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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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85/99

85

旋回状態のドローンの軌道と俺の鼓動のタイミングが合致しそうになり、ゲパードGM6リンクスライフル銃のトリガーを引き絞ろうと左手の人差し指に力を加えようとした瞬間、左手側から「ボッシュ」という84ミリメートル無反動ライフルが発射された音が聞こえてきたと思うと、一筋の発射炎を吐き出した84ミリメートル榴弾が真っ直ぐにドローン目掛けて上昇しているのが右目に見える。

俺の脳裏には「先にドローンを撃墜された」という言葉が浮かび上がり、同時に84ミリメートル榴弾が命中して炸裂すればドローンはマンスールの邸宅から離れてしまい想定していたマンスールの邸宅に火災を発生させることができなくなるが過った。

可笑しな事に、俺の右目にはドローンに向かって上昇している84ミリメートル榴弾と旋回飛行を繰り返しているドローンの動きが不思議なくらいに緩慢な動きに見え、そのうち84ミリメートル榴弾がドローンに命中して爆発を起こしている。

オレンジの所々に黒煙が交じり込んだ炎の塊とドローンの機体が粉々になった部品がマンスールの邸宅から離れた方向へ飛び散っていく。

俺達の目論見が失敗し、マンスールの邸宅に火災を発生させて邸宅からマンスールが脱出するところを狙うつもりが、精々マンスールの邸宅をボヤ程度の出火しか実現できないと落胆しかけた瞬間、これまで数々のミッションを遂行してきた経験で、幾つもの爆破した瞬間の光景を目にしてきた俺でさえ見た事のない情景が展開された。

84ミリメートル榴弾がドローンに命中して爆発を起こしたことで発生したオレンジ色をした爆発炎の塊が徐々に大きく膨らみ、その後には青々とした上空に四散しそうなる直前に塊の下部から眩いばかりに無数の白い発光体が地表目掛けて飛び散り出した。

ドローンに取り付けていたテルミット爆弾内に装填されていた粉末状の酸化鉄とアルミニウムを混合したテルミットが、化学反応を起こして異常発熱をしている混合物が白色の光を放ちながら四散して地表へ降り注いでいる。

白い発光体の大部分はマンスールの邸宅敷地内に落ちて、芝生等を焼き始めて所々に小さな炎が1マイル離れた所からでも確認できるくらいに燃えている。

また、発光体の一部分はマンスールの邸宅正面の外壁等に降り掛かり白かった壁も部分的に黒く焦げ始めているほか、2階の窓ガラスが吹き飛んだ箇所から邸宅内に数個の発光体が入り込んだため邸宅内で火災が発生したのか白煙が徐々に濃さを増して邸宅の外へ吐き出されている。

双眼鏡でマンスールの邸宅を監視していたマイクが

「やったぜぇ、マンスールの屋敷で火災が発生した」

隣で無邪気に喜んで声を上げているマイクであったが

「やばい、金持ちは碌なことをしねぇな、屋敷内でスプリンクラーが作動してやがる」

と叫び双眼鏡でマンスールの邸宅の様子を引き続き監視している。

そう言われて俺もスコープで、マンスールの邸宅2階の壊れた窓を覗いて見ると、確かに立ち上っている白煙が徐々に薄くなり始めているのが分かる。

偶然とは言え、ラッキーにもマンスールの邸宅に火災を発生させることに成功したと思った瞬間に、マンスールの邸宅に備わっている消火設備によって不成功に終わると思ったのだが、僅か数秒後には不成功と思った考えが早合点であることを思い知った。

弱まり掛けた白煙は徐々に収まり完全に鎮火しそうに見えていたが、窓からは先程までの感じとは違う白い煙が漂い出し、まるで湯気のように湧き出していると思った瞬間にマンスールの邸宅内から「ボンッ」という爆発音が聞こえると、あっという間にマンスールの邸宅内から赤黒い炎が壊れた窓から立ち上り始め、その炎の勢いは少しずつ増し始めているように感じる。

