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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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比較的移動距離の短いマイケルとガルシアのチームからマイクへ、狙撃ポイントに位置したことを知らせる暗号無線が発信させているのが、右耳に差し込んでいるイヤフォンで聞き取れる。

マイクは、スティーブとセルジオのチームが未だ狙撃ポイントへ到着していないために、マイケルとガルシアのチームに新たな連絡をするまでは、その場で待機するように指示をしている。

目の前にあるマンスールの邸宅は、3階建ての造りでマンスールの趣味なのか壁は白壁となっており、この位置から見るとまるでホワイト・ハウスのミニチュア版のような感じがしないでもない。

スコープの倍率を低くしてマンスールの邸宅を観察している時から、俺が気になっているのは海側から陸地に向かって強くはないが風が吹き出していることで、丁度マンスールの邸宅の背後から吹いている状況なのだが、風向きとしては概ね12時から6時の方向となり狙撃する立場からすれば、向かい風ということで射出された弾丸のドロップ量が通常よりも若干多いかもしれないのだが、弾道が横方向へ流れてしまう心配はないと思える。

しかし、海から吹いてくる風はマンスールの邸宅に当たって吹いているので、1マイルも離れた場所からでは感じ取ることができないが、恐らくマンスールの邸宅近くでは気流が若干なりとも乱れている可能性があり、現時点ではマンスールの邸宅手前に発生している乱気流が、弾道へどの程度影響するのか見当がつかない。

俺は隣で双眼鏡を使ってマンスールの邸宅を監視しているマイクに

「現時点で海からの風が俺達の方に吹いているが、その風がマンスールの邸宅に当たってから俺達の方へ流れて来ているわけだが、恐らくマンスールの邸宅近くでは風が乱れて乱気流となっているはずなので、間違いなく弾道に影響を及ぼすから狙撃を始めたら、射撃のたびに各々の狙点と着弾点の情報を共有しておかないと、ここぞという特定のポイント狙撃を行う際に貴重な参考となるから、各チームへ連絡してくれないか?」

とマイクに指示してもらうよう依頼する。

もし、この無線連絡がマンスール側に傍受されていたとしても、その情報をキャッチしたところで風向き自体を巨大な資産を有するマンスールの方でも変化させることは不可能だから聞かれたところで特段の問題にはならない。

それを理解したマイクは、覗いていた双眼鏡から目を離して俺の方へ視線を向けると軽く頷いて、他の2チームへ無線連絡をする。

マイクが無線連絡を入れてから3分後に、セルジオからマイク宛に狙撃ポイントへ到着した旨の連絡が入ってくる。

そのセルジオからの無線を受けたマイクは、双眼鏡から目を離して周囲に視線を走らせ始めている。

太陽が昇ってきているので徐々に光量が増して明るくなってきており、そろそろ高性能スコープの倍率を上げても使い物になるくらいの光量が確保できそうになってきているので、狙撃開始の合図を出すためのタイミングをマイクは探っている。

「各ポイント、そろそろ狙撃を開始してもらうが、狙点は俺から変更の指示があるまでは建物の2階か3階の窓ガラスを狙って狙撃を行うようにしてくれ、それでは最初にマイケルから狙撃を始め、その後はスティーブ、そして最後はジョージの順番で狙撃をする。それでは、マイケルからファイヤーッ」

とマイクが咽頭マイク越しに命令する。

ニーリングの射撃姿勢でゲパードGM6リンクスライフル銃を構えている俺の下方になる斜面から、「ドオーンッ」という12.7×99ミリメートルNATO弾である50BMG弾がマンスールの邸宅へ向けて発射された発砲音が響いてくると、その直後に「ガッシャーン」というゲパードGM6リンクスライフル銃がロング・リコイルによってバレルが後退する作動音が聞こえてくる。

マイケルがゲパードGM6リンクスライフル銃から発砲して、1秒くらい間を置いてから「ゴンッ」という音がマンスールの邸宅から聞こえてくる。

間違いなくマイケルは、窓ガラスを狙って発砲したのにガラスが割れるような音が聞こえてこなかったのは、やはり弾丸の重量が重い50BMG弾であっても乱気流による風の影響を受けて、予想よりもドロップ量があって建物の外壁に命中したということなのだろう。

右の耳に差し込んでいる無線のイヤフォン型スピーカーにはガルシアの声で

「2階中央の窓ガラスの右側を狙って発砲したが、着弾は4時の方向へ5インチ(12.7センチメートル)くらい逸れた」

という報告が聞こえてくる。

やはり、建物に当たった海風が建物を超えた直後に乱気流となっているので弾道に影響を与えているのが明白となった。ただ、願わくは現時点の海風自体の風向きが急激に変化しないことを祈るばかりで、仮に海風自体の風向きが変化するようだと乱気流の状態も変化するので、マイケルやスティーブが発砲した結果を参考にすることが出来なくなってしまう。

マイケルの発砲した着弾状況を踏まえて、スティーブのKIVAARIライフル銃から338ラプアマグナム弾薬が発砲された射撃音が聞こえてくる。

俺の居る位置からKIVAARIライフル銃を発砲したスティーブまでは80メートルくらいは離れているが、地形による影響もあるのか338ラプアマグナム弾薬が発砲された音が結構大きく聞こえる。

