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SR25M110SASSセミオートライフル銃の専用ケースを開けて、アッパー部分とロア部分を取り出して組み立てて、更に専用ケースから消音器を取り出してバレル先端部から被せるように消音器をバレルへ通してガスブロックの所で消音器を固定し、前方へ向けて倒された状態のバイポッド2脚を下側へ向けて起こす。再び専用ケースから7.62×51ミリメートル弾薬20発が装填済みのマガジンを取り出してSR25M110SASSセミオートライフル銃のマガジンハウジング部へ専用ケースから取り出したマガジンを「カチッ」というマガジンキャッチがロックされる音が聞こえるまで差し込む。
そこまでSR25M110SASSセミオートライフル銃の準備ができたところで、消音器の先端部をターゲットが潜伏している建物へ向けて置き、デジタルナイトビジョンスコープの対物レンズと接眼レンズを保護しているプラスチック製のキャップを跳ね上げてから電源スイッチをオンにする。デジタルナイトビジョンスコープが夜間モードに切り替わっているのを確認してから、利き目である左目で接眼レンズに映し出されるターゲットが潜伏している建物を覗くと、間違いなく建物の形が薄っすらとではあるが把握できた。
俺は、装着している咽頭マイクを使って
「オオコウモリより、オオコウモリより」
と俺自身の暗号を呟いてから
「フクロウが巣に戻った。繰り返す、フクロウが巣に戻った」
俺が狙撃準備を完了した際の暗号をターゲットが潜伏する建物へ突入襲撃する予定6人のオペレーターへ無線で送信する。
左耳に装着しているイヤフォンに
「オオコウモリ、了解した。これから、夜間の生態観察を実行する」
という襲撃実行する旨の暗号が返信されてきた。
襲撃実行の暗号が俺の左耳に着信すると同時に、デジタルナイトビジョンスコープで眩しいばかりに見えていたターゲットが潜伏する建物の窓から漏れ出ていた室内照明の光が、突然消灯して建物全体が暗闇の中へ消えていく。
暫くすると建物の窓の幾つかが開いて、男女の区別はつかないが、懐中電灯で外を照らしながら周囲の状況を確認して何事かを建物内部へ向けて叫んでいるのがデジタルナイトビジョンスコープ越しに見て取れた。
一方、建物の敷地内に潜入した6人のオペレーター達は駆け足で建物の玄関前へ集結すると、1人がHK45CT拳銃を取り出して発砲したのか3回連続で玄関ドアのノブ付近にフラッシュのような閃光が眩しいばかりに点灯する。玄関ドアの鍵がHK45CT拳銃から発射された45ACP弾によって破壊されたようで、オペレーターの1人が玄関ドアを開くが直ぐに建物内に突入するような安易な真似はせず、全員が消音器を装着したMP7A1短機関銃の銃口を建物内へ向けて様子を伺っている。どうやら、建物内からの銃器等による発砲がないのを確認すると6人のオペレーター達は、顔の前に防弾ヘルメットにオフセットで取り付けた暗視ゴーグルを目の前にセットし、MP7A1短機関銃を構えて一斉に建物内へ突入していった。6人が建物内へ突入したのを見届けた俺は、デジタルナイトビジョンスコープを建物の各所へ移動させて逃げ出す者がいないかチェックする。すると、先程建物の電灯が消灯した際に外の様子を確認するために開け放たれていた2階の窓から飛び降りようと窓枠に両手と片脚を掛けている人物を発見した。
この2階から飛び降りようとしているのがターゲット本人なのか、或いはターゲットの護衛や取り巻きなのかはデジタルナイトビジョンスコープからでは判別できない。しかし、何れにしても逃走するのを見過ごす訳にはいかないし、このように建物の外部へ逃走する人間を狙撃するのが今回のミッションで俺に与えられた役割なので、2階の窓から飛び降りようとしている人物にデジタルナイトビジョンスコープのレティクルセンターを合わせる。俺の体感では風が7時方向から1時方向へ向けて微風程度の強さで流れているので、風の影響で弾道が右側へ逸れる心配はないと判断したが、ここで狙撃を失敗しても意味がないので確実性を優先して窓枠に片脚を掛けている人物の脚の付け根を狙って発砲した。
SR25M110SASSセミオートライフル銃の反動の影響で、デジタルナイトビジョンスコープを装着したSR25M110SASSセミオートライフル銃が動いて接眼レンズから狙った相手が消え去ってしまったが、100ヤードの距離があっても狙った相手は被弾したのか「ウワァ」という男性の声で悲鳴のように発しているのが微かに聞こえてくるので、デジタルナイトビジョンスコープの視界を建物の地面に向けて見ると、白っぽい服装のように判別できる人物がうつ伏せの状態で倒れているのが見えた。
俺が放った7.62ミリメートル弾が間違いなく命中したのだろうが、相手の何処に着弾したのか分からなし、まして相手が即死してるのか判別できないので、俺は倒れている人物の脇腹へレティクルセンターを合わせて止めの一撃を発砲する。
