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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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アクロティリ空軍基地の25メートル射撃レンジで、俺はマイクと支給された銃器に装着されているゼロインを行うと共に、習熟射撃訓練を実施していた。

基地内の射場であれば、レーザー・ボアサイタ-等も用意されているのでスコープのゼロインを行うのにも大した苦労もせずに済むが、唯一の難点は屋外射場であるために試射を行う際には風の影響を受け易いことだ。

特に、横方向からであるとか風が舞っている際には風速にもよるが風の影響を受けたままで、スコープ等の照準器のゼロインを行ったとしても理論上は照準器のレティクル・センターと銃口から放たれた弾丸の着弾位置が一致するのはゼロインを行った時と同じ風向と風速であるという条件が一致した場合のみであって、それでは実践の場で違った条件の元で狙撃を行う際、狙点をどの程度修正して狙えば良いのか混乱するばかりで精密さを欠くことになる。

それならばスコープのヴィンテージ・ダイヤルを移動させれば良いのではと安易に思ってしまうが、左右の着弾点を修正するヴィンテージ・ダイヤルは1クリックだけを移動させても狙撃する射程距離に比例して移動量が増大してしまうので、安易にヴィンテージ・ダイヤルを弄るよりは極力無風状態のコンディションの元でゼロインを行い、少なくとも風の影響を受けない状態ならば確実にスコープのレティクル・センターで捉えたポイント周辺に間違いなく着弾するというベースを確かにすれば実際の現場において直面する気象状況は、過去に経験した狙撃の状態と照らし合わせたうえで臨機応変に狙点を移動させて狙った方が確実に命中弾を送り込むことができる。

ただし、スナイパーの中には常にレティクル・センターと狙点が一致していないと落ち着いて狙撃ができない者もいるかもしれず、決してスナイパー個々の好みを否定するつもりはないが、仮にヴィンテージ・ダイヤルを操作してレティクル・センターと狙点を一致させたとしたならば、その時の気象状況を確実に記憶してなければ次の狙撃を実施する際に初弾を発砲した時と気象条件が異なるような場合、正しくレティクル・センターの修正を行うことができなくなってしまう。しかも、次弾発砲の際には射程距離も変わっているようであればエレベーション・ダイヤルも移動させねばならず、ライフル銃を構えてターゲットに向けて発砲するまでには結構な時間を消費する結果となり、場合によってはターゲットを狙撃する絶好のチャンスを逃すような状態へとなりかねない。

それならば、スコープのレティクルを修正する2つのダイヤルを各々弄るよりは1つのダイヤルのみを弄り、横方向については過去の経験を元にイメージして狙点をずらして発砲した方が遥かに早く狙撃を行うことが可能となるだけでなく、エレベーション・ダイヤルに備えられているゼロ・セットを起動させれば射程距離に応じて移動させたエレベーション・ダイヤルは瞬時にゼロインを行った際の状態に戻すことができるので、射程距離が異なる新たなターゲットを狙う場合にゼロインを行った際の距離から必要な修正量のみを単純に移動させれば済むので素早くスコープの修正が完了する。

ところで、俺が今回命令されたマンスール逮捕作戦において支給されたライフル銃は、ゲパードGM6リンクスライフル銃にリューポルド社のMark4M3タイプのスコープが装着された物となっている。


ハンガリーのSEROインターナショナル社が開発製造しているゲパードGM6リンクスライフル銃は、空挺部隊等での運用を念頭にしておりブルパップ方式を採用して全長が1,114ミリメートルとアンチマテリアル・ライフル銃としては驚異的に短くなっており、更に手動によってバレルを収納すると914ミリメートルの全長となって携行の利便性を高めている。因みに、アメリカ陸軍が制式採用しているM107バレットM82は、全長が1,447.8ミリメートルで銃器本体のみの重量は12.9キログラムとなっている。

ゲパードGM6リンクスライフル銃の銃器本体の重量は、10.5キログラムでスコープや12.7×99ミリメートルNATO弾薬である50BMG弾薬を10発装填したマガジンを装着した戦闘重量が13キログラムとなり決して取り回しの便が良いとは言えないが、他のアンチマテリアル・ライフル銃と比較すると軽量な部類となるので、50BMG弾薬を使用するアンチマテリアル・ライフル銃を発砲する場合にはバイポッドやライフル銃レストバック等を使ってライフル銃を固定する委託射撃が必要となるが、ゲパードGM6リンクスライフル銃の場合はスタンディングによる立射も可能となるばかりか、セミオートマチックによる作動のために連射さえも不可能ではない。

アンチマテリアル・ライフル銃として携行性を高めるため、他のアンチマテリアル・ライフル銃よりバレル長を短くした関係で銃口初速が780m/sと低くなりはしたが、口径は違うにしてもアサルトライフル銃と比べて5~8倍の銃口エネルギーを有し、射程距離が600~800メートルの範囲ならばヘリコプターを撃墜するのも可能とされている。

