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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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マイクに続いて冷蔵庫のようになっている食糧倉庫に入るが、赤道近くのコロンビアでは冷蔵庫のような倉庫に入っていても寒くて居られないといったようなことはなく、日中の眩しい太陽から降り注ぐ光と熱によって暑くなっているので、とにかく快適にさえ感じる。

その間もホセは、黙々と食糧ケースをトラックの荷台から降ろして食糧倉庫へ運び入れるための作業を続け、最後の3段に積み上げられたケースを食糧倉庫へ仕舞うと

「これで持ち込んだ食糧全て、倉庫に仕舞ったので扉を閉めるから外へ出てくれ」

食糧倉庫の扉の脇に立って、隠れている俺達に声を掛ける。

ホセに言われて俺達は、食糧倉庫から出ると各自がメイン・アームを構えて周囲への警戒を怠らない。

食糧倉庫の扉を施錠して、右手に持っている鍵をズボンの右ポケットに仕舞ったホセは小走りに運転席へ向かい運転席側のドアを開けると

「それじゃ、俺は帰るから後は頑張れよ」

笑みを称えた表情を見せて運転席に乗り込み、小型トラックのエンジンを始動させる。「ブッオン」というエンジンが動き出した音を発した後、ホセがギアを1速へ入れてゆっくりと小型トラックが走り出し、その小型トラックを見送りながらマイクは右手首に着けているデジタル腕時計のタイマーをスタートさせる。

協力者のホセが運転する小型トラックが、無事に正面の検問所から出られて帰宅できるように祈ってやれるのも今のうちで、マイクのデジタル腕時計が5分間を刻み終えれば本格的なミッションがスタートすることになり、そうなればホセの事を気遣ってやれるのは事務室のある建物へ突入する直前の今のうちだけで、目の前の建物へ突入となれば自分の命を失わないようにするのが精一杯となり、他人の事にまで思いを巡らせるだけの余裕は無くなる。

だいたい生死を掛けなければならない実践の場で、他人の事にまで神経を使えるような人間が生き残れるほど甘い世界じゃないし、自分1人が如何にして死ぬことなく戦い抜けるかについて抜け目なく集中している人間だけが生き残り、それができない人間は此の世界から半ば強制的に排除されていくのだ。

「5分経過した。突入するぞぉ」

決して大きくはないが冷静な声でマイクが3人に突入の合図となる声を掛けると、目の前の建物へ目指して走り出す。

食糧倉庫の出入口近くから突入を開始した関係で、目の前にある建物の裏口が視線に入り、先頭を走っているマイクが、裏口のドアの取っ手を左手で掴んで廻しているが、もしドアの鍵が施錠されていないのなら此処から建物内に侵入したほうが、余計な手間を掛けることなく目的とする事務室へ辿り着けることができる。

逆に裏口ドアが施錠されているのならば、当然のこととして俺達は建物の正面玄関から侵入しなければならなり、そのようになれば俺達が正面玄関から侵入する際に建物内にいる連中が温かく迎え入れてくれるはずもなく、見知らぬ不審者の侵入に対して用意している武器を使用し、見知らぬ不審者の侵入を防ぎに掛かり排除しようとするのは誰でも想像できることで、確実に銃撃戦を展開しなければならなくなる。

最も、裏口のドアが施錠されておらずに開いたとしても事務室へ入る際には事務室内にいる人間を征圧する必要から射殺しなければならなくなることにはなるが・・・。

裏口のドアノブを廻していたマイクが、施錠されていない事を確認してドアを僅かに開けて、隙間ができるとドアを開くのを一旦止めて建物内の様子を隙間から伺う。

裏口の近くに人がいないことを充分に確認してから、マイクはドアを素早く開けて建物内へ侵入し、俺達3人もマイクに続いて建物内へ入り込んでいく。

最後に、建物内へ入った俺が裏口ドアを静かに閉めると、マイクはセルジオにジェスチャーで先頭に立つよう合図を送り、頷いたセルジオの耳元にマイクは口を寄せて各部屋のドアに張られているプレートを読んで事務室を探し出すように指示している。

セルジオは、マイクからの指示を了解した意味で左手でオーケーサインを示して廊下を先頭になって進み始める。

俺達が履いているシューズの裏は、ネオプレーンという比較的音の鳴り難い素材が使われているので、タイル張りの廊下を歩くにしてもユックリとした足取りにしなくても気になるような音を発しないが、それでも足音以外に物音を立てる事のないよう注意して廊下を進み、プレートが張られているドアの3箇所目でセルジオが左手の人差し指で、目の前のドアのプレートを指しながら此処だとゼスチャーして見せる。

そのセルジオのゼスチャーを見たマイクが、セルジオと入れ替わるようにドアの前へ移動して、右手で握っていたSCAR‐Lアサルトライフル銃を左手に持ち替えると、右手でドアノブを掴んでゆっくりとドアノブを廻し始める。

仮に、事務室のドアが施錠されていたとしたらSCAR‐Lアサルトライフル銃を使用して鍵を破壊しなければ事務室内に入ることができないのだが、ドアが施錠されているかもしれないと心配する必要もなく簡単にドアが開いた。

