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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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105

海岸線の近くに協力者が来ている筈ではあるが、合図を出すにしても安易な場所で合図代わりの光を点灯するというわけにもいかない。

恐らく、協力者は海岸線近くの道路に車で来ているだろうから路肩に車を駐車していればヘッドライトの光が見えると思うので、その車両に向かってハンディライトを数回点滅させれば充分に合図となるはずだ。

協力者とて、コロンビア国内において明らかにアメリカ軍の兵士と分かるような格好をしてこないことくらいは承知しているだろうから、暗がりの中でライトを数回点滅させれば必ず近寄って来るだろう。

そのために、俺達4人は陸地側の舗装路を目指して暗闇の林を歩き始めるが、下手にライトを点灯させるわけにもいかないので足元の状況が分からない状態で、あまり急ぐと樹木の根等に足を取られて何度も転倒しそうになるので慎重に歩かざるを得ない。

結構な時間を費やして、林を抜けると漸く目の前に舗装路が見えた。

4人全員で道路に立って目を凝らして遠くの方を見るが、どうも協力者が乗ってきたと思われるヘッドライトを点灯させた車両が見当たらない。

すると隣にいるマイクが背負っているバックパックへ右手を突っ込みハンディライトを取り出した。

そのマイクの右手に握られているハンディライトを見ながら

「どうするつもりだ?」

と俺は小声でマイクに問い掛ける。

「いやぁ、このまま協力者と接触できぬままでは埒が明かないから、ここは一発勝負のつもりでライトを点灯させて大きく振ってみようかと思ってなぁ」

あっけらかんとマイクが答えてくる。

いざとなれば、多少なりとも大胆な行動を取る癖があるマイクだが流石にライトを点灯させて大きく振るというのは早過ぎると思った俺は

「最終手段としての方法なら否定しないが、その方法を選択するのは少し早くないか?」

苦笑いを浮かべてメイクに言うと

「そうかぁ」

悪びれることなくマイクが答えながら、反対側の隣にいるセルジオへ視線を向ける。

マイクから視線を向けられたセルジオも困惑したような表情を浮かべて

「もう少し周囲を探してからの方が良いと思うぞ」

とマイクに答える。

セルジオからも肯定的な答えがなかったマイクは

「セルジオもジョージの意見に賛成なら、もう少し待つか」

と軽い調子で言い、自分の意見が退けられたことに不満を抱いているような素振りをみせていない。

一方、3人の話に耳を傾けながらも周囲へ視線を走らせていたスティーブが

「500メートルくらい先に見えるのは、路肩に停車している車の室内灯じゃありませんか?」

右の人差し指で示しながら俺達3人に声を掛けてくる。

確かにスティーブが示した辺りに微かだが光が見て取れ、恐らくスティーブが言ってる通りに停車している車からの室内灯の光と思われる。

それを確認した俺は、素早くバックパックからハンディライトを左手で取り出すと右手でハンディライトを覆い周囲に光が漏れるのを防ぎながら車の室内灯が見える方向へ3度ライトを点滅させる。

これを悠長に行動していれば、マイクの事だから周囲に光が漏れるのもお構いなしに手にしたハンディライトを振るに違いない。

確かに周囲には人家等は無さそうで暗闇となっているが、深夜とは言え周囲に別の車両が走行していないとも限らないので、合図を送るにしても細心の注意を払っておくことに越したことはない。

協力者と手っ取り早く接触して、多少とも落ち着いた状況としたいマイクの気持ちも分からないではないが、隠密行動を旨とするために深夜の海岸線から入国している俺達は、誰一人としてパスポートを所持しているわけではないので、下手に目立つ行動をしてコロンビアの法執行機関の人間等に見付かってしまえば、危険な状態となるのが俺達であることは分かり切っている。

俺がライトの点滅で合図を送って暫くすると、微かだった光が点灯していた所から車のヘッドライトに変わって点灯すると、そのヘッドライトの光は徐々に俺達が居る方へ近付いてくる。

俺達に近付いてくる車両が協力者ならば、何一つ問題はないが相手が協力者であるという確証が得られていない段階では、単に道路脇に突っ立って戦闘服姿を晒すわけにもいかない。

