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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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未だ夢と現実の間を彷徨っているような状態だが、外の方でガチャガチャという金属が擦れ合う音の後にガッコンという音が続いて俺達が寝ている倉庫の扉が開く音が聞こえると

「もう直ぐ出発しますので、荷台の方へ移動してください」

聞きなれない声が聞こえてくる。

慌てて飛び起きて声が聞こえた方へ顔を向けてみると、眩しい日光のなかに立っていたのは昨夜に海岸線で合流することができた協力者のホセであった。

寝起き直後の幾分ボーッとしている頭ではあったが、どうにか昨夜の状況を思い出して麻薬の密造工場へは朝早くに出発すると伝えられていたので、慌てて起き上がり大した支度があるわけでもないが、寝るために敷いたマットを折り畳みバックパックへ仕舞う。

しかし、隣で寝ていたマイクは目が覚めるどころか未だ夢の国を放浪しているようで一向に起きる気配をみせない。

身支度のできた俺は流石に

「マイク、いつまで寝てるつもりだ。もう、ミッションがスタートするぞ」

少し強い調子でマイクに声を掛けてやる。

流石に、「ミッションがスタート」という言葉が聞き取れたマイクは寝ぼけ眼ながらも上半身を起こして

「すまん、もう少ししたら目が覚める」

と言って、頻りに目を擦っている。

俺やセルジオ、スティーブが小型トラックの荷台へ乗り込む際にも、マイクは未だ目を擦りながらバックパックを左手に提げて倉庫から出てくると、眠そうな顔をしながらもホセに近寄って

「これから麻薬の密造工場まで連れてってもらうが、出来れば工場の手前で俺達を降ろすんじゃなくて、この小型トラックの荷台に乗ったままで工場内まで運んでくれないか?」

唐突にホセに依頼するが、当初の予定とは違うマイクの言動に困惑しているホセの表情を見たセルジオは、ホセがマイクの言っている英語を理解できてないのではと思ってスペイン語でマイクの喋ったことを通訳する。

セルジオの言葉を何度も頷きながら聞いたホセはスペイン語で

「今回の約束では、麻薬工場の手前で皆さんを車から降ろせば良いと言われたので引き受けたが、貴方の言った通りにして目の前で銃撃戦が行われたら私の命は危険に晒される。それじゃ、最初の約束とは違うよ。さっき、この人が言った英語は理解できていたけど、どう言うつもりで喋ったのかが理解できなかっただけ」

早口でセルジオに話し、それを聞いたセルジオがマイクに通訳して伝える。

それを聞いたマイクは、眠そうな顔に微笑みを浮かべると

「今、あんたに頼んだ事をやって貰ったとしても必ずあんたの命は守ってやるから、安心して俺達を工場内まで乗せて行ってくれないか?それに、俺達が荷台に乗っている間に積まれている荷物を移動させて工場の入り口で検問があっても、ちょっと幌を捲ったくらいで俺達が荷台に乗っているとは思われないようにして細工しておくから」

微笑みを称えた表情をホセへ向けながら語り掛けている。

それを聞いたセルジオがスペイン語に訳してホセに伝えると、ホセが複雑な表情を浮かべて

「本当に、アンタの言葉を信用して良いのか?確かに、アンタ達を工場の手前で降ろしたとしても俺が工場へトラックに積んだ食糧を降ろすまでの間に銃撃戦が始まれば、俺が危険な目に合うことには違いはない。だけど、アンタ達を工場内へ連れて行って俺が食糧の納品を終えるまで銃撃戦を始めないと約束してくれるなら、アンタの頼みを聞かないこともない」

早口で喋るホセの言葉をセルジオが訳してマイクに伝えると

「それは必ず約束するから安心してくれ」

ホセに向かって真剣な眼差しを送ってマイクが誓うと

「分かったよ、アンタの頼みを聞くことにしよう。早く荷台に乗ってくれ、アンタ達が身を隠すのに荷物をどう動かすのかは任せるが、あまりグズグズしていると完全に遅刻となって工場入り口の検問で相当怪しまれることになるから早くしてくれ」

