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デルタのスナイパー  作者: 二条路恭平


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104

夕食が終わって部屋に戻ってくると、1人の水平が4人分のウェットスーツと大きなビニール袋を持って部屋に入ってくると

「全員分のウェットスーツを用意しましたので、ゴムボートでの上陸指示が出るまでに着替えておくようにと副長からの言伝であります。また、ビニール袋は各自の手荷物を入れておくようにとの事でありました」

そう言うと4着のウェットスーツと4枚の大型ビニールを寄越してくる。

その寄越されたウェットスーツを見ると、スキューバダイビング用の物ではなくサーフボード等のマリンスポーツ用に市販されているタイプのようで、スキューバダイビング用と比べて価格が安いということもあるが、使用されている生地が薄いため浮力も殆どない。

本来、スキューバダイビング用のウェットスーツには浮力があるので潜水する時には腰にウェイトを装着して身体を重くしてやらないと水中に沈むことができない。ただ、酸素が封入されたタンクを背中に背負ってはいるがタンク自体が相当の重量となっているので内包された酸素だけでは浮力が足りず、仮にタンクを背負っていたとしても海上等に浮遊できるわけではない。

そのため、手渡されたウェットスーツには殆ど浮力がないが時化ている海上をゴムボートで移動する際には間違いなく頭から波しぶきを浴びることになるだろうし、海岸に到着してゴムボートを降りれば大きな波が背後から押し寄せてくるので全身が波に飲み込まれることになり、最初からずぶ濡れとなることを見越して戦闘服から着替えておく必要がある。

俺を含めた4人は、パンツ1枚の下着姿となって、素肌にベビーパウダーのような粉を擦り付けてから寄越されたウェットスーツの着用を始める。ウェットスーツは素肌に張り付くような状生地を使用しているので、着用前にベビーパウダーのような粉を塗り付けておかないと生地が伸び難いのに加えて、脛毛等が引っ張られて抜ける以上に痛くて仕方ない。

4人が容易に伸びない生地に散々苦労してウェットスーツに着替え、手荷物を包む大型ビニール袋を見ると、どう贔屓目に見ても艦内のゴミを回収する大型のビニール袋にしか見えない。

まぁ、海へ出て嫌という程に海水を浴びるのだから、脱いだ戦闘服まで海水漬けになってびしょ濡れになるよりは確実にマシなので、ゴミを回収する袋を寄越されたくらいのことで愚痴を言う気は毛頭ない。

大型のビニール袋に各自の手荷物を収納して、ビニール袋の口を固く縛って海水を浴びても中の荷物が濡れないようにしておいてから、下段のベッドに全員が腰掛けて出発の声が掛かるのを待つ。

暫くすると、部屋のドアがノックされて扉を開けた水兵が

「失礼します。上陸のためのゴムボートが用意できましたので、皆さんが乗船する場所へ案内いたします」

敬礼している水兵が大きな声で伝えてくると

「それじゃ、気を抜いてゴムボートから転落してサメの餌にならないよう気を引き締めて行こうぜぇ」

そうマイクが全員に気合いを入れるように声を掛けると

「オウッ」

とマイクを除いた3人が小さいながらも気合いの入った声を出して部屋から出て廊下へ向かう。

待機していた部屋から廊下に出ると船底へ向かうように梯子のような階段を降りて階下へ進み、通常は見ることのない物資搬入用のゲートが開かれ舫綱で固定されている軍用で上陸訓練等の際に使用する船外機が装着された大型ゴムボートが見える。

舫綱で固定されているとは言え、時化の影響で2メートルの波があるせいなのか頼りないくらいに漆黒の海上で大型ボートが揺れて不安定な感じがする。

こんな状態の海で大型ゴムボートへ乗り込む際、変に恰好をつけて飛び乗ろうものなら大型ゴムボートに着地した瞬間にバランスを崩して大型ゴムボートが反転し、大型ゴムボートに乗っている全員が漆黒の荒れた海に投げ出されて危険な状態となるのが想像できるので、空母ジェラルド・フォードの荷物搬入口にいる水兵や予め大型ゴムボールに乗り込んでいる水兵に手伝ってもらいながら慎重に大型ゴムボートへ乗り移ると、ビニール袋に収納した手荷物を寄越せと大型ゴムボートに乗り込んでいる水兵に言われる。

言われたままにビニール袋に収納した手荷物を渡すと、大型ゴムボートのバランスが崩れないように位置を調整して手荷物を置いて、その荷物の隣へ座るように指示される。

今夜のような波の状態ならば、常に大型ゴムボートのバランスに注意を払わなければ少々大きな波を受けることになれば、立ち処に大型ゴムボートはバランスを崩して乗り込んでいる全員が海中に放り出されるであろうことは、海に関して全く素人の俺でも直ぐに想像できる。

多少の時間を費やしながらも俺達4人が大型ゴムボートへ乗り込むと、空母ジェラルド・フォードの荷物搬ゲート入口にいる水兵が舫綱を解いて大型ゴムボートへ舫綱を放り投げてくる。

すると、大型ゴムボートに乗り込んでいた2人の水平が大型ゴムボートの附属品となっているオールを使って空母ジェラルド・フォードの船体を押して、大型ゴムボートが空母と衝突することのないよう大型ゴムボートが空母の船体から距離を取ろうとしている。