マイケルの時よりも心持ち早く「ガッシャ」という音が聞こえてくると無線からセルジオの声で

「恐らく、マイケルが狙ったのと同じ窓ガラスの左側を狙って発砲したが、窓ガラスの右側へ着弾した。ただし、奴の邸宅に使用している窓ガラスは防弾ガラスを合わせガラスにしているみたいだ。着弾点を中心に、大きく蜘蛛の巣状のヒビがはいったが貫通までしていない」

と報告してくる。

確かに、マンスールくらい財力がある人間の屋敷なので窓ガラスにしても1枚ガラスで簡単に弾丸が貫通するような造りにはしていないと思っていたが、セルジオからの報告を聞くかぎりでは防弾ガラスを合わせガラスにして、恐らく2枚のガラスの間には衝撃に強い透明の特殊樹脂をサンドイッチしているのだろう。

ただし、幾ら防弾ガラスを合わせガラスにして対策を施していようが、ロングレンジ用のライフル弾薬を同じ箇所へ向けて2~3発も被弾させれば間違いなく窓ガラスが貫通するであろうと確信する。大体、俺達3人のスナイパーが使用しているのは徹甲弾で、戦車クラスの装甲を撃ち抜くのは厳しいとしても、それ以外であれば確実に貫通させる威力があるので、1発で貫通しなかったとしても継続して複数発が命中すれば確実に撃ち抜けるはずである。

俺もスティーブが射撃して着弾した箇所へ命中させるべく、2人が狙撃してくれたことで概ね検討をつけた2階の窓ガラスの左上方へレティルのセンターを合わせてから、右隣りといっても正確には4時くらいの位置に立っているマイクに狙点を建物2階中央窓ガラスの左上方と告げてゲパードGM6リンクスライフル銃のトリガーを引き絞る。

腹の底に響く重厚な発砲と共に「ガッシャーン」というバレルとボルトが後退すると、エジェクション・ポートからは長さ約10センチメートルの50BMG弾薬の空薬莢が吐き出され、同時にバレル先端に取り付けられている反動抑制のためのコンペセイターから高温高圧の発射ガスと衝撃波が噴き出す。

マイクが俺の直ぐ右隣りの位置に立たなかった理由は、コンペセイターから吹き出される発射ガスと衝撃波から逃れるためで、もし安直に右隣りの位置に立っていようものならゲパードGM6リンクスライフル銃はブルパップ方式の造りになっているので、バレルの先端位置がブルパップ方式ではないアンチマテリアル・ライフル銃よりも手前側になり、加えて作動方式もロングリコイルのために発砲後にはバレルも後退するのでコンペセイターから吐き出される発射ガスと衝撃波は、相当に射手よりに吹き出す結果となり、直ぐ隣に立っていれば間違いなく発射ガスと衝撃波の餌食となって全身で浴びることとなり、最低でも全身火傷は免れない。

バレルが元の位置に戻った直後に、遅れて前進してきたボルトがマガジンの最上部に位置している2発目をチャンバーへ送り込み次弾の発砲準備が整ったあたりでマンスールの邸宅から「バッンッ」という音が僅かに聞こえてきた。

「ジョージが放った12.7ミリメートル弾は、狙った通りの場所にヒットしてスティーブがヒットさせてヒビの入っていた窓ガラスが枠から外れて室内へ吹っ飛んだぞ」

双眼鏡を覗いているマイクが興奮したように話している。

最初に発砲した場所から20メートル右へ移動したガルシアから

「マイケルは、ジョージが吹き飛ばして窓ガラスが無くなって室内が丸見えになっている所を狙って建物内を狙撃する」

無線を介して連絡を終えると同時に「ドオーンッ」というゲパードGM6リンクスライフル銃が発砲された音がマイケルとガルシアが居る辺りから聞こえてくる。

暫くの間を置いて、マンスールの邸宅から「ボコッ」という建物の内壁に12.7ミリメートル弾が着弾したような音が聞こえてくると、突然マンスールの邸宅から続け様に「バッ、バッ、バッ」という連続した発砲音が聞こえてきた。

「敵が応戦してきた。窓ガラスが吹っ飛んだ所から2人がFNハースタルのEVOLYS軽機関銃をフルオートで発砲している。音から判断すると7.62×51ミリメートル弾薬使用のモデルと思われる。7.62ミリメートル弾の有効射程距離からは離れているものの各チームは充分に注意するように」

双眼鏡でマンスールの邸宅を注視していたマイクが、無線で他のチームへ注意喚起のために連絡を行う。

2挺のEVOLYS軽機関銃から放たれた7.62ミリメートル弾は、俺達の居る丘の麓付近に連続的に着弾しては幾つもの土煙を舞い上げさせている。

間違いなく、EVOLYS軽機関銃には200発の7.62×51ミリメートル弾薬が専用の金属クリップで連結された状態で収納するボックスマガジンを装備しているのだろう。

最初からフルオートで発砲してくるが、一向に射撃が中断する気配がない。ただし、EVOLYS軽機関銃には簡単にバレルを交換できる構造になっていないこともあり、1分間に発砲できる回転速度はかなり遅い。

機関銃等で回転速度の早いフルオート射撃ができる銃器は、マガジンに装填可能な弾薬が少ないか、或いは目の前で発砲してくるEVOLYS軽機関銃のようにボックスマガジンに数百発を備えている場合、同一のバレルで射撃を継続していると高熱な発射ガスによって徐々にバレルが熱せられて強度を失い、発砲することができなくなるため、比較的簡単にバレルが交換できるような構造とするのが普通で、そのような構造を採用しない場合には連続的な発砲の回転速度を落としてバレルの冷却時間を確保するようにしている。

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