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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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「シューッ」という威嚇音を発しながら鎌首を擡げているミドリジャララカは、スティーブに目掛けて飛び掛かっていく。

スティーブは反射的に、左手に持っているKIVAARIライフル銃が収納されている強化樹脂製のハードケースを盾替りにすると「ドンッ」という音と共にミドリジャララカがハードケースに衝突するが、咬みついて目の前の獲物に毒液を注入する攻撃が通用しないと判断したのかミドリジャララカは、身体をクネクネとくねらせながら俺の方へ移動してくる。

俺は、右手に持っているゲパードGM6リンクスライフル銃やリューポルド社のMark4M3タイプスコープを収納して重量が8キログラム優に超えているハードケースで近寄ってくるミドリジャララカの頭部から20センチメートルくらい後方の位置へ持っているハードケースを勢い良く叩き付けてミドリジャララカの移動を阻止する。

身体の上に重量が、8キログラムを超えるハードケースを乗せられたミドリジャララカは、ハードケースから後方の身体は毛糸を丸めたような状態になりながらハードケースから逃れようと結構な力で踠いている。

以前にミドリジャララカについて調べたことがあったのだが、確かミドリジャララカの平均的な体長は70~80センチメートルとされている筈なので、目の前で襲い掛かろうとしているミドリジャララカは平均の体長よりも随分と規格外に大きく、恐らくは一帯の縄張り争いに勝ち残った勝者なのだろうし、近くで生息していた同種の蛇等も共喰いしていたかもしれない。

ハードケースから安易に右手を離してしまうと、この大物の力では重石替りにしているハードケースから逃れて俺達に逆襲してくるのは間違いないと思われるので、俺はハードケースの取手を握っている右手をそのままにして、左手でベルトに装備していたレザー・シースから刃渡りが20センチメートルのコンバットナイフの柄を握り締めて抜き出し、ミドリジャララカの特徴ある鋭い吻と扁平な頭部の直ぐ後ろくらいを目掛けて切り付ける。

切り付けられたミドリジャララカは、一瞬だがコンバットナイフで切り付ける前よりも一層強い力で一瞬暴れ出したが、脊椎内を通っている運動神経をコンバットナイフで切断されたために、先程まで毛糸を丸めたような状態となっていた身体が急に脱力したようにハードケースから後方の身体が地面で弛緩したような状態となって伸びている。

身体の色や形状は随分と違うが俺の脳裏には日本で暮らしていた幼少の頃、祖父に連れて行ってもらった鰻屋で捌かれている鰻を思い出していた。

鰻職人の手に捕まれた鰻は、掴んでいる手から逃れようと精一杯全力を出して暴れているが、鰻職人が鰻の頭部から直ぐ後ろへ鰻割き包丁を使って僅かな切込みを入れると脳からの運動指令を伝える神経が切断されてしまい、散々踠いていたのが嘘のようにダランとした状態で大人しくなり、細長い目打ちでまな板に頭部を固定されると鰻職人が使う鰻割き包丁によって手際良く捌かれていた。

俺が運動神経を切断したミドリジャララカも、同様に大きな身体を全力で運動させるための脳からの指令が届かなくなっているので、切り付けた箇所より頭部側は小刻みに動かして時折、俺に咬みつこうと口を開いたりしているが全身を動かせない筈なので襲ってくる心配はないだろう。

それでも注意してミドリジャララカの身体に載せていたハードケースを持ち上げてみると案の定、身体の上から余計な重量物がなくなったにも関わらずミドリジャララカは弛緩したように全身を伸ばしきったままで動こうとはしない。

その様子を隣で見ていたマイクは、額の汗を右手の甲で拭いながら

「ふう、ジョージ。助かったよ、俺は蛇だけは苦手でなぁ。スティーブへのアタックに失敗したミドリジャララカが、お前と俺の方に向かって来た時には、一瞬だがパニックに陥ったよ」

苦笑いを浮かべた表情で呟いてくる。

マイクとは結構な回数のミッションを共に行動してきたが、まさかマイクが蛇を苦手にしているのは全く知らなかった。

身長が俺よりも高く、身体全体も筋肉が隆々として野性味が溢れるように口髭を蓄えているマイクを見れば、蛇等を見ても平然とした表情のまま素手で蛇を捕まえて放り投げそうにイメージするのだが、ミドリジャララカが俺とマイクの方へ迫って来た時にパニック状態になっていたとは想像すらしていなかった。

確かに、俺も蛇を苦手としておりミドリジャララカが迫って来た時も直接手で摑まえるのが嫌なことと、下手に手を出して咬みつかれ牙から毒を注入されては敵わないので、右手に提げていた強化樹脂製のハードケースを使ってミドリジャララカの動きを止めることにしたが、コンバットナイフでミドリジャララカの脊髄を切り付ける際は、大して気持ち悪いとかの感情が湧くこともなかった。

第一、このような危険な野生生物を野放しにしておけばライフル銃を構えて狙撃を行う際、幾ら両目による照準で周囲に注意を払っているにしても自分の足元までは及ばないので、気付かずに襲われたら一瞬の噛み付きで毒液を注入されてしまい手元に血清等があるわけでもないのだから、ミッション遂行中に生命を落としてしまう結果を招いてしまうことになる。

特に、ミッションを遂行する場所が街中ではなくジャングル等の自然溢れるなかで行う時には、毒蛇だけではなく毒蜘蛛や危険な昆虫に加えて肉食獣等にも警戒しなければならず、ミッション遂行中に危険生物と遭遇した際は適宜排除しておかなければ落ち着いてミッションを遂行することもできない。