そのことに関しては流石に理解しているマイクも、セルジオに促されると大人しく林の中へ戻っていく。

林の中に身体を隠すと各自が腰のホルスターに差し込んで消音器を装着したM&P5.7拳銃を構えて車両が接近してくるのを固唾を飲んで静かに待つ。

目の前近くでスピードを落と始めた車両は、漸く外観が判別できる距離となったことで小型のトラックであることが分かり、その荷台には幌が掛けられている。

その小型トラックは、丁度俺達が潜んでいる林の前で、キーッというブレーキ音を立てて停車するとドライバー側のサイドドアが開いて

「連絡を受けた協力者のホセと言います」

と男が小声で喋ってくると、続けて事前に決めていた暗号を口にした。

これで、目の前に止まった小型トラックを運転しているホセと名乗った男が、協力者であることがハッキリした。

俺達の方も代表してマイクが合言葉を返してやると、暗がりとは言えホセの顔にもホッとした安堵の表情が浮かんでいるのが分かる。

ホセが運転席から降りてマイクの声が聞こえた林の方へ向かってくると

「早く、こちらへ出てきてください。林から出て来たら直ぐに荷台の方へ乗り込んで周囲から姿を見られないように」

と大して上手とは言えない英語で話してくる。

そのホセの声を聞いて俺達は林から出ると、ホセの前に立って挨拶をして自己紹介をしようとするのを両手を前に突き出して封じ

「とにかく、自己紹介は明日になってからでも充分に行えます。深夜とは言っても何処から見られているか分かりませんから、直ぐに荷台へ乗ってください」

ホセが忠告してくるので、俺達全員は頷いて小型トラックの荷台へと向かう。

ホセが、荷台の幌を引き上げると荷台にはミルクやパン等の食糧がケースに入って積み上げられており、その中央には大人の男性1人分のスペースが開けられているので、その空間に俺達は1列となって乗り込む。

「少し狭いですが、私の自宅へ戻るまでは辛抱してください。それと、積んでいる荷物は明日の午前中に貴方達が向かう予定の工場に納品する食糧です」

ホセは、早口となったので母国語のスペイン語で話してくる。

しかし、俺やマイクはスペイン語が話せないので何を言っているのか分からずにいると、スペイン語が分かるセルジオが通訳してホセが喋ったことを教えてくれる。

引き上げた幌を直して周りから荷台の中を覗けないようにするとホセは、運転席に戻って小型トラックを発進させる。

4人全員が比較的大柄の体格なので、食糧が詰まったケースに作られたスペースは狭すぎるが、地元の協力者であるホセにしても俺達全員の体格まで把握しているわけはないので文句を言ってみたところで意味がない。

積み上げられたケースに寄り掛かって、小刻みに揺れる荷台に暫く乗っているとブレーキが掛かり俺達の身体は前方へ傾くが、積み上げられたケースを崩すような事態とはならずに済んだ。

小型トラックのエンジンが止まって静かになると、運転席から降りたホセが幌を引き上げて

「もう大丈夫です。降りてきてください。」

と笑顔を見せて声を掛けてくる。

そのホセの声に促されて1人ずつ順番に荷台を降りると

「それでは、皆さんが一夜を過ごす場所へ案内します。まぁ、私の商売に使っている食糧の保管庫なんですが、周囲から覗かれる心配はありませんし、鍵を掛けますので知らない人間が急に倉庫を開けることもありません」

ホセは俺達に英語で説明すると扉の開いた目の前の倉庫に案内する。

倉庫と言っても食糧用なので、エアコンが効いており俺達を匿うために温度を調整しているのか、涼しく快適と思えるくらいで寒さを感じるような状態とはなっていない。

また、倉庫に収納する荷物も調整したのか俺達全員が手足を伸ばして横になって寝れるくらいのスペースが確保されているので、先程までの窮屈さを感じる心配もなさそうである。

俺達4人が倉庫に入ると

「それでは、鍵を掛けさせてもらいます。明日の朝には出発となりますが、その時には必ず声を掛けるために鍵を開けますので、そしたらトラックの荷台へ移動してください。それじゃ、私も朝が早いので失礼します」

再びホセが英語で説明して倉庫の扉を閉めて施錠する。

施錠された倉庫内は、薄明かるい電球が点灯しているので、完全に暗闇となるわけでもなく逆に明る過ぎて寝れなくなるような状態ではない。

明日の早朝何時くらいに起こされるのかまでは分からないが、起こされて出発すれば気を抜けないジャングルとなるので、4人それぞれが充分に寝れる空間を確保した後は、背負っていたバックパックを枕にして暫しの眠りに就く。

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