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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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丁度、俺がゲパードGM6リンクスライフル銃に装着したリューポルド社製Mark4M3タイプスコープのゼロインを終えて50BMG弾の着弾によりボロボロとなってしまったペーパーターゲットを取り外し新品のペーパーターゲットに取り換えて射座に戻ってくると目の前には、マイクと談笑しているスティーブ、セルジオ、マイケルにガルシアのマンスール逮捕作戦でチームを組む4人がいた。

マイク以外の4人とは、全員一緒というわけではないが過去に従事にした幾つかのミッションでチームを組んだ経験があるので、何となくではあるが顔とファースト・ネームくらいは覚えている。

満面の笑顔を見せているマイクは、4人に対して今回支給されているM&P5.7拳銃について想像以上に使えることを自慢気に伝えているが、肝心のM&P5.7拳銃を試射する前には散々な悪態を着いていた様子を4人にも見せてやりたいところではある。

他の人間から見れば意味もなく苦笑いを浮かべた表情をしていたかもしれない俺が、マイクの宣伝文句を聞かされている4人に軽く挨拶をした後に、M&P5..7拳銃をホルスターから取り出して22発の5.7×28ミリメートルNATO弾薬を装填したマガジンを拳銃本体のグリップ底部へ差し込み、次いでスライドに右手を被せて後方へ引くが普段使い慣れている1911拳銃のスライドを後方へ引くより思いの外に軽い力で引けることに多少の驚きを覚えていると

「ほら見ろ、ジョージでさえ試射する前から使えそうだと驚いているぞ」

マイクは笑いながら4人に話している。

別段、このM&P5.7拳銃の支給を受領した時に決して期待外れ等とは思っていなかったが、発砲準備を行うためにスライドを後方へ引くのに大して力を要しないことには正直驚いている俺がいるのは間違いない。

ジャッキという金属音と共に前進したM&P5.7拳銃のスライドは、マガジン最上部にある5.7×28ミリメートルNATO弾薬を前方へ押し出してチャンバーへ送り込むのと同時に内蔵式ハンマーを起して発砲準備が整ったところで左右のどちらかが利き手であっても操作可能な安全装置のレバーを左手の親指で跳ね上げてセーフティをオンにしてヒューマン・エラーによる暴発を防いでおく。

射座でペーパーターゲットの方向に向かって立ち、M&P5.7拳銃のグリップを握っている左手を覆うようにして右手を被せて両腕を伸ばしてペーパーターゲットのセンターに狙いをつけて左手の親指で安全装置のレバーを下げてセーフティをオフにしてからトリガーに左手の人差し指を添え、可能な限り意識をしてトリガーを真後ろへ引き始める。

最初の数ミリメートルくらいは、まったくと言っても良いくらいに抵抗なくトリガーは後方に移動するが、その後トリガーに抵抗が掛かって動きが硬くなるので徐々にトリガーを引いている人差し指に力を込めていくと、トリガーの奥の方で何かが折れるような感覚がしたかと思った直後に、静けさに包まれていた世界が一転して結構な大きさの発砲音と共に反動が伝わってきたのとスライドが想像以上の速さで後退してエジェクションポートから空薬莢を2時の角度で空高く弾き出してくる。

思っていた以上に大きな発砲音に面食らいはしたが、発砲音の割には不思議なくらいに反動が少ない。確かに、スライド内にはエジェクションポートの後端から後ろ側にブリーチ等が備わるので重量物が高速移動することで完全な静止状態でいることはできないが、発砲直後に銃口が上方へ持ち上がるマズル・ライズが少ない為に、直ぐに前後のサイトをペーパーターゲットへ向けて照準が可能な状態にできるので、トリガーを僅かに戻してトリガーとシアを噛み合わせるリセットに状態にして連続的な速射が容易に出来そうである。

初弾の着弾状態を確認したので、一呼吸置いたような形となったところで2発目からは3発連続で速射するトリプルタップを試みてみた。

単発の発砲でも大きな発砲音が響くところを殆ど1発分にしか聞こえないくらいの速さで3連射を行ったために、まるでマグナム弾薬でも発砲したかのような発砲音が射撃レンジ内に轟き渡る。

俺の後ではマイクを含めた5人から「オオッ」という驚きの声が聞こえてくるが、その声に反応することなく俺はペーパーターゲットに視線を送り、連射した3発の着弾跡を確認すると思っていた以上に着弾跡であるグルーピングが1インチ(2.54センチメートル)以内に纏まっている。

