「こちらからも、その状況を把握している。恐らく、ターゲットとしていたマンスールは死亡したと思われるが、各自は現在の場所で待機して状況を引き続き監視してくれ」

興奮した口調で右手を握り締めガッツポーズをしながらマイクが、チームの全員へ無線を通して指示を送っている。

無線を通してマイクの指示が送られた直後、邸宅の一部が崩壊して瓦礫の下敷きとなったコンクリートブロックで造られた弾除けの反対側、俺達から見てマンスールの邸宅の右側から燃え盛る炎の中を突っ切るように、2台のアースサンドカラーに外装が塗装されたハンヴィーが、邸宅の正面ゲートを目指して疾走して行くのが見えた。

俺は、急いでスコープを2台のハンヴィーへ向け接眼レンズ内に見えるレティクル・センターを2台のうち先頭を走っているハンヴィーの運転席側へ合わせ始める。

隣のマイクは早口で

「スティーブ、マイケル、マンスールの邸宅から走り出たハンヴィーを狙撃せよ。誰一人、マンスールの邸宅から脱出させるなッ」

とスティーブとマイケルに無線を通して、疾走しているハンヴィーを狙撃するように指示を出す。

疾走しているハンヴィーは、正面ゲートの鉄製の柵へ向かってスピードを緩めることなく突進してくる。恐らく、奴等は柵をハンヴィーのフロントで吹き飛ばしてマンスールの敷地から遁走するつもりなのだろう。

俺は、先頭を走っているハンヴィーが正面ゲートの10メートル手前くらいにまで迫った時点で、ゲパードGM6リンクスライフル銃のトリガーを引き絞る。

「ドーォン」、「ガッシャ」という音と共に50BMG弾が放たれる。疾走しているハンヴィーの左フロントガラス中央に命中すると、フロントガラス前面は蜘蛛の巣状の大きなヒビが入り、そのヒビの中央に2センチメートルくらいの孔を開けて貫通する。

ドライバーが被弾した先頭を走るハンヴィーは、スピードを緩めることなく正面ゲートの柵を吹き飛ばすが、目の前の道路へ進行方向を変えることなく俺達のいる丘の麓へ突っ込んでくる。

しかし、丘の麓は舗装された道路とは違って起伏が激しいために、車体右側が大きく撥ねて体勢を崩したかと思った瞬間に、ハンヴィーが横転して車体底部を晒して走行不能な状態となる。

すっかり車体底部を晒しているハンヴィーへスティーブが338ラプアマグナム弾を発砲すると、燃料タンクに命中したのかハンヴィーの後輪付近から小さな炎が見えると、徐々に黒色の煙が立ち昇り始める。

他方、後方を走行していた2台目のハンヴィーにはマイケルが放った50BMG弾が、俺と同じくドライバー側のフロントガラスに命中すると、2台目のハンヴィーはふら付きながらコンクリート製の塀に正面から勢い良く衝突して「ガンッ」という音が伝わってくると塀の一部が崩れて敷地内へ倒れ始め、ハンヴィーのフロント部分に覆い被さるように倒れ込むと白い水蒸気のような煙を噴き上げながら2台目のハンヴィーは塀の手前で停車した。

停車したハンヴィーの左右後部ドアが開いて、EVOLYS軽機関銃を構えた2人の男達がふら付きながら降車してくる。

降車してきた男達の顔は、頭部から鮮血が滴り落ちて血に染まっているがEVOLYS軽機関銃をスティーブとマイケルが居る方向にマズルを向けて7.62ミリメートル弾をフルオートで発砲してくる。

しかし、男達がEVOLYS軽機関銃をフルオートで発砲しているのは7.62×51ミリメートル弾薬の有効射程距離をオーバーしている状況なので、放たれた弾丸はスティーブとマイケルが居る手前へ着弾するばかりで2人を捉えることができていない。

そこへ、俺がスティーブに向かってEVOLYS軽機関銃を発砲している男を狙ってゲパードGM6リンクスライフル銃を発砲する。

俺が放った50BMG弾は、開け放たれたハンヴィーの後部ドアに命中して「ゴンッ」という音と同時に、ドアの装甲を貫通してEVOLYS軽機関銃を発砲している男の腹部に着弾すると、スティーブへ向けて発砲していたEVOLYS軽機関銃の連射が中断される。

被弾した男は、EVOLYS軽機関銃を持ったまま仰向けに倒れ込み、地面には赤黒い内蔵の一部と50BMG弾が貫通したことで撒き散らかされた血液によって周囲が血に染まっている。

被弾した男は、倒れ込んだショックによるものかEVOLYS軽機関銃のトリガーを引いた状態となったようで、再びフルオートで発砲を開始するが最初の数発がハンヴィーの左前輪タイヤを撃ち抜いてタイヤをボロボロにした後、EVOLYS軽機関銃のマズルが徐々に動き出しハンヴィーの後方に移動しながら連射を継続している。

フルオートの発砲が再開して数秒もしないうちに、ハンヴィーの後方へマズルが少しずつ移動していたEVOLYS軽機関銃のバレルがハンヴィーの右後輪タイヤに当たって移動を止めて車体底部越しに隣に向かって発砲し続けている状態となり、マイケルに向かってフルオートで発砲している男の左右の踝を撃ち抜いてしまう。