気が付けばマンスールの邸宅は火災が発生して建物の大部分が火に包まれている。

同じ現場と言っても、マンスールの邸宅から1マイルも離れた場所なので正確な事は言えないが、本国の自宅近くで懇意にしている消防職員に聞いた記憶があるのだが、火災現場にアルミニウムの粉末が貯蔵されている際には水を使った消火活動はできないという話で、火災現場の熱と消火用の水がアルミニウムに化学反応を促して火災現場が危険な状態になるとのことであった。

それであれば、目の前のマンスールの邸宅内で起こっている事象は、スプリンクラーから散布された消火用の水とアルミニウムの粉末が交じっているテルミットが交じり合うことで更なる化学反応が引き起こされて水蒸気爆発を起こし、火の勢いが増したということなのかもしれない。

予定していたマンスールの邸宅に火災を発生させるのに成功したものの喜んでばかりもいられない。

想定では、火災が発生して炎に包まれた屋敷から脱出すべく、マンスールは自家用ヘリコプターに乗り込んで脱出行動を取るところを3人のスナイパーに支給したアンチ・マテリアル・ライフル銃で自家用ヘリコプターを撃墜してマンスール本人を暗殺しなければならない。

俺は隣で双眼鏡を覗いてマンスールの邸宅に発生した火災を見入っているマイクに対して

「そろそろ、マンスールの脱出に備えてスティーブとマイケルに新たな狙撃準備をするよう指示しなくて良いのか?」

声を掛けるとマイクは慌てて双眼鏡から目を離して

「いけねぇ、マンスールの屋敷に火災を発生させるのに成功して、少しばかり浮かれてしまった、ジョージありがとよ」

小鬢を右手の人差し指で掻きながら無線でスティーブとマイケルに、マンスールが脱出のために自家用ヘリコプターに搭乗して屋敷から逃げる際、そのヘリコプターを狙撃して撃墜せよと指示を出す。

するとスティーブのスポッターであるセルジオから

「未だ、84ミリメートル無反動ライフルの連中が生存しているので、そちらを狙撃しなくても良いのか?」

とマイクに尋ねてくる。

そのセルジオからの問い合わせに

「すまん、未だ84ミリメートル無反動ライフルの連中を完全に黙らせていなかったなぁ、スティーブは引き続き84ミリメートル無反動ライフルの2人を黙らせるように、そちらの狙撃に集中して欲しい」

と指示を訂正し

「ダメだなぁ、冷静に行動するつもりでいたがミッションの第一段階が成功したことで浮かれちまっている」

右手を握り締めて拳にしたマイクが、軽く蟀谷をトントンと叩きながら愚痴を溢している。

俺は、ニーリングの射撃姿勢でスコープを覗いたまま

「まぁ、誰だって最初にチームのリーダーを任せられれば別の緊張で通常ではいられないのだろうけど、チーム全員がマイクを信じて行動しているんだから頼んだぞ」

気休め程度にしかならない言葉であることを充分に認識しながら俺はマイクを励ます。

「ジョージ、ありがとよ」

苦笑いを浮かべてマイクは小声で呟くと、再び双眼鏡でマンスールの邸宅の様子を伺い始める。

マイクが双眼鏡を構え直して暫くすると、マンスールの邸宅から1マイルもの距離が離れていても明らかにヘリコプターのメインローターが回転を始めている音が微かに聞こえてくる。

マンスールの邸宅は、すっかり炎に包まれているのでヘリコプターが上昇を開始しない限りは、こちらからは一切邸宅の裏側の様子を窺い知ることができない。ただ、唯一分かる手掛かりとしてヘリコプターのメインローターが回転することで巻き起こる風の影響で、建物を包んでいる炎の状態が変化するので概ねの想像ができるくらいである。