このように狙撃をした相手が即死したのか判別できない場合、止めを射すために発砲するのは実践においては鉄則となる。何故なら、狙撃された瞬間を現場で目撃していない味方が倒れている人物を発見して生死の確認をするために近寄った場合、その人物が即死していないのであれば携行しているかもしれない爆発物で自決の意味で自爆する可能性があり、そうなれば味方が自爆に巻き込まれて死傷するケースが充分に想定される。そのような危険性を少しでも排除するためには、確実に相手を死に追いやるための止めを躊躇している暇はない。
2発目の発砲した俺は、デジタルナイトビジョンスコープで倒れていた相手を確認すると背中の背骨付近に黒っぽく見えるシミがあり、その箇所に銃弾が命中した証とも言える服に剥離片が確認できる。着弾箇所が相手の背骨付近となれば、ほぼ間違いなく即死したと判断できそうである。
逃走を図ろうとした人物の狙撃を成功させ、更に建物各所を観察しようとした矢先に、自動車が建物の敷地内へ近付いている走行音を耳にしたがヘッドライトを消しているので肉眼では何処を走行しているのか一向に分からない。
俺は、デジタルナイトビジョンスコープを車両の走行音が聞こえた方向へ向けてみると、接眼レンズには軍用ジープと判断できそうな車両に2名の戦闘服を着用した人物が乗車しているのを確認した。襲撃してきた6人のオペレーター達を排除するために来た応援なのか、或いはターゲットを避難させるために来たのか分からないが、何れにしても俺が狙撃しなければならない対象である事に間違いない。
ヘッドライトを消して走行している軍用ジープは、正面ゲートを結構なスピードを保った状態で潜って行くと玄関前で急停車したところで、俺は運転席と助手席に座っている人物の肩甲骨の真ん中へレティクルセンターを合わせるようにして1発ずつ7.62×51ミリメートル弾を2人に対して速射した。
狙った2人に対して止めを射す必要を感じて、軍用ジープに乗車している2人にデジタルナイトビジョンスコープを向けると、運転席にいる人物は首の付け根辺りに着弾したようで頭髪の生え際が不鮮明に見えハンドルに覆い被さるような姿勢で倒れ込んでいる。お陰で軍用ジープのクラクションが鳴りっ放しの状態で、100ヤード離れた俺の所にもクラクションの音が響いてくる。そして、助手席にいる人物も7.62弾で肩甲骨を撃ち抜かれて砕かれてしまった肩甲骨の破片と7.62弾によって心臓を破壊されたのか、顔を後方へ逸らした状態のままの姿勢で動こうとしない。
間違いなく2人の人物を狙撃によって撃退したが、車両を放置していては建物から脱出して俺の警戒からも逃れた人物にとって、建物からの貴重な脱出手段となってしまうので、軍用ジープの燃料タンクを狙撃して軍用ジープを使用不能な状態にする事にした。ただし、軍用ジープの燃料タンクを7.62×51ミリメートル弾で狙撃した場合に火災が発生して車両が爆発する可能性もあるので、建物内に突入した6人のオペレーター達へ、ターゲットを援護に来た車両を攻撃するので車両火災が発生する可能性に充分注意するよう無線で伝えから、SR25M110SASSセミオートライフル銃から3発の7.62×51ミリメートル弾を遅撃ちする。
初弾なのか2発目なのかは分からないが、燃料タンクを撃ち抜いてガソリンが漏れ出たところへ3発目が燃料タンク付近に着弾した際に火花が飛び散り、その火花が引火したようで軍用ジープから小さな火が見え始めると徐々に炎が大きくなって車両火災が発生した。
炎は勢いを増して、運転席と助手席に居る2人の死体にも燃え広がり100ヤード離れた俺の所にも人間の身体が焼かれる不快な臭いが漂ってくると、2人の死体は完全に炎に包まれて焼かれている。途中で2人の死体が爆ぜたのか小さな爆発が発生してバンッという爆発音が聞こえてくる。
俺はデジタルナイトビジョンスコープから目を離して炎上している軍用ジープを眺めていると左耳に装着しているイヤフォンに
「ターゲットを射殺した。繰り返す、ターゲットを射殺した」
と半ば興奮した仲間のオペレーターの声が聞こえると、別のオペレーターから
「建物内にはオペレーター以外の生存者はいなくなった。繰り返す、オペレーター以外に生存者はいなくなったので、ここから脱出する」
という声も聞こえてきた。
それを聞いた俺は、デジタルナイトビジョンスコープの対物レンズと接眼レンズに保護キャップを着け、起こしていたバイポッドの脚を縮めてから前方へ倒し、マガジンキャッチボタンを押してマガジンをSR25M110SASSセミオートライフル銃から抜き去る。次いでチャージングハンドを引いてチャンバーに装填されている7.62×51ミリメートル弾を排出して、抜き取っていたマガジンへ排出した7.62×51ミリメートル弾薬1発を装填する。
その後、バレルのガスブロックで固定している消音器のゲートラッチを上方へ引き上げてから消音器をバレル先端部から抜いて専用ケースへ収納し、SR25M110SASSセミオートライフル銃をアッパー部分とロア部分に分離させて、それぞれを専用ケースに仕舞って専用ケースを閉じてから「こちらオオコウモリ、こちらオオコウモリ、これから合流ポイントへ移動する。これから合流ポイントへ移動する。以上」と味方へ送信して専用ケースを右手に提げて、その場を離脱して6人のオペレーターとの合流ポイントへ向けて歩き出す。




