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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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苦手な蛇を始末してもらって幾分気合いを持ち直したマイクは、防弾ベストの上に着用しているチェストリグに取り付けていた催涙弾1個を左手で取り出すと、SCAR‐Lアサルトライフル銃のバレル下部にあるハンドガードに装着した40ミリメートルグレネードランチャーへ催涙弾を装填する。

グレネードランチャーのトリガーは、SCAR‐Lアサルトライフル銃本体のトリガーを併用するわけではなくグレネードランチャー側にある独自のトリガーを備えているので、SCAR‐Lアサルトライフル銃のトリガーガードに添えていた右手の人差し指をグレネードランチャーのトリガーへ移動させて、左手でSCAR‐Lのグリップを握りグレネードランチャーの砲身が仰角20度くらいになるようSCAR‐Lアサルトライフル銃を斜めに構え、射出する催涙弾が検問詰め所内へ着弾するように狙いを定める。

マイクがグレネードランチャーのトリガーを引くと「ボシュ」という銃器の発砲音に比べれば比較的小さな音を発して催涙弾が射出され、緩やかな弧を描きながら検問詰め所へ向かって飛翔していくのが見える。


グレネードランチャーは、射出された砲弾自体をターゲットに命中させるわけではないので、砲弾を音速越えで飛ばすような火薬量を必要とはしない。仮に、砲弾自体を命中させるのであればグレネードランチャーではなくロケットランチャーを使用すれば良いわけで、だがロケットランチャーにしても砲弾自体が着弾と同時に炸裂する仕組みになっているので、直接ターゲットへ命中させる必要性までなく炸裂の影響を受ける範囲内であればターゲットを外したとしても目的を果たすことができる。


弧を描いて飛翔した催涙弾は、検問詰め所の手前50センチメートルくらいの地面に落下すると小さくバウンドして検問詰め所の中へ転がり込むと一気に白煙を吐き出し始める。

検問詰め所の中にいた2人のコロンビア兵は、催涙弾が着地した際と小さくバウンドした時の金属音で近くに何かが飛来してきたことまでは知覚していたが、実際に催涙弾が検問詰め所内に転がり込んで白煙を吹き出し始めると催涙弾を蹴って検問詰め所の外へ出す行動を起こすよりも、反射的に自らの鼻と口を手で覆う行動を選択した。

傍目から見れば、鼻や口を覆うよりも催涙弾を検問詰め所の外へ蹴り出した方が正解のように思えるだろが、催涙弾から白煙が噴き出した時点では周辺に催涙ガスが拡散を始めているので、催涙弾を蹴り出したところで周辺に拡散した催涙ガスまで蹴り出されるわけではないので大した意味がある行動ではない。

自らの手で鼻と口を覆った2人のコロンビア兵は、鼻と口を覆っていない方の手でKS‐7ショットガンを掴むと急いで検問詰め所から脱出してくるが、その頃には検問詰め所内が催涙ガスの白煙で充満しており、まるで検問詰め所内だけが霧が立ち込めたような状態となって建物内部を視認することが出来なくなっている。

検問詰め所から脱出した2人のコロンビア兵は顔や喉の表面に付着した催涙成分の影響で激しく咳き込んでいるが、突然1人のコロンビア兵が検問詰め所の近くにある池のような所に向かって走り出し、池の中へ飛び込んでいく。

確かに、このコロンビア兵の行動は催涙ガスに包まれて、顔の表面に催涙成分が付着した状況を応急的に処置する方法としては正しいのだが、残念なのは池に飛び込む際に手にしたKS‐7ショットガンを水中に入れないよう注意すれば良かったのだが、そこまで気を配れずにKS‐7ショットガンまで池の水の中に入れてしまったことである。

頭まで池の水に浸かって、幾らかの催涙成分を顔の表面から洗い流したコロンビア兵は水上に顔を出すと手にしたKS‐7ショットガンの銃口を植栽の中に隠れている俺達の方へ向けて発砲してきた。

「ドカンッ」という通常としては聞きなれない発砲音がすると、池から発砲してきたコロンビア兵のKS‐7ショットガンの周りには一瞬にして白煙に覆われ、次いで「ウワァ」という声を発したコロンビア兵が池の水へ仰向けとなって倒れ込んで一向に動く気配がない。

間違いなく、水中に浸かってしまったショットガンを水上へ引き上げた際に、バレル内等に溜まっている水分や泥を排出しない状態のままで発砲したために、高温高圧の発射ガスによってバレル内の水分が水蒸気である気体に変化して、バレル内を通過する発射ガスと合わさることでバレル内に過度な圧力が加わったことでバレルが裂け、その裂け目からバレル内に充満していた水蒸気と発射ガスが一緒に噴出したのだろうから、白煙の正体は湯気に違いない。

そもそもショットガンは、他の銃器に比べてバレルの肉厚が薄く大きな圧力に耐えるだけの強度を有していない。そのため、発砲する弾丸にも極端な圧力を加えられないためにショットガンの射程距離が短くなってしまうのだが、それ以外にも使用するショットシェルにしても装薬されているのはショットシェルの底から15ミリメートルくらいが金属になっている部分のみで、その装薬が零れ出さないように厚みの薄いコルク等で出来ているワッズという物で塞ぎ、その上部に31口径の散弾や日本では1発弾と呼ばれているスラッグ弾と発泡スチロールを細かいフレーク状にした緩衝材が封入されている。