この位にグルーピングが纏まり、しかも200メートル先にいる相手が特殊繊維であるケプラーで作られた防弾ベストを貫通させる威力があるのであれば、サイドアームの拳銃等と侮ることはできない。

スナイパーであっても本国にいる間は、アクションシューティング競技にも参加しているので拳銃射撃の腕前は、通常の部隊にいる連中よりは上であるものの相棒であるマイクには遠く及ばない。そんな俺でもトリプルタップを1インチ以内に纏められるのはライフル弾薬のミニチュア程度と認識していた5.7×28ミリメートルNATO弾薬の性能を甘く見過ぎていたのかもしれない。

俺のトリプルタップを見たスティーブを含めた4人は、その結果を感心しながら各自の射座に移動して支給された銃器に装着されたスコープのゼロインを始めた。

4人とも、基地の備品管理係からレ-ザーボアサイタ-を借り受けてきたようで、各自が支給されたライフル銃のチャンバーに薬莢の形をしたレーザーボアサイタ-を装填すると銃口から赤いレーザー光線が放出されているので、25メートル先のペーパーターゲットセンターに示された赤い光点へ銃口を向けてスコープを覗く、この時に重要なのは銃器を動かさないように注意してスコープのエレベーション・ダイヤルとヴィンテージ・ダイヤルを回すことである。この際、可能ならば固定している銃器が伏せ撃ちであるプローンの状態と同一であるならばより理想的と言える。

4人がレーザーボアサイタ-を使って概ねではあるが、スコープのレティクルを修正すると一斉に数発を発砲する。

光学照準器のゼロインを行う場合には、スコープのレティルを修正した後に数発を発砲して着弾状況を確認する必要があり、決して単発で狙点に着弾しているのかを確認するだけはまるっきり意味がない。

1発のみの試射であればマグレ当たりという可能性もあり、複数の試射を行って着弾跡が狙点付近に概ね集中している事を確認することでゼロインが完了したと言え、仮に複数発を試射した結果で着弾状況が散らばっているようであれば、射手の銃器を構えている姿勢に問題があったとか銃器本体の何処かに不具合が発生していることを知ることもできる。

ところで、今回のチームでリーダーとなるのはマイクであり、階級上は俺と同格ながら俺よりもデルタでの経験が豊富であり、かつ他人とのコミュニケーション能力も優れているので俺としても異存はない。

元々、俺はマイクほど社交的ではないのでチームのリーダーといったガラじゃないし、どちらかと言えば自分に与えられたミッションを黙々と熟すのに集中させてもらえた方が性に合っている。

そんな俺が、俺と同じゲパードGM6リンクスライフル銃を支給されたマイケルの後方へ行って

「ゼロインが完了したら、習熟の意味も含めてスタンディングやニーリングでの射撃も試しておいた方が作戦遂行時に役に立つぞ」

とマイケルにアドバイスをした。

俺のアドバイスを聞いたマイケルは不思議そうな表情を浮かべて、アンチマテリアル・ライフル銃をプローン以外の射撃姿勢で撃つ必要があるのかと言いたげであったが、デルタのスナイパーとしての経験が豊富な俺からのアドバイスという事もあり、渋々ながらもステンディングとニーリングのポジションでの試射を試みると、マイケル自身もアンチマテリアル・ライフル銃で狙撃した経験があるためか重量のあるアンチマテリアル・ライフル銃を自らの腕力で保持して発砲することに不安があったようだが、今回支給されたゲパードGM6リンクスライフル銃ではプローン以外の射撃姿勢であっても体勢が乱れることなく発砲できることを実感して驚いている。

その驚きの表情を浮かべたまま俺の方を向いて

「ジョージ、ありがとう。まさか、アンチマテリアル・ライフル銃でスタンディングやニーリングで発砲しても姿勢が乱れないのは初めてだ。こんなにゲパードGM6リンクスライフル銃のバランスが良いとは気付かなかった」

感想を早口で喋ってくる。

俺としても、先輩面をしてアドバイスをしたわけではなくチームの中で一番若くて体力もあるマイケルであれば、作戦遂行時に狙撃地点を移動しながら発砲する可能性が高いと踏んで予め射撃レンジで試させてみただけの話である。

その様子を見ていたマイクが俺に近付くと

「若手に貴重なアドバイスをしてくれてありがとなぁ、お陰で作戦遂行時にはマイケルがクタクタになるまで走らせてやることが出来そうだ」

苦笑いを浮かべて俺の耳元に顔を寄せて小声で呟いてくる。

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