被弾した男は、マイケルへのフルオート射撃を継続できずに後部ドアの陰に膝をついて蹲るが、そこにも連続して7.62ミリメートル弾が撃ち込まれるので、男は横倒しとなるが側頭部にも数発の7.62ミリメートル弾が着弾して、射出口となった頭頂部からは脳の一部や脳漿と血液を地面に撒き散らして絶命する。

俺達から見て塀に衝突して停車しているハンヴィーの左側後部で、射手が腹部に被弾して意識がないにも関わらずトリガーが引かれた状態でコントロールされぬままフルオート射撃を継続していたEVOLYS軽機関銃だが、空薬莢かベルトクリップが銃器本体の何処かに引っ掛かったのか、回転不良が発生したようでフルオート射撃が停止すると周囲には静けさが戻ってくる。

「これから丘を降りてマンスールの邸宅の状況を目視確認するが、敵の生存者が居て反撃の発砲をしてくる可能性があるので、充分に注意して何時でも発砲できるようにしておけ」

マイクが無線を通して全員へ指示を送ると1人で丘を下り始める。

俺は、手にしたゲパードGM6リンクスライフル銃のマガジンを取り外して、右腰に装着している10発の12.7×99ミリメートルNATO弾薬が装填されている予備マガジンを取り出してゲパードGM6リンクスライフル銃のグリップ後方にあるマガジン挿入口に右手に持った予備マガジンを叩き込む。

これから、徒歩で燃え盛っているマンスールの邸宅へ赴き、敵生存者の有無を含めた状況を目視確認するのであれば、仮に生存者が居て反撃による銃撃戦が展開された場合に中途半端に残弾が残っているマガジンの状態にしておくよりも、事前に装弾数が多い状態にしておけば少しでも有利な状態となるのは間違いない。

特に銃撃戦が展開されている状態で、最も危険な瞬間となるのは銃器に装填していたマガジンが空となって予備マガジンと交換せざるを得ないシーンで、予備マガジンを交換する際は両手が塞がっている状態なので銃器を発砲することができず、例えマガジン交換が短時間で済むにしても機敏に反撃することができない。

それならば、未だ敵の生存者と遭遇していない今の状況で10発の12.7×99ミリメートルNATO弾薬が装填されている予備マガジンと交換しておけば、目視確認作業中に敵の生存者と遭遇しても充分に交戦可能となる。

必要なのは如何に事前の準備を怠ることなく行えるかで、戦場での生死を分ける結果となるので可能な限り予測可能な対応ができるかという事になる。

各自が丘を下りきると全員で横一列の隊形となって周囲の警戒を行う。

この場合に、全員で横一列となるのは下手に仲間と前後の位置関係で周囲への警戒を行うと、基本的に銃口が視線と同じ方向へ向けて警戒を行うので自分の前に味方が居れば一瞬ではあっても銃口が味方の背中へ向ける恰好となり、その時に銃撃戦が始まってしまうと何かの拍子にトリガーを引いてしまい味方の背中へ発砲する危険性があるので、少しでもヒューマンエラーを回避するためには細心注意を払っておく必要がある。

ただし、訓練等によって銃口が敵に向くまではトリガーフィンガーと呼ばれる利き手の人差し指をトリガーに掛けておかなければ充分に安全と思われるかもしれないが実際の現場で銃撃戦が、いつ始まるか分からない緊張した状態となると訓練によってマッスルメモリーとなるくらいに反復させても、自らの生死が掛かった戦場では無意識というよりは本能的に敵への反撃行動が優先されてしまい銃口が敵に向く以前に、トリガーフィンガーをトリガーへ掛けてしまう可能性があるので予め予防も兼ねて隊形自体を工夫して事故発生の危険性を排除しておくのだ。

横一列となって周囲を警戒しながら歩いていると、目の前には勢いが弱くなってきた横転したハンヴィーが迫ってくる。

流石に、横転しているハンヴィーに近付くと焦げ臭さと人間の肉体が焼かれた匂いが鼻を襲ってくる。これまでも数々のミッションに従事して、このような光景には慣れているが、人間に肉体が焼かれる匂いには如何しても慣れることができずに一瞬だが吐き気を催してしまう。

焼かれているハンヴィーの周囲には、車内から脱出したと思われるような痕跡は地面には残されていない。また、全てのドアは完全に閉まっているようなので何人が乗車しているのかは分からないが、このハンヴィーに乗車していた人間は全員が焼死したことは間違いないと判断できる。

実際には、このハンヴィーの車内で何人の人間が焼死しているのか確認する必要があるのだが、未だ炎上中のハンヴィーであることを考えれば安易にドアを触れるのは火傷の危険性があるのと同時に、ドアを開けたことでハンヴィーの車内に酸素が供給されてバックドラフト現象が生じないとも限らないので、車内の確認は炎の勢いが弱くなってから行うことになった。

次に、俺達6人は塀に衝突した2台目のハンヴィーへ向かい状況確認を始める。

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