マンスールの邸宅上部で燃え盛る炎は、建物の裏側に控えているヘリコプターが依然としてアイドリング中であることを知らせてくれている。

間違いなく上昇ために建物の陰から飛び出してくるヘリコプターとの距離は1マイルと想定しても大外れではないだろうからスコープのエレベーション・ダイヤルには触れない。

「マイク、風の状態はどうなっている?」

とマイクに問い掛ける。

「今のところ、風は11時から4時の方向へ流れ、風速は毎秒1メートルと徐々に弱くなってきている」

マイクから直ぐに情報が伝えられる。

現状の風であれば、1マイルの射程があるにせよ弾道への影響は殆どないと判断しても間違いない。そうなれば、レティクル・センターにヘリコプターのパイロット頭部を狙って発砲すれば、ヘッドショットの状態で被弾したパイロットはヘリコプターをコントロールできない不能となり、仮にコ・パイロットが居たとしても離陸直後に飛行姿勢を乱したヘリコプターが簡単に飛行姿勢を修正できるとは思えず、まして目前には炎に包まれた建物が迫っているのだから墜落する可能性が高い。

微かではあるが徐々にヘリコプターのメインローターの回転数が上がってきているのか、先程よりも音が少しずつ変わってきているし、邸宅を包む炎も酸素を供給されて勢いを増しているほかに風に靡いているように見える。

俺は、建物の陰からヘリコプターの機体が見えたならば直ぐに狙えるよう、ゲパードGM6リンクスライフル銃を支えるのに必要となる力以外を極力抜くようにして身体をリラックスさせて、その瞬間を待っている。

邸宅を包んでいる炎の感じも相当に変化しているところを見ると、そろそろヘリコプターが離陸を開始するはずである。

すると、ヘリコプターの離陸を援護するためなのか炎に包まれている邸宅左側の弾除けから84ミリメートル無反動ライフルを構えた射手が飛び出して、俺達の方へ向けて84ミリメートル無反動ライフルを発射しようとしている。

84ミリメートル無反動ライフルを構えた射手が、ニーリングの姿勢を取ろうとした瞬間に、タイミング良くスティーブがKIVAARIライフル銃から338ラプアマグナム弾を発砲した音が聞こえてくる。

スティーブが放った338ラプアマグナム弾は、ニーリングの姿勢を取ろとしている射手の腹部に命中し、被弾した射手は84ミリメートル無反動ライフルを持ったままで仰向けに倒れ込み、腹部に被弾して意識を失う寸前に無意識に84ミリメートル無反動ライフルのトリガーを引いてしまったのか「ボッシュ」という発射音と共に84ミリメートル無反動ライフル後部のベンチュリ・ファンネルから吹き出してくるバックファイヤーによって射手の右半身は、大部分が焼かれて炭化した状態となったので間違いなく死亡しているのに違いない。

一方、84ミリメートル無反動ライフルから射出された砲弾は炎に包まれている邸宅に命中して「ドッン」という音を響かせて爆発し、建物の左4分の1くらいがガラガラと崩れ出して残骸が弾除けの方へ倒れ込んでくる。

これで、弾除けに隠れていた他の1人も逃げ場を失って瓦礫の下敷きとなったので、即死したことに疑う余地がない。

そこに、炎に包まれた邸宅の左側からヘリコプターが上昇してくるのが見えた。俺は、ヘリコプターの右側操縦席で操縦桿を握っている男の顔をスコープのレティクル・センターに合わせてゲパードGM6リンクスライフル銃のトリガーを引き絞る。

「ドォーン」という発砲音と「ガシャーン」というロングリコイルによってバレルとボルトが後退する音が聞こえた直後に、足元の方からも「ドォーン」という発砲音が聞こえてきた。

何処に照準を合わせているのか分からないが、間違いなくマイケルもヘリコプター目掛けてゲパードGM6リンクスライフル銃を発砲したのだろう。

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