マンスールの邸宅から1マイル離れたポイントに到着できたのは日の出近くになった頃で、それまでの移動中には4匹のミドリジャララカを駆除しながら行軍していた。

到着したポイントは、マンスールの邸宅を望むように変形したUの字となった丘であり、左端の方が最も高い位置となり右側に向かって緩やかに下っている。また、マンスールの邸宅も海側に面して建っているが建物の正面は海側とは反対側の俺達が居る丘を望んだ方向となっている。

現時点で俺達がいるのはUの字の一番底になる場所で、マンスールの邸宅から最も離れた場所になり、その地点が直線距離で1マイル離れた場所となっている。

全員がマンスールの邸宅を薄暗い状態のなか直接肉眼で眺めていると、マイクがスティーブとセルジオのコンビに、目測では80メートルくらい離れた左側の最も丘が高い位置へ移動して狙撃を行うように指示している。

マイクが指示した場所からマンスールの邸宅までは直線距離にして凡そ1キロメートルくらいであり、マンスール側が84ミリ無反動砲を使用したとしても丘の付け根くらいにしか着弾しないと思われるのでレーザー誘導弾でない限り、仮に砲弾が着弾して起爆したとしても爆風による影響は殆ど受けないと言っても過言ではない。

それに、スティーブが支給されているKIVAARIライフル銃は338ラプアマグナム弾薬を使用し、2009年にイギリス軍王室騎兵隊員がアフガニスタンで2,475メートルからの射程距離での狙撃に成功しているので、1,000メートルとは言え撃ち下ろしとなる射程距離での狙撃は、容易であるとは言えないものの決して難しい狙撃とはならない筈である。

また、338ラプアマグナム弾薬は多くの軍隊に所属するスナイパー達が使用する長距離狙撃用弾薬として1980年代に開発され、最大有効射程距離は1,750メートルとなっており射程距離が1,000メートルまでであるならば軍が使用する高性能ボディアーマーを貫通させるだけの威力を有している。

一方でマイケルとガルシアのコンビに対してのマイクの指示は、今いる場所から60メートルくらい斜面を下った場所から更に右方向へ60メートル横へ移動した地点で狙撃を行い、その場で数発を発砲し終えたら左方向へ20メートル移動して狙撃を再開すると言った行動を断続的に行うようにといった移動襲撃を指示している。

最後に俺への指示は、現地点からの狙撃を行って欲しいとのことで3人のスナイパーの内で最も射程距離が遠くなることになるが、超長距離狙撃における俺のスキルを信用してのことのようで、特にマイクが意図しているのは複数の狙撃ポイントから切れ間なく精度の高い狙撃を行うことでマンスール側に30~50人規模の小隊が襲撃してきたと思わせたいとのことであった。

そこに、アル・ウデイド空軍基地から酸化鉄とアルミニウムの粉末を混合させた物であるテルミットと起爆措置を搭載したドローンをマンスールの邸宅上空に飛来させたうえで、ドローンを爆発させてテルミットを着火して酸化還元反応を起こすことで生じる激しい高温でもってマンスール宅を火災を発生させ、その火災から脱出すべくプライベートヘリコプターに乗り込んだところを撃墜することでマンスールを殺害するとのことであった。

スティーブとセルジオ、マイケルとガルシアのコンビは早速移動を始めようとするが、マイクがセルジオとガルシアを呼び止めて各々が担当するスナイパーが発砲開始となる合図を無線で行う際の暗号を確認している。

マイク、セルジオ、ガルシアの3人が暗号の確認を終えると、スティーブとセルジオのチームが丘の先端へ、マイケルとガルシアのチームが目の前の斜面を下り始めた。

俺も手に持っているハードケースを降ろして、そのハードケースを横に置いてからハードケースの蓋を開けてバレルが後退した状態のゲパードGM6リンクスライフル銃を取り出す。

ゲパードGM6リンクスライフル銃のアッパー側のレイルには既にリューポルド社のMark4M3タイプスコープが装着されているが、対物レンズと接眼レンズを保護しているプラスチック製のキャップを跳ね上げてスコープを使用できる状態にする。

それから、右側の腰に吊るしている12.7×99ミリメートルNATO弾薬10発が装填されている弁当箱のようなマガジン1個を掴んで、いつもとは勝手が違いグリップの後部にあるマガジン挿入口へ叩き込む。

ゲパードGM6リンクスライフル銃本体の右側にあるコッキングハンドルのロックを解くと「ガッキーンッ」という金属音と共にバレルが前進し、続いてボルトが前進するとマガジン最上部にある12.7×99ミリメートルNATO弾薬のヘッド部分を押し出してチャンバーへ送り込む。

チャンバーへ12.7×99ミリメートルNATO弾薬が装填されたことで発砲準備が整うのと同時にレシーバー部へ収納されていたバレルが本来の位置へ戻ったことでゲパードGM6リンクスライフル銃の本来の全長となる。

グリップの近くに位置するセレクターレバーを「SAFE」に位置へ移動させて安全措置を掛けてから、Mark4M3タイプスコープの倍率を落としてマンスールの邸宅を覗く。

高倍率のスコープを最初から高い倍率で覗いたとしても、接眼レンズには余りに部分的にしか映し出されないので、スコープを覗いている本人も何処へ対物レンズが向いて見えているのか混乱してしまうので、最初は出来るだけ倍率を低くしてターゲットの全体が見えるくらいの状態から徐々に倍率を上げて対象物にフォーカスした方が時間の無駄にならない。

また、今は日の出近くの状態なので光量が不足しているからスコープの倍率を高くしたところで不鮮明にしかマンスールの邸宅を見る事ができないし、スティーブとマイケルのチームも所定の位置で準備完了となるまでは時間があるので、焦ることなく現時点での光量に見合った倍率にしてマンスールの邸宅を観察する。

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