恐らく、この事務室内に居る連中は敷地の入り口をコロンビア兵が警護していることもあり、外部からの襲撃を受けたことがないのかもしれない。そのため、不思議に思えるくらい外部からの侵入に対する警戒心が薄いように感じる。

マイクが僅かにドアを開けたところで、P90短機関銃を構えているセルジオが開いたドアの隙間から事務室内の様子を伺い、室内には3人の人間が居ることをゼスチャーで知らせてくる。

俺とスティーブは、室内ということもありメイン・アームを利き手とは反対側の手で持って、腰のホルスターに差しているM&P5.7拳銃を利き手で抜き出す。

室内等の比較的狭い空間であれば、下手にアサルトライフル銃を使用するよりも銃器自体が小さな拳銃やセルジオが所持している短機関銃等の方が、取り回しに都合が良く有利に使える武器と言える。

何よりも、室内であれば射程距離自体が短いので拳銃弾の使用で事足り、何もライフル弾薬を使用する必要はなく、しかもアサルトライフル銃だと室内にある戸棚等に当たって使い難いだけで不必要にさえ思えてしまう。

3人の準備が整ったところで、マイクが勢い良くドアを開けるとセルジオがP90短機関銃の安全装置を外して事務室内へ飛び込み、続くように俺とスティーブが利き手にM&P5.7拳銃を持って部屋に入り込む。

事務室内にいる3人の男達は、見知らぬ不審者が銃器を構えて入ってきたのを見て腰のホルスターに差し込んでいる拳銃を取り出そうとしているのが見え、男達が取り出した拳銃を発砲する前にセルジオがセミオートで、P90短機関銃を撃って事務室の一番奥にいる男の額に5.7ミリメートル亜音速弾を命中させる。

そのセルジオの発砲に続くように俺とスティーブもM&P5.7拳銃を発砲して、セルジオが射殺した男から離れたデスクにいる2人の男達の頭部を撃ち抜き即死させる。

頭部を撃ち抜かれた3人の男達は、被弾した弾丸径が5.7ミリメートルと小さいこともあり射入孔こそ鉛筆の芯くらいの大きさで赤い点となっているだけだが、頭蓋骨と脳を貫通した5.7ミリメートル弾の射出孔は数倍の大きさとなって、頭皮や砕けた頭蓋骨と脳の一部を噴出させて事務室の壁にぶちまけたように付着して血だらけの様相を呈しているほか、即死状態で事務机の脇に倒れたことで床に敷いているグレーのカーペットは射出孔となった頭部から流れ出る血液に染まってどす黒い沁みを作っている。

3発の銃弾を発砲したとは言え、全員の銃器には消音器が装着されているので発砲音が全くしないわけではないが巨大な発砲音が響き渡ることもなく、お陰で他の部屋から様子を見に来るような気配を感じない。

マイクは、暫く事務室のドアの近くに立って他の部屋から人が駆けつけて来ないかを伺っていたが、俺達3人が3体の遺体を確認して死亡していることを確認して事務室に居た全員を射殺したことを教えてやると、頷いたマイクが一番手前にあるパソコンの前に立って、右手で持っていたSCAR‐Lアサルトライフル銃を左手に持ち替えてから、右手を左の胸ポケットに突っ込んでUSBメモリーのような物を取り出してパソコンのUSBスロットに差し込む。

マイクがパソコン操作に精通していたとは知らなかった俺は、驚きの表情でマイクを見詰めているがUSBメモリーをパソコンに差し込んだ以外に何の操作もしようとしないマイクに向かって

「どうした?何か操作しなくても良いのか?」

とマイクに尋ねる。

確かに事務室に居た3人を物音を立てることなく射殺するのには成功したが、だからと言って別の部屋にいる人間が入室してこないとも限らず、やらなければならない行動は少しでも早く済ませるのに越したことはない。

俺からの問い掛けに、マイクは自分の腕時計を見詰めながら

「いやぁ、今回のミッションが発令された後に、上官に対してチームのメンバーでコンピュータ操作に精通している人間がいないと思うが、何か対策はないかを聴いてみたんだが、そしたら消しゴムみたいな装置を渡されて、この装置をパソコンの裏側にあるスロットに差し込むだけで良いと言われたが、必要なデータを抜き取るのに10分くらい掛かるそうなので、それまでの時間を装置を抜き取られないようにせよと言われたんだよ」

照れたような感じで小鬢を掻きながら答えてくる。

確かに、俺もコンピュータに明るいわけではなくセルジオやスティーブも軽く両手を広げている様子を見ると2人とも得意分野ではなさそうだ。

そんな状況なので、マイクが上官から寄こされた機材は助かることは間違いないが、目的のデータを取り出すのに10分もの時間を要するとなれば、その間は俺達が事務室から脱出するわけにもいかず、この事務室内に残ってデータが取得できるまでの間に、他の人間が入室するようであれば殺害する等の対応をしなければならなくなる。

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