スラッグ弾についても、ショットガンのバレル内にはライフリングが切られていない構造なので、円柱状の形状となっているスラッグ弾の側面に細く短い羽根のような物が螺旋を描くように配置されてライフリングの代わりとなって、スラッグ弾自体も発砲された際にはバレルの内側に接することなく射出されるので、バレル内に過度な圧力が加わる心配がない替わりに長い距離まで弾丸を飛ばせない。

だが、池に入ったコロンビア兵は手にしたKS‐7ショットガンを持ったままで、水中に飛び込んでいるのでバレル内には池の水や泥が入り込んでいる筈で、その状態で水上へ出た際にバレル内に侵入した水分や泥を排出せぬままに発砲すれば、水分は発射ガスによって熱せられ水蒸気へ変化すると水の時よりも体積が急速に膨張し、発射ガスと合わさってバレル内で強い圧力を発生させたのに加えて、バレル内に張り込んだ泥も散弾がバレル内を通過する際に抵抗となってしまうので一層バレル内の圧力が高まり、銃器としては圧倒的にバレル強度の低いショットガンではバレル耐えることなく裂けてしまったのだ。

更に、ショットガンを発砲したコロンビア兵にとって不運だったのは使用しているショットガンがKS‐7ショットガンであったことで、KS‐7はバレルやチューブラマガジン、それに機関部を除いた外装は全て強化樹脂製がボトル止めで装着されているので、バレルの裂け目から漏れ出た発射ガスによってバレル上部に備わっているハンドガードやボルトを前後に動かすためのフォアエンドが破壊され、その破片が顔やフォアエンドを握っていた手に向かって集中的に襲ってきた結果、ヘルメットを着用していた頭部には破片が直撃することが避けられたものの、保護する物がない顔と手には結構な深刻な深手を負ったのに間違いないだろう。

もう1人のコロンビア兵士は、催涙ガスの影響で涙が溢れて充分な視界が確保できていない状況でも、音によって味方が襲撃者へ反撃したのは分かっていたと思うが、流石に見方が発砲したショットガンのバレルが破裂したことで死傷したことまでは理解しておらず、必死になって味方の名前を呼ぶが致命傷を負って池に沈んだ味方が呼び掛けに答えることはない。

何とか状況を把握しようと涙が溢れる両目を戦闘服の袖で拭うのだが、顔の表面に付着した催涙成分は布で擦ったくらいでは大して除去できず、思うように涙が止まらない。

そんな状態のコロンビア兵をスティーブがショートスコープを装着しているSCAR‐Lアサルトライフル銃で慎重に右の蟀谷付近を狙い躊躇することなくトリガーを引くと、「ドンッ」という消音器を装着していても直ぐ傍では聴覚障害を起こしそうな音圧の発砲音がして弾丸が射出され、スティーブが放った弾丸はコロンビア兵が被っているヘルメットの縁に着弾した後に跳弾となって、コロンビア兵の蟀谷へ命中する。

この射程距離で、5.56×45ミリメートル弾薬を発砲してヘッドショットを行えば通常なら間違いなく弾丸は頭部を貫通する筈だが、今回のケースではヘルメットの縁に一度着弾しているので多少威力が削がれて脳内に弾丸が留まっているかもしれない。

蟀谷に被弾したコロンビア兵は、手に持っていたKS‐7ショットガンを地面へ放り出すと俯せに倒れて動かなくなり即死したことが見た目でも分かる。

それを目にしたマイクが

「よし、行くぞ」

と短く声を3人に掛けると検問詰め所に向かってダッシュしていく。

俺達もマイクに続いて植栽から飛び出してダッシュするが、流石に短時間では拡散した催涙ガスの影響が残留しており、検問詰め所に近付くと俺達も咳が止まらなくなるが、涙が溢れて目を開けていられなくなるような事態にまではならない。

ただし、このような状況では下手に検問詰め所内に立ち入っては確実に催涙ガスの餌食となってしまうので、マイクは検問詰め所の脇に停められているジープへ真っ直ぐに向かう。

ジープ内を探して鍵が見付からなければ、意を決して検問詰め所内を捜索しなければならないが、マイクが最初にジープの車内を覗いてみる。

「イグニッションに鍵が刺さったままだ」

苦笑いの表情を浮かべたマイクが呟くと俺達3人に対して

「イグニッションに鍵が付いたままとなっているので、直ぐにでも発進できるぞ」

と大きな声を掛ける。

いざとなれば、催涙ガスの餌食となっても検問詰め所内に入って捜索する気構えでいたので、それが催涙ガスの餌食となることなく済むことにホッとしたのは間違いないが、それにしても此処の連中の警戒心の無さには呆れ返るばかりである。

確かに、外部から襲撃される心配が無ければ車両を強奪される心配もないので、都度車両の鍵を外したりするのは面倒だからと、常に車両の鍵をイグニッションに差し込んだままにしておけば必要時に直ぐエンジンを始動させることはできるだろうが、こうして実際に襲撃してジープを奪う側とすれば大した苦労もなく目的を達成できるのだから警備体制に重大な問題があるように感じる。

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