そこでイギリスの特殊空挺部隊SASと特殊舟艇部隊SBSでは、150挺を調達してシリアやイラクで展開しているSASとSBS部隊に配備していると言われている。

なお、ゲパードGM6リンクスライフル銃で採用されているロングリコイルは、弾薬を発砲後にバレルとボルトが結合された状態で後退し、その後退が最後まで行き着いた後に結合状態のバレルとボルトのうちバレルのみが前進して空薬莢を排出し、その後にボルトが前進を始めてマガジンの最上部にある12.7×99ミリメートルNATO弾薬をチャンバー方向へ押し出して再装填となり、バレルとボルトも再結合されて次弾が発砲可能となる。

セミオートマチック拳銃の多くで採用されているショートリコイルは、発砲後にスライドとバレルが概ね5ミリメートルくらい結合した状態で後退を始めるが、バレルはチャンバー下面のティルティング機構により僅かながら降下することでスライドとバレルの結合が解かれてスライドのみが後退してチャンバー内の空薬莢を排出する恰好となる。

ロングリコイルは、初期に開発された機関銃等に採用されていたが重量物であるバレルが前後運動をすることでブレが激しくなり、結果として命中精度が高くない事に加えて発射速度も上げにくいというデメリットより採用されなくなっていたが、弾薬自体が大きいことで発砲による反動エネルギーも強い50BMG弾薬では重量物であるバレルも後退させるために、反動エネルギーが消費されることで他のアンチマテリアル・ライフル銃よりも反動が比較的小さくなっている。また、バレルの前後動によるブレも銃器の機関部やマガジンの挿入口がトリガーよりも後部に位置するブルパップとしたことで、銃器自体の重量が射手に近くなり重量バランスが改善されてブレのコントールも容易になった。


確かに、今回支給されたゲパードGM6リンクスライフル銃は過去に支給されたアンチマテリアル・ライフル銃のなかでは扱い易く、これならば1人での運用も決して不可能ではないかもしれないと思えてしまう。

しかし、実際に行う狙撃の射程距離が1マイル(約1.6キロメートル)のような超ロングレンジともなれば監的手であるスポッターのアシストなしにはターゲットへの命中が困難であることは間違いない。

俺が、25メートルの射撃レンジでゲパードGM6リンクスライフル銃に装着されたリューポルド社のMark4M3タイプスコープをゼロインしている間、マイクは隣で支給されたサイドアームのスミス・アンド・ウェッソン社製のM&P5.7拳銃の試射を行っていた。

今回のミッションでは、珍しくサイドアームまでが支給され俺にもM&P5.7拳銃が支給されたのだが、当初マイクは支給されたM&P5.7拳銃に使用するSATNAG4509と呼ばれる5.7×28ミリメートルNATO弾薬を見て「こんな22口径の出来損ないで本当に使えるのか?」と疑問を呈していた。

確かに、至近距離からの暗殺作戦ならば22口径の弾薬でも充分に通用するだろうが、今回のターゲットであるマンスールを相手にするのであれば隠密にマンスールの邸宅を襲撃して至近距離での射殺というのは非現実的であると思われ、少なくとも射程距離が中距離以上であることを想像すると22口径の銃器は正直に言って使い道がない。

俺と射撃レンジに向かう途中もブツブツと小言を言いながら歩き、支給されたメインアームであるSCAR-Hに装着されているショートスコープのゼロインを済ませてペーパーターゲットを取り換えてから腰のホルスターからM&P5.7拳銃を抜き出して25メートルレンジの射座からM&P5.7拳銃を撃ち始める。

1つのマガジンに22発の5.7×28ミリメートルNATO弾が装填できるM&P5.7拳銃から2発を撃ち終えた時点で、マイクの表情が一挙に変わって真剣な眼差しでM&P5.7拳銃を撃ち続けている。

22発目を撃ち終えてM&P5.7拳銃のスライドは、トリガーの上にあるスライドストップによって後退したまま停止している。

マイクは、M&P5.7拳銃のトリガーガードのグリップよりにあるマガジンストップのボタンを押して空となったマガジンを銃器本体から抜き出すと

「こりゃ結構使えるなぁ」

独り言のように呟いていた。

俺は未だM&P5.7拳銃を試射していないので、そのマイクの独り言が的を得ているのかは分からないが、マイクの隣でゼロインを行っている最中に感じたのは、イヤーマフラーをしていても5.7×28ミリメートルNATO弾薬の発砲音が想像以上に大きいという事になる。

射撃レンジには、俺とマイク以外にもアクロティリ空軍基地の隊員が米軍制式採用したシグ・ザウアー社製のM17拳銃やM18拳銃から9×19ミリメートル弾薬を発砲して射撃訓練を行っているが、マイクが発砲しているM&P5.7拳銃からの発砲音は俺が試射しているゲパードGM6リンクスライフル銃に次いで大きな発砲音を響かせている。しかも、発砲音が大きいだけでなくM&P5.7拳銃のエジェクションポートから弾き出される空薬莢の飛びも半端なく、エジェクションポートから空高く飛び出した空薬莢が時折、俺の近くに飛来してくる始末である。

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