ホセは、そう言い残して急いで運転席に乗り込み小型トラックのエンジンを始動させる。

マイクに対して3人とも言いたいことが山程あるのだが、ホセが時間がないと言っていることもあり、マイクに質問を投げ掛ける前に急いで荷台へ乗り込んでいく。

荷台に4人が乗り込むとマイクが大声で

「全員が乗り込んだ、出発してくれ」

とホセに声を掛ける。

するとホセは、小型トラックのギアをローへ入れてアクセルを踏み込みながら半クラッチにすると、車体が動き出して荷台の中が小刻みに揺れ始める。

小型トラックが動き出すとセルジオが

「それにしても出発の間際に、予定とは違うことを交渉するとは思わなかったぞ」

少し呆れ気味にマイクへ言う。

「いやぁ、みんなに前もって言えば良かったんだろうけど、あの倉庫へ到着して寝床を作って横になった時に思い付いたんだが、生憎と思い付いた直後に寝入ってしまったし、朝になって起きてから伝えようとは思っていたが、俺が寝坊して頭の中がスッキリした時には出発直前の状態だったので、突然言い出したことになって申し訳ない」

マイクは3人に謝罪する意味も含めて説明してくれるが

「でも、どうして協力者に工場内まで車に乗せていけと?」

スティーブが最も大事な質問すると

「そりゃ、これから麻薬の製造工場へ向かうとしてもミッションの遂行上、どうしたって工場内へ潜入しなけりゃ話にならない。だが、命令ではコロンビア軍との直接的な交戦は控えるようにと言っているが、工場を警備しているのがコロンビア軍の兵士で当然武装もしている状況なら、俺達が警備のコロンビア兵士と交戦しないで工場の敷地内へ入れる筈がないだろう。だったら、この小型トラックに俺達が乗ったままで俺達がコロンビア兵や工場の人間に見付かることがなければ、大した苦労もせずに工場の敷地内へ潜入できるというアイディアを思い付いたんだよ」

少々自慢げにマイクがスティーブの疑問に答える。

それを聞いた俺は、麻薬製造工場の敷地内への潜入方法について目星がついた気楽さもあって意地悪く

「自慢げに話しているが、要はジャングルに入った時に蛇と出会うのが嫌だったんだろう?」

とマイクに憎まれ口を伝えると、マイクは一瞬驚いたような表情を浮かべた後に右手で小鬢を掻きながら

「まぁ、その理由もあるんだが」

とマイクが小声で言うのに対して

「無理すんなよ、マイクが大の蛇嫌いなのは全員が分かっていることなんだから、正直に蛇に合わずに工場の敷地内に潜入できる方法を考えたと言えば良いじゃないか」

ニヤリと笑って俺が言うと

「ジョージ、そこまで言う必要もないだろう」

少し口を尖がらせたマイクが抵抗するように言ってはいるが、恐らく図星を指されても本気で怒ってはいないので、それを聞いたセルジオとスティーブも吹き出して笑みが零れている。

2人が笑っているのを素知らぬ振りをして無反応を装ったマイクが

「それじゃ、そろそろ行動開始とするか、俺達の居場所は運転席の直ぐ後ろということにして、積んである食糧荷物を移動させるぞ」

と言い荷台の中で、立ち会がり作業を始める。

密林地帯にある麻薬の密造工場に到着するまでの時間が分からないものの、4人で手分けして少しでも早く作業を終えることができれば安心していられるだけでなく、未だ朝食を食べていない胃袋には、バックパックに詰めている非常用の携行食を胃袋へ送り込んでおけば麻薬密造工場の入り口にある検問所での検問中に胃袋が鳴ることもないだろう。

4人掛かりで食糧やミルクが収納されたケースを移動させ、丁度荷台の後方から見ても運転席の直ぐ後ろにいる俺達が見えることのないよう遮蔽物となるよう配置して積み上げて置く。

積み込まれている荷物の移動作業も手際良く終わり、各自がバックパックから真空包装のビニールに包まれたビスケット状の非常用携行食と飲料水の入った水筒を取り出して、口に頬張った非常用携行食を水筒の水で胃に流し込む。

冷静に考えれば貧相な朝食となってしまったが、こうしておけば小型トラックが麻薬密造工場へ到着して入り口の検問を受けている際に、胃袋が空腹で「グーッ」と鳴って荷台に人が潜んでいるのが判明するような失態を演じることにはならず、身動き一つせずに大人しくさえしていれば、余計な銃撃戦を展開することなく無事に工場敷地内への潜入に成功するはずであるのと同時に、ホセとの約束も確実に果たせることになる。

いざとなれば、敵を殺害することを躊躇したりはしないが、だからと言って常に見境なく殺害行為に走るわけではなく、場合によっては殺害に繋がる戦闘行為を回避して行動することもある。

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