今の大型ゴムボートの状態で、空母ジェラルド・フォードと衝突すれば豆粒のような存在の大型ゴムボートは押し負けて瞬時にひっくり返り大型ボートに乗り込んだ全員が海中へ放り出され、コロンビアの海岸線への上陸どころの話ではなくなる。

2人の水平がオールを使って空母の船体から離れようとしている間に、船外機に取り付いている水兵が大声で

「それでは、自分の身体と荷物が飛ばされないようにしてください。」

そう言うと、船外機のスロットを徐々に開いていく。

船外機のエンジン音が大きくなりスクリューの回転が始まった大型ゴムボートは、少しずつ空母ジェラルド・フォードから離れて漆黒の波間を航行していくが、絶え間なく押し寄せる波によって不謹慎ながら、遊園地のジェットコースターにでも乗っているかのように大型ゴムボートは上下動している。

本来なら、20分くらい大型ゴムボートに乗っていれば予定している砂浜に辿り着くのだろうが、波の影響で大型ゴムボートは真っ直ぐに砂浜へ向かうというよりも斜めに進んでいるようなので、なかなか陸地に近付く気配がない。

最も、コロンビアへ潜入するのが密入国のような真似をしているので、街明かりが見えるような砂浜に近付くわけにはいかないため、陸地側も暗がりな場所を目指している関係で何処が陸地なのかさえ全く分からない。

どれくらい漆黒の海を航行するのかと思っていると船外機を操っている水兵が

「そろそろ、砂浜に接岸しますので下船の準備をしてください」

と言ったかと思うと大型ゴムボートの底に何かが接触しているようなザザッという音が聞こえ、次いで見えない何者かが大型ゴムボートの後方から掴んでいるかのようにスピードが遅くなると、大型ゴムボートの先端に何かが閊えたようになって進行をストップする。

それを合図に俺達4人は大型ゴムボートの縁に腰掛けてから海に入るが、本来ならば股下くらいの深さなのだろうけど、打ち寄せる大きな波のせいで背中前面に波が当たって身体全体が陸側へ押し出されそうになるので、大型ゴムボートの縁でも掴んでいないと真っ直ぐに立ってる状態を維持できない。

そのような状態で、大型ゴムボートにいる水兵が大型ビニール袋に包んだ手荷物を渡そうとしてくれるが、大型ゴムボートの縁を掴んで体勢を維持するのに精一杯なので思うように受け取れない。

漸くの思いで、自分の荷物を受け取ったので他の3人が荷物を受け取るのを待っていると

「荷物を持った状態で近くにいるのは危険ですから、早く砂浜へ移動してください」

と大声で言われる。

そう言われて砂浜を目指して一歩前へ進むと、身体の前方には重量物があり背後からは大きな波が押してくるので何度も転倒しそうになる。

自分がそのようになって初めて、水兵が言っていた意味が理解できる。確かに、こんな状態で近くに味方が居れば互いに衝突してバランスを崩して転倒するだろうし、下手をすれば浅瀬の海で溺れてしまう可能性もなくはない。

何とか転倒せずに波打ち際まで辿り着き、更に波が打ち寄せてこない場所まで移動して振り返ると、他の3人も苦労しながら陸地を目指して格闘している姿が見える。

そんな俺は、大した距離を歩いたわけもないのに少し息が上がっている。幾らか荒れた海で身体のバランスを保ちながら歩くということが想像以上に体力を使うことを始めて知った思いがしている。

後から来た3人も無事に砂浜に辿り着くが、俺と同様に息が上がっているのが夜目にでも分かる。4人のなかで最も体力があるマイクでさえも、上陸直後には息が荒くなっていたので決して楽な上陸作業ではない事は明らかである。

その頃には、4人全員が上陸に成功したことを見届けた大型ゴムボートが砂浜から離れて空母ジェラルド・フォードへ帰還していく。

砂浜に上陸した3人の息が平常に戻ったところで、2人ずつのコンビとなって相棒に背中を向けてウェットスーツのジッパーを下げてもらいウェットスーツを脱ぎ出す。

ウェットスーツの内部には海水が染み込んでいないが、多少の海水を含んで重量の増えたのに加えて海水に浸ったことで更に伸び難くくなったウェットスーツを苦労して脱ぎ捨てパンツ1枚の姿となるが、深夜とは言え赤道近くのコロンビアでは下着1枚の姿となっても全く寒さを感じることがない。

だからと言って、何時までも下着1枚の恰好でもいられないので大型ゴミ袋に収納したバックパックから戦闘服を取り出すために固く結んだ口を開けようとするが、海水で濡れた手では上手く解けないので大型ゴミ袋を両手で掴んで力任せに破り、収納しているバックパックから戦闘服を取り出して素早く身に着ける。

ただ、靴下等は足が濡れたままなので暫く素足で砂浜を歩いて細かい砂に足に付着している水分を吸い取ってもらい、ある程度の水分がなくなったところで足裏等についた砂を払ってから靴下を着けてからコンバットシューズを履く。

漸くミッション遂行をするための外観となったところで、4人全員で周囲を見渡し、コロンビア国内の協力者と接触するために合図の光を出せそうな場所